03-6773-5062

受付時間 平日 10:00〜18:00

お問い合わせ フォームは24時間受付
会計監査

【判定表】会計監査人の設置義務がある会社|資本金5億円・負債200億円

目次
  1. 会計監査人の設置義務の判定フロー
  2. 設置義務の有無を会社の区分別に整理した判定表
  3. 有価証券報告書提出会社であることは設置義務の要件ではない
  4. 設置義務に関する会社法の条文早見表
  5. 大会社の判定基準|資本金5億円・負債200億円
  6. 判定に使う数値は「資本金」と「負債合計」
  7. 判定の基準となる時点は「最終事業年度」
  8. 機関設計で設置義務が生じる場合
  9. 任意設置という選択肢と、設置できない会社
  10. 会計監査人を置くなら監査役も必要
  11. 特例有限会社は会計監査人を置けない
  12. 株式会社以外の法人の会計監査人設置基準
  13. 設置義務が生じた会社に発生する実務
  14. 会計監査人の資格と選任・解任の手続
  15. 設置義務を怠った場合のリスク
  16. 会社法監査と金融商品取引法監査の違い
  17. まとめ
  18. 参考文献
  19. よくある質問
  20. 会社法上の大会社に該当することとなる負債総額はいくらですか
  21. 資本金5億円ちょうどの場合も大会社になりますか
  22. 会計監査人設置会社の要件を一言でいうと何ですか
  23. 非公開の同族会社でも大会社なら監査が必要ですか
  24. 有価証券報告書を提出していれば会計監査人の設置義務がありますか
  25. 大会社でなくなった場合、会計監査人は置き続ける必要がありますか
  26. 会計監査人には税理士や税理士法人も就任できますか
  27. 会計監査人の監査と監査役の監査はどう違いますか

会計監査人の設置義務があるのは、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の「大会社」と、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の2つだけです。このいずれにも当たらない株式会社に会社法上の設置義務はなく、必要であれば定款で任意に設置することになります。

実務では「増資で資本金が5億円を超えそうだが、いつから監査が必要になるのか」「借入が膨らんで負債が200億円に近いが、総資産や売上高は関係ないのか」「有価証券報告書を出していると自動的に義務が生じるのか」といった判断に迷う場面が少なくありません。本記事では、まず自社が義務対象かを3ステップで判定できるフローと区分別の判定表を示したうえで、大会社の判定時点・任意設置・選任手続・義務を怠った場合の過料まで、条文を根拠に整理します。株式会社以外の法人(社会福祉法人・医療法人・公益法人・学校法人)の設置基準も一覧にしています。

会計監査人の設置義務の判定フロー

自社に会計監査人の設置義務があるかどうかは、次の3ステップを上から順に確認すれば判定できます。ステップ1とステップ2は独立した要件であり、どちらか一方に該当すれば設置義務が生じます。

STEP1
大会社に該当するか
最終事業年度に係る貸借対照表で、資本金として計上した額が5億円以上、または負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であれば大会社。会計監査人の設置義務がある(会社法 第2条第6号、第328条第1項、第328条第2項)
STEP2
機関設計はどうか
監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社であれば、規模を問わず会計監査人の設置義務がある(会社法 第327条第5項)
STEP3
いずれにも当たらない
会社法上の設置義務はない。定款に定めれば任意に設置できるが、特例有限会社は設置できない(会社法 第326条第2項、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 第17条第1項)

負債総額の基準は200億円以上です。100億円でも300億円でもなく、貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上に達した会社が大会社となります(会社法 第2条第6号ロ)。資本金の基準は5億円以上で、いずれか一方を満たせば大会社です。

設置義務の有無を会社の区分別に整理した判定表

判定フローを会社の区分に置き換えると、次の一覧になります。株式会社は原則として定款の定めによって会計監査人を置くことができますが(会社法 第326条第2項)、下記の区分では法律上、設置が義務づけられています。

会社の区分 会計監査人の設置
大会社(公開会社) 義務。あわせて監査役会も必要(会社法 第328条第1項)
大会社(公開会社でない会社) 義務。監査役会までは求められない(会社法 第328条第2項)
監査等委員会設置会社 義務。大会社かどうかを問わない(会社法 第327条第5項)
指名委員会等設置会社 義務。大会社かどうかを問わない(会社法 第327条第5項)
上記以外の株式会社 任意。定款に定めれば設置できる(会社法 第326条第2項)
特例有限会社 設置できない(整備法 第17条第1項)

