労働組合の勘定科目【一覧表】収支計算書・貸借対照表で使う科目と線引き
目次
- 労働組合の勘定科目の全体像
- 会計報告に求められる事項と科目設計の出発点
- 収支計算書の勘定科目一覧
- 収入の部の科目
- 支出の部の科目
- 貸借対照表の勘定科目一覧
- 資産の部の科目
- 負債・正味財産の部の科目
- 迷いやすい科目の振り分け
- 備品や会館を買ったとき
- 積立金支出と特別会計繰入金支出の使い分け
- 予備費を使ったとき
- 会社から受け取った金銭
- 未収・前受の切り分け
- 会計監査委員が科目の目で見るチェックポイント
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 労働組合が使う勘定科目は法律で決まっていますか。
- 組合費収入と会費収入はどう使い分けますか。
- 備品を買ったとき、支出と資産のどちらに計上しますか。
- 予備費は決算書にそのまま支出として残してよいですか。
- 会計報告には誰の証明が必要ですか。
労働組合の勘定科目の全体像
労働組合の勘定科目は、収支計算書で使う収入・支出の科目と、貸借対照表で使う資産・負債・正味財産の科目の2系統に分かれます。会社の決算書のように法律で科目表が決まっているわけではなく、各組合が規約や会計規程で定め、実務慣行に沿って設定します。したがって「この科目でなければならない」という正解はなく、組合員が財源と使途を読み取れるかどうかが科目設計の良し悪しを決めます。
とはいえ、まったくの自由でもありません。労働組合の会計報告には、すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名、現在の経理状況を示すことが求められています(労働組合法 第5条第2項第7号)。この3つを示せる科目がそろっているか、というのが出発点になります。
もうひとつ、会社の会計と決定的に違うのが収支計算書が「資金の増減」で作られる点です。損益計算書のように利益を計算するのではなく、その年度に入ってきたお金と出ていったお金を科目別に並べます。そのため、備品を買った支出も、借入金を返した支出も、経費と同じ支出の部に並びます。この前提を押さえておくと、以降の科目一覧が読み解きやすくなります。
会計報告に求められる事項と科目設計の出発点
労働組合法は、組合の規約に含めなければならない事項を定めています。そのなかの会計に関する規定が、すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告を、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表することです(労働組合法 第5条第2項第7号)。あわせて、総会を少なくとも毎年1回開催することも定められています(労働組合法 第5条第2項第6号)。
この条文を勘定科目の言葉に置き換えると、次の対応になります。「すべての財源」は収支計算書の収入の部、「すべての使途」は支出の部、「現在の経理状況」は貸借対照表です。主要な寄附者の氏名は科目そのものではなく、寄附金収入がある場合の注記で示します。
なお、これらの資格要件を備えているかどうかは、労働委員会の資格審査で判断されます。資格審査は、不当労働行為の救済申立てをするときや、法人登記のために資格証明書の交付を受けるときなどに、その都度受ける必要があります(労働組合法 第5条第1項、第11条第1項)。会計報告の作りは、この審査で見られる項目のひとつです。
収支計算書の勘定科目一覧
収支計算書は、収入の部と支出の部に分け、それぞれ大科目のなかに中科目を置く形が一般的です。ここでは、単組・企業内組合で使われることの多い科目を、その科目に何を入れるか(線引き)とあわせて整理します。組合の規模や活動内容に応じて、科目を足しても減らしても構いません。
収入の部の科目
| 組合費収入 | 組合員から徴収した組合費。会社のチェックオフで受け入れた分もここに入ります。単組の主たる財源です。 |
|---|---|
| 会費収入 (賦課金収入) |
上部団体が加盟組合から徴収する会費・賦課金。組合員から直接徴収しない産別組織や連合体で使います。 |
| 加入金収入 | 新しく組合に加入した組合員から、加入時に徴収する金銭。毎月の組合費とは区別します。 |
| 交付金収入 (還元金収入) |
上部団体から交付された活動資金や、専従者の人件費相当額として送金を受けた金額。 |
| 寄附金収入 | 他団体や個人から受けた寄附。計上した場合は、主要な寄附者の氏名を注記します。 |
| 雑収入 | 受取利息配当金など、上記のいずれにも当てはまらない収入。金額が大きいものは独立科目に切り出します。 |
