労働組合の資格審査申請チェックリスト|規約要件と提出書類
目次
- 資格審査が必要になる場面
- 審査される2つの要件
- 自主性の要件(労働組合法 第2条)
- 規約の必要記載事項(労働組合法 第5条第2項)
- 会計報告と会計監査人の証明(第7号)の準備
- 申請書と立証資料の揃え方
- 申請から資格証明書の交付までの流れ
- 要件補正の勧告
- 資格審査の決定と資格証明書
- 不適合の決定を受けた場合の再審査
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 労働組合を設立したら、どこかへ届け出る必要がありますか
- 一度資格審査で適格決定を受ければ、次からは不要ですか
- 規約に不備があると指摘された場合、すぐに不適合となりますか
- 資格審査の決定に不服がある場合はどうすればよいですか
- 法人登記のためには何が必要ですか
労働組合が労働委員会へ資格審査を申請するとき、最初につまずきやすいのが「規約が労働組合法の要件を満たしているか」という点です。資格審査は、労働組合が自主的な団体であること(労働組合法 第2条)と、規約に法定の9項目が定められていること(労働組合法 第5条第2項)を、労働組合の側が証拠を提出して立証する手続です(労働組合法 第5条第1項)。
この記事では、申請の前に自組合で確認しておくべき規約要件を条文の号ごとにチェックリスト化し、申請書に添える立証資料の考え方、申請から資格証明書の交付・再審査までの流れを整理します。会計報告と会計監査人の証明(同項第7号)は準備に時間がかかるため、逆算して着手できるよう手続の順序も示します。
資格審査が必要になる場面
日本では労働組合を自由に設立でき、行政官庁への届出や認証は必要ありません。ただし、労働組合法に定める手続に参与し、または救済を受けるためには、労働組合法第2条および第5条第2項の資格要件を備えていることを労働委員会に立証しなければなりません(労働組合法 第5条第1項)。
労働委員会規則では、資格審査を行う場合が次のように定められています(労働委員会規則 第22条)。
- 労働組合法に定める手続に参与し、または救済を求めようとする場合(第1号)。不当労働行為の救済申立てや労働協約の地域的拡張適用の申立てがこれにあたります
- 法人登記のための資格証明書の交付を求めようとする場合(第2号)
- 労働者を代表する地方調整委員の候補者を推薦するための資格証明書の交付を求めようとする場合(第3号)
- 総会において特に必要があると認める場合(第4号)
労働委員会の労働者委員の候補者を推薦する場合にも、労働組合法第2条および第5条第2項に適合する旨の労働委員会の証明書を添えることが求められます(労働組合法施行令 第20条第3項、第21条第3項)。実務で見落としやすいのは、過去に適格決定を受けた労働組合であっても、これらの場面ごとに改めて資格審査を受ける必要があるという点です。前回の決定書があるから不要、という運用はできません。
関連コラム労働組合の設立手続き|結成から資格審査・法人登記までの流れ▸
審査される2つの要件
資格審査で見られるのは、自主性の要件(労働組合法 第2条)と、規約の必要記載事項(同法 第5条第2項)の2つです。中央労働委員会も、労働組合が自主的な組合であるか、民主的な組合としての規約を備えているかなどの要件について審査すると説明しています。規約の条文が整っていても、運用が自主性の要件に反していれば適格と判断されません。
自主性の要件(労働組合法 第2条)
労働組合法上の労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体またはその連合団体をいい、次のいずれかに該当するものは除かれます(労働組合法 第2条各号)。
| 自主性を欠くとされる類型 | 申請前に確認する点 |
|---|---|
| 使用者の利益を代表する者の参加を許すもの(第1号) | 役員、雇入解雇昇進・異動に直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針に関する機密の事項に接する監督的地位にある労働者が組合員に含まれていないか |