大会社のうち公開会社であるもの(監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除きます)は、監査役会および会計監査人を置かなければなりません。公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条第1項、第328条第2項)。ここでいう公開会社とは、発行する全部または一部の株式について譲渡制限を設けていない株式会社をいいます(会社法 第2条第5号)。なお、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は監査役を置くことができないため、監査役会の設置は問題になりません(会社法 第327条第4項)。

有価証券報告書提出会社であることは設置義務の要件ではない

実務で誤解が多いのが、有価証券報告書の提出と会社法上の設置義務の関係です。会社法が会計監査人の設置義務を課す要件は、大会社への該当と委員会型の機関設計の2つだけで、有価証券報告書を提出していること自体は要件に含まれていません。有価証券報告書提出会社に求められるのは、金融商品取引法に基づく公認会計士または監査法人の監査証明です(金融商品取引法 第193条の2第1項)。

ただし、両者が交わる場面はあります。事業年度の末日において大会社であり、かつ金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を提出しなければならない会社は、連結計算書類の作成が義務となります(会社法 第444条第3項)。実際には有価証券報告書提出会社の多くが資本金や負債の規模から大会社に該当するため、結果として会社法監査と金融商品取引法監査の両方を受けることになります。義務の根拠となる法律が別である点を押さえておくと、監査契約の範囲や報告スケジュールを整理しやすくなります。

設置義務に関する会社法の条文早見表

設置義務の検討でよく参照される条文は次のとおりです。定款変更や登記の準備で条文を確認する際の目次としてお使いください。

会社法の条文 定めている内容
第2条第6号 大会社の定義(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)
第326条第2項 定款の定めによる会計監査人等の任意設置
第327条第3項・第5項 会計監査人設置会社の監査役設置義務、委員会型の会計監査人設置義務
第328条 大会社における監査役会・会計監査人の設置義務
第337条 会計監査人の資格(公認会計士または監査法人)と欠格事由
第338条 会計監査人の任期とみなし再任
第344条 選任・解任・不再任に関する議案の内容の決定
第396条 会計監査人の権限と会計監査報告の作成
第444条第3項 大会社かつ有価証券報告書提出会社の連結計算書類の作成義務
第976条第22号 選任手続を怠った場合の過料

大会社の判定基準|資本金5億円・負債200億円

設置義務の入口となるのが「大会社」に該当するかどうかです。大会社とは、次のいずれかの要件に該当する株式会社をいいます(会社法 第2条第6号)。

資本金による判定 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること
負債による判定 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であること
2つの要件の関係 いずれか一方に該当すれば大会社となる

判定に使う数値は「資本金」と「負債合計」

判定に用いるのは、貸借対照表に資本金として計上した額であり、資本準備金やその他資本剰余金を含めた純資産の合計額ではありません。資本金5億円未満のまま多額の資本準備金を積んでいる会社は、この要件では大会社になりません。増資の際に払込金額の2分の1までを資本準備金に計上すれば資本金の額を抑えられるため、資金調達の設計段階で大会社への該当を織り込んでおくことができます。

もう一方の要件は負債の部の合計額です。売上高や総資産ではなく負債合計で判定するため、借入や前受金、預り金が膨らんだ結果として、資本金が小さいまま大会社に該当するケースがあります。実務では、資本金要件よりもこちらの負債要件で不意に大会社となる会社のほうが目立ちます。負債総額が150億円を超えたあたりから、翌期以降の資金調達計画とあわせて監査人の選定準備を始めておくと安全です。

判定の基準となる時点は「最終事業年度」

大会社の判定は、直近の決算数値そのものではなく最終事業年度に係る貸借対照表で行います。最終事業年度とは、各事業年度に係る計算書類について定時株主総会の承認(会計監査人設置会社の特則が適用される場合は取締役会の承認)を受けた事業年度のうち、最も遅いものをいいます(会社法 第2条第24号)。なお、その特則が適用される会社では、大会社の判定に用いるのは定時株主総会に報告された貸借対照表です(会社法 第2条第6号イ)。

したがって、ある事業年度末の貸借対照表で資本金5億円以上または負債200億円以上となった場合、その計算書類が定時株主総会で承認された時点で大会社となり、通常はその定時株主総会において定款を変更し、あわせて会計監査人を選任する流れになります。増資や大型借入を予定している場合は、着地する事業年度末の数値を早めに見積もり、株主総会の議案と監査人の選定スケジュールを逆算しておくと安全です。初年度の監査では期首残高の検証など通常年度にはない手続が加わるため、資料準備の負荷も見込んでおく必要があります。