| 資産売却収入 | 備品や投資有価証券などを売却して受け取った金額。売却損益ではなく、入金額そのものを計上します。 |
| 積立金取崩収入 | 特定の目的のために積み立てていた資金を、目的達成に伴って一般会計へ戻したときの収入。 |
| 特別会計 繰入金収入 |
特別会計から一般会計へ資金を繰り入れたときの収入。繰入れの決議を経ているかが前提になります。 |
| 借入金収入 | 金融機関などから借り入れた資金。返済義務のあるお金ですが、資金が増えるため収入の部に並びます。 |
| 前年度繰越金 | 前年度から繰り越した資金。当年度の予算財源になるため、収入の部の大科目として表示します。 |
支出の部の科目
支出の科目は、何に使ったか(費目別)ではなくどの活動に使ったか(目的別)でまとめるのが組合会計の特徴です。たとえば大会にかかった旅費・会場費・印刷費は、旅費交通費などに分けず、まとめて大会費とすることが多くあります。
| 人件費 | 専従役員・書記局職員の給料諸手当、賞与、労働保険料・社会保険料などの厚生費。 |
|---|---|
| 事務局費 | 旅費交通費、通信費、消耗品費、印刷費、図書費など、事務局を動かすための経常的な費用。 |
| 会議費 | 大会費、中央委員会・執行委員会などの諸会議費。大会に要した費用は一括して大会費とするのが通例です。 |
| 賃金補償費 (時限専従者賃金) |
組合員が就業時間中に組合活動へ従事し、会社から賃金を差し引かれた分を組合が負担した額。 |
| 教育宣伝費 (情宣費) |
機関紙の発行費・発送費、研修会の会場費や講師料、組合サイトの運営費など。 |
| 組織対策費 (組織部費) |
組織の拡大・結束のための費用。オルグ活動費、未組織労働者への働きかけの費用などが入ります。 |
| 事業費 | 文化部・青年部・女性部など、専門部の活動費。専門部ごとに中科目を立てると使途が見えやすくなります。 |
| 支部交付金 | 本部から支部・地方本部へ交付した活動資金。受け取った支部側は交付金収入で受け入れます。 |
| 上部団体会費 | 加盟する産別組織・連合体へ納入する会費。その他の諸会費とは区別して表示します。 |
| 固定資産 購入支出 |
建物、什器備品、車両などの取得に支出した金額。資産計上ではなく、まず支出として並びます。 |
| 借入金返済支出 | 借入金の元本返済額。利息部分は支払利息として別に計上します。 |
| 積立金支出 (特定預金支出) |
退職給与資金や会館建設資金など、特定の目的のために資金を留保したときの支出。 |
| 特別会計 繰入金支出 |
一般会計から特別会計へ資金を拠出したときの支出。 |
| 予備費 | 予算にない支出に備えて、どの科目にも帰属させずに置く予算科目。使い方は後述します。 |
| 次年度繰越金 | 翌年度へ繰り越す資金剰余額。支出の部の末尾に置き、収入合計と支出合計を一致させます。 |
科目を決めたら、実際に伝票を起こして帳簿に落とす作業が続きます。現金出納帳や元帳の付け方、帳簿の様式は別の記事で詳しく扱っています。
関連コラム労働組合の帳簿の付け方|現金出納帳・元帳の記帳ルールとひな形▸
貸借対照表の勘定科目一覧
貸借対照表は、年度末時点で組合が持っている財産と負っている債務、その差額である正味財産を示します。労働組合法がいう「現在の経理状況」に対応する書類です(労働組合法 第5条第2項第7号)。資産の部・負債の部・正味財産の部の3区分で並べます。
資産の部の科目
| 現金・預金 | 手元現金、当座預金、普通預金、定期預金など。組合口座は名義と通帳の管理者を明確にしておきます。 |
|---|---|
| 未収組合費 ・未収会費 |
年度末までに徴収すべきだったのに入金がない組合費・会費。回収可能性の検討とセットで計上します。 |
| 前払金 | 翌年度の費用を先に支払った分。大会会場の手付金などが典型です。 |
| 有価証券 | 市場性があり、一時的に所有している株式・債券。長期保有目的のものは投資有価証券で区別します。 |
| 有形固定資産 | 土地、建物、構築物、車両・運搬具、什器備品など。組合会館を持つ組合ではこの区分が大きくなります。 |
| 電話加入権 ・敷金・保証金 |
事務所の賃借に伴って差し入れた敷金・保証金など、形のない資産や長期の預け金。 |
| 投資有価証券 ・出資金 |
長期保有目的の株式・債券や、労働金庫などへの出資金。 |
| 積立預金 | 退職給与資金や固定資産購入資金など、特定の目的のために別口座で留保した預金。 |
負債・正味財産の部の科目
