準大手・中小監査法人【一覧表】所属会計士数6区分と選定の目安
目次
準大手監査法人と中小監査法人の違いは、名前の知名度ではなく「所属している公認会計士が何人いるか」で線が引かれます。公認会計士・監査審査会は監査事務所を大手監査法人・準大手監査法人・中小規模監査事務所の3つに分類しており、その内訳は所属常勤公認会計士数によって大きく分かれます。日本の監査法人のうち、所属常勤公認会計士数が25人未満の法人は全体の90%を超えています。
会計監査人を新しく選ぶとき、あるいは監査法人の変更を検討するときに必要なのは、個別の法人名を並べた一覧ではなく、どの人数レンジの事務所が自社のような会社を受けているのかという地図です。この記事では、公認会計士・監査審査会が公表する統計をもとに、監査事務所の区分と所属会計士数のレンジを一覧表に整理し、自社の規模・上場区分・拠点数から候補の絞り込み方を示します。あわせて、候補が決まったあとに必要になる会社法上の手続まで一続きで確認します。
監査事務所の3区分と事務所数【一覧表】
公認会計士・監査審査会は、監査事務所をその規模に基づいて大手監査法人・準大手監査法人・中小規模監査事務所の3つに分類しています。2024年3月末時点の事務所数は次のとおりです。中小規模監査事務所は、大手監査法人および準大手監査法人以外の監査事務所という位置づけで、監査法人だけでなく共同事務所・個人事務所を含みます。
| 大手監査法人 | 4事務所 |
|---|---|
| 準大手監査法人 | 4事務所 |
| 中小規模監査事務所 | 2,411事務所(うち中小監査法人279、共同事務所49、個人事務所2,083) |
数の上では、監査事務所の大半が中小規模監査事務所です。ただし、そのうち2,083事務所は個人事務所であり、会計監査人として監査法人と同じ体制を期待できるわけではありません。会計監査人になれるのは公認会計士または監査法人ですから(会社法 第337条第1項)、個人の公認会計士に依頼する選択肢自体は会社法上あり得ますが、実際に法人として組織的な監査を受けられる候補は、中小規模監査事務所のうち279の中小監査法人が中心になります。
なお監査法人そのものの数は増加傾向にあり、2025年3月末時点で296法人です。監査法人は5人以上の公認会計士を含む者が共同して設立するものとされ(公認会計士法 第34条の7第1項)、公認会計士である社員が4人以下になった状態が6か月続くと解散します(公認会計士法 第34条の18第2項)。「監査法人」と名乗っている以上、最低でも公認会計士である社員が5人はいる——これが人数レンジを読むときの出発点になります。
所属公認会計士数でみた監査法人の分布【一覧表】
区分よりも解像度が高いのが、所属常勤公認会計士数による分布です。公認会計士である社員と公認会計士である常勤職員の合計を所属常勤公認会計士数として、2024年度に業務報告書を提出した287法人を集計した結果は次のとおりです。
| 所属常勤公認会計士数 | 監査法人数 (2024年度・287法人) |
|---|---|
| 5人以下 | 91法人 |
| 6人~9人 | 114法人 |
| 10人~24人 | 60法人 |
| 25人~99人 | 13法人 |
| 100人~199人 | 4法人 |
| 200人以上 | 5法人 |
25人未満の法人が265法人で、全体の90%を超えています。逆に、100人以上の公認会計士を抱える法人は9法人しかありません。「中小監査法人」と一括りにされる層の実態は、公認会計士が10人前後の法人が最も多い世界だということです。監査チームを2チーム同時に動かせるか、繁忙期の3月期決算をどれだけ受けられるかといった受嘱能力は、この人数の差にそのまま表れます。
区分ごとの体制の目安も、審査会が整理しています。社員数と常勤職員数のレンジは次のとおりで、準大手監査法人と中小監査法人の間には、常勤職員数でおよそ一桁の開きがあります。
| 大手監査法人 | 社員数 約240人~約570人、常勤職員数 約3,300人~約7,700人 |
|---|---|
| 準大手監査法人 | 社員数 約40人~約100人、常勤職員数 約210人~約950人 |
| 中小監査法人 | 社員数 ~約50人、常勤職員数 ~約110人 |
合計人員でみても差は明確です。社員と常勤職員の合計は、大手監査法人4法人で24,889人(2024年度)、準大手監査法人4法人で1,923人(2024年度)、中小監査法人は273法人を集計して4,191人(2023年度)です。中小監査法人は法人数が多いぶん合計人員では準大手監査法人を上回りますが、1法人あたりに均せば15人前後という計算になります。
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区分ごとに担っているクライアントの規模
人数のレンジは、受けているクライアントの規模と対応しています。2025年3月末時点で上場国内会社3,922社の会計監査人を区分別にみると、次のとおりです。
| 大手監査法人 | 2,278社・時価総額904兆8,123億円(4法人で分担するため単純平均で1法人あたり約570社) |
|---|---|
