労働組合の共済会計【仕訳例】共済掛金・給付金の区分経理
目次
- 共済会計を一般会計から切り分ける理由
- 労働組合法が共済基金に置く3つの規定
- 共済給付と一般会計の慶弔見舞金の判定表
- 共済掛金の受入と給付金の支払の仕訳例
- 一般会計の口座に一括入金されるとき
- 共済特別会計での受入と給付
- 共済特別会計への繰入と会社からの寄附
- 一般会計から共済特別会計へ繰り入れるとき
- 会社からの寄附を共済基金に受け入れるとき
- 共済基金を他の目的に使うときの総会決議
- 共済事業の法人税と消費税
- 法人税は事業の中身ごとに収益事業を判定
- 消費税は共済掛金が非課税、給付金は不課税
- 共済会計の会計監査チェックリスト
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 共済掛金は必ず特別会計で処理しなければなりませんか。
- 共済掛金をいったん組合費収入に含めて記帳してもよいですか。
- 共済基金から一般会計へお金を戻すには何が必要ですか。
- 会社から共済基金への寄附を受けても問題ありませんか。
- 組合員から受け取る共済掛金に消費税はかかりますか。
労働組合の共済会計とは、組合員から組合費とは別に集めた共済掛金と、そこから支払う弔慰金・見舞金・祝金などの給付金を、一般会計と分けて記録する会計区分のことです。結論から言えば、共済掛金と共済給付金は共済特別会計で区分経理し、一般会計との資金のやり取りは「繰入」として両方の会計に記録するのが基本の形になります。
区分が求められる背景には、共済のために特設した基金を他の目的に回すときは総会の決議が必要とする労働組合法の規定があります。本記事では、チェックオフで組合費と一緒に入金される共済掛金の受入から、給付金の支払、一般会計からの繰入、会社からの寄附の受入までを自社作例の仕訳表で示し、一般会計で払う慶弔見舞金との線引き、共済事業の法人税・消費税の扱い、会計監査で確認される点を整理します。
共済会計を一般会計から切り分ける理由
共済会計は、組合員どうしの相互扶助のために積み立てたお金の出入りを記録する会計です。組合費を財源に団体交渉や教宣活動を行う一般会計とは、お金の集め方も使い道も異なります。同じ帳簿で混ぜて管理すると、共済の積立残高がいくらあるのか、掛金の範囲で給付をまかなえているのかが決算書から読み取れなくなります。
労働組合法が共済基金に置く3つの規定
労働組合法には、共済に関係する規定が3か所あります。会計の区分を考えるうえでは、まずこの3つを押さえておくと整理がしやすくなります。
| 基金の流用 | 共済事業その他福利事業のために特設した基金を他の目的のために流用しようとするときは、総会の決議を経なければなりません(労働組合法 第9条) |
|---|---|
| 共済だけの団体 | 共済事業その他福利事業のみを目的とする団体は、労働組合法上の労働組合に当たりません(労働組合法 第2条第3号) |
| 会計報告 | すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名、現在の経理状況を示す会計報告を、会計監査人の証明書とともに毎年1回以上組合員に公表する旨を規約に定めます(労働組合法 第5条第2項第7号) |
第9条は、共済の基金が「特設」されていることを前提にしています。基金を一般会計の資金と混ぜてしまうと、どこまでが共済の基金で、どの支出が流用に当たるのかを説明できません。共済特別会計を設けて区分経理しておくことが、第9条の手続を守るための土台になります。
また第2条第3号のとおり、共済はあくまで労働組合の活動の一部として行うものです。共済の事業規模が大きくなっても、労働条件の維持改善という主たる目的と並べて位置づけておく必要があります。
共済給付と一般会計の慶弔見舞金の判定表
実務で最も迷いやすいのが、一般会計から出す慶弔見舞金と、共済特別会計から出す共済給付金の線引きです。どちらも組合員の慶事・弔事に支払うお金なので、名称だけでは区別できません。判断の軸は「何を財源にして」「どの規程に基づいて」支払うかです。
| 財源 | 共済給付は組合費とは別に徴収した共済掛金と共済基金。慶弔見舞金は組合費を財源とする一般会計の予算 |
|---|---|
| 支給の根拠 | 共済給付は共済規程に定めた給付事由と給付額。慶弔見舞金は慶弔規程や一般会計の予算書 |
| 記録する会計 | 共済給付は共済特別会計の共済給付金支出。慶弔見舞金は一般会計の慶弔費など |
