労働組合の印紙税【判定表】領収書・労働協約・契約書で収入印紙が要るか
目次
- 労働組合の文書別・収入印紙の判定表
- 領収書(受取書)の判定
- 「営業に関しない受取書」の考え方
- 法人である労働組合の受取書
- 法人格のない労働組合の受取書
- 受取金額5万円未満の受取書
- 本部と支部の間で作る受取書
- 組合が受け取る領収書・組合員が作る受取書
- 労働協約・労使協定
- 組合が当事者になる契約書
- 請負に関する契約書(第2号文書)
- 消費貸借・不動産の契約書(第1号文書)
- 継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)との関係
- 印紙の貼り忘れ・貼りすぎ
- 会計担当者が整えておきたい実務のポイント
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 組合費の領収書に収入印紙は必要ですか。
- 法人格のない労働組合が物品販売の代金を受け取ったときの領収書はどうなりますか。
- 労働協約書に収入印紙は必要ですか。
- 組合が業者と結ぶ契約書には印紙が必要ですか。
労働組合が発行する領収書に収入印紙が要るかは、まず組合に法人格があるかで整理すると判断が早くなります。法人である労働組合が作成する受取書は「営業に関しない受取書」として非課税と取り扱われ、法人格のない労働組合でも、組合費の受取書は非課税と考えられます。一方で、組合が業者と結ぶ請負契約書や、組合員に生活資金を貸し付けるときの借用証書は、作成者が労働組合であっても印紙税の課税文書に当たります。
この記事では、組合の会計担当者が日常的に作る・受け取る文書を一つずつ取り上げ、印紙が要るかどうかを判定表にまとめました。根拠は印紙税法などの法令と国税庁の公表資料に限っています。
労働組合の文書別・収入印紙の判定表
先に結論を一覧にします。判定の理由は、次の見出し以降で文書ごとに説明します。
| 組合費の受取書 (法人である労働組合) |
不要。営業に関しない受取書として非課税 |
|---|---|
| 組合費の受取書 (法人格のない労働組合) |
不要と考えられる。課税対象とされるのは収益事業に関する受取書 |
| 物品販売など収益事業の受取書 (法人である労働組合) |
不要。利益の分配ができない法人の受取書として非課税 |
| 物品販売など収益事業の受取書 (法人格のない労働組合) |
組合の目的によって判定が分かれる。非営利目的の団体と認められれば不要、そうでなければ受取金額5万円以上で必要 |
| 受取金額5万円未満の受取書 | 作成者を問わず不要 |
| 本部と支部の間の受取書 (同一の組合の内部) |
同一組合の内部の事務整理上の文書であれば、課税文書に当たらないと考えられる |
| 業者が組合に交付する領収書 | 印紙を負担するのは作成者である業者。組合の負担はない |
| 組合員が給付金・貸付金の 受領時に作成する受取書 |
不要。給与所得者の受取書は営業に関しない |
| 労働協約・労使協定 | 労働条件等を定めるだけなら課税物件表に当たらず、通常は不要 |
| 印刷・記念品製作・ 会館工事などの請負契約書 |
必要(第2号文書)。組合が当事者でも課税される。契約金額1万円未満は非課税 |
| 組合員への貸付の借用証書・ 金融機関からの借入契約書 |
必要(第1号の3文書)。契約金額1万円未満は非課税 |
| 会館用地の売買契約書・ 土地の賃貸借契約書 |
必要(第1号の1文書・第1号の2文書)。契約金額1万円未満は非課税 |
領収書(受取書)の判定
領収書は、印紙税法の課税物件表では第17号文書「金銭又は有価証券の受取書」に当たります。表題が「領収証」「レシート」「預り書」であっても、金銭の受領事実を証明する目的で作るものは受取書として扱われます。そのうえで、課税物件表は非課税となる受取書を3つ定めており、労働組合の実務で効くのは「記載された受取金額が5万円未満のもの」と「営業に関しないもの」の2つです(印紙税法 別表第一 第17号 非課税物件の欄1・2)。
「営業に関しない受取書」の考え方
ここでいう営業は、おおむね営利を目的として同種の行為を反復継続して行うことを指します。株式会社などの営利法人の行為は営業になり、公益法人や、利益金・剰余金の配当や分配ができない法人の行為は営業になりません。人格のない社団は、その目的によって扱いが分かれます。労働組合の受取書が非課税になるかどうかは、この「営業」に当たるかどうかで決まります。
法人である労働組合の受取書
労働組合は、労働組合法の規定に適合する旨の労働委員会の証明を受け、主たる事務所の所在地で登記することによって法人になります(労働組合法 第11条第1項)。国税庁は、会社以外の法人で利益金又は剰余金の配当や分配ができない法人の例として法人労働組合を挙げ、その作成する受取書を非課税と案内しています。