| 準大手監査法人 | 627社・時価総額23兆6,403億円(4法人で分担するため単純平均で1法人あたり約157社) |
| 中小規模監査事務所 | 1,017社・時価総額27兆5,692億円(2,411事務所で分担するため1事務所あたりは1社前後) |
読み取るべきは社数ではなく1事務所あたりの受け皿の広さです。準大手監査法人は1法人で100社を超える上場会社を担当している計算になり、上場会社の監査を回す体制がすでに組み上がっています。一方、中小規模監査事務所は事務所数が多いぶん、1事務所あたりの上場会社は数社にとどまります。新たに1社を受嘱できるかどうかは、その事務所の手持ちの状況に左右されやすく、候補を1社に絞って交渉するのは危険です。
業種による偏りもあります。上場金融機関118社の会計監査人は、大手監査法人が107社、準大手監査法人が5社、中小規模監査事務所が6社です。金融・保険のように業態特有の会計処理が多い領域では、専門部署を持つ大手監査法人に集中しています。
他方、金融商品取引法監査のない会社法監査だけの世界は様相が異なります。2023年度の被監査会社等数は、会社法監査のみが5,543社、金融商品取引法監査および会社法監査の両方が4,093社、金融商品取引法監査のみが291社でした。非上場でありながら大会社に当たるために会計監査人が必要な会社が、被監査会社等の過半を占めていることになります。この層の受け皿は、準大手監査法人と中小監査法人が中心です。
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自社の条件から候補レンジを絞る判断表
以上を、発注側の条件に置き換えたものが次の判断表です。最初に当たる規模レンジの目安であり、この範囲外の事務所を排除するものではありません。実際には、同じレンジの中でも受嘱の可否は事務所ごとに大きく異なります。
| 上場していて 時価総額が大きい |
大手監査法人が中心。海外子会社が多い場合や金融業の場合は、実質的に大手監査法人が前提になる |
|---|---|
| 上場していて 時価総額が中位以下 |
準大手監査法人と、上場会社等監査人名簿に登録した中小監査法人の双方が候補。所属公認会計士25人以上の層から探す |
| 上場準備中 | 準大手監査法人と中小監査法人が中心。上場時点で名簿への登録がある事務所かを必ず確認する |
| 非上場の大会社 | 中小監査法人が主要な受け皿。所属公認会計士10人以上を目安に、連結子会社数と決算期の分散を伝えて打診する |
| 拠点が全国に 分散している |
地区事務所を持つ大手監査法人・準大手監査法人が有利。中小監査法人は主たる事務所のみの例が多い |
| 任意監査のみ | 中小監査法人・共同事務所・個人事務所まで候補に入る。目的と報告書の利用先を先に固めてから打診する |
判断の軸として補助的に使えるのが、業務収入に占める監査証明業務収入の割合です。2024年度で、大手監査法人は約70%であるのに対し、準大手監査法人は約95%、中小監査法人は約90%と、監査証明業務の比重が高くなっています。非監査業務まで含めた総合的な支援を求めるのか、監査そのものに集中した体制を求めるのかで、見るべき区分が変わります。
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上場会社等の監査には名簿への登録が必要
上場会社の監査を検討する場合、候補を人数レンジだけで選ぶことはできません。公認会計士および監査法人は、日本公認会計士協会に備えられた上場会社等監査人名簿への登録を受けなければ、金融商品取引所に上場されている有価証券の発行者その他の政令で定める者の財務書類について監査証明業務を行うことができないと定められています(公認会計士法 第34条の34の2、第34条の34の3)。
この制度は2022年5月の公認会計士法改正で導入され、すでに運用されています。改正法の施行日時点で上場会社等の監査を行っていた事務所は、経過措置により2024年9月30日まで「みなし登録上場会社等監査人」として監査証明業務を続けることができました。上場会社等監査人登録審査会は2023年4月から2025年6月までに33回開催され、その間に126の監査事務所が名簿に登録されています。2025年6月末時点で、みなし登録上場会社等監査人に該当するのは8監査事務所です。
名簿は日本公認会計士協会が公衆の縦覧に供することとされているため(公認会計士法 第34条の34の5第3項)、上場会社・上場準備会社が候補を挙げる作業は、この名簿に載っている事務所の中から始めるのが確実です。所属会計士数が十分でも、名簿への登録がなければ上場後の監査を継続できません。上場準備の途中で監査法人を替えることになれば、申請書類への記載も含めて影響が大きくなります。
なお、上場準備会社の受け皿としての中小監査法人の存在感は高まっています。中小規模監査事務所に対する報告徴収では、上場準備会社に監査業務または非監査業務を提供しているとの回答が、2023事務年度の65%から2024事務年度は72%へ増加しました。
候補を絞ったあとに必要になる会社法の手続
