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会計監査人の設置義務|大会社・委員会型の判定基準を一覧で解説

2026-08-25
目次

会計監査人の設置義務は、会社の規模と機関設計の2つの軸で決まります。具体的には、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の「大会社」と、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社が、会社法上、会計監査人を必ず置かなければならない会社です。

実務では「増資で資本金が5億円を超えそうだが、いつから監査が必要になるのか」「非公開の同族会社でも監査役会まで置く必要があるのか」といった判断に迷う場面が少なくありません。本記事では、条文を根拠に設置義務の判定基準を一覧で整理し、任意設置の選択肢、選任手続、義務を怠った場合のリスクまでを解説します。

会計監査人の設置義務がある会社の一覧

株式会社は、原則として定款の定めによって会計監査人を置くことができる一方(会社法 第326条第2項)、一定の会社については法律上、設置が義務づけられています。まず全体像を確認します。

会社の区分 会計監査人の設置
大会社(公開会社) 義務。あわせて監査役会も必要
大会社(公開会社でない会社) 義務。監査役会までは求められない
監査等委員会設置会社 義務。大会社かどうかを問わない
指名委員会等設置会社 義務。大会社かどうかを問わない
上記以外の株式会社 任意。定款に定めれば設置できる
特例有限会社 設置できない

公開会社である大会社は監査役会および会計監査人を置かなければならず、公開会社でない大会社は会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条第1項、第328条第2項)。また、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は、規模にかかわらず会計監査人を置かなければなりません(会社法 第327条第5項)。ここでいう公開会社とは、発行する全部または一部の株式について譲渡制限を設けていない株式会社をいいます(会社法 第2条第5号)。

大会社の判定基準|資本金5億円・負債200億円

設置義務の入口となるのが「大会社」に該当するかどうかです。大会社とは、次のいずれかの要件に該当する株式会社をいいます(会社法 第2条第6号)。

資本金による判定 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること
負債による判定 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であること
2つの要件の関係 いずれか一方に該当すれば大会社となる

判定に使う数値は「資本金」と「負債合計」

判定に用いるのは、貸借対照表に資本金として計上した額であり、資本準備金やその他資本剰余金を含めた純資産の合計額ではありません。資本金5億円未満のまま多額の資本準備金を積んでいる会社は、この要件では大会社になりません。

もう一方の要件は負債の部の合計額です。売上高や総資産ではなく負債合計で判定するため、借入や前受金、預り金が膨らんだ結果として、資本金が小さいまま大会社に該当するケースがあります。実務では、資本金要件よりもこちらの負債要件で不意に大会社となる会社のほうが目立ちます。

判定の基準となる時点は「最終事業年度」

大会社の判定は、直近の決算数値そのものではなく最終事業年度に係る貸借対照表で行います。最終事業年度とは、各事業年度に係る計算書類について定時株主総会の承認(会計監査人設置会社の特則が適用される場合は取締役会の承認)を受けた事業年度のうち、最も遅いものをいいます(会社法 第2条第24号)。

したがって、ある事業年度末の貸借対照表で資本金5億円以上または負債200億円以上となった場合、その計算書類が定時株主総会で承認された時点で大会社となり、通常はその定時株主総会において定款を変更し、あわせて会計監査人を選任する流れになります。増資や大型借入を予定している場合は、着地する事業年度末の数値を早めに見積もり、株主総会の議案と監査人の選定スケジュールを逆算しておくと安全です。

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機関設計で設置義務が生じる場合

大会社に該当しなくても、機関設計を変更したことで会計監査人が必要になる場合があります。監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければなりません(会社法 第327条第5項)。監査等委員会設置会社とは監査等委員会を置く株式会社、指名委員会等設置会社とは指名委員会・監査委員会・報酬委員会を置く株式会社をいいます(会社法 第2条第11号の2、第2条第12号)。

これらの会社は監査役を置くことができません(会社法 第327条第4項)。監査役による監査に代えて、社外取締役を中心とする委員会が監査を担い、計算書類の適正性は会計監査人が担保する設計になっているためです。ガバナンス強化のために監査等委員会設置会社へ移行する非上場企業もありますが、その場合は規模を問わず外部監査のコストが発生する点に注意が必要です。