| 団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの(第2号) | 組合活動費を会社が負担していないか。労働時間中の協議・交渉の許容、福利厚生の基金への寄附、最小限の広さの事務所の供与は除かれる |
| 共済事業その他福利事業のみを目的とするもの(第3号) | 規約上の目的が共済・福利事業に限定されていないか |
| 主として政治運動または社会運動を目的とするもの(第4号) | 主たる目的が労働条件の維持改善その他経済的地位の向上であると規約から読み取れるか |
実務で指摘を受けやすいのは第1号と第2号です。管理職一歩手前の職位まで組合員範囲に含めている規約や、組合事務の人件費・通信費を会社の経費で処理している運用は、申請前に整理しておく必要があります。
規約の必要記載事項(労働組合法 第5条第2項)
労働組合の規約には、次の9項目に掲げる規定を含まなければなりません(労働組合法 第5条第2項第1号から第9号)。条文の文言と規約の条文を1号ずつ突き合わせるのが、申請前の最も確実な確認方法です。
| 規約に含めるべき規定 | 条文を読むときの着眼点 |
|---|---|
| 名称(第1号) | 規約上の名称と、申請書・会計報告・議事録の名称表記が一致しているか |
| 主たる事務所の所在地(第2号) | 法人登記を予定する場合、登記する主たる事務所と一致しているか |
| 組合員の参与権と均等取扱(第3号) | 単位労働組合の組合員が、その労働組合のすべての問題に参与する権利および均等の取扱を受ける権利を有する旨が定められているか |
| 組合員資格の差別禁止(第4号) | 何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地または身分によって組合員たる資格を奪われない旨が定められているか |
| 役員の直接無記名投票による選挙(第5号) | 単位労働組合は組合員の直接無記名投票、連合団体または全国的規模の労働組合は単位労働組合の組合員もしくは直接無記名投票で選挙された代議員の直接無記名投票によることが明記されているか |
| 総会の年1回以上の開催(第6号) | 総会を少なくとも毎年1回開催する旨が定められているか |
| 会計報告の公表と会計監査人の証明(第7号) | すべての財源および使途、主要な寄附者の氏名、現在の経理状況を示す会計報告を、職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表する旨が定められているか |
| 同盟罷業の開始手続(第8号) | 組合員または直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ開始しない旨が定められているか |
| 規約改正の手続(第9号) | 単位労働組合は組合員の直接無記名投票による過半数の支持、連合団体または全国的規模の労働組合は組合員もしくは代議員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しない旨が定められているか |
不備が出やすいのは第5号・第8号・第9号です。「総会の議決による」とだけ書いて直接無記名投票の文言が抜けている規約、代議員制を採っているのに代議員の選出方法を直接無記名投票としていない規約は、条文の要件を満たしません。第7号についても、会計報告の公表は定めているが会計監査人の証明書に触れていない規約が散見されます。
関連コラム労働組合規約の作り方|法定記載事項と会計・監査条項の条文例▸
会計報告と会計監査人の証明(第7号)の準備
9項目のなかで、申請直前に着手して間に合わないことが最も多いのが第7号です。この規定は、会計報告の内容として「すべての財源および使途」「主要な寄附者の氏名」「現在の経理状況」を示すことを求め、さらに職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書を添えて、少なくとも毎年1回組合員に公表することを求めています(労働組合法 第5条第2項第7号)。
実務上は、次の順序で逆算して準備します。決算を締めてから証明書を受け取り、総会で公表するまでには相応の期間が必要になるため、申請時期が決まっている場合は早めに会計監査人へ相談しておくと安全です。
