会計監査とは?目的・流れ・対象になる会社をわかりやすく解説
目次
会計監査とは、会社が作成した計算書類や財務諸表について、公認会計士または監査法人が独立した立場から適正性を確かめ、意見を表明する手続です。会社法では会計監査人による監査、金融商品取引法では公認会計士または監査法人の監査証明として制度化されており、どちらも監査を行えるのは公認会計士または監査法人に限られます(会社法 第337条第1項、公認会計士法 第2条第1項)。
実務では「会計監査」という言葉が、会計監査人による監査・監査役による監査・社内の内部監査のいずれを指しているのかが混ざりやすく、そのために「自社は監査の対象になるのか」という判断が曖昧になりがちです。このコラムでは、会計監査の目的と担い手、義務の根拠となる法律、対象になる会社の判定、年間の流れ、監査報告の内容までを、条文の根拠を示しながら一つの地図として整理します。各論はそれぞれの解説コラムに分けていますので、必要な箇所から読み進めていただければと思います。
会計監査とは|定義と担い手
会計監査は、会社が作成した計算書類等が会社の財産および損益の状況を適正に表示しているかどうかを、会社の外部にいる専門家が確かめる手続です。会社法では、会計監査人が計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を監査し、会計監査報告を作成することとされています(会社法 第396条第1項)。
会計監査を行えるのは公認会計士または監査法人だけ
会計監査人になれるのは、公認会計士または監査法人に限られます(会社法 第337条第1項)。公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て財務書類の監査または証明をすることを業とする資格であり(公認会計士法 第2条第1項)、独立した立場で財務情報の信頼性を確保することがその使命として定められています(公認会計士法 第1条)。
したがって、税理士や社内の経理責任者が計算書類を確認しても、それは会社法上の会計監査には当たりません。「会計をチェックしてもらった」ことと「会計監査を受けた」ことは、制度上まったく別のものだという点が出発点になります。
会計監査の目的
会計監査の目的は、計算書類等の信頼性を第三者の意見によって担保し、株主・債権者・投資家が会社の財政状態と経営成績を判断できる状態をつくることにあります。会社法が大会社に会計監査人の設置を求め、金融商品取引法が上場会社等に監査証明を求めているのは、いずれも会社の規模や資金調達の広がりに応じて、外部の利害関係者が増えるためです。
実務の感覚で言えば、会計監査は「間違い探し」ではなく「重要な虚偽表示がないことの合理的な保証」です。すべての伝票を網羅的に見るのではなく、金額的・質的に重要な領域へ手続を集中させるため、監査を受ける側も「どこが重要な領域と見られているか」を理解しておくと準備の精度が上がります。
監査役監査・内部監査との違い
会社の中には性質の異なる監査が併存しており、実務ではこれらをまとめて三様監査と呼ぶことがあります。同じ「監査」という言葉でも、実施主体・対象・根拠となる法律が異なります。
| 会計監査人監査 | 公認会計士または監査法人が計算書類等を監査し、会計監査報告で意見を表明します。会社法と金融商品取引法が根拠となります(会社法 第396条第1項、金融商品取引法 第193条の2第1項)。 |
|---|---|
| 監査役監査 (監査役等による監査) |
監査役、監査等委員会または監査委員会が、取締役の職務執行を監査します。会計監査人設置会社では、計算書類およびその附属明細書について会計監査人とあわせて監査を行い、事業報告およびその附属明細書は監査役等のみが監査します(会社法 第436条第2項)。 |
| 内部監査 | 会社が自ら設置した内部監査部門が、社内規程や業務プロセスへの準拠性、業務の有効性・効率性を点検します。会社法・金融商品取引法に設置義務の定めはなく、取引所の上場審査や内部統制の整備の一環として求められる社内の仕組みです。 |
混同が起きやすいのは、会計監査人監査と監査役監査です。監査役等は会計監査人の監査の方法および結果の相当性を判断する立場にあり、会計監査人の監査を置き換えるものではありません。どちらか一方を実施すれば足りるという関係ではない点に注意してください。
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会計監査が義務になる根拠法|法定監査の種類
法律で実施が義務づけられている監査を法定監査といいます。会計監査という言葉の中身は、どの法律に基づく監査なのかによって、対象書類も報告の形式も変わります。主な法定監査は次のとおりです。
| 会社法 | 大会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社などが会計監査人を置き、計算書類等の監査を受けます(会社法 第328条、第327条第5項、第396条第1項)。 |