| 未払金 | 年度内に費用が発生したのに、支払いが翌年度になるもの。年度末の請求書の整理が計上の鍵です。 |
|---|---|
| 前受組合費 | 翌年度分として先に受け取った組合費。当年度の収入に含めないよう切り分けます。 |
| 預り金 | 専従者の給与から天引きした源泉所得税や社会保険料など、後日納付するために一時的に預かった金額。 |
| 短期借入金 ・長期借入金 |
返済期限が1年以内か1年超かで区分します。 |
| 退職給与引当金 | 専従役員・書記局職員の退職金のうち、期末までに発生していると見込まれる額。 |
| 固定資産等 見返正味財産 |
固定資産や退職給与引当金など、資金の増減を伴わない項目を貸借対照表に載せるための見返科目。 |
| 積立金 | 退職給与資金積立金、会館建設積立金など、特定の目的のために留保した正味財産。 |
| 次年度繰越金 | 収支計算書の次年度繰越金と一致する資金剰余額。両者が一致しない場合は必ず原因を追います。 |
貸借対照表と収支計算書を実際に組み上げる手順や、表計算ソフトでの入力の仕方は、別の記事で扱っています。
関連コラム労働組合の決算書エクセルひな形|収支計算書・貸借対照表の入力手順▸
迷いやすい科目の振り分け
ここからは、会計担当を交代したときに必ずと言ってよいほど質問が出る論点を、科目の選び方という切り口で整理します。いずれも「どちらでもよい」ではなく、組合会計の考え方から答えが決まります。
備品や会館を買ったとき
収支計算書では固定資産購入支出として支出の部に計上し、同時に貸借対照表へ資産として載せます。ここで両者をつなぐのが固定資産等見返正味財産です。支出の部に出しただけでは貸借対照表に資産が残らず、資産だけ載せると収支が合わなくなるため、見返科目を挟んで両方を成立させます。減価償却を行う場合も、費用科目は使わず、資産と見返正味財産を同額ずつ減らす処理になります。
積立金支出と特別会計繰入金支出の使い分け
どちらも「使い道を決めて資金を取り分ける」点は同じですが、一般会計の中で目的別に留保するなら積立金支出、会計そのものを分けて独立の収支計算書を作るなら特別会計繰入金支出です。退職給与資金や会館建設資金のように、独立の収支報告までは要らないものは積立金で足りることが多く、闘争資金や共済事業のように独自に資金を徴収するものは特別会計が向いています。なお、共済事業その他福利事業のために特設した基金を他の目的に流用するには、総会の決議が必要です(労働組合法 第9条)。
関連コラム労働組合の特別会計と闘争積立金|繰入・取崩の仕訳▸
予備費を使ったとき
予備費は本来、予算に計上しておく科目であって、決算で支出額が並ぶことを予定した科目ではありません。予備費を使うことになったら、承認を受けた金額を実際に使う支出科目の予算へ振り替え、支出はその科目で処理するのが原則です。予備費支出という科目のまま決算に残すと、何に使ったのかが組合員に見えなくなります。いずれの方法による場合も、承認した機関と日付、振り替えた科目と金額を注記で示します。
会社から受け取った金銭
組合の自主性に関わるため、科目の当てはめの前に受け取ってよいお金かどうかの確認が要ります。労働組合法は、団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるものを労働組合の要件から除いており(労働組合法 第2条第2号)、使用者が運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えることを不当労働行為としています(労働組合法 第7条第3号)。ただし、労働時間中に賃金を失うことなく使用者と協議・交渉することを許すこと、福利その他の基金への使用者の寄附、最小限の広さの事務所の供与は、そこから除かれています。
実務では、就業時間中の組合活動について会社から賃金を差し引かれた分を組合が負担する取扱いが多く、その場合は組合側の支出として賃金補償費(時限専従者賃金)に計上します。収入側で会社からの入金を安易に雑収入に入れてしまうと、後から性格の説明がつかなくなるため、入金の根拠を確認してから科目を決めてください。
未収・前受の切り分け
組合費が年度をまたいで入金された、翌年度分を先に受け取った、というときは、未収組合費・前受組合費で年度を切り分けます。ここで注意したいのが、収支計算書に載せる「収入」の範囲をどこまでにするかを、組合として決めておく必要がある点です。現金預金の動きだけを収支とする組合もあれば、短期の債権債務や前受組合費までを含める組合もあります。どちらを採るかで未収・前受の扱いが変わるため、会計規程に明記し、注記で示しておきます。
会計監査委員が科目の目で見るチェックポイント
