組合費の使い道【記載例】収支計算書の内訳と決算書の読み方
目次
- 組合費の使い道が決算書のどこに表れるか
- 会計報告として法が求める範囲
- 使い道を判断する出発点
- 収支計算書の記載例と内訳の読み方
- 使い道の分母は支出合計ではなく支出小計
- 次年度繰越金は使い道ではない
- 特別会計繰入金支出は行き先が別にある
- 決算書で確かめる4つの数字
- 決算額は予算額と並べて読む
- 1人あたり月額への換算で内訳を伝える
- 内訳が読み取れないときの確認手順
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 組合費の使い道は決算書のどこを見れば分かりますか。
- 使い道の割合を出すとき分母は何にしますか。
- 組合費の1人あたり月額はどう計算しますか。
- 特別会計の分も組合員に報告する必要がありますか。
- 決算額が予算額と大きく違う費目はどう説明しますか。
組合員から「組合費は何に使われているのか」と聞かれたとき、答えの根拠になる書類は大会に諮る決算書です。ところが収支計算書を開いても、支出の部にどの数字が並び、どこまでが使い道でどこからが繰越なのかが分からないまま、説明だけが感覚的になってしまう場面は少なくありません。
結論から示すと、組合費の使い道は収支計算書の支出の部に費目別の金額として表れます。ただし支出の部には、実際に使った額のほかに、次年度へ持ち越した額や、特別会計へ移しただけで使途の中身が別の計算書にある額も並びます。この3つを切り分けないと、内訳の説明は合いません。
この記事では、単位労働組合の収支計算書の記載例をもとに、費目別の内訳の読み取り方、確かめるべき4つの数字、1人あたり月額への換算までを順に整理します。あわせて、会計報告として法が求める範囲を労働組合法の条文から確認します。
組合費の使い道が決算書のどこに表れるか
労働組合の決算書は、一会計年度の収入と支出を並べた収支計算書と、年度末の財産の状態を示す貸借対照表が中心です。組合費という財源がどこへ出ていったかを示すのは、このうち収支計算書の支出の部です。
会計報告として法が求める範囲
使い道の開示は、組合の任意ではなく規約の必要記載事項として定められています。すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表されることを規約に含めなければなりません(労働組合法 第5条第2項第7号)。あわせて、総会は少なくとも毎年1回開催することも規約の必要記載事項です(労働組合法 第5条第2項第6号)。
ここで求められているのは「財源」と「使途」の両方です。収入の部だけを示して支出の部の内訳を大科目1行で済ませると、使途を示したことにはなりません。これらの規定に適合することを労働委員会に証拠を提出して立証できなければ、労働組合法に規定する手続に参与する資格を有せず、同法に規定する救済も与えられません(労働組合法 第5条第1項)。使い道の説明は、資格審査に直結する要件でもあります。
使い道を判断する出発点
労働組合法上の労働組合は、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体をいいます(労働組合法 第2条)。支出が組合費の使い道として説明できるかどうかは、まずこの目的に向けられているかで判断します。
また、共済事業その他福利事業のみを目的とするものと、主として政治運動又は社会運動を目的とするものは、労働組合法上の労働組合から除かれます(労働組合法 第2条第3号、第2条第4号)。共済や政治活動に関する支出そのものが禁じられるわけではありませんが、決算書の支出の部でこれらの費目が中心を占める形になっていないかは、毎年確認しておく必要があります。
収支計算書の記載例と内訳の読み方
ここでは、組合員300人・月額組合費3,500円の単位労働組合を想定した記載例で読み方を示します。金額は説明のための当事務所の作例で、実在の組合の決算とは関係ありません(単位:円)。前年度繰越金2,400,000円と雑収入100,000円を含めた収入合計は15,100,000円です。
| 支出の部の科目 | 決算額 |
|---|---|
| 人件費 | 1,900,000 |
| 会議・行事費等活動費 | 6,100,000 |
| 団体費(上部団体分担金) | 1,600,000 |
| 共済関係費 | 600,000 |
| 特別会計繰入金支出(闘争積立金) | 800,000 |
| その他(事務局費・雑費) | 1,500,000 |