- 規約に第7号の文言(会計報告の3要素と会計監査人の証明書、年1回以上の公表)が入っているかを確認する
- 会計年度の収支計算書・貸借対照表を整え、財源と使途、主要な寄附者、現在の経理状況が読み取れる形にする
- 職業的に資格がある会計監査人に会計報告の正確性について証明を受ける
- 総会等で組合員に公表し、その事実が分かる議事録・配付資料を残す
「職業的に資格がある会計監査人」の解釈は、組合内部の会計監査人で足りるのか、公認会計士等の外部専門家が必要なのかという形で問題になります。
関連コラム「職業的に資格がある会計監査人」とは|労働組合法第5条の要件▸
関連コラム労働組合法の監査規定|第5条第2項第7号の要件と改正の経緯▸
労働組合の会計監査は公認会計士へ
全国対応・オンライン完結|公認会計士事務所プライムパートナーズ
無料見積り・ご相談はこちら
申請書と立証資料の揃え方
労働組合が資格審査を受けるには、資格審査申請書と立証資料を、その手続について管轄権を有する労働委員会に提出します。管轄は手続ごとに異なるため、不当労働行為の救済申立てに伴うものか、法人登記のための資格証明書の交付を求めるものかで提出先を確認してください。
立証資料の範囲は、労働組合法第2条および第5条第2項への適合を証拠によって示すという第5条第1項の枠組みから決まります。申請を受けた労働委員会は、労働組合が提出する証拠のほか、事実の調査および必要と認める証拠調べをすることができます(労働委員会規則 第23条第4項)。つまり提出した書類だけで審査が完結するとは限らず、追加の説明を求められる前提で準備するのが実務です。
要件ごとに、どの資料で何を示すかを対応づけておくと、追加照会にも短時間で答えられます。
| 立証したい要件 | 手元で揃えておく資料の例 |
|---|---|
| 規約が第5条第2項の9項目を満たすこと | 現行規約の全文。改正している場合は、改正を決議した総会の議事録と投票結果 |
| 労働者が主体となり自主的に運営されていること(第2条) | 組合員の範囲が分かる資料、組合員数、組合費の収納実績、事務所・経費の負担関係が分かる資料 |
| 役員が直接無記名投票により選挙されたこと(第5条第2項第5号) | 役員選挙の公示、投票・開票の記録、当選者を確認した議事録、現在の役員名簿 |
| 総会が年1回以上開催されていること(第6号) | 直近の総会の招集通知、議案書、議事録 |
| 会計報告が公表されていること(第7号) | 会計報告(収支計算書・貸借対照表等)、会計監査人による証明書、公表を行った総会の議事録 |
結成直後で1度も総会を開いていない、直近年度の会計報告がまだ公表されていないという状態では、第6号・第7号の適合を示せません。設立から資格審査までの日程は、総会と会計報告の公表を1サイクル終えられるかを基準に組み立てるのが現実的です。
申請から資格証明書の交付までの流れ
資格審査は、労働委員会の会長(部会で行うときは部会長)が指揮して行います(労働委員会規則 第23条第1項)。会長は、公益委員会議による審査に代えて、公益委員のうちから1人または数人の委員を選んで審査を担当させ、職員を指名して事務の処理を担当させることができます(同条第2項)。
要件補正の勧告
審査の過程で労働組合が労働組合法の規定に適合しないと考えられるときは、労働委員会は公益委員会議の決定により、相当の期間を定めて要件の補正を勧告することができます(労働委員会規則 第24条)。勧告を受けたら、規約改正の決議など必要な手続を期間内に済ませることになります。
ここで効いてくるのが第9号の規約改正手続です。規約の改正には組合員の直接無記名投票による過半数の支持が必要であり(労働組合法 第5条第2項第9号)、臨時の総会招集や投票の実施に日数がかかります。補正勧告を受けてから動くと、定められた期間に収まらないおそれがあるため、申請前の自己点検が実質的な勝負どころになります。
資格審査の決定と資格証明書
労働組合が労働組合法の規定に適合するかどうかについて公益委員会議が決定したときは、労働委員会は資格審査決定書を作成し、適合し、または適合しない旨およびその理由、決定の日付、委員会名を記載します(労働委員会規則 第25条第1項)。決定書の写しは労働組合に交付されますが、資格証明書の交付をもってこれに代えることができます(同条第2項)。