この案内では収益事業かどうかで区別をしていません。組合費の領収書はもちろん、組合が物品販売などを行う場合の代金の領収書も、法人である労働組合の名義で作成するものであれば、営業に関しない受取書として扱われます。
関連コラム労働組合の法人格【比較表】財産名義・税務・登記の違い▸
法人格のない労働組合の受取書
登記をしていない労働組合は法人格がないため、一般に人格のない社団の区分で判定することになると考えられます。印紙税の取扱いでは、公益及び会員相互間の親睦等の非営利事業を目的とする人格のない社団が作成する受取書は営業に関しない受取書とされ、それ以外の人格のない社団が収益事業に関して作成する受取書は営業に関しない受取書に当たらないとされています(印紙税法基本通達 別表第一 第17号文書の23)。
この書き分けから、実務上は次の2点を押さえておけば足ります。
- 組合費・カンパ・共済掛金など、収益事業に関しない受取書は、どちらの区分に当たっても非課税と考えられます。
- 課税の可能性が残るのは、法人格のない組合が物品販売や会館の貸付けなどの収益事業で代金を受け取るときの受取書だけです。
労働組合は、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体です(労働組合法 第2条)。営利を目的として定められた団体ではありませんが、通達のいう「非営利事業を目的とする人格のない社団」に当たるかどうかを国税庁が労働組合について個別に示した資料は見当たりません。収益事業の領収書を継続して発行する法人格のない組合は、所轄の税務署に取扱いを確認しておくと安心です。
関連コラム労働組合の税金と収益事業課税|法人税・消費税の取扱い▸
受取金額5万円未満の受取書
記載された受取金額が5万円未満の受取書は、作成者が誰であっても非課税です(印紙税法 別表第一 第17号 非課税物件の欄1)。上の判定で課税の可能性が残る法人格のない組合の収益事業であっても、1回の受領額が5万円未満であれば印紙は要りません。売上代金に係る受取書で5万円以上100万円以下の場合の税額は200円です。
本部と支部の間で作る受取書
同一法人の内部で、取扱者間や本店・支店・出張所間で作成する受取書は、事務の整理上作成する文書と認められ、課税文書に当たらないとされています(印紙税法基本通達 第59条)。同じ組合の本部と支部の間で、上納金や交付金の受け渡しを記録するために作る受取書も、同じ考え方で整理できると考えられます。ただし、国税庁の資料は同一法人の内部の例を示したもので、労働組合の本部・支部を直接取り上げたものではありません。支部が別の単位組合として独立している場合は、組合と組合の間の受取書になるため、前の見出しの判定に戻って考えます。
組合が受け取る領収書・組合員が作る受取書
印紙税を納める義務があるのは、課税文書の作成者です(印紙税法 第3条第1項)。組合が業者に代金を支払って受け取る領収書は業者が作成するものなので、印紙の要否を判断し税を負担するのは業者です。業者の領収書に印紙が貼られていなくても、組合が代わりに納める義務はありません。
反対に、組合が組合員に共済給付金や見舞金を支払い、組合員から受取書を受け取る場面では、作成者は組合員です。国税庁は、事業を離れた私的日常生活に関する個人の行為は営業にならないとし、従業員(給与所得者)が作成する受取書を営業に関しないものとして非課税と案内しています。組合員から受け取る受取書には、通常、印紙は要りません。
ただし、組合員に生活資金などを貸し付ける場合に取り交わす借用証書や金銭消費貸借契約書は、受取書とは別の文書で、第1号の3文書(消費貸借に関する契約書)に当たります。受取書は非課税でも借用証書には印紙が要る、という組み合わせになる点に注意してください。
労働協約・労使協定
印紙税が課されるのは、課税物件表(印紙税法 別表第一)の課税物件の欄に掲げる文書だけです(印紙税法 第2条)。課税物件表に並ぶのは不動産の譲渡、消費貸借、請負、継続的取引の基本となる契約などの20種類で、賃金や労働時間、組合活動のルールを取り決める契約は掲げられていません。労働条件や組合と会社との関係のルールを定めるだけの労働協約・労使協定は、課税物件表のいずれにも当たらないと考えられ、通常は印紙を貼る必要がありません。
一方で、課税物件表でいう契約書は、名称にかかわらず、契約の成立や内容の変更・補充の事実を証明する目的で作る文書をいいます(印紙税法 別表第一 課税物件表の適用に関する通則5)。表題が「協定書」「覚書」であっても、たとえば組合への金銭の貸付けや、工事・制作の請負の内容が書き込まれていれば、その部分によって課税文書に当たる可能性があります。労働協約に労働条件以外の取引条件を盛り込むときは、記載内容から判定してください。
