労働組合の会計監査 費用が変わる要因【一覧表】資格審査で必要な範囲
目次
- 労働組合の会計監査の費用に相場表が無い理由
- 資格審査で必要になる監査の範囲
- 労働組合法が規約に求めていること
- 証明できるのは公認会計士または監査法人
- 資格審査が必要になる場面
- 費用が変わる要因
- 範囲を決めるときに迷いやすい3つの論点
- 特別会計をどこまで含めるか
- 支部会計をどう扱うか
- 過年度をどこまでさかのぼるか
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 組合員数が分かれば費用の目安を教えてもらえますか
- 資格審査のために毎年外部監査を受ける必要がありますか
- 一般会計だけを対象にして費用を抑えられますか
- 組合内部の会計監査委員の監査では足りませんか
- 法人登記を予定しています。監査はいつまでに終えればよいですか
労働組合の会計監査の費用を調べても、はっきりした金額が出てこない——そう感じた組合役員の方は多いはずです。実際、労働組合の会計監査には、公的機関が公表している報酬の相場表がありません。金額が示されないのは、費用のもとになる監査の範囲が組合ごとに大きく違うからです。
そこで本記事では、金額を並べる代わりに、資格審査で実際に必要になる監査の範囲を労働組合法の条文から整理し、その範囲を広げたり狭めたりする要因を一覧表にまとめます。「どこまで頼めば足りるのか」が決まれば、見積りの読み方も、組合内で説明すべき論点も自然に定まります。
労働組合の会計監査の費用に相場表が無い理由
労働組合は自由に設立でき、設立にあたってどこかへ届け出る必要もありません。一方で、労働組合法が定める手続に参与したり、同法による救済を受けたりするには、同法第2条および第5条第2項の資格要件を備えている必要があります(労働組合法 第5条第1項)。この資格の有無を審査する手続が資格審査です。
会計監査は、この資格要件のうち規約の記載事項として登場します。つまり監査は「組合の規模に応じて一律に課される義務」ではなく、規約に定めた会計報告の仕組みを実際に動かすための手続として位置づけられています。ここに、費用が一律に決まらない理由があります。
実務では、同じ「労働組合の会計監査」という言葉でも、一般会計だけを対象にする組合もあれば、複数の特別会計と支部会計まで含める組合もあります。会計帳簿が整っている組合と、現金出納帳から積み上げ直す必要がある組合でも、監査人が費やす手続の量はまったく違います。金額の目安を先に決められないのは、この差が費用に直結するためです。
資格審査で必要になる監査の範囲
労働組合法が規約に求めていること
労働組合の規約には、すべての財源および使途、主要な寄附者の氏名、現在の経理状況を示す会計報告を、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表する旨の規定を含めなければなりません(労働組合法 第5条第2項第7号)。
この条文の読み方で押さえておきたいのは、次の3点です。第一に、証明の対象は組合の活動全般ではなく会計報告だという点。第二に、監査人を委嘱するのは執行部ではなく組合員だという点。第三に、公表の頻度は少なくとも毎年1回であり、四半期ごとの外部監査までは求められていない点です。依頼範囲を考えるときの出発点は、この条文が求める最小限の輪郭にあります。
証明できるのは公認会計士または監査法人
条文にある「職業的に資格がある会計監査人」は、実務上は公認会計士または監査法人を指すものとして運用されています。他人の求めに応じ報酬を得て財務書類の監査または証明をすることは公認会計士の業務とされ(公認会計士法 第2条第1項)、公認会計士または監査法人でない者は、法律に定めのある場合を除きこの業務を営むことができません(公認会計士法 第47条の2)。
したがって、組合内部の会計監査委員がどれほど丁寧に帳簿を確認しても、それは第5条第2項第7号の証明書には代わりません。内部監査と外部監査は目的も担い手も別の手続であり、両方を動かす前提で年間スケジュールを組むのが実務的です。
