組合費の未納・滞納【判定表】督促・権利停止・除名と未収組合費の処理
目次
- 法令で決まっていること・規約で決めること
- 労働組合法が定めていること
- 規約・規程で決めること
- 組合費の未納・滞納への対応判定表
- 督促から除名までの手続と注意点
- 督促|記録が残る方法で期限を区切る
- 権利停止|規約の根拠と同じ基準での適用
- 除名|決議機関・議決数・弁明の機会を確認
- 未収組合費の計上と回収不能時の処理
- 未収組合費の位置づけ
- 回収見込みによる処理の判定
- 仕訳例|未収組合費を資金の範囲に含める組合
- 仕訳例|資金の範囲を現金預金とする組合
- 会計監査で確認される点
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 組合費を払わないとどうなりますか
- 組合費の未納を理由に除名できますか
- 未収組合費はいつ計上しますか
- 除名した組合員の未納分はどう処理しますか
組合費の未納・滞納にどう対応するかは、労働組合法には書かれていません。督促の方法も、権利停止や除名ができるかどうかも、その組合の規約に定めがあるか、定めどおりの手続を踏んだかで決まります。未納の場面で法律が関わるのは、主に規約に必ず入れる事項と、組合員の資格を奪ってはならない理由の範囲です。
この記事では、未納が分かった時点から「督促 → 権利停止 → 除名」と進むときに、どの段階で何を確認すればよいかを判定表にまとめます。あわせて、会計担当者が迷いやすい未収組合費の計上と、回収できなくなったときの処理を、自社作例の仕訳で示します。
法令で決まっていること・規約で決めること
最初に、法律で答えが出る部分と、規約を見なければ答えが出ない部分を分けておきます。ここを混同すると、規約にない処分をしてしまったり、逆に規約で認められている対応をためらったりします。
労働組合法が定めていること
労働組合の規約には、名称・所在地のほか、組合員がすべての問題に参与する権利と均等の取扱いを受ける権利をもつこと、人種・宗教・性別・門地・身分によって組合員の資格を奪われないこと、総会を少なくとも毎年1回開くこと、規約の改正には組合員の直接無記名投票による過半数の支持が要ることなどを含めなければなりません(労働組合法 第5条第2項第3号・第4号・第6号・第9号)。
この規約の要件を満たしていることは、労働組合が不当労働行為の救済申立てや法人登記のための資格証明を受ける際の資格審査で確認されます(労働組合法 第5条第1項)。一方で、組合費の金額や納期限、未納のときの督促・権利停止・除名の要件については、同法に規定がありません。
規約・規程で決めること
未納への対応で規約や規程に委ねられているのは、主に次の事項です。
| 納期限と納入方法 | 毎月何日までに、チェックオフか直接納入か |
|---|---|
| 督促の方法と期間 | 誰が、どの手段で、何か月の未納から督促するか |
| 権利停止の要件と範囲 | 何か月の未納で、どの権利(選挙権・被選挙権・給付など)を止めるか |
| 除名(除籍)の要件と 決議機関 |
どの程度の未納で、どの機関がどの議決数で決めるか、本人の弁明の機会 |
| 減免の扱い | 休職・病気・育児などで組合費を減額・免除する条件 |
| 未納分の精算 | 脱退・除名後に未納分を請求するか、免除するか |
組合によっては、未納を理由とする資格の喪失を、懲戒としての「除名」とは別に「除籍」などの名称で定めている場合もあります。名称よりも、要件・決議機関・手続が規約にどう書かれているかを確認してください。
関連コラム労働組合規約の作り方|法定記載事項と会計・監査条項の条文例▸
組合費の未納・滞納への対応判定表
未納が見つかったら、まず未納の原因と期間を確認し、規約の定めに照らして次のどの段階かを判断します。表は、規約に督促・権利停止・除名の定めがある組合を前提にした目安です。
| 未納1〜2か月 (原因が事務的なもの) |
口座残高不足や納入方法の変更漏れが多い。本人に連絡し、納入方法と未納額を確認する |
|---|---|
| 休職・病気などで 納入が難しい |