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任意設置という選択肢と、設置できない会社

設置義務がない会社でも、定款に定めることで会計監査人を置くことができます(会社法 第326条第2項)。上場準備企業が申請期より前に会計監査人を設置し、監査対応の体制を整えるケースはその典型です。

会計監査人を置くなら監査役も必要

任意設置であっても、会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除く)は監査役を置かなければなりません(会社法 第327条第3項)。会計監査人の選任・解任議案の内容決定や報酬の同意を担う機関が必要になるためです。「会計監査人だけを追加する」という機関設計は取れないため、定款変更では監査役の設置もあわせて検討します。

特例有限会社は会計監査人を置けない

会社法施行前の有限会社が移行した特例有限会社は、株主総会以外の機関として置けるのが監査役に限られており、会計監査人を置くことができません。あわせて、公開会社でない大会社に会計監査人の設置を義務づける規定も適用されません(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 第17条第1項、第17条第2項)。負債が200億円規模に達した特例有限会社であっても会社法上の会計監査人は不要であり、外部監査を導入したい場合は株式会社へ商号変更したうえで機関設計を見直すことになります。

設置義務が生じた会社に発生する実務

会計監査人設置会社になると、決算実務の枠組みそのものが変わります。主な変更点は次のとおりです。

計算書類の監査 計算書類およびその附属明細書は監査役等と会計監査人の監査を受ける。事業報告は監査役等のみの監査となる(会社法 第436条第2項)
会計監査報告の作成 会計監査人が計算書類、附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を監査し、法務省令に従って会計監査報告を作成する(会社法 第396条第1項)
連結計算書類の作成 会計監査人設置会社は連結計算書類を作成できる。大会社かつ有価証券報告書提出会社は作成が義務となる(会社法 第444条第1項、第444条第3項)
定時株主総会での
承認の省略
会計監査報告に無限定適正意見があるなど一定の要件を満たす場合、計算書類は株主総会の承認に代えて報告で足りる(会社法 第439条、会社計算規則 第135条)

とくに実務上の影響が大きいのは、計算書類の承認手続の特則です。会計監査報告に会計監査人の無限定適正意見が付され、監査役会等の監査報告に会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認める意見がなく、取締役会を設置しているといった要件をすべて満たす場合、計算書類は定時株主総会の承認を要さず、取締役が内容を報告すれば足ります(会社法 第439条、会社計算規則 第135条)。決算スケジュールを組む際は、この特則を使えることを前提に、監査完了日と取締役会の日程を先に固定しておくと無理がありません。

また、会計監査人は職務執行に際して取締役の不正行為や法令・定款違反の重大な事実を発見したときは、遅滞なく監査役に報告する義務を負い(会社法 第397条第1項)、いつでも会計帳簿等の閲覧謄写や子会社調査を行うことができます(会社法 第396条第2項、第396条第3項)。監査対応の負荷は、監査役監査だけを受けていた時期とは大きく異なります。

会計監査人の資格と選任・解任の手続

会計監査人になれるのは、公認会計士または監査法人に限られます(会社法 第337条第1項)。子会社やその役員から監査業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者などは、独立性の観点から会計監査人となることができません(会社法 第337条第3項)。手続の要点は次のとおりです。

選任 株主総会の決議によって選任する(会社法 第329条第1項)
任期 選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(会社法 第338条第1項)
再任 定時株主総会で別段の決議がされなかったときは再任されたものとみなす(会社法 第338条第2項)
議案の内容の決定 選任・解任・不再任に関する議案の内容は監査役(監査役会設置会社では監査役会)が決定する(会社法 第344条第1項、第344条第3項)
株主総会による解任 いつでも株主総会の決議によって解任できる(会社法 第339条第1項)
監査役等による解任 職務上の義務違反等がある場合、監査役全員の同意により解任できる(会社法 第340条第1項、第340条第2項)
報酬等の決定 取締役が報酬等を定めるには監査役の過半数(監査役会設置会社では監査役会)の同意が必要(会社法 第399条第1項、第399条第2項)

任期が1年でみなし再任が原則であるため、監査法人を交代する場合は、定時株主総会での不再任議案と新任議案をセットで準備することになります。議案の内容を決定するのは取締役会ではなく監査役(監査役会)である点が見落とされやすく、監査人の選定プロセスは監査役側が主導する設計になっています。実務では、新任の監査法人が初年度に期首残高の確認を行う必要があるため、交代の検討は総会の半年以上前から始めるのが現実的です。