|---|---|
| 金融商品取引法 | 上場有価証券の発行会社その他政令で定める者が提出する財務計算に関する書類について、特別の利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明を受けます(金融商品取引法 第193条の2第1項)。内部統制報告書についても監査証明の対象とされています(同条第2項)。 |
| 労働組合法 | 労働組合の規約には、すべての財源および使途、主要な寄附者の氏名、現在の経理状況を示す会計報告を、組合員から委嘱された職業的に資格がある会計監査人の証明書とともに少なくとも毎年1回公表する旨を含めなければなりません(労働組合法 第5条第2項第7号)。 |
| その他の法律 | 医療法人、社会福祉法人、学校法人、公益法人など、事業の公益性や補助金の交付を理由に、それぞれの根拠法で一定規模以上の法人へ外部監査が義務づけられています。 |
これに対し、法律上の義務がないにもかかわらず、金融機関や取引先への説明、上場準備、グループ内の内部管理などを目的に会社が自らの判断で受ける監査を任意監査と呼びます。任意監査は目的に応じて範囲や報告の形式を設計できる一方、法定監査と同じ形式の監査報告書が出るとは限らないため、提出先が求めている水準を先に確認しておく必要があります。
関連コラム法定監査と任意監査の違い|種類一覧と対象会社の判定▸
会計監査の対象になる会社の判定
自社が会計監査の対象になるかどうかは、会社法上の機関設計と規模、そして金融商品取引法上の開示義務の3つの軸で判定します。いずれか一つに該当すれば、会計監査は義務になります。
| 資本金5億円以上 | 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であれば大会社に該当します(会社法 第2条第6号イ)。 |
|---|---|
| 負債合計200億円以上 | 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であれば大会社に該当します(会社法 第2条第6号ロ)。 |
| 大会社に 該当した場合 |
公開会社である大会社は監査役会および会計監査人を置かなければならず、公開会社でない大会社も会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条第1項・第2項)。 |
| 監査等委員会設置会社 指名委員会等設置会社 |
規模を問わず会計監査人を置かなければなりません(会社法 第327条第5項)。大会社に該当しない非上場会社でも義務になります。 |
| 有価証券報告書の 提出会社 |
上場有価証券の発行会社などは、事業年度経過後3月以内に有価証券報告書を提出し(金融商品取引法 第24条第1項)、その財務計算に関する書類について監査証明を受けます(同法 第193条の2第1項)。 |
判定でつまずきやすいのは3点です。第一に、大会社の判定は資本金と負債のどちらか一方の該当で足りるため、資本金1億円の会社でも負債合計が200億円を超えれば大会社になります。第二に、判定の基礎は最終事業年度に係る貸借対照表であり、期中の増資や借入の実行時点ではなく、直前の確定した決算数値で判断します。第三に、監査等委員会設置会社へ移行する機関設計の変更は、それ自体が会計監査人の設置義務を生じさせます。移行の登記だけ済ませて会計監査人の選任を失念すると、法令違反の状態が続いてしまいます。
なお、会計監査人を置く場合は、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除き、監査役を置かなければなりません(会社法 第327条第3項)。会計監査人の選任だけを検討すると機関設計が整わないため、監査役の選任とあわせて設計する必要があります。
関連コラム会計監査人の設置義務がある会社は?大会社・委員会設置会社の判定フロー▸
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会計監査人の選任と任期
会計監査人は株主総会の決議で選任しますが、株主総会に提出する選任・解任および再任しないことに関する議案の内容は、監査役が決定します(会社法 第344条第1項)。監査役会設置会社では監査役会が決定します(同条第3項)。取締役会が単独で監査法人を決めてよい仕組みにはなっていないという点が、実務上見落とされやすいところです。
任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法 第338条第1項)。ただし、その定時株主総会で別段の決議がされなかったときは再任されたものとみなされるため、毎年あらためて選任決議を行う必要はありません(同条第2項)。実務では、この自動再任の仕組みを前提に、交代を検討する年だけ議案化することになります。
会計監査の流れ|年間の段階と法定の期限