規約・規程に減免の定めがあれば、その適用を先に検討する。督促の対象にするかを執行機関で判断する |
| 規約の定める期間を 超えた未納 |
期限を区切った書面で督促し、期限を過ぎた場合に予定される措置(権利停止など)を明記する |
| 督促の期限を過ぎても 未納 |
規約に定めがある場合に限り、定められた機関の決定で権利停止とし、本人に書面で通知する |
| 長期の未納で 納入の意思がない |
規約の要件に当たるかを確認し、規約が定める機関(大会など)に除名・除籍を諮る。本人に弁明の機会を設ける |
| 規約に定めがない | 権利停止・除名は行わず督促にとどめる。対応の定めを置くなら、規約改正の手続を経る |
判定表で大切なのは、規約にない処分を、その場の判断で行わないことです。規約に権利停止や除名の定めがない状態で処分をすると、手続の正当性を後から問われやすくなります。定めを新設する場合、単位労働組合では規約改正に組合員の直接無記名投票による過半数の支持が必要です(労働組合法 第5条第2項第9号)。
督促から除名までの手続と注意点
督促|記録が残る方法で期限を区切る
督促は、口頭の声かけだけで終わらせず、未納の月・金額・納入期限・期限を過ぎた場合の扱いを書いた書面やメールで行うのが実務上の基本です。後に権利停止や除名を諮る場合、いつ・何を・どう伝えたかが判断材料になるためです。
督促の前に、そもそも組合側の記帳に誤りがないかも確かめます。チェックオフ(会社が賃金から組合費を控除して組合に引き渡す仕組み)の対象者であれば、未納に見えても会社からの入金時期のずれや、控除明細と入金額の不一致が原因のことがあります。賃金から組合費を控除するには、過半数組合または過半数代表者との書面による協定が必要とされており(労働基準法 第24条第1項)、休職や異動で控除の対象から外れた組合員が、直接納入への切替えに気づかないまま未納になる例もあります。
関連コラムチェックオフとは【一覧表】労基法24条の協定要件と組合費の会計処理▸
権利停止|規約の根拠と同じ基準での適用
権利停止は、規約に要件と停止する権利の範囲が定められている場合に、その定めに従って行います。止める権利(役員選挙の選挙権・被選挙権、共済などの給付、行事への参加など)と期間、解除の条件(未納分を納めた時点で回復するか)を、通知書に明記しておくと誤解が生じにくくなります。
規約には、組合員が均等の取扱いを受ける権利をもつことを含めなければなりません(労働組合法 第5条第2項第3号)。権利停止を行うなら、特定の組合員だけに厳しく適用するのではなく、規約の基準を誰にでも同じように当てはめることが前提になります。未納者の一覧と各人への督促・処分の経過を記録しておくと、公平に運用していることを示せます。
除名|決議機関・議決数・弁明の機会を確認
除名は組合員の資格そのものを失わせる最も重い対応です。労働組合法は、人種・宗教・性別・門地・身分によって組合員の資格を奪うことを禁じていますが(労働組合法 第5条第2項第4号)、未納を理由とする除名の要件や手続は定めていません。そのため、次の点を規約で確認してから諮ります。
- 要件: 未納の期間・金額など、規約が定める除名(除籍)の事由に当たるか
- 決議機関: 大会・中央委員会・執行委員会のどこで決めるか
- 議決数: 過半数か、特別多数か
- 弁明の機会: 本人に事情を述べる機会を設ける定めがあるか(定めがなくても設けるのが望ましい)
- 未納分の扱い: 除名後も請求するか、免除するか
特に注意したいのが、ユニオン・ショップ協定がある職場です。労働組合法は、労働組合が工場事業場の労働者の過半数を代表する場合に、組合員であることを雇用条件とする労働協約を結ぶことを認めています(労働組合法 第7条第1号ただし書)。こうした協定がある職場では、除名が本人の雇用に影響し得るため、協定の内容と規約の手続を一つずつ確認し、必要に応じて労働法に詳しい弁護士にも相談したうえで判断してください。
未収組合費の計上と回収不能時の処理
ここからは会計の話です。未納が続いている組合費を帳簿でどう扱うかは、組合が採用している「資金の範囲」によって相手科目が変わります。