公認会計士事務所プライムパートナーズ 会社法監査 会社法監査・会計監査人の選任は公認会計士へ 大手品質×中堅価格の会社法監査|公認会計士事務所プライムパートナーズ 無料見積り・ご相談はこちら

機関設計で設置義務が生じる場合

大会社に該当しなくても、機関設計を変更したことで会計監査人が必要になる場合があります。監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければなりません(会社法 第327条第5項)。監査等委員会設置会社とは監査等委員会を置く株式会社、指名委員会等設置会社とは指名委員会・監査委員会・報酬委員会を置く株式会社をいいます(会社法 第2条第11号の2、第2条第12号)。

これらの会社は監査役を置くことができません(会社法 第327条第4項)。監査役による監査に代えて、社外取締役を中心とする委員会が監査を担い、計算書類の適正性は会計監査人が担保する設計になっているためです。社外取締役の確保を進める過程でガバナンス強化のために監査等委員会設置会社へ移行する非上場企業もありますが、その場合は規模を問わず外部監査のコストが発生する点に注意が必要です。移行の可否を検討する段階で、監査報酬の水準を試算しておくことをおすすめします。

関連コラム会社法監査の費用相場と決まり方|会計監査人報酬の実務▸

任意設置という選択肢と、設置できない会社

設置義務がない会社でも、定款に定めることで会計監査人を置くことができます(会社法 第326条第2項)。上場準備企業が申請期より前に会計監査人を設置し、監査対応の体制を整えるケースはその典型です。大会社に該当する前から任意設置しておけば、義務が生じた年度にいきなり初年度監査を迎える事態を避けられます。

会計監査人を置くなら監査役も必要

任意設置であっても、会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除く)は監査役を置かなければなりません(会社法 第327条第3項)。会計監査人の選任・解任議案の内容決定や報酬の同意を担う機関が必要になるためです。「会計監査人だけを追加する」という機関設計は取れないため、定款変更では監査役の設置もあわせて検討します。

特例有限会社は会計監査人を置けない

会社法施行前の有限会社が移行した特例有限会社は、株主総会以外の機関として置けるのが監査役に限られており、会計監査人を置くことができません。あわせて、公開会社でない大会社に会計監査人の設置を義務づける規定も適用されません(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 第17条第1項、第17条第2項)。負債が200億円規模に達した特例有限会社であっても会社法上の会計監査人は不要であり、外部監査を導入したい場合は株式会社へ商号変更したうえで機関設計を見直すことになります。

株式会社以外の法人の会計監査人設置基準

会計監査人の設置義務は株式会社に限られた制度ではありません。社会福祉法人・医療法人・公益法人・学校法人にも、それぞれの根拠法で規模に応じた外部監査の義務が定められています。会社法の「資本金5億円・負債200億円」と基準額が異なるため、グループ内に他法人格を持つ場合は個別に確認が必要です。

法人の区分 外部監査が必要となる基準
社会福祉法人 経常的な収益が30億円超、または負債の合計額が60億円超のとき特定社会福祉法人となり、会計監査人の設置が義務(社会福祉法 第37条、社会福祉法施行令 第13条の3)
医療法人 負債の合計額が50億円以上、または事業収益が70億円以上のとき、公認会計士または監査法人の監査を受ける義務(医療法 第51条第2項、第51条第5項、医療法施行規則 第33条の2)
公益社団法人・公益財団法人 収益が100億円以上、費用および損失が100億円以上、負債が50億円以上のいずれかに達するとき、会計監査人の設置が公益認定の基準(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律 第5条第13号、同法施行令 第6条)
学校法人 大臣所轄学校法人等は規模にかかわらず会計監査人の設置が義務(私立学校法 第143条、第144条第1項)

医療法人の場合、条文上の表現は「会計監査人」ではなく「公認会計士又は監査法人の監査」であり、機関として会計監査人を置くという建て付けではない点が会社法と異なります(医療法 第51条第5項)。また社会福祉法人と公益法人は、負債だけでなく収益・費用の規模でも基準に達する点が会社法との大きな違いです。事業拡大に伴って基準を超える場合、株式会社よりも早い段階で外部監査が必要になることがあります。

設置義務が生じた会社に発生する実務

会計監査人設置会社になると、決算実務の枠組みそのものが変わります。主な変更点は次のとおりです。

計算書類の監査 計算書類およびその附属明細書は監査役等と会計監査人の監査を受ける。事業報告およびその附属明細書は監査役等のみの監査となる(会社法 第436条第2項)
会計監査報告の作成 会計監査人が計算書類、附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を監査し、法務省令に従って会計監査報告を作成する(会社法 第396条第1項)
連結計算書類の作成 会計監査人設置会社は連結計算書類を作成できる。大会社かつ有価証券報告書提出会社は作成が義務となる(会社法 第444条第1項、第444条第3項)
定時株主総会での
承認の省略
会計監査報告に無限定適正意見があるなど一定の要件を満たす場合、計算書類は株主総会の承認に代えて報告で足りる(会社法 第439条、会社計算規則 第135条)