会計監査は決算後に一度だけ行われるものではなく、事業年度を通じて段階的に進みます。会社法と会社計算規則が定める期限は、このうち監査報告の通知の段階に置かれています。
| 監査計画の策定 | 監査人が会社の事業内容とリスクを把握し、重点領域と手続を設計します。監査役等との協議を通じて、年間の往査時期や依頼資料の範囲が共有されます。 |
|---|---|
| 期中監査 | 事業年度の途中に、内部統制の整備・運用状況の評価や取引記録の検証を行います。期末の手続量を抑えるために前倒しで実施する段階です。 |
| 期末監査 | 決算数値が固まる時期から、実査・立会・確認などの実証手続と、注記を含む開示内容の検討を行います。開示資料も監査の対象になるため、監査期間中に並行して作成する必要があります。 |
| 監査役等・会計監査人 による監査 |
会計監査人設置会社では、計算書類およびその附属明細書は監査役等および会計監査人の監査を、事業報告およびその附属明細書は監査役等の監査を受けます(会社法 第436条第2項)。 |
| 会計監査報告の通知 | 会計監査人は、計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日、附属明細書を受領した日から1週間を経過した日、当事者間の合意により定めた日のうち最も遅い日までに、特定監査役および特定取締役へ会計監査報告の内容を通知します(会社計算規則 第130条第1項第1号)。連結計算書類については、全部を受領した日から4週間を経過した日が原則です(同項第3号)。 |
| 取締役会の承認 | 取締役会設置会社では、監査を受けた計算書類および事業報告ならびにこれらの附属明細書について取締役会の承認を受けます(会社法 第436条第3項)。 |
| 定時株主総会 | 原則として計算書類は定時株主総会の承認を受けますが、会計監査人設置会社で法務省令の要件に該当する場合は承認が不要となり、内容の報告で足ります(会社法 第438条第2項、第439条)。 |
| 決算公告 | 定時株主総会の終結後遅滞なく、大会社は貸借対照表および損益計算書を公告します(会社法 第440条第1項)。有価証券報告書の提出会社は公告義務の適用を受けません(同条第4項)。 |
会計監査報告の通知期限は、会社側のスケジュール設計に直結します。仮に会計監査人が期限までに通知をしなかった場合、その通知をすべき日に計算書類は監査を受けたものとみなされます(会社計算規則 第130条第3項)。逆にいえば、計算書類の提出が遅れれば起算日も後ろへずれるため、株主総会の日程から逆算して決算業務の完了日を決めることが実務の勘所になります。
初年度の監査では、期首残高の検証や過去の会計処理の遡及的な確認が加わるため、2年目以降より手続量が増えます。監査契約の締結時期が遅れると、期中の証拠が十分に残っていない領域が出てきて、追加の手続や範囲の制約につながることがあります。
関連コラム会計監査の流れ|準備スケジュールと必要書類チェックリスト▸
会計監査報告の内容と監査意見の種類
会計監査人は、計算関係書類を受領したときに会計監査報告を作成します。記載すべき事項は、監査の方法およびその内容、適正表示についての意見、継続企業の前提に関する注記に係る事項、事業報告等との重要な相違に関する報告事項の有無、追記情報、報告を作成した日などです(会社計算規則 第126条第1項)。
読み手が最初に確認するのは意見の区分です。区分は次の4つに整理できます。
| 無限定適正意見 | 監査の対象となった計算関係書類が、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に準拠して、当該期間の財産および損益の状況を全ての重要な点において適正に表示していると認められる旨を述べるものです(会社計算規則 第126条第1項第2号イ)。 |
|---|---|
| 除外事項を付した 限定付適正意見 |
除外事項を除けば適正に表示していると認められる旨に加え、除外事項とその理由を記載します(会社計算規則 第126条第1項第2号ロ)。 |
| 不適正意見 | 計算関係書類が不適正である旨およびその理由を記載します(会社計算規則 第126条第1項第2号ハ)。 |
| 意見がないとき | 意見を表明しない旨およびその理由を記載します(会社計算規則 第126条第1項第3号)。監査の範囲に重大な制約があり、十分な証拠を入手できない場合などが想定されます。 |
意見とは別に、会計方針の変更、重要な偶発事象、重要な後発事象など、監査人の判断について説明を付す必要がある事項や強調すべき事項は、追記情報として記載されます(会社計算規則 第126条第1項第6号、同条第2項)。追記情報は意見を限定するものではないため、記載があること自体を否定的に読む必要はありません。
実務で押さえておきたい注意点
会計監査をこれから受ける会社で、相談時によく論点になるのは次の4点です。いずれも早い段階で手を打てば、監査の開始時期や費用に跳ね返る影響を抑えられます。