| 残額の扱い | 共済特別会計の残額は共済基金として翌年度へ繰り越す。一般会計の慶弔費の予算残は一般会計の繰越金に含まれる |
| 他の目的への使用 | 共済基金を他の目的に回すときは総会の決議が必要(労働組合法 第9条)。一般会計の予算の流用は規約・会計規程の手続による |
よくあるのは、共済規程の給付事由に当たらない慶弔(たとえば組合員の親族の範囲外の弔事)に、共済特別会計からお見舞いを出してしまうケースです。共済規程に根拠のない支出は一般会計の慶弔費として処理するか、共済規程を改めてから共済特別会計で支払います。逆に、共済規程で定めた給付を一般会計から払うと、共済の収支が実態より黒字に見えてしまいます。
闘争資金や罷業資金など、共済以外の目的で特別会計を設けている組合も多いはずです。特別会計の全体像や、闘争積立金の繰入・取崩の仕訳は次のコラムで解説しています。
関連コラム労働組合の特別会計と闘争積立金|繰入・取崩の仕訳▸
共済掛金の受入と給付金の支払の仕訳例
ここからは、組合員400名の単位組合が、組合員1人あたり月額400円の共済掛金を組合費と一緒にチェックオフで徴収している自社作例で仕訳を示します。会社からは、組合費と共済掛金を合わせた金額が組合の一般会計の口座に毎月一括で振り込まれる前提です(単位:円)。
一般会計の口座に一括入金されるとき
ある月の入金額は、組合費2,400,000円と共済掛金160,000円(400名×400円)の合計2,560,000円でした。一般会計では、組合費だけを組合費収入とし、共済掛金は共済特別会計へ渡すまでの預り金として記録します。同じ月のうちに共済特別会計の口座へ160,000円を振り替えた時点で、預り金を取り崩します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 2,560,000 | 組合費収入 | 2,400,000 |
| 預り金 | 160,000 | ||
| 預り金 | 160,000 | 現金預金 | 160,000 |
共済掛金をいったん一般会計の組合費収入に含めてから後で振り替える処理は避けます。一般会計の収入が共済掛金の分だけ膨らみ、予算との比較や組合費の使途の説明がずれてしまうためです。月末に預り金の残高が0円になっているかを確かめると、振替漏れにすぐ気づけます。
共済特別会計での受入と給付
共済特別会計の側では、振り替えられた160,000円を共済掛金収入として記録します。同じ月に、共済規程に基づいて組合員本人の死亡弔慰金120,000円、長期療養の見舞金30,000円、結婚祝金10,000円を支払ったとします。給付金は給付事由ごとに科目を分けておくと、事由別の給付実績を翌年度の掛金や給付額の見直しに使えます。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 160,000 | 共済掛金収入 | 160,000 |
| 弔慰金支出 | 120,000 | 現金預金 | 160,000 |
| 傷病見舞金支出 | 30,000 | ||
| 結婚祝金支出 | 10,000 |
給付金の支払では、共済規程の給付事由に当たることを示す申請書と、死亡診断書の写しや療養期間がわかる書類などの証憑をそろえて保存します。会計監査では、給付額が規程の金額表と一致しているか、同じ事由で二重に支給していないかが確かめられます。
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共済特別会計への繰入と会社からの寄附
一般会計から共済特別会計へ繰り入れるとき
大規模な災害で給付が重なった年度などは、共済掛金だけでは給付をまかなえないことがあります。大会で承認された予算の範囲で一般会計から共済特別会計へ資金を移す場合、一般会計では特別会計繰入金支出、共済特別会計では一般会計繰入金収入として、両方の会計に同じ金額を記録します。ここでは一般会計から200,000円を繰り入れ、同じ年度に会社から共済基金への寄附500,000円を受けた例を示します(単位:円)。共済特別会計の仕訳は次のとおりです。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 700,000 | 一般会計繰入金収入 | 200,000 |
| 寄附金収入 | 500,000 |
このとき一般会計側では、借方に特別会計繰入金支出200,000円、貸方に現金預金200,000円を記録します。一般会計の繰入金支出と共済特別会計の繰入金収入の金額が一致していることは、決算で必ず照合する項目です。食い違いがあれば、どちらかの記帳漏れか、振替日のずれを疑います。
