労働組合の慶弔見舞金【仕訳例】一般会計の処理と受給者の非課税判定
目次
- 慶弔見舞金を支払う会計の決め方
- 一般会計で支払う場合
- 慶弔積立金を設けている場合
- 慶弔見舞金の仕訳例
- 組合員へ祝金と弔慰金を支払ったとき
- 役員が香典を立て替え、供花を手配したとき
- 慶弔積立金の特別会計から支払うとき
- 受け取った組合員の課税判定
- 香典・葬祭料・災害等の見舞金
- 病気・けがの見舞金
- 結婚・出産などの祝金
- 組合が雇う書記局職員に支払う場合
- 組合員への慶弔見舞金と源泉徴収
- 組合側の消費税の扱い
- 慶弔規程と会計監査で確認される点
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 労働組合の慶弔見舞金はどの勘定科目で処理しますか。
- 組合から受け取った香典や見舞金に税金はかかりますか。
- 結婚祝金を組合からもらった場合も非課税ですか。
- 組合員に慶弔見舞金を払うとき、源泉徴収は必要ですか。
- 慶弔積立金を闘争資金など別の目的に使ってもよいですか。
労働組合の慶弔見舞金とは、組合員の結婚・出産といった慶事や、本人・家族の死亡、病気、災害といった弔事・不幸に際して、組合が組合員に支払うお祝いやお見舞いのお金です。結論から言えば、組合費を財源とする慶弔見舞金は一般会計の慶弔費として支出処理し、受け取った組合員の側では、香典や災害・傷病の見舞金は社会通念上相当な金額であれば所得税がかかりません。一方、結婚祝金などの慶事の祝金はこの非課税の取扱いの対象に含まれず、一時所得に当たると考えられる点が異なります。
組合の会計担当者が迷いやすいのは、「どの会計から払うか」「どの科目で記帳するか」「もらった組合員に税金がかかるのか」の3点です。本記事では、慶弔規程に基づく給付、役員が立て替えた香典と供花、慶弔積立金を設けている場合の処理を自社作例の仕訳表で示し、受給者側の非課税・一時所得の判定、組合側の消費税、会計監査で確認される点まで順に整理します。
慶弔見舞金を支払う会計の決め方
慶弔見舞金は、多くの組合で「慶弔規程」や予算書に事由ごとの金額を定め、組合費を財源にして一般会計から支払います。組合費とは別に共済掛金を集めて給付する共済制度を持つ組合では、同じ弔慰金や見舞金でも、共済規程に基づく給付は共済特別会計から支払うのが基本です。名称が同じでも、財源と支給根拠の規程が違えば記録する会計も変わります。
実務での見分け方は単純で、その給付を定めているのが慶弔規程(一般会計の予算)なのか、共済規程なのかを確認します。規程に根拠のない慶弔を、予算が残っている会計から場当たり的に支払うと、決算で説明がつかなくなります。共済給付との線引きを詳しく知りたい方は、次のコラムも参考にしてください。
関連コラム労働組合の共済会計【仕訳例】共済掛金・給付金の区分経理▸
一般会計で支払う場合
一般会計で支払う慶弔見舞金は、組合費の使途の一つとして予算に計上し、決算では支出科目として会計報告に表示します。労働組合の規約には、すべての財源と使途、主要な寄附者の氏名、現在の経理状況を示す会計報告を、職業的に資格がある会計監査人の証明書とともに毎年1回以上組合員に公表する旨を定める必要があります(労働組合法 第5条第2項第7号)。慶弔費も「使途」の一部として、組合員に説明できる形で記録しておくことが前提になります。
慶弔積立金を設けている場合
弔事や災害は時期と件数が読めないため、毎年の予算とは別に「慶弔積立金」を特別会計として積み立て、そこから支払う組合もあります。慶弔のために特設した積立金は、労働組合法がいう福利事業のための基金に当たり得ます。共済事業その他福利事業のために特設した基金を他の目的に流用するときは総会の決議が必要とされているため(労働組合法 第9条)、積立金の目的と取崩しの条件を規程に書いておくと、運用で迷いません。
なお、会社から慶弔用の資金の寄附を受ける場合もあります。団体の運営のための経費の支出につき使用者から経理上の援助を受ける団体は労働組合法上の労働組合に当たりませんが、経済上の不幸や災厄を防止・救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附は、この援助から除かれています(労働組合法 第2条第2号ただし書)。寄附は基金で受け入れて慶弔の財源に充て、主要な寄附者として会計報告に示します(労働組合法 第5条第2項第7号)。
慶弔見舞金の仕訳例