- 設置義務の失念:大会社に該当した事業年度から会計監査人の設置義務が生じますが、判定の基礎が直前の決算であるため、決算確定後にはじめて該当が判明することがあります。該当が見込まれる段階で監査法人の選定を始めておく必要があります。
- 監査役の選任漏れ:会計監査人設置会社は監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除き監査役を置かなければならず(会社法 第327条第3項)、会計監査人だけを選任しても機関設計は完結しません。
- 選任議案の決定主体:会計監査人の選任議案の内容は監査役または監査役会が決定します(会社法 第344条第1項・第3項)。監査法人を実質的に決めたあとで監査役側の手続だけを形式的に追加すると、手続の趣旨に沿わない運用になります。
- 連結計算書類の作成義務:事業年度の末日において大会社であって有価証券報告書の提出義務がある会社は、連結計算書類を作成しなければならず、これも監査役等および会計監査人の監査を受けます(会社法 第444条第3項・第4項)。単体の監査だけを想定して日程を組むと、期末の作業が集中します。
また、上場準備の局面では、会社法上は大会社に該当していなくても、取引所の上場審査や金融商品取引法に基づく開示のために、申請の数期前から任意監査を受けるのが一般的です。会社法監査と上場準備のための監査は、根拠も対象書類も異なりますので、どちらの要請で監査を受けるのかを整理してから監査法人と協議すると、契約範囲の認識がずれにくくなります。
まとめ
会計監査とは、公認会計士または監査法人が独立した立場から計算書類等の適正性について意見を表明する手続です。会社法では会計監査人による監査(会社法 第396条第1項)、金融商品取引法では監査証明(金融商品取引法 第193条の2第1項)として制度化されており、資本金5億円以上または負債合計200億円以上の大会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社、有価証券報告書の提出会社が主な対象になります(会社法 第2条第6号、第328条、第327条第5項)。
実務では、自社が対象に該当するかの判定、監査役を含む機関設計の整備、選任議案の決定主体、そして会計監査報告の通知期限から逆算した決算日程の設計が要点になります。監査の要否や機関設計の判断は個別性が高いため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
参考文献
よくある質問
会計監査と税務調査は何が違いますか。
会計監査は、公認会計士または監査法人が計算書類等の適正性について意見を表明する手続で、会社法や金融商品取引法が根拠になります(会社法 第396条第1項、金融商品取引法 第193条の2第1項)。税務調査は税務当局が申告内容を確認する行政手続で、目的も実施主体も異なります。会計監査を受けていることが、税務上の取扱いを保証するものではありません。
非上場会社でも会計監査は必要ですか。
必要になる場合があります。資本金5億円以上または負債合計200億円以上で大会社に該当すれば、公開会社であるかどうかを問わず会計監査人を置かなければなりません(会社法 第2条第6号、第328条)。また、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は、規模を問わず会計監査人が必要です(会社法 第327条第5項)。
税理士に会計監査を依頼できますか。
できません。会計監査人になれるのは公認会計士または監査法人に限られており(会社法 第337条第1項)、財務書類の監査または証明を業として行えるのは公認会計士です(公認会計士法 第2条第1項)。税理士による決算書の作成支援や税務申告は、会社法上の会計監査には当たりません。
会計監査報告はいつまでに受け取れますか。
会計監査人は、計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日、附属明細書を受領した日から1週間を経過した日、当事者間の合意により定めた日のうち最も遅い日までに、特定監査役および特定取締役へ会計監査報告の内容を通知します(会社計算規則 第130条第1項第1号)。会社側の提出が遅れると起算日も後ろへずれるため、株主総会の日程から逆算した決算スケジュールが前提になります。
監査役を置いていれば会計監査人は不要ですか。
不要にはなりません。監査役等による監査と会計監査人による監査は目的も対象も異なり、会計監査人設置会社では計算書類およびその附属明細書について双方の監査を受けます(会社法 第436条第2項)。むしろ、会計監査人を置く場合は監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除き監査役を置かなければならないとされています(会社法 第327条第3項)。
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