未収組合費の位置づけ
労働組合会計基準では、未収組合費は貸借対照表の流動資産の科目として例示されています(労働組合会計基準 計算書類の科目)。また、貸借対照表は年度末のすべての資産・負債と正味財産の状況を明らかにするものとされ(労働組合会計基準 第4 1)、計算書類には収支と財産の状況を真実かつ明瞭に示すことが求められます(労働組合会計基準 第1 2(1))。
収支計算書の収入・支出は資金の増減で計算し、資金の範囲は「現金預金」「現金預金及び短期金銭債権債務」などの例示から、各組合が規模や資産構成に応じて選べます(労働組合会計基準 注解 注2)。未収組合費を資金に含める組合では、年度末に計上した未収分が当年度の組合費収入になります。
回収見込みによる処理の判定
労働組合会計基準には、回収できなくなった組合費の処理方法を個別に定めた項目は置かれていません。そのため、どの時点で回収不能とみなし、どの科目で落とすかを会計規程で決めておくことになります。年度末には、未納者ごとに次の表で判断するのが実務的です。
| 回収の見込みがある | 未収組合費として計上する(チェックオフの入金遅れ、督促中で納入の約束があるもの) |
|---|---|
| 権利停止中で 回収が不確実 |
計上したうえで、翌年度に回収状況を見直す。金額が大きければ注記で説明する |
| 除名・脱退などで 回収を断念した |
規約・決議に基づき免除が確定した時点で、未収組合費を取り崩す |
| 少額で影響が小さい | 会計規程の少額基準に従い、計上や取崩しを簡便に処理する |
回収の見込みがない未納分を毎年そのまま資産に残すと、貸借対照表が実態より大きな財産を示すことになります。一方で、少額のものまで細かく処理する必要はなく、会計処理と表示には重要性の原則が適用されます(労働組合会計基準 注解 注1)。どの金額から個別に判断するかを会計規程で決め、毎年同じ方法で続けることが大切です(労働組合会計基準 第1 2(3))。
仕訳例|未収組合費を資金の範囲に含める組合
以下は当事務所の自社作例です。3月決算の単位組合で、月額組合費3,000円を直接納入している組合員1名が、当年度の10月から3月まで6か月分(18,000円)を納めていないとします。督促中で、本人から納入の申し出があったため、年度末に未収組合費を計上します(単位:円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 未収組合費 | 18,000 | 組合費収入 | 18,000 |
翌年度の6月に6,000円だけ入金があり、その後も納入がないまま、規約に基づき大会で除名と残額12,000円の免除を決議したとします。資金の範囲に未収組合費を含めているので、入金は資金内部の振替となり、免除した額は資金の減少として支出に計上します。計算書類の科目は組合の態様や規模に応じて加除・変更できるとされているため(労働組合会計基準 計算書類の科目)、科目名は会計規程で定めたものを使います。ここでは雑費としています(単位:円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 6,000 | 未収組合費 | 18,000 |
| 雑費 | 12,000 |
免除額が大きい年度は、収支計算書で予算と決算の差異が目立ちます。予算額と決算額の差異が著しい項目は、その理由を備考欄に記載するものとされているため(労働組合会計基準 第3 2)、除名に伴う免除であることを書いておくと組合員にも伝わります。
仕訳例|資金の範囲を現金預金とする組合
資金の範囲を現金預金だけとする組合では、未収組合費は資金に含まれないため、収支計算書の収入にはせず、その他資産見返正味財産(資金の範囲に含まれない流動資産に対応する勘定)を相手科目として貸借対照表に計上します(労働組合会計基準解釈指針 3(5))。上の作例と同じ前提で、年度末の計上と、翌年度に免除が決まった12,000円の取崩しは次のとおりです(単位:円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 未収組合費 | 18,000 | その他資産見返正味財産 | 18,000 |