とくに実務上の影響が大きいのは、計算書類の承認手続の特則です。会計監査報告に会計監査人の無限定適正意見が付され、監査役会等の監査報告に会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認める意見がないといった要件をすべて満たす場合、計算書類は定時株主総会の承認を要さず、取締役が内容を報告すれば足ります(会社法 第439条、会社計算規則 第135条)。決算スケジュールを組む際は、この特則を使えることを前提に、監査完了日と取締役会の日程を先に固定しておくと無理がありません。

また、会計監査人は職務執行に際して取締役の不正行為や法令・定款違反の重大な事実を発見したときは、遅滞なく監査役に報告する義務を負い(会社法 第397条第1項)、いつでも会計帳簿等の閲覧謄写や子会社調査を行うことができます(会社法 第396条第2項、第396条第3項)。監査対応の負荷は、監査役監査だけを受けていた時期とは大きく異なります。

会計監査人の資格と選任・解任の手続

会計監査人になれるのは、公認会計士または監査法人に限られます(会社法 第337条第1項)。子会社やその取締役・監査役等から監査業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者などは、独立性の観点から会計監査人となることができません(会社法 第337条第3項)。手続の要点は次のとおりです。

選任 株主総会の決議によって選任する(会社法 第329条第1項)
任期 選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(会社法 第338条第1項)
再任 定時株主総会で別段の決議がされなかったときは再任されたものとみなす(会社法 第338条第2項)
議案の内容の決定 選任・解任・不再任に関する議案の内容は監査役(監査役会設置会社では監査役会)が決定する(会社法 第344条第1項、第344条第3項)
株主総会による解任 いつでも株主総会の決議によって解任できる(会社法 第339条第1項)
監査役等による解任 職務上の義務違反等がある場合、監査役全員の同意により解任できる(会社法 第340条第1項、第340条第2項)
報酬等の決定 取締役が報酬等を定めるには監査役の過半数(監査役会設置会社では監査役会)の同意が必要(会社法 第399条第1項、第399条第2項)

任期が1年でみなし再任が原則であるため、監査法人を交代する場合は、定時株主総会での不再任議案と新任議案をセットで準備することになります。議案の内容を決定するのは取締役会ではなく監査役(監査役会)である点が見落とされやすく、監査人の選定プロセスは監査役側が主導する設計になっています。実務では、新任の監査法人が初年度に期首残高の確認を行う必要があるため、交代の検討は総会の半年以上前から始めるのが現実的です。

関連コラム会計監査人の変更手続き|交代スケジュールと臨時報告書・引継ぎ▸

監査人の候補を絞る段階では、監査報酬の水準感も判断材料になります。大手・準大手・中小のどの規模の監査法人に依頼するかで報酬も体制も変わるため、設置義務が見えてきた時点で複数の候補に当たっておくと、総会までの日程に余裕が生まれます。

関連コラム監査法人の報酬相場【一覧表】大手・準大手・中小の違いと交代時の増減▸

設置義務を怠った場合のリスク

会計監査人設置会社である旨および会計監査人の氏名または名称は登記事項であり(会社法 第911条第3項第19号)、変更が生じたときは2週間以内に本店所在地で変更の登記をしなければなりません(会社法 第915条第1項)。大会社に該当したにもかかわらず会計監査人を選任しないままでいると、登記も未了のまま放置されることになります。

さらに、会計監査人がこの法律または定款で定めた員数を欠くこととなった場合に選任の手続を怠ったときは、100万円以下の過料に処せられます(会社法 第976条第22号)。会計監査人が欠けた場合に遅滞なく選任されないときは、監査役(監査役会設置会社では監査役会)が一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければなりません(会社法 第346条第4項、第346条第6項)。

加えて、監査を受けていない計算書類のままでは、金融機関や取引先への説明、M&Aのデューデリジェンス対応で信用面の支障が生じます。過料の金額以上に、決算の信頼性を欠く状態が続くことのほうが実務上のダメージは大きくなります。