組合が当事者になる契約書
「営業に関しない」かどうかで扱いが変わるのは、受取書(第17号文書)や、営業者の間の契約であることを要件とする第7号文書の一部です。請負や消費貸借の契約書には、作成者が営業を行っているかどうかによる非課税の定めがないため、労働組合が当事者でも課税されます。
請負に関する契約書(第2号文書)
大会資料の印刷、記念品の製作、組合会館の改修工事などを業者に発注するときの契約書や注文請書は、請負に関する契約書に当たります。記載された契約金額が1万円未満のものは非課税で、それ以外は金額に応じて次の税額(本則)になります(印紙税法 別表第一 第2号)。
| 1万円以上100万円以下 | 200円 |
|---|---|
| 100万円を超え200万円以下 | 400円 |
| 200万円を超え300万円以下 | 1千円 |
| 300万円を超え500万円以下 | 2千円 |
| 500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
| 契約金額の記載のないもの | 200円 |
1千万円を超える契約は、さらに段階的に税額が上がります。会館の改修工事など建設工事の請負に関する契約書のうち、2014年4月1日から2027年3月31日までに作成され、契約金額が100万円を超えるものは税額が軽減されています。たとえば100万円を超え200万円以下は200円、200万円を超え300万円以下は500円、300万円を超え500万円以下は1千円、500万円を超え1千万円以下は5千円で、上の表より低くなります。
1通の契約書を組合と業者が共同して作成した場合は、両者が連帯して印紙税を納める義務を負います(印紙税法 第3条第2項)。業者側が印紙を用意する慣行の取引でも、組合が保管する原本に印紙が貼られているかは組合自身で確認しておきましょう。
消費貸借・不動産の契約書(第1号文書)
組合員への貸付けの借用証書や、組合が金融機関から借り入れる際の金銭消費貸借契約書は第1号の3文書、会館用地の売買契約書は第1号の1文書、土地の賃貸借契約書は第1号の2文書に当たります(印紙税法 別表第一 第1号)。記載された契約金額が1万円未満のものは非課税で、1万円以上10万円以下は200円、10万円を超え50万円以下は400円、50万円を超え100万円以下は1千円、100万円を超え500万円以下は2千円です(本則)。会館用地の売買など不動産の譲渡に関する契約書のうち、2014年4月1日から2027年3月31日までに作成され、契約金額が10万円を超えるものは税額が軽減されており、たとえば10万円を超え50万円以下は200円、50万円を超え100万円以下は500円、100万円を超え500万円以下は1千円です。
継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)との関係
売買や請負の取引条件を継続的に定める基本契約書のうち、特約店契約書のような類型は、営業者の間で作成されることが要件になっています(印紙税法施行令 第26条第1号)。ここでいう営業者は、受取書が営業に関するものとして課税される者を指すと国税庁は説明しており、受取書が非課税になる法人である労働組合は、この営業者に当たらないと考えられます。そのため、組合と業者の間の継続的な発注基本契約は、この類型の第7号文書には当たらないと考えられます。ただし、内容が請負であれば第2号文書として課税されることがあります。
印紙の貼り忘れ・貼りすぎ
課税文書に印紙を貼らなかった場合は、納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額、つまり本来の税額の3倍の過怠税が徴収されます(印紙税法 第20条第1項)。税務調査を予知する前に自ら不納付を申し出た場合は1.1倍に軽減され(同条第2項)、貼った印紙に消印をしなかった場合は、その印紙の額面に相当する過怠税が徴収されます(同条第3項)。過怠税の合計額が1千円に満たないときは1千円になります(同条第4項)。ただし、1.1倍に軽減された過怠税だけの場合は、この1千円の定めは適用されません(同条第5項)。過怠税は法人税の損金に算入されないため、収益事業で法人税の申告をしている組合では申告調整に影響することがあります。
反対に、非課税の領収書に印紙を貼ってしまった場合は、課税文書に当たらない文書に誤って貼ったものとして、所轄税務署長に過誤納の確認を申請し還付を受けられる場合があります。申請には印紙を貼った文書の現物の提示が必要で、文書を作成した日から5年を経過したものは還付の対象になりません。