関連コラム労働組合の会計監査で組合員が担う範囲|内部監査と外部監査の違い▸
資格審査が必要になる場面
資格審査は一度受ければ終わりではなく、過去に適格決定を受けた組合であっても、次の手続を行うたびにその都度受ける必要があります。申請にあたっては、資格審査申請書と立証資料を、その手続について管轄権を持つ労働委員会へ提出します。
| 不当労働行為の 救済申立て |
使用者の不当労働行為について労働委員会へ救済を申し立てる場合 |
|---|---|
| 労働者委員候補者 の推薦 |
労働委員会の労働者委員の候補者を推薦する場合 |
| 法人登記のための 資格証明書の交付 |
法人格を取得するため、登記に必要な資格証明書の交付を受ける場合 |
| 労働協約の 地域的拡張適用 |
労働協約の地域的な拡張適用を申し立てる場合 |
| 無料の労働者供給 事業の許可申請 |
職業安定法に基づく無料の労働者供給事業の許可を申請する場合など |
労働委員会は公益委員会議において、自主的な組合であるか、民主的な組合としての規約を備えているかなどを審査し、要件に適合すると判断した場合に、資格決定書の写しまたは資格証明書を交付します。なお、労働委員会が労働組合を「認証」する制度はありません。「認証を受けている」という説明を組合内で見かけた場合は、資格審査の適格決定と取り違えていないか確認しておくと安全です。
このうち法人格の取得については、労働組合法の規定に適合する旨の労働委員会の証明を受けた組合が、主たる事務所の所在地において登記することによって法人となります(労働組合法 第11条第1項)。監査をいつまでに終えるかは、この登記のスケジュールから逆算するのが実務的です。
関連コラム労働組合の資格審査とは|必要な場面・手続きの流れと会計監査の要件▸
労働組合の会計監査は公認会計士へ
全国対応・オンライン完結|公認会計士事務所プライムパートナーズ
無料見積り・ご相談はこちら
費用が変わる要因
ここからは、当事務所が労働組合の会計監査に関するご相談を受けるなかで、見積りの幅を生んでいると感じる要因を整理します。金額そのものではなく、何が増えると手続が増えるのかという形で押さえておくと、複数の見積りを比べるときに役立ちます。
| 組織の形態 | 単位労働組合か連合団体かで、確認する会計単位の数と上部団体との資金のやりとりの量が変わります |
|---|---|
| 会計単位の数 (本部と支部) |
支部会計を独立の会計単位として持つ組合では、合算の方法と支部ごとの残高確認が加わります |
| 特別会計の数 と規模 |
闘争資金や共済資金などの特別会計は、一般会計とは別に繰入・取崩の根拠を確かめる対象になります |
| 帳簿と証憑の 整備状況 |
会計帳簿・伝票・証憑がそろっているかで、突合にかかる時間が大きく変わります |
| 組合財産の 運用形態 |
積立預金や特定目的の預金が多いほど、実在性を確かめる残高確認の件数が増えます |
| 内部監査の 機能の有無 |
内部の会計監査が実際に動き、報告書まで残っている組合では、監査人が依拠できる範囲が広がります |
| 対象年度の数 (初年度か継続か) |
初めて外部監査を入れる年度は、期首残高の確かめが加わるため手続が厚くなります |
この表を見ると、費用は「組合員数」だけで決まるわけではないことが分かります。組合員数が多い組合ほど組合費収入も会計単位も増えやすいのは事実ですが、同じ組合員数でも、特別会計が1つの組合と5つの組合では手続の量が違います。見積りを依頼するときは、人数だけでなく会計の構造を先に伝えたほうが、実態に近い金額が返ってきます。
関連コラム労働組合の会計監査の報酬相場|費用の決まり方と抑えるポイント▸
範囲を決めるときに迷いやすい3つの論点
特別会計をどこまで含めるか
労働組合法第5条第2項第7号が求める会計報告は、すべての財源および使途を示すものです。一般会計だけを外部監査の対象とし、闘争積立金などの特別会計を外したまま証明書を受け取ると、公表される会計報告と証明書の対象範囲がずれてしまいます。規約で組合の会計として位置づけている資金は、原則として範囲に含めて考えるのが整理しやすい出発点です。