会計報告には、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による証明書を添えることとされています(労働組合法 第5条第2項第7号)。あわせて、多くの組合が規約や会計規程で内部の会計監査委員を置き、期中と期末に点検を行っています。実務で指摘が集中するのは、計算そのものよりも科目の当てはめです。会計担当者が自己点検するときにも、そのまま使える観点を挙げます。
- 雑収入・雑費の金額が大きくなっていないか。中身が説明できないなら独立科目を立てる。
- 寄附金収入があるのに、主要な寄附者の氏名の注記が漏れていないか。
- 収支計算書の次年度繰越金と、貸借対照表の次年度繰越金が一致しているか。
- 予備費が決算の支出科目として残っていないか。残す場合、承認の事実が注記されているか。
- 積立金の増減と、対応する積立預金の残高が連動しているか。取り分けたつもりで預金が動いていないことがある。
- 固定資産を購入したのに、貸借対照表に資産と見返正味財産が載っていないか。
- 支部へ渡した交付金の金額と、支部側が受け入れた交付金収入の金額が一致しているか。
- 組合名義でない口座、通帳と印鑑を同じ人が持っている口座が残っていないか。
資格審査の場面では、規約に必要な事項が書かれているか、会計報告が毎年公表されているかが問われます。科目が組合ごとに違うこと自体は問題になりませんが、規約や会計規程に定めた科目と、実際の決算書の科目がずれている状態は説明に窮します。科目を変えたときは、規程側も同時に直しておくことをおすすめします。
関連コラム労働組合の資格審査申請チェックリスト|規約要件と提出書類▸
まとめ
労働組合の勘定科目には法定の一覧表がなく、規約と会計規程、そして実務慣行で決まります。よりどころになるのは、すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名、現在の経理状況を示すという会計報告の要請です(労働組合法 第5条第2項第7号)。収入の部で財源を、支出の部で使途を、貸借対照表で経理状況を、組合員が読んで分かる粒度で示せているかを基準に科目を組み立ててください。
迷いやすいのは、固定資産の購入と見返正味財産、積立金と特別会計の使い分け、予備費の処理、未収・前受の切り分けの4つです。ここを規程で明文化しておくと、担当者が交代しても決算書の形が崩れません。具体的なケースの判断に迷われる場合は、公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
労働組合が使う勘定科目は法律で決まっていますか。
決まっていません。労働組合法には勘定科目の一覧を定めた規定はなく、各組合が規約や会計規程で科目を定めます。ただし、すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名、現在の経理状況を示す会計報告を毎年1回以上公表することが求められているため、この3つを示せる科目構成にしておく必要があります(労働組合法 第5条第2項第7号)。
組合費収入と会費収入はどう使い分けますか。
組合員から直接徴収するものが組合費収入、加盟する下部組織から徴収するものが会費収入(賦課金収入)です。単組では組合費収入が主たる財源になり、産別組織や連合体では会費収入が中心になります。同じ組合で両方が発生することもあるため、規程で定義を書き分けておくと混同を防げます。
備品を買ったとき、支出と資産のどちらに計上しますか。
両方に計上します。収支計算書では固定資産購入支出として支出の部に計上し、同時に貸借対照表へ資産として載せ、相手科目に固定資産等見返正味財産を使います。組合の収支計算書は資金の増減を示すものなので、支出への計上だけでは貸借対照表に財産が残らないためです。
予備費は決算書にそのまま支出として残してよいですか。
原則として残しません。承認を受けた金額を、実際に使う支出科目の予算へ振り替え、支出はその科目で処理します。予備費のまま決算に残すと、何に使ったのかが組合員に伝わらないためです。いずれの方法による場合も、承認した機関と日付、振替の内訳を注記で示します。
会計報告には誰の証明が必要ですか。
会計報告は、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表することとされています(労働組合法 第5条第2項第7号)。この要件を備えているかどうかは、労働委員会の資格審査で確認されます。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