会計担当者が整えておきたい実務のポイント
印紙税は1通ごとの金額が小さいため後回しにされがちですが、領収書の様式は一度決めると何年も使い続けます。会計監査の場面でも、租税公課の内訳や契約書の原本を確認する際に、印紙の扱いが組合の取扱いとして一貫しているかが見えてきます。次の点を年度初めに確認しておくと、迷いが減ります。
- 法人格の有無を記録しておく: 登記の有無で受取書の判定の根拠が変わります。登記事項証明書の写しと一緒に、領収書を非課税と判断した根拠をメモで残しておきます。
- 収益事業の領収書を分けて管理する: 法人格のない組合では、物品販売や貸会議室など収益事業の受取書だけ判定が分かれます。様式を組合費用と分けておくと判断の漏れが起きにくくなります。
- 契約書は「誰が作るか」より「何の契約か」で見る: 請負・消費貸借・不動産の契約書は、組合が当事者でも課税されます。保管用の原本に印紙が貼られているかを確認します。
- 協定書・覚書の中身を読む: 労働協約に金銭の貸付けや業務の請負など労働条件以外の取り決めが入っていないかを確認します。
- 租税公課の支出を区分する: 収入印紙の購入を事務費などに混ぜず、租税公課として計上しておくと、収益事業に係る法人税の申告や監査での確認がしやすくなります。
まとめ
- 法人である労働組合が作成する受取書は、収益事業に関するものも含めて営業に関しない受取書として非課税と取り扱われています。
- 法人格のない労働組合でも、組合費などの受取書は非課税と考えられます。判定が分かれるのは収益事業の代金の受取書で、受取金額5万円未満なら作成者を問わず非課税です。
- 業者の領収書の印紙は作成者である業者の負担で、組合員が作る受取書も通常は非課税です。
- 労働条件を定めるだけの労働協約は課税物件表に当たらず、通常は印紙が不要です。
- 請負契約書・借用証書・不動産の契約書は、組合が当事者でも課税文書に当たります。
印紙税の判定は文書の記載内容と組合の実態によって変わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
労働組合監査の無料見積り・ご相談はこちら参考文献
- e-Gov法令検索 印紙税法
- e-Gov法令検索 印紙税法施行令
- e-Gov法令検索 労働組合法
- 国税庁 No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書
- 国税庁 No.7125 営業に関しない受取書
- 国税庁 営業に関しない受取書(作成者)
- 国税庁 同一法人内で作成する受取書
- 国税庁 従業員から交付を受ける受取書
- 国税庁 No.7117 契約書の意義
- 国税庁 No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
- 国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
- 国税庁 営業者の間における契約であることの要件
- 国税庁 No.7131 印紙税を納めなかったとき
- 国税庁 No.7130 誤って納付した印紙税の還付
よくある質問
組合費の領収書に収入印紙は必要ですか。
必要ありません。法人である労働組合の受取書は営業に関しない受取書として非課税と取り扱われ、法人格のない労働組合でも、通達上、課税の対象とされるのは収益事業に関して作成する受取書のため、組合費の受取書は非課税と考えられます。
法人格のない労働組合が物品販売の代金を受け取ったときの領収書はどうなりますか。
公益及び会員相互間の親睦等の非営利事業を目的とする人格のない社団に当たれば非課税、当たらなければ収益事業の受取書として課税対象になります(印紙税法基本通達 別表第一 第17号文書の23)。受取金額が5万円未満なら、どちらでも非課税です。継続して発行する場合は所轄の税務署に確認しておくと安心です。
労働協約書に収入印紙は必要ですか。
賃金や労働時間など労働条件を定めるだけの労働協約は、印紙税法の課税物件表に掲げる文書に当たらないと考えられ、通常は不要です。ただし、金銭の貸付けや請負の取り決めなど課税物件表に当たる内容を含む場合は、その内容によって課税文書になることがあります。
組合が業者と結ぶ契約書には印紙が必要ですか。
請負に関する契約書(第2号文書)や消費貸借・不動産の契約書(第1号文書)に当たれば、組合が当事者でも課税されます。共同で作成した契約書は、組合と業者が連帯して印紙税を納める義務を負います(印紙税法 第3条第2項)。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