設置義務を怠った場合のリスク

会計監査人設置会社である旨および会計監査人の氏名または名称は登記事項であり(会社法 第911条第3項第19号)、変更が生じたときは2週間以内に本店所在地で変更の登記をしなければなりません(会社法 第915条第1項)。大会社に該当したにもかかわらず会計監査人を選任しないままでいると、登記も未了のまま放置されることになります。

さらに、会計監査人が法律または定款で定めた員数を欠くこととなった場合に選任の手続を怠ったときは、100万円以下の過料に処せられます(会社法 第976条第22号)。会計監査人が欠けた場合に遅滞なく選任されないときは、監査役(監査役会設置会社では監査役会)が一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければなりません(会社法 第346条第4項、第346条第6項)。

加えて、監査を受けていない計算書類のままでは、金融機関や取引先への説明、M&Aのデューデリジェンス対応で信用面の支障が生じます。過料の金額以上に、決算の信頼性を欠く状態が続くことのほうが実務上のダメージは大きくなります。

会社法監査と金融商品取引法監査の違い

会計監査人による監査は会社法に基づく監査であり、上場企業等が受ける金融商品取引法に基づく監査とは根拠法が異なります。金融商品取引法では、金融商品取引所に上場されている有価証券の発行会社その他政令で定める者が提出する財務計算に関する書類について、特別の利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明を受けなければならないとされています(金融商品取引法 第193条の2第1項)。上場会社等の財務書類については、公認会計士法上の登録を受けた公認会計士または監査法人であることも求められます。

両者の関係を整理すると、非上場の大会社は会社法監査のみを受け、上場企業は会社法監査と金融商品取引法監査の両方を受けることになります。実務上は同一の監査法人が一体として実施しますが、監査対象書類、報告先、法定のスケジュールが異なるため、上場準備の段階では会社法監査の体制を先に固めておく必要があります。なお、上場会社等は内部統制報告書についても監査証明を受けなければなりません(金融商品取引法 第193条の2第2項)。

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まとめ

会計監査人の設置義務は、①最終事業年度に係る貸借対照表で資本金5億円以上または負債合計200億円以上の大会社であるか、②監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社であるか、という2つの軸で判定します(会社法 第2条第6号、第327条第5項、第328条)。義務がない会社も定款で任意に設置できますが、その場合は監査役の設置が併せて必要になり、特例有限会社は設置自体ができません。

大会社に該当する時点は、決算日ではなく計算書類が承認された定時株主総会です。増資や大型借入によって基準に近づいている場合は、定款変更・監査人の選定・登記までを一連のスケジュールとして前倒しで設計しておくことが、無理のない初年度監査につながります。設置義務の判定や監査人の選定は個社の事情によって最適解が変わるため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

資本金5億円ちょうどの場合も大会社になりますか

大会社となります。要件は「資本金として計上した額が5億円以上」であり、5億円ちょうどはこれに該当します(会社法 第2条第6号イ)。負債要件も同様に「200億円以上」で、200億円ちょうどは大会社です。

非公開の同族会社でも大会社なら監査が必要ですか

必要です。公開会社でない大会社は会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条第2項)。ただし監査役会までは求められないため、監査役と会計監査人を置く機関設計が基本形になります。

大会社でなくなった場合、会計監査人は置き続ける必要がありますか

法律上の設置義務はなくなりますが、定款に会計監査人を置く旨の定めがある限り設置は続きます。廃止する場合は定款変更が必要で、その効力が生じた時に会計監査人の任期は満了します(会社法 第338条第3項)。あわせて登記の変更も必要です(会社法 第915条第1項)。

会計監査人には税理士や税理士法人も就任できますか

就任できません。会計監査人は公認会計士または監査法人でなければならないと定められています(会社法 第337条第1項)。税務顧問と会社法上の会計監査人は、担う役割も資格要件も異なります。

会計監査人の監査と監査役の監査はどう違いますか

会計監査人は計算書類および附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を監査し、会計監査報告を作成します(会社法 第396条第1項)。一方、事業報告およびその附属明細書の監査は監査役等が行います(会社法 第436条第2項第2号)。会計の適正性は会計監査人、業務執行を含む監査は監査役等という役割分担です。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

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