| その他資産見返正味財産 | 12,000 | 未収組合費 | 12,000 |
この形では、免除した12,000円は収支計算書の支出に出ません。6月に入金した6,000円は入金した年度の組合費収入となり、同額の未収組合費と見返勘定を取り崩します。どちらの資金の範囲でも誤りではありませんが、採用した範囲は重要な会計方針として注記し(労働組合会計基準 第1 6)、毎年度継続して適用します。
関連コラム労働組合の決算整理【仕訳例】未収組合費・前受組合費・未払金の計上▸
会計監査で確認される点
会計報告は、組合員が委嘱した職業的に資格がある会計監査人による、正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表することが規約の要件です(労働組合法 第5条第2項第7号)。未納・滞納に関して、監査の現場で実務上よく確認されるのは次の点です。
- 未納者一覧と未収組合費の一致: 組合員別の未納明細の合計が、貸借対照表の未収組合費と一致しているか
- 回収可能性の検討: 長期の未納分が見直されないまま資産に残っていないか
- 免除・取崩しの根拠: 取崩しのたびに、規約上の根拠と決議の記録があるか
- チェックオフ分の照合: 会社の控除明細と組合の入金額が一致しているか、ずれの原因が説明できるか
未納の管理は、組合員名簿・督促の記録・帳簿の三つがそろって初めて説明できます。年度末だけでなく、半期ごとに未納者一覧と帳簿を突き合わせておくと、決算と監査が円滑に進みます。
まとめ
組合費の未納・滞納への対応は、労働組合法ではなく規約の定めで決まります。法律が求めるのは、均等の取扱いや資格はく奪の禁止などを規約に含めることで、督促・権利停止・除名の要件と決議機関は各組合が規約で定めます。規約にない処分は行わず、定めを置くなら規約改正の手続を経ることが出発点です。
会計面では、回収の見込みがある未納分を未収組合費として計上し、除名や免除で回収を断念した分は、規約・決議の根拠を残したうえで取り崩します。仕訳の相手科目は資金の範囲によって変わるため、会計規程と注記で方針を明らかにしておきます。規約の整備や決算での処理に迷う場合、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
組合費を払わないとどうなりますか
労働組合法には未納時の扱いの定めがなく、その組合の規約によって決まります。規約に定めがあれば、督促のあと権利停止や除名(除籍)に進むことがあります。ユニオン・ショップ協定がある職場では、組合員であることが雇用条件とされている場合があるため(労働組合法 第7条第1号ただし書)、影響は組合員の地位にとどまらないことがあります。
組合費の未納を理由に除名できますか
労働組合法は、人種・宗教・性別・門地・身分によって組合員の資格を奪うことを禁じていますが(労働組合法 第5条第2項第4号)、未納を理由とする除名の要件や手続は定めていません。規約に除名の事由・決議機関・議決数の定めがあり、その手続に従うことが前提です。規約に定めがない場合は、督促にとどめ、必要なら規約改正の手続を経て定めを置きます。
未収組合費はいつ計上しますか
年度末に、当年度分で納入されていない組合費のうち回収の見込みがあるものを未収組合費として計上します。未収組合費は貸借対照表の流動資産の科目として例示されています(労働組合会計基準 計算書類の科目)。資金の範囲に含めるかどうかで相手科目が変わり、含めない組合ではその他資産見返正味財産を相手科目とします(労働組合会計基準解釈指針 3(5))。
除名した組合員の未納分はどう処理しますか
除名後も未納分を請求するか免除するかは、規約や決議で決めます。免除が決まった場合は、その根拠となる決議を記録したうえで未収組合費を取り崩します。資金の範囲に未収組合費を含める組合では、取り崩した額を収支計算書の支出として計上します。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



