労働組合のカンパの会計処理【仕訳例】受入れ・支出と主要な寄附者の公表
目次
労働組合が受け取るカンパは「寄附金収入」として収入に計上し、主要な寄附者の氏名を会計報告で示すのが基本です。一方、組合員から集めて被災地や他の組合へそのまま送るカンパは、組合の財源ではないため「預り金」で受けて送金時に取り崩す処理が向いています。組合の予算から他団体へ送るカンパは、支出として記録します。
カンパは現金で集まることが多く、記録が後回しになりやすいお金です。ところが労働組合法は、すべての財源と使途に加えて主要な寄附者の氏名を会計報告で示すことを規約に定めるよう求めています。本記事では、カンパを「受け入れる」「預かって送る」「組合から出す」の3つの型に分け、型ごとの仕訳例、主要な寄附者の示し方、使用者からの寄附の注意点、税務と会計監査で確認される点を整理します。
カンパの会計処理は3つの型で判定
「カンパ」は法令上の用語ではなく、組合の現場で使われる呼び名です。会計で扱うときは、名前ではなくお金が誰のものとして組合に入り、誰の判断で使われるかで処理を決めます。労働組合の会計には企業会計基準のような法令上の仕訳ルールがないため、以下は一般的な複式簿記に沿った整理と、当事務所の作例です。
| 受け入れるカンパ | 友好団体や個人から組合の活動資金として受け取るお金。組合が使い道を決められるので、寄附金収入として収入に計上する |
|---|---|
| 預かって送るカンパ | 組合員から集めて、被災地の救援や他の組合の支援のために、集めた全額を決まった送り先へ届けるお金。組合の財源ではないので預り金で受ける |
| 組合から出すカンパ | 組合の予算から他団体の争議支援や災害救援に送るお金。組合の使途なので支出として記録する |
判定で迷うのは、組合員から集めたお金を、組合の名義で、組合が送り先や時期を決めて送るケースです。集めた時点で「〇〇救援のため全額送金」と目的と送り先が決まっていれば預かって送る型、執行委員会が後から配分先を決めるなら受け入れる型と考えると整理しやすくなります。どちらで処理するかは、カンパを呼びかける文書の段階で決めておくと記帳がぶれません。
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受け入れるカンパの仕訳例
受け入れるカンパは、組合費とは科目を分けて寄附金収入で記録します。組合費収入に混ぜると、会計報告で寄附の総額も寄附者も示せなくなるためです。労働組合法は、すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告を、会計監査人の証明書とともに少なくとも毎年1回組合員に公表する旨を、規約に含めるよう定めています(労働組合法 第5条第2項第7号)。
自社作例として、争議中の組合が、友好関係にある労働組合から300,000円、組合OBの個人から50,000円の支援カンパを、それぞれ組合の普通預金口座への振込で受けたとします(単位:円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 350,000 | 寄附金収入 | 350,000 |
仕訳は1行でも、帳簿の摘要や補助簿には寄附者の名称・金額・受領日・寄附の目的を1件ずつ残します。決算の段階で通帳の振込名義からさかのぼって寄附者を調べると、名義が略称だったり個人名だけだったりして特定できないことがあります。受け取った時点で寄附者台帳に記録し、必要に応じて受領書を発行しておくと、会計報告と監査の両方で手戻りがありません。
預かって送るカンパの仕訳例
組合員から集めて全額を送り先へ届けるカンパは、組合が自由に使えるお金ではありません。預り金で受け、送金した時点で取り崩すと、組合の収支計算書が膨らまず、組合費の使途の説明もぶれません。
自社作例として、職場で災害被災地への救援カンパを呼びかけ、現金で128,000円が集まったとします。全額をいったん組合の口座へ入金し、同じ月のうちに上部団体の救援口座へ送金しました(単位:円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 128,000 | 預り金 | 128,000 |
| 預り金 | 128,000 | 現金預金 | 128,000 |
預り金で処理したカンパは収支計算書には出てきませんが、記録を省いてよいわけではありません。集金の記録、送金の控え、送り先の受領の連絡を一式で保存し、決算日に預り金の残高が残っていれば「未送金のカンパ」として内容を説明できるようにしておきます。年度内に送金が終わらなかったときは、貸借対照表の預り金に残高が出るので、その内訳を明細で示すと組合員にも伝わりやすくなります。
なお、集めたお金を組合の名義で寄附すると大会や執行委員会で決め、送り先や金額の配分を組合が判断する場合は、預かって送る型ではありません。この場合は寄附金収入とカンパ支出を両建てで記録する総額の処理のほうが、実態に合います。