労働組合法は会計報告と監査証明を求めていますが、勘定科目の名称や仕訳の方法までは定めていません。以下は、一般的な複式簿記で記帳する場合の当事務所の自社作例です。科目名は組合の会計規程や過去の決算書に合わせて読み替えてください。
組合員へ祝金と弔慰金を支払ったとき
前提として、慶弔規程に基づき、同じ月に組合員Aの結婚祝金20,000円と、組合員Bの父の死亡に伴う弔慰金30,000円を、いずれも組合の預金口座から振り込んだとします(単位:円)。慶事と弔事は受給者側の税務の扱いが異なるため、補助科目で事由を分けておくと、後の確認がしやすくなります。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 慶弔費支出(結婚祝金) | 20,000 | 現金預金 | 50,000 |
| 慶弔費支出(弔慰金) | 30,000 |
支払の証憑としては、慶弔規程の該当条項に当たることを示す申請書と、振込の記録をセットで保存します。弔事の場合は会葬礼状の写しなど、事由の発生を確認できる資料を添えておくと、会計監査で事実関係を説明しやすくなります。
役員が香典を立て替え、供花を手配したとき
前提として、組合員Cの本人死亡に際し、執行委員長が通夜で組合名義の香典10,000円を立て替え、あわせて生花店へ供花16,500円(消費税込み)を組合の口座から支払ったとします(単位:円)。立替分は、精算するまで委員長に対する未払金として記録します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 慶弔費支出(香典) | 10,000 | 未払金 | 10,000 |
| 慶弔費支出(供花) | 16,500 | 現金預金 | 16,500 |
| 未払金 | 10,000 | 現金預金 | 10,000 |
3行目は、後日委員長へ立替分を精算したときの仕訳です。現金の香典と、生花店から購入した供花は、後述のとおり消費税の扱いが異なるため、同じ慶弔費でも補助科目を分けておきます。期末をまたいで精算が残る場合は、未払金として貸借対照表に計上します。
関連コラム労働組合の勘定科目【一覧表】収支計算書・貸借対照表で使う科目と線引き▸
慶弔積立金の特別会計から支払うとき
前提として、大会の議決に基づき一般会計から慶弔積立金特別会計へ300,000円を繰り入れ、その後、台風で自宅が浸水した組合員Dへ慶弔規程の災害見舞金50,000円を特別会計から支払ったとします(単位:円)。一般会計の側では、繰入の時点で「慶弔積立金繰入支出 300,000円/現金預金 300,000円」を記録します。下表は特別会計の側の仕訳です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 300,000 | 一般会計繰入金収入 | 300,000 |
| 災害見舞金支出 | 50,000 | 現金預金 | 50,000 |
一般会計と特別会計の両方に同じ300,000円が記録されるため、合算した決算書を作るときは内部取引として相殺します。特別会計の期末残高は、翌年度の慶弔の財源として繰り越します。
受け取った組合員の課税判定
慶弔見舞金を受け取った組合員に所得税がかかるかどうかは、「弔事・災害・傷病の見舞い」か「慶事の祝い」かで分かれます。法人格のない労働組合も、代表者の定めがあれば人格のない社団等に当たり、所得税法では法人とみなして規定が適用されます(所得税法 第2条第1項第8号、第4条)。このため、組合からの給付は「法人からの贈与」として検討するのが出発点になります。
香典・葬祭料・災害等の見舞金
葬祭料、香典又は災害等の見舞金で、その金額が受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、課税しないものとされています(所得税基本通達 9-23)。この取扱いは、非課税とされる保険金・損害賠償金等に類するものを定めた政令の規定を根拠にしています(所得税法 第9条第1項第18号、所得税法施行令 第30条)。
「社会通念上相当」の金額について、通達は具体的な上限額を示していません。実務では、慶弔規程で事由ごとに定額を決め、すべての組合員に同じ基準で支給していることが、相当性を説明する材料になります。特定の役員や組合員だけに高額を払う運用は避けるべきです。
病気・けがの見舞金