会社からの寄附を共済基金に受け入れるとき
使用者が労働組合の運営のための経費の支払に経理上の援助を与えることは不当労働行為として禁じられていますが、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附は、その例外とされています(労働組合法 第7条第3号)。労働組合の定義の側でも、同じ基金への使用者の寄附は経理上の援助から除かれています(労働組合法 第2条第2号)。
この例外は、寄附が実際に共済などの福利の支出に使われることが前提です。会社からの寄附を一般会計で受けて活動費に充てると、例外の範囲を外れるおそれがあります。会社からの寄附は共済特別会計で受け入れ、給付の財源になっていることを帳簿で示せるようにしておきます。また、会計報告には主要な寄附者の氏名を示すこととされているため(労働組合法 第5条第2項第7号)、決算書の注記や附属明細で寄附者がわかるようにしておきます。
会社から組合への経費の援助がどこまで認められるかは、在籍専従や組合事務所の扱いも含めて次のコラムで判定表にしています。
関連コラム労働組合への経費援助【判定表】在籍専従・組合事務所・光熱費の可否▸
共済基金を他の目的に使うときの総会決議
共済事業その他福利事業のために特設した基金を他の目的のために流用しようとするときは、総会の決議を経なければなりません(労働組合法 第9条)。共済特別会計から一般会計へ資金を戻す、共済基金を闘争資金や会館の建設資金に充てる、といった処理がこれに当たります。
一方で、共済規程に定めた給付事由に基づく給付金の支払は、基金の本来の目的に沿った支出なので流用には当たりません。判断に迷うのは、共済規程に書かれていない新しい給付を始める場合です。規程の改正で給付事由を追加するのか、総会で流用の決議をとるのかは、組合の規約と共済規程の定め方によって変わります。いずれの場合も、議事録に決議の内容と金額を残し、会計監査で示せるようにしておくことが欠かせません。
なお、条文が総会の決議を求めているのは共済などの福利事業の基金です。決議を経ないまま共済基金を一般会計へ戻すと、手続の不備として会計監査で指摘を受けるだけでなく、組合員への説明責任の面でも問題になります。
共済事業の法人税と消費税
法人税は事業の中身ごとに収益事業を判定
労働組合の法人税は、法人格の有無にかかわらず、公益法人等及び人格のない社団等の収益事業課税の枠組みで考えます。課税の対象になるのは収益事業から生じた所得です。共済事業として行う事業も、事業の内容に応じて全部又は一部が収益事業に該当するかどうかを判定することとされています(法人税基本通達 15-1-3)。この通達は人格のない社団等にも適用されます(法人税基本通達 15-1-1)。
実務で注意したいのは、共済の一環として行う物品のあっせんや、保険の取次ぎで手数料を受け取るような事業です。「共済」という名前が付いていても、事業の中身が収益事業の業種に当たれば申告の対象になり得ます。共済特別会計の中に収益事業に当たる取引が混ざっている場合は、法人税の区分経理も必要になります。
関連コラム労働組合の税金と収益事業課税|法人税・消費税の取扱い▸
消費税は共済掛金が非課税、給付金は不課税
消費税では、共済掛金と給付金で扱いが分かれます。保険料に類する共済掛金には、任意の互助組織による団体がその構成員のために行う任意の共済制度に基づいて構成員が負担する共済掛金も含まれるとされています(消費税法基本通達 6-3-3)。ここでいう共済制度は、人の生死・傷害や資産の損失その他偶発的な事由の発生を共済金の支払事由とするものに限られます。労働組合が組合員から受け取る共済掛金がこれに当たれば、非課税取引として扱います。
組合員に支払う共済金や見舞金・祝金は、対価を得て行う取引ではないため消費税の課税の対象外(不課税)です(国税庁 タックスアンサー No.6157)。課税仕入れには当たらないので、消費税の申告をしている組合でも仕入税額控除の対象に含めません。共済掛金の扱いは、特定収入の調整計算で収入をどう区分するかにも関係します。
関連コラム労働組合の消費税|特定収入の調整計算と仕入税額控除の計算例▸
共済会計の会計監査チェックリスト
共済特別会計も会計報告の一部であり、会計監査人の証明の対象になります(労働組合法 第5条第2項第7号)。決算前に次の項目を確認しておくと、監査で指摘を受けやすい点を先回りして整えられます。
- 共済規程に、給付事由・給付額・申請手続・掛金額が書かれていて、大会や執行委員会の承認日がわかる