| 支出小計 | 12,500,000 |
| 次年度繰越金 | 2,600,000 |
| 支出合計 | 15,100,000 |
使い道の分母は支出合計ではなく支出小計
組合費の内訳を割合で示すとき、分母を支出合計15,100,000円にすると、使っていない繰越金まで使い道に混ざります。実務では、次年度繰越金を除いた支出小計12,500,000円を分母に置きます。この記載例では、会議・行事費等活動費が48.8%、人件費が15.2%、団体費が12.8%、その他が12.0%、特別会計繰入金支出が6.4%、共済関係費が4.8%という構成になります。
この割合は、公的統計と並べて初めて意味を持ちます。年度予算に占める平均支出費目別割合は、労働組合計で会議・行事費等活動費48.6%、人件費15.1%、団体費(上納金を含む)12.6%、積立金基金5.3%、共済関係費5.3%、その他13.1%です(厚生労働省 平成15年労働組合実態調査 付表8)。産業別・規模別の相場まで踏み込んだ比較は、次のコラムで扱っています。
関連コラム組合費の使途の内訳|支出費目別の構成比と産業別・規模別の相場データ▸
次年度繰越金は使い道ではない
次年度繰越金は支出の部の末尾に置かれますが、外部へ出ていった支出ではなく、収入合計から支出小計を差し引いた残額です。ここが厚いと「集めすぎではないか」という質問が必ず出るため、金額の意味を説明できるようにしておきます。翌年度の大会費用や周年行事のための一時的な積み上がりなのか、毎年同じ水準で滞留しているのかで、説明の組み立ては変わります。
あわせて確認したいのが、次年度繰越金と貸借対照表の正味財産の部に示される繰越金が一致しているかどうかです。ここがずれている決算書は、集計のどこかで漏れや二重計上が起きています。
特別会計繰入金支出は行き先が別にある
闘争積立金や共済のための特別会計へ資金を移した額は、一般会計の支出の部では特別会計繰入金支出として1行で表示されます。この1行は「使った」のではなく「移した」だけなので、実際の使途は特別会計側の計算書を見なければ分かりません。一般会計の決算書だけを大会に諮り、特別会計の動きを示していない例は実務でしばしば見かけますが、会計報告が「すべての財源及び使途」を対象とする以上、特別会計を含めて示す必要があります(労働組合法 第5条第2項第7号)。
なお、共済事業その他福利事業のために特設した基金を他の目的のために流用しようとするときは、総会の決議を経なければなりません(労働組合法 第9条)。積立金を取り崩して一般会計の不足を埋めた年度は、決議の有無まで含めて説明を用意しておきます。
関連コラム労働組合の特別会計と闘争積立金|繰入・取崩の仕訳▸
決算書で確かめる4つの数字
組合員への説明を組み立てるとき、収支計算書から先に押さえる数字は次の4つです。この順に読むと、使い道の説明が事実の裏づけを持ちます。
| 費目別の支出金額 | 組合費の使い道そのもの。支出小計を分母に割合を出すと、組合員に示しやすくなる |
|---|---|
| 次年度繰越金 | 使わずに残った額。水準の理由と、貸借対照表の繰越金との一致を確認する |
| 特別会計繰入金支出 | 組合内の別会計へ移した額。実際の使途は特別会計側の計算書で確認する |
| 団体費(上部団体分担金) | 組合の外へ出た額。上部団体の活動として何が戻ってきているかを添えて説明する |
決算額は予算額と並べて読む
決算額だけを見ても、その金額が想定どおりなのかは判断できません。実務では、大会で承認された予算額と決算額を費目ごとに並べ、差額の大きい費目についてだけ理由を用意します。差額が生じた費目を執行部が先に説明できていれば、大会の質疑はおおむね成立します。逆に、差額の説明がないまま承認を求めると、金額の多寡にかかわらず紛糾しやすくなります。
各費目にどの支出を入れるかの線引きは、組合ごとの会計規程で決まります。科目の立て方そのものに迷いがある場合は、次のコラムが参考になります。
関連コラム労働組合の勘定科目【一覧表】収支計算書・貸借対照表で使う科目と線引き▸
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1人あたり月額への換算で内訳を伝える
費目別の金額や割合は、組合員にとっては自分の負担との距離が遠く、実感が湧きにくい数字です。毎月引かれている組合費のうち何円がどこへ向かっているかに置き換えると、説明が一気に具体的になります。換算は次の式で行います。
先の記載例に当てはめると、会議・行事費等活動費の1人あたり月額は次のようになります。