候補の規模レンジが決まったら、選任の手続を逆算します。大会社は会計監査人を置かなければならず(会社法 第328条第1項、第2項)、大会社とは資本金5億円以上または負債合計200億円以上のいずれかに該当する株式会社です(会社法 第2条第6号)。会計監査人は公認会計士または監査法人でなければなりません(会社法 第337条第1項)。
株主総会に提出する会計監査人の選任・解任・不再任に関する議案の内容は、監査役が決定します(会社法 第344条第1項)。監査役が2人以上いる場合は監査役の過半数で、監査役会設置会社では監査役会が決定します(会社法 第344条第2項、第3項)。報酬等についても、取締役が定める場合には監査役(監査役会設置会社では監査役会)の同意が必要です(会社法 第399条第1項、第2項)。
実務上の順序としては、候補レンジの絞り込み、複数事務所への打診と受嘱可否の確認、見積りの取得、監査役会での議案内容の決定、株主総会での選任、という流れになります。準大手監査法人と中小監査法人はいずれも受嘱能力に限りがあるため、打診から契約までに数か月を見込むのが安全です。会計監査人は計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を監査して会計監査報告を作成する立場にあり(会社法 第396条第1項)、決算日から逆算した着手時期が遅れると、初年度の監査そのものが成立しなくなります。
関連コラム会計監査人の選任議案と監査役会の同意|記載例と決議要件▸
まとめ
監査事務所は大手監査法人4事務所、準大手監査法人4事務所、中小規模監査事務所2,411事務所に分類され(2024年3月末)、所属常勤公認会計士数でみると25人未満の法人が90%を超えています。準大手監査法人は社員約40人~約100人・常勤職員約210人~約950人、中小監査法人は社員~約50人・常勤職員~約110人が目安で、上場国内会社の担当社数も1法人あたりで大きく異なります。
候補を絞る順序は、①自社が上場会社・上場準備会社・非上場の大会社のどれかを確定する、②上場会社等監査人名簿への登録の要否を確認する(公認会計士法 第34条の34の2)、③人数レンジと拠点から候補を複数挙げる、④監査役会での議案内容の決定と報酬の同意を逆算する(会社法 第344条第1項、第399条第1項)、の4段階です。1社に絞って交渉すると、断られた時点で振り出しに戻ります。自社の規模に対してどのレンジが現実的か、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
準大手監査法人と中小監査法人の境目はどこにありますか。
法令上の定義ではなく、公認会計士・監査審査会がモニタリングのために用いている分類です。大手監査法人および準大手監査法人以外の監査事務所が中小規模監査事務所とされます。体制の目安としては、準大手監査法人が社員約40人~約100人・常勤職員約210人~約950人であるのに対し、中小監査法人は社員~約50人・常勤職員~約110人とされており、常勤職員数に大きな開きがあります。
所属公認会計士が10人に満たない監査法人でも会社法監査を依頼できますか。
会社法上は依頼できます。会計監査人は公認会計士または監査法人であればよく、人数の要件はありません(会社法 第337条第1項)。ただし上場会社等の財務書類の監査証明業務には上場会社等監査人名簿への登録が必要です(公認会計士法 第34条の34の2)。また、監査法人であれば公認会計士である社員が5人以上いることが前提であり(公認会計士法 第34条の7第1項)、実際の受嘱可否は連結子会社数や決算期の集中度によって変わります。
監査法人の一覧はどこで確認できますか。
上場会社等の監査を行う事務所については、上場会社等監査人名簿を日本公認会計士協会が公衆の縦覧に供することとされています(公認会計士法 第34条の34の5第3項)。2023年4月から2025年6月までに126の監査事務所が名簿に登録されています。上場会社・上場準備会社が候補を挙げる場合は、この名簿を起点にするのが確実です。
準大手監査法人や中小監査法人でも複数拠点に対応できますか。
準大手監査法人は主たる事務所に加えて三大都市に事務所を設置している例が多く、複数拠点にはある程度対応できます。中小監査法人は主たる事務所のみという例が多く、規模が大きい法人で準大手監査法人に準じた部門を設けている例がある、という状況です。拠点が全国に分散している会社は、往査の体制と旅費の扱いを打診の段階で確認しておくと見積りの比較がしやすくなります。
候補の監査法人が将来合併する可能性は考慮すべきですか。
考慮に値します。2020年度以降、監査法人の合併は8件あり、規模拡大による経営基盤の強化や業務エリアの拡大が主な理由として挙げられています。中小監査法人への報告徴収では、約48%が良い相手先が見つかれば合併を検討したいと回答しており、準大手監査法人でも多くが将来の業務運営戦略の一つとして合併を検討しています。合併そのものは体制強化につながる面もありますが、監査チームの継続性は契約前に確認しておくとよいでしょう。
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