会社法監査と金融商品取引法監査の違い

会計監査人による監査は会社法に基づく監査であり、上場企業等が受ける金融商品取引法に基づく監査とは根拠法が異なります。金融商品取引法では、金融商品取引所に上場されている有価証券の発行会社その他政令で定める者が提出する財務計算に関する書類について、特別の利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明を受けなければならないとされています(金融商品取引法 第193条の2第1項)。

両者の関係を整理すると、非上場の大会社は会社法監査のみを受け、上場企業は会社法監査と金融商品取引法監査の両方を受けることになります。実務上は同一の監査法人が一体として実施しますが、監査対象書類、報告先、法定のスケジュールが異なるため、上場準備の段階では会社法監査の体制を先に固めておく必要があります。なお、上場会社等は内部統制報告書についても監査証明を受けなければなりません(金融商品取引法 第193条の2第2項)。

まとめ

会計監査人の設置義務は、①最終事業年度に係る貸借対照表で資本金5億円以上または負債合計200億円以上の大会社であるか、②監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社であるか、という2つの軸で判定します(会社法 第2条第6号、第327条第5項、第328条)。有価証券報告書の提出は会社法上の設置要件ではなく、根拠法が別である点を切り分けて考えることが出発点です。義務がない会社も定款で任意に設置できますが、その場合は監査役の設置が併せて必要になり、特例有限会社は設置自体ができません。

大会社に該当する時点は、決算日ではなく計算書類が承認された定時株主総会です。増資や大型借入によって基準に近づいている場合は、定款変更・監査人の選定・登記までを一連のスケジュールとして前倒しで設計しておくことが、無理のない初年度監査につながります。設置義務の判定や監査人の選定は個社の事情によって最適解が変わるため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

会社法監査の無料見積り・ご相談はこちら

参考文献

よくある質問

会社法上の大会社に該当することとなる負債総額はいくらですか

負債総額200億円以上です。最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である株式会社は大会社に該当し、会計監査人を置かなければなりません(会社法 第2条第6号ロ、第328条第1項、第328条第2項)。100億円や300億円ではない点に注意が必要です。

資本金5億円ちょうどの場合も大会社になりますか

大会社となります。要件は「資本金として計上した額が5億円以上」であり、5億円ちょうどはこれに該当します(会社法 第2条第6号イ)。負債要件も同様に「200億円以上」で、200億円ちょうどは大会社です。

会計監査人設置会社の要件を一言でいうと何ですか

大会社に該当すること、または監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社であることのいずれかです(会社法 第327条第5項、第328条第1項、第328条第2項)。これに加えて、定款の定めにより任意に会計監査人を置いた株式会社も会計監査人設置会社に含まれます(会社法 第2条第11号、第326条第2項)。

非公開の同族会社でも大会社なら監査が必要ですか

必要です。公開会社でない大会社は会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条第2項)。ただし監査役会までは求められないため、監査役と会計監査人を置く機関設計が基本形になります。

有価証券報告書を提出していれば会計監査人の設置義務がありますか

有価証券報告書の提出自体は会社法上の設置義務の要件ではありません。金融商品取引法に基づく監査証明が必要になるだけです(金融商品取引法 第193条の2第1項)。ただし事業年度末日に大会社であり、かつ有価証券報告書を提出しなければならない会社は、連結計算書類の作成が義務となります(会社法 第444条第3項)。

大会社でなくなった場合、会計監査人は置き続ける必要がありますか

法律上の設置義務はなくなりますが、定款に会計監査人を置く旨の定めがある限り設置は続きます。廃止する場合は定款変更が必要で、その効力が生じた時に会計監査人の任期は満了します(会社法 第338条第3項)。あわせて登記の変更も必要です(会社法 第915条第1項)。

会計監査人には税理士や税理士法人も就任できますか

就任できません。会計監査人は公認会計士または監査法人でなければならないと定められています(会社法 第337条第1項)。税務顧問と会社法上の会計監査人は、担う役割も資格要件も異なります。

会計監査人の監査と監査役の監査はどう違いますか

会計監査人は計算書類および附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を監査し、会計監査報告を作成します(会社法 第396条第1項)。一方、事業報告およびその附属明細書の監査は監査役等が行います(会社法 第436条第2項第2号)。会計の適正性は会計監査人、業務執行を含む監査は監査役等という役割分担です。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

Office

公認会計士事務所プライムパートナーズ

大手監査法人出身の公認会計士が、会計・監査・株価算定のご相談をお受けしています。

  • オフィスが入居する IsaI AkasakA のエントランス
  • 代表 公認会計士 島本 雅史
  • プライムパートナーズの会議室
事務所名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
所在地
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2-33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062(平日 10:00〜18:00)
対応責任者
公認会計士 島本 雅史