同じ計算を続けると、人件費は528円、団体費は444円、特別会計繰入金支出は222円です。支出小計12,500,000円を同じ式で換算すると1人あたり月額3,472円となり、月額組合費3,500円のほぼ全額が年度内に使われていることが分かります。円未満は四捨五入しているため、費目別の合計と一致しないことがあります。
この形にしておくと、「月3,500円のうち約1,700円が職場集会や行事、約530円が書記の人件費、約440円が上部団体への分担金」という一文で内訳を説明できます。組合員数が年度中に増減している組合では、期首と期末の平均組合員数を使うか、期末人数で統一するかをあらかじめ決めておき、毎年同じ基準で計算してください。
内訳が読み取れないときの確認手順
過去の決算書を開いても内訳が追えない場合は、次の順に確認すると原因が絞り込めます。監査の現場で実際に詰まりやすい順に並べています。
- 支出の部の大科目が3つ程度しかないかを見る。「活動費」1行に大半が入っている場合は、中科目への分解が必要です。
- 次年度繰越金と、貸借対照表の正味財産の部の繰越金が一致しているかを突き合わせる。
- 特別会計がある場合に、会計区分ごとの計算書がそろっているかを確かめる。
- 収入と支出が相殺されて表示されていないかを見る。行事の参加費を行事費から差し引いて表示すると、財源も使途も実額が分からなくなります。
- 大科目の合計と、経費帳や現金出納帳の残高が一致するかを確認する。ここがずれると、内訳の説明そのものが崩れます。
これらは会計監査人による証明を受ける前提としても確認される点です。証明書を添えて公表する形が規約で定められている以上(労働組合法 第5条第2項第7号)、内訳が読み取れない決算書のままでは証明の手続も進みません。
まとめ
組合費の使い道は、収支計算書の支出の部に費目別の金額として表れます。説明の分母は支出合計ではなく、次年度繰越金を除いた支出小計です。特別会計繰入金支出は移しただけの額なので、実際の使途は特別会計側の計算書で確認します。この3つの切り分けができていれば、内訳の説明は事実と一致します。
組合員に伝えるときは、費目別の年間支出を組合員数と12か月で割り、1人あたり月額に換算すると納得を得やすくなります。会計報告はすべての財源及び使途を対象とし、会計監査人の証明書とともに少なくとも毎年1回公表することが規約の必要記載事項です(労働組合法 第5条第2項第7号)。自組合の決算書でどこまで示せているかの判断に迷われる場合は、公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
組合費の使い道は決算書のどこを見れば分かりますか。
収支計算書の支出の部です。人件費や会議・行事費等活動費、団体費といった費目ごとの金額が、その年度の使い道そのものになります。ただし次年度繰越金は使わずに残った額、特別会計繰入金支出は組合内の別会計へ移した額なので、この2つは実際の使い道から切り離して読みます。
使い道の割合を出すとき分母は何にしますか。
次年度繰越金を除いた支出小計です。支出合計を分母にすると、使っていない繰越金まで使い道に含まれ、費目別の割合が実態より低く出ます。前年度繰越金も収入の部に入るため、収入合計を分母にするのも適切ではありません。
組合費の1人あたり月額はどう計算しますか。
費目別の年間支出額を組合員数と12か月で割ります。たとえば会議・行事費等活動費が年間6,100,000円、組合員が300人であれば、1人あたり月額は1,694円です。組合員数が年度中に増減する場合は、平均人数か期末人数のどちらを使うかを決めて毎年同じ基準で計算します。
特別会計の分も組合員に報告する必要がありますか。
必要です。会計報告はすべての財源及び使途を示すものとされており、証明書とともに少なくとも毎年1回組合員に公表する旨を規約に定めなければなりません(労働組合法 第5条第2項第7号)。一般会計だけを大会に諮り、闘争積立金や共済の特別会計の動きを示していない場合は、この要件を満たしません。
決算額が予算額と大きく違う費目はどう説明しますか。
差額が大きい費目に絞って理由を用意します。実務では、予算額と決算額を費目ごとに並べ、差額の大きいものだけを執行部から先に説明します。基金を他の目的に流用した場合は、総会の決議を経ているかも確認が必要です(労働組合法 第9条)。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