- チェックオフの入金明細から、組合費と共済掛金の内訳を月ごとに確認できる
- 一般会計の預り金(共済掛金)の残高が、期末に0円か、未振替額として説明できる金額になっている
- 共済掛金収入の年間合計が、組合員数の推移と掛金額から計算した金額とおおむね一致している
- 給付金ごとに申請書と証憑があり、給付額が共済規程の金額表と一致している
- 一般会計の特別会計繰入金支出と、共済特別会計の一般会計繰入金収入が同額になっている
- 共済基金を他の目的に使った支出について、総会の決議の議事録がある(労働組合法 第9条)
- 会社からの寄附が共済特別会計で受け入れられ、寄附者が会計報告で示されている
- 共済特別会計の期末残高と、共済用の預金口座の残高証明書の金額が一致している
このうち、最後の残高の一致は特に重要です。共済用の口座を一般会計の口座と分けていない組合では、共済基金の残高を帳簿の上でしか確かめられません。口座を分けておくと、共済基金が他の目的に使われていないことを預金残高で裏付けられます。
まとめ
労働組合の共済会計は、組合費とは別に集めた共済掛金と、それを財源とする給付金を、共済特別会計で区分して記録する仕組みです。共済の基金を他の目的に回すときは総会の決議が必要とされており(労働組合法 第9条)、区分経理はこの手続を守るための前提になります。
仕訳では、チェックオフで一括入金された共済掛金を一般会計の預り金で受けて共済特別会計へ振り替えること、給付金は共済規程の給付事由ごとに科目を分けること、一般会計との資金のやり取りは繰入として両方の会計に同額で記録することの3点が要になります。会社からの寄附は共済特別会計で受け入れ、寄附者を会計報告で示します。税務では、共済事業も中身ごとに収益事業を判定し、消費税は共済掛金が非課税、給付金が不課税という違いを押さえておきます。
共済規程の作りや給付の実態は組合ごとに大きく異なります。具体的なケースの判断に迷われる場合は、公認会計士へのご相談をおすすめします。
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- e-Gov法令検索 労働組合法
- 国税庁 法人税基本通達 第15章第1節第1款 共通事項
- 国税庁 消費税法基本通達 第6章第3節 利子を対価とする貸付金等関係
- 国税庁 No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例
よくある質問
共済掛金は必ず特別会計で処理しなければなりませんか。
労働組合法に特別会計の設置を直接義務づける規定はありません。ただし、共済のために特設した基金を他の目的に流用するときは総会の決議が必要とされており(労働組合法 第9条)、基金の範囲を明確にするために共済特別会計を設けて区分経理するのが実務上の基本です。
共済掛金をいったん組合費収入に含めて記帳してもよいですか。
おすすめしません。一般会計の収入が共済掛金の分だけ大きく見え、予算との比較や組合費の使途の説明がずれてしまいます。一括入金の場合は、一般会計では共済掛金を預り金として受け、共済特別会計へ振り替えた時点で取り崩す処理が明快です。
共済基金から一般会計へお金を戻すには何が必要ですか。
共済事業その他福利事業のために特設した基金を他の目的に流用する場合に当たるため、総会の決議を経る必要があります(労働組合法 第9条)。決議の内容と金額を議事録に残し、一般会計では特別会計繰入金収入、共済特別会計では繰出しの支出として、両方の会計に同額を記録します。
会社から共済基金への寄附を受けても問題ありませんか。
経済上の不幸や災厄を防止・救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附は、不当労働行為となる経理上の援助から除かれています(労働組合法 第7条第3号)。寄附は共済特別会計で受け入れて給付の財源とし、主要な寄附者の氏名を会計報告で示します(労働組合法 第5条第2項第7号)。
組合員から受け取る共済掛金に消費税はかかりますか。
任意の互助組織による団体が構成員のために行う任意の共済制度に基づく共済掛金は、保険料に類する共済掛金に含まれるとされ(消費税法基本通達 6-3-3)、非課税取引として扱います。対象は、人の生死・傷害や資産の損失その他偶発的な事由を支払事由とする共済制度です。組合員に支払う共済金や見舞金は不課税です。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