心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金は、非課税とされる保険金・損害賠償金等に類するものに含まれています(所得税法施行令 第30条第3号)。組合員本人の入院や長期療養に対する見舞金も、相当な金額であれば非課税の扱いになります。ただし、役務の対価たる性質を有するものは除かれています(所得税法施行令 第30条第3号)。
結婚・出産などの祝金
結婚祝金や出産祝金は、香典や見舞金とは違い、所得税基本通達 9-23 の対象に含まれていません。法人からの贈与により取得する金品(業務に関して受けるもの及び継続的に受けるものを除きます)は一時所得に当たるとされているため(所得税基本通達 34-1)、通達に労働組合の祝金を名指しした定めはありませんが、法人とみなされる労働組合から受け取る祝金も、この例示に沿って一時所得に当たると考えられます。
もっとも、一時所得の金額は、その年中の総収入金額から収入を得るために支出した金額を控除し、さらに特別控除額(最高50万円)を差し引いて計算します(所得税法 第34条第2項、第3項)。通常の祝金の金額であれば、同じ年に生命保険の一時金など他の一時所得がない限り、課税される所得が生じることはまれです。
| 香典・葬祭料 | 社会通念上相当な金額なら非課税(所得税基本通達 9-23) |
|---|---|
| 災害の見舞金 | 社会通念上相当な金額なら非課税(所得税基本通達 9-23、所得税法施行令 第30条第3号) |
| 病気・けがの見舞金 | 相当な金額なら非課税(所得税法施行令 第30条第3号) |
| 結婚・出産などの祝金 | 一時所得に当たると考えられる。特別控除額(最高50万円)の範囲内なら課税される所得は生じない(所得税基本通達 34-1、所得税法 第34条) |
| 書記局職員への 結婚・出産祝金 |
雇用契約等に基づく祝金品として給与等。社会通念上相当なら課税しなくて差し支えない(所得税基本通達 28-5) |
組合が雇う書記局職員に支払う場合
表の最後の行は、組合員としてではなく、組合が使用者として雇用している書記局職員などに慶弔金を支払うケースです。使用者から役員又は使用人に対し雇用契約等に基づいて支給される結婚、出産等の祝金品は給与等とされ、金額が支給を受ける者の地位等に照らし社会通念上相当と認められるものは、課税しなくて差し支えないとされています(所得税基本通達 28-5)。職員向けの慶弔は組合員向けの慶弔規程とは別に定め、金額の相当性を説明できるようにしておきます。
組合員への慶弔見舞金と源泉徴収
所得税の源泉徴収は、給与等(所得税法 第183条)や報酬・料金等(所得税法 第204条)など、法令で定められた支払について行うものです。組合員としての立場で受け取る慶弔見舞金は、労務の対価ではないため給与等に当たらず、報酬・料金等にも当たらないため、組合が源泉徴収をする必要はありません。上の書記局職員への祝金のように給与等とされる支払で、金額が社会通念上相当と認められない場合は、給与として源泉徴収の対象になる点に注意が必要です。
組合側の消費税の扱い
消費税がかかるのは、対価を受け取って行う取引に限られます。祝金や見舞金は、一般的に対価を得て行う取引ではないため課税の対象外(不課税)とされています(国税庁 タックスアンサー No.6157)。組合員に現金で支払う慶弔見舞金や香典は、組合が消費税の申告をしている場合でも課税仕入れに当たりません。
一方、生花店から供花を買う代金や、お祝いの品物を購入する代金は、組合が事業として他の者から資産を譲り受ける取引なので、課税仕入れに当たります(消費税法 第2条第1項第12号)。先ほどの仕訳例で香典と供花の補助科目を分けたのはこのためです。消費税の課税事業者に当たる組合では、特定収入の調整計算もあわせて確認します。
関連コラム労働組合の消費税|特定収入の調整計算と仕入税額控除の計算例▸
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慶弔規程と会計監査で確認される点
慶弔見舞金は1件あたりの金額が小さく、件数が多いため、記録の抜けや規程外の支出が起きやすい費目です。会計監査では、支出が規程と予算に沿っているか、事由を確認できる証憑があるかが見られます。決算前に、次の点を自分たちで確認しておくと監査がスムーズに進みます。
- 慶弔規程に支給事由・対象者の範囲(本人、配偶者、子、父母など)・金額が定められ、大会や執行委員会で承認されているか
- 支払の一件ごとに、申請書と事由を確認できる資料、振込記録または受領書がそろっているか