法人登記のために交付される資格証明書には、労働組合法の規定に適合する旨、労働組合名、主たる事務所の所在地、決定の日付、資格証明書交付の日付が記載されます(労働委員会規則 第26条第1項)。この証明を受けた労働組合は、主たる事務所の所在地において登記することによって法人となります(労働組合法 第11条第1項)。
関連コラム労働組合の法人登記の手順|資格審査と登記事項・必要書類▸
不適合の決定を受けた場合の再審査
適合しない旨の資格審査決定書の写しを交付するときは、労働委員会は再審査の申立てができることを教示しなければなりません(労働委員会規則 第25条第3項)。都道府県労働委員会の決定に不服がある労働組合は、資格審査決定書の写しが交付された日から15日以内に、初審の都道府県労働委員会を経由し、または直接中央労働委員会に、書面により再審査を申し立てることができます(労働委員会規則 第27条第1項)。申立てには、都道府県労働委員会の資格審査決定書の写し、不服の要点およびその理由を添えます(同条第2項)。
15日という期間は短く、天災その他やむを得ない理由がある場合を除いて延びません。不適合の理由が規約の文言にある場合は、再審査を申し立てるのか、規約を改正して申請し直すのかを早い段階で判断する必要があります。
まとめ
資格審査の申請でつまずく箇所は、ほぼ規約の第5条第2項第5号・第7号・第8号・第9号と、第2条の自主性に集中します。申請の前に、規約の条文を1号ずつ条文と突き合わせ、総会・役員選挙・会計報告の公表という3つの実績を示す資料が揃っているかを確認してください。
とくに会計報告と会計監査人の証明(第7号)は、決算から証明、総会での公表までに時間がかかります。法人登記や救済申立ての予定が決まっている場合は、そこから逆算して会計監査の日程を先に押さえておくと、補正勧告による手戻りを避けられます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
労働組合監査の無料見積り・ご相談はこちら参考文献
よくある質問
労働組合を設立したら、どこかへ届け出る必要がありますか
日本では労働組合を自由に設立でき、設立自体について行政官庁への届出は必要ありません。ただし、労働組合法に定める手続に参与し、または救済を受けるためには、労働組合法第2条および第5条第2項の資格要件に適合することを労働委員会に立証する必要があります(労働組合法 第5条第1項)。なお、労働組合の認証制度はありません。
一度資格審査で適格決定を受ければ、次からは不要ですか
不要にはなりません。労働委員会規則第22条各号に掲げる場面ごとに資格審査が行われるため、過去に適格決定を受けた労働組合であっても、その都度資格審査を受ける必要があります。
規約に不備があると指摘された場合、すぐに不適合となりますか
労働委員会は、労働組合が労働組合法の規定に適合しないと考えられるときは、公益委員会議の決定により、相当の期間を定めて要件の補正を勧告することができます(労働委員会規則 第24条)。ただし規約の改正には組合員の直接無記名投票による過半数の支持が必要で(労働組合法 第5条第2項第9号)、臨時総会や投票に日数を要するため、申請前の点検で不備を解消しておくことが重要です。
資格審査の決定に不服がある場合はどうすればよいですか
都道府県労働委員会の資格審査の決定に不服がある労働組合は、資格審査決定書の写しが交付された日から15日以内に、初審の都道府県労働委員会を経由し、または直接中央労働委員会に、書面により再審査を申し立てることができます(労働委員会規則 第27条第1項)。申立てには決定書の写し、不服の要点およびその理由を添えます(同条第2項)。
法人登記のためには何が必要ですか
労働組合法の規定に適合する旨の労働委員会の証明を受けた労働組合は、主たる事務所の所在地において登記することによって法人となります(労働組合法 第11条第1項)。資格証明書には、適合する旨、労働組合名、主たる事務所の所在地、決定の日付、資格証明書交付の日付が記載されます(労働委員会規則 第26条第1項)。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