組合から出すカンパの仕訳例
組合の予算から他団体へカンパを送るのは、組合の使途そのものです。予算書に科目を設けておき、執行委員会の決定など会計規程の手続を経て支出します。科目名は「カンパ支出」「支援金支出」など、組合員が読んで内容がわかる名前にします。
自社作例として、一般会計の予算から、争議中の他の労働組合へ支援カンパ100,000円を振り込んだとします(単位:円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| カンパ支出 | 100,000 | 現金預金 | 100,000 |
支出の証憑として、支出を決めた執行委員会の議事録、振込の控え、送り先からの受領書や礼状を保存します。闘争資金や犠牲者救済資金などの特別会計を設けている組合では、その特別会計の目的に合うカンパであれば特別会計から支出します。一般会計の予算で送るのか、特別会計から送るのかは、カンパの目的と各会計の規程で決まります。
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主要な寄附者の氏名の示し方
労働組合法が求める会計報告の中身
主要な寄附者の氏名は、会計報告に示すべき事項として、すべての財源及び使途、現在の経理状況と並んで労働組合法に挙げられています(労働組合法 第5条第2項第7号)。この会計報告は、組合員が委嘱した職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表される必要があります(労働組合法 第5条第2項第7号)。
この規定は、規約に含めなければならない事項の1つです。労働組合が労働組合法に規定する手続に参与し、救済を受けるには、第2条と第5条第2項に適合することを労働委員会で立証しなければなりません(労働組合法 第5条第1項)。不当労働行為の救済申立てや法人登記のための資格証明書の交付を受ける場面などでは、過去に適格の決定を受けた組合でも、その都度資格審査を受ける必要があるとされています。
「主要な」の線引きは会計規程で決める
労働組合法は、どの寄附者が「主要な」寄附者に当たるかの基準を定めていません。そのため、何を主要とみなすかは組合が自ら決め、毎年同じ基準で示すことが大切です。実務では次のような決め方が考えられます。
- 1件あたりの金額で決める(例:1回10万円以上の寄附者)
- 年間の累計額で決める(例:同じ寄附者からの年間合計が10万円以上)
- 寄附金収入の総額に対する割合で決める(例:寄附金収入の1割以上を占める寄附者)
- 金額にかかわらず、使用者からの寄附はすべて示す
当事務所では、金額基準と「使用者からの寄附は全件」を組み合わせ、会計規程か会計報告の注記に基準そのものを書いておく形をおすすめしています。基準を明記しておけば、少額の寄附者を載せなかった理由を説明でき、年度ごとに載せ方が変わることも防げます。小規模な組合で寄附の件数が少ない場合は、全件を載せてしまうのがいちばん確実です。
会計報告への載せ方の例
労働組合法には会計報告の様式の定めがありません。当事務所では、主要な寄附者を収支計算書の注記か、寄附金収入の明細表で示す形をおすすめしています。明細表にする場合は、次の項目をそろえておくと読み手が迷いません。
| 寄附者 | 団体名または個人の氏名。団体は略称でなく正式名称で書く |
|---|---|
| 受領日 | 寄附を受けた日。複数回に分かれる場合は年間の合計とあわせて示す |
| 金額 | 寄附者ごとの金額。主要な寄附者以外は「その他」としてまとめた合計を示す |
| 目的・受入れ会計 | 争議支援、災害救援などの目的と、一般会計・特別会計のどちらで受けたか |
| 記載の基準 | 主要な寄附者として載せた基準(例:年間合計10万円以上、使用者からの寄附は全件) |
明細表の「その他」の合計と主要な寄附者の金額を足すと、収支計算書の寄附金収入と一致する形にしておくと、会計監査でも突き合わせが一度で済みます。個人の寄附者の住所まで載せるかは、組合員への公表範囲を踏まえて組合で判断します。
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使用者からの寄附・カンパの注意点
使用者からのお金は、カンパという名目でも慎重に扱います。団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受ける団体は、労働組合法上の労働組合に当たらないとされています(労働組合法 第2条第2号)。使用者の側から見ても、労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えることは不当労働行為として禁じられています(労働組合法 第7条第3号)。