- 役員の立替払いが、領収書や会葬礼状の写しとともに期限内に精算されているか
- 規程の対象外の慶弔(親族の範囲外の弔事、取引先や上部団体役員への香典など)を、支出の根拠と科目を決めたうえで処理しているか
- 慶弔費の実績が予算を超えた場合に、規約や会計規程に沿った流用・補正の手続を経ているか
- 慶弔積立金を他の目的に回す場合に、総会の決議を経ているか(労働組合法 第9条)
規程の対象外の慶弔は、組合としての対外的な儀礼なのか、組合員への給付なのかで科目を分けると、組合員への説明がしやすくなります。支出の決裁ルールや証憑の保存方法を会計規程に定めておくと、担当者が交代しても同じ基準で処理できます。
関連コラム労働組合の会計規程【記載例】支出決裁・現金管理・証憑保存の条文▸
まとめ
労働組合の慶弔見舞金は、慶弔規程と予算に基づいて一般会計の慶弔費として処理するのが基本で、共済規程に基づく給付や慶弔積立金からの支払とは会計を分けて記録します。仕訳では、事由ごとに補助科目を分け、現金の香典と購入した供花も区別しておくと、受給者側の課税判定と組合側の消費税の両方に対応しやすくなります。
受け取った組合員の側では、香典・災害等の見舞金・傷病の見舞金は社会通念上相当な金額であれば非課税、結婚・出産などの祝金は一時所得に当たると考えられ、特別控除額の範囲内なら課税される所得は生じません。組合員への慶弔見舞金に源泉徴収は不要ですが、書記局職員への慶弔金は給与等として扱われる点に注意が必要です。
慶弔規程の作り方や支給実態は組合ごとに異なり、金額の相当性の判断も個別性があります。具体的なケースの判断に迷われる場合は、公認会計士へのご相談をおすすめします。
労働組合監査の無料見積り・ご相談はこちら参考文献
- e-Gov法令検索 労働組合法
- e-Gov法令検索 所得税法
- e-Gov法令検索 所得税法施行令
- e-Gov法令検索 消費税法
- 国税庁 所得税基本通達 9-23 葬祭料、香典等
- 国税庁 所得税基本通達 法第34条《一時所得》関係
- 国税庁 所得税基本通達 法第28条《給与所得》関係
- 国税庁 No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例
よくある質問
労働組合の慶弔見舞金はどの勘定科目で処理しますか。
法令で決まった科目名はありませんが、一般会計では「慶弔費支出」などの支出科目で処理し、結婚祝金・弔慰金・香典・供花といった事由ごとに補助科目を分けるのが実務的です。共済規程に基づく給付は共済特別会計、慶弔積立金からの支払はその特別会計の支出として記録します。
組合から受け取った香典や見舞金に税金はかかりますか。
葬祭料、香典又は災害等の見舞金で、受贈者の社会的地位や贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものは課税されません(所得税基本通達 9-23)。病気やけがの見舞金も、相当な金額であれば非課税です(所得税法施行令 第30条第3号)。
結婚祝金を組合からもらった場合も非課税ですか。
組合からの結婚祝金は、香典や見舞金の非課税の取扱い(所得税基本通達 9-23)の対象外で、法人からの贈与として一時所得に当たると考えられます(所得税法 第4条、所得税基本通達 34-1)。一時所得は特別控除額(最高50万円)を差し引いて計算するため(所得税法 第34条第3項)、通常の祝金だけであれば課税される所得は生じません。同じ年に生命保険の一時金など他の一時所得がある場合は、合計で判断します。
組合員に慶弔見舞金を払うとき、源泉徴収は必要ですか。
所得税の源泉徴収は給与等(所得税法 第183条)や報酬・料金等(所得税法 第204条)の支払について行うもので、組合員としての立場で受け取る慶弔見舞金はこれらに当たらないため、源泉徴収は不要です。組合が雇用する書記局職員への結婚・出産祝金は給与等とされ、社会通念上相当な金額であれば課税しなくて差し支えないとされています(所得税基本通達 28-5)。
慶弔積立金を闘争資金など別の目的に使ってもよいですか。
共済事業その他福利事業のために特設した基金を他の目的に流用しようとするときは、総会の決議を経なければなりません(労働組合法 第9条)。慶弔のために特設した積立金もこれに当たり得るため、総会で決議し、議事録と両方の会計の記録を残してから振り替えます。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