関連コラム労働組合の特別会計と闘争積立金|繰入・取崩の仕訳▸
支部会計をどう扱うか
支部が独立した会計単位になっている組合では、支部の数と規模によって範囲の考え方が変わります。支部を本部会計に合算して1つの会計報告にしている場合は、合算後の会計報告が証明の対象になります。一方で、支部が独自に大会で決算を承認している場合は、本部の会計報告がどこまでを含むのかを規約と会計規程で確認したうえで、監査人と範囲をすり合わせる必要があります。
過年度をどこまでさかのぼるか
法人登記や救済申立てを控えて初めて外部監査を導入する組合では、直前の1年度だけを対象にするのか、数年度分をまとめて見てもらうのかで見積りが変わります。労働組合法が求めているのは、少なくとも毎年1回の会計報告と証明書の公表です(労働組合法 第5条第2項第7号)。過去にさかのぼって証明を求めるかどうかは法令上の要請というより、組合内でどこまでの説明責任を果たしたいかという判断になります。ここを決めずに見積りを取ると、事務所ごとに前提が違う金額が並び、比較ができなくなります。
会計監査の範囲や資格審査への当てはめは、規約の書きぶりや会計の構造によって結論が変わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
まとめ
労働組合の会計監査の費用には、公表された相場表がありません。金額を先に探すより、労働組合法第5条第2項第7号が求める会計報告の範囲を確定させ、そこに自組合の特別会計・支部会計・対象年度をどう重ねるかを決めるほうが、結果として比較できる見積りにたどり着けます。
資格審査は、不当労働行為の救済申立てや法人登記など、必要になる場面ごとにその都度受ける手続です。登記や申立ての時期から逆算し、会計報告と証明書がそろう日程を組んでおくことが、費用と手間の両方を抑える近道になります。
参考文献
よくある質問
組合員数が分かれば費用の目安を教えてもらえますか
組合員数だけでは目安を示せません。費用は監査の範囲で決まり、範囲は特別会計の数、支部会計の有無、帳簿の整備状況、対象年度の数によって変わります。人数と併せてこれらの情報を伝えると、実態に近い見積りが得られます。
資格審査のために毎年外部監査を受ける必要がありますか
労働組合法は、会計報告を会計監査人の証明書とともに少なくとも毎年1回組合員に公表する旨を規約に含めることを求めています(労働組合法 第5条第2項第7号)。資格審査は、不当労働行為の救済申立てや法人登記などの手続を行うたびにその都度受けるものであり、審査のタイミングとは別に、規約に定めた会計報告の仕組みは毎年動かすことになります。
一般会計だけを対象にして費用を抑えられますか
対象を狭めれば手続は減りますが、規約上の会計に特別会計が含まれている場合、公表する会計報告と証明書の対象範囲がずれます。範囲を絞る場合は、その前提を会計報告と証明書の記載で明確にできるか、事前に監査人と確認してください。
組合内部の会計監査委員の監査では足りませんか
他人の求めに応じ報酬を得て財務書類の監査または証明をすることは公認会計士の業務とされ、公認会計士または監査法人でない者はこの業務を営むことができません(公認会計士法 第2条第1項、第47条の2)。内部の会計監査は組合運営上重要ですが、第5条第2項第7号が求める証明書の代わりにはなりません。
法人登記を予定しています。監査はいつまでに終えればよいですか
法人格は、労働組合法の規定に適合する旨の労働委員会の証明を受けたうえで、主たる事務所の所在地において登記することによって取得します(労働組合法 第11条第1項)。資格審査の申請には規約と会計報告を含む立証資料が必要になるため、登記を予定する時期から逆算し、大会での決算承認と証明書の受領が申請前に済む日程を組んでください。
労働組合監査の無料見積り・ご相談はこちら本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