ただし、厚生資金や、経済上の不幸もしくは災厄を防止・救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附は、この経理上の援助から除かれています(労働組合法 第2条第2号、第7条第3号)。たとえば、組合員の災害見舞いに充てる福利基金へ会社が寄附する場面が考えられます。受け入れるときは次の点を確認しておきます。
- 寄附の目的が厚生資金または福利その他の基金に限られていることを、寄附の申出書や覚書で確認できる
- 寄附を福利基金など目的に合う会計で受け、一般会計の活動費と混ざらないようにしている
- 使用者を主要な寄附者として会計報告に記載している(労働組合法 第5条第2項第7号)
共済事業その他福利事業のために特設した基金を、他の目的のために流用しようとするときは、総会の決議を経なければなりません(労働組合法 第9条)。会社からの寄附で積み立てた福利基金を争議の資金に回すには、この総会の決議が必要です。さらに、使用者の寄附が経理上の援助から除かれるのは福利その他の基金に実際に用いられる場合に限られるため、福利以外の目的に回すと経理上の援助に当たるおそれがあります(労働組合法 第2条第2号)。
また、会社が給与からカンパを差し引いて組合に渡す形で集金に協力する場合は、賃金の一部を控除して支払うための書面による協定などの根拠が必要です(労働基準法 第24条第1項)。組合費のチェックオフ協定が対象とする控除項目にカンパが含まれているかを確認しておきます。
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カンパにかかる税務の確認点
法人である労働組合は法人税法上の公益法人等に、法人でない労働組合は、代表者の定めがあれば人格のない社団等に当たります(法人税法 第2条第6号・第8号、別表第二)。どちらも、収益事業から生じた所得以外の所得には法人税が課されません(法人税法 第6条)。収益事業とは、販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいいます(法人税法 第2条第13号、法人税法施行令 第5条第1項)。組合が活動資金として受け取るカンパそのものは、こうした事業の対価ではありません。
注意したいのは、カンパを集める手段として物品を売る場合です。支援のためのグッズ販売やバザーを継続して行うと、物品販売業として収益事業に当たる可能性があります(法人税法施行令 第5条第1項第1号)。新たに収益事業を開始した公益法人等や人格のない社団等は、開始した日以後2か月以内に収益事業開始届出書を所轄税務署長へ提出する必要があります(法人税法 第150条第1項)。
消費税の課税事業者である組合では、資産の譲渡等の対価以外の収入のうち政令で定めるものを除いたものが特定収入とされ、仕入税額控除の調整計算に関係します(消費税法 第60条第4項)。寄附金収入はこの調整計算の対象になりうるため、カンパの受入れが多い年度は特定収入の割合を確認しておきます。
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カンパの会計監査チェックリスト
寄附金収入は、会計報告で主要な寄附者の氏名まで示す科目です。その会計報告は会計監査人による正確であることの証明書とともに公表されるため(労働組合法 第5条第2項第7号)、監査でも確認の手間がかかりやすい科目といえます。決算前に次の項目を確認しておくと、監査で指摘を受けやすい点を先回りして整えられます。
- カンパを呼びかけた文書に、目的・送り先・受入れ方(寄附金収入か預り金か)が書かれている
- 寄附者台帳の金額の合計が、収支計算書の寄附金収入と一致している
- 主要な寄附者の記載基準が会計規程か注記に書かれ、前年度と同じ基準で示されている
- 使用者からの寄附がある場合、目的が厚生資金または福利その他の基金に限られていることを書面で確認できる
- 預り金のカンパについて、集金記録・送金控え・送り先の受領連絡がそろっている
- 期末の預り金残高のうち、未送金のカンパの内訳を説明できる
- 組合から出したカンパに、執行委員会の決定など会計規程どおりの承認記録がある
- カンパ集めのための物品販売について、収益事業に当たるかを検討した記録がある
現金で集めたカンパは、集金した人と入金した人が同じだと、金額の誤りや紛失に気づきにくくなります。職場ごとの集金袋に集金者と金額を書き、会計担当者が入金時に別の人と一緒に数える、といった二人確認の手順を会計規程に入れておくと安心です。
まとめ
労働組合のカンパは、組合が使い道を決められるかどうかで処理が分かれます。組合の活動資金として受け取るカンパは寄附金収入、集めた全額を決まった送り先へ届けるカンパは預り金、組合の予算から送るカンパは支出として記録します。仕訳例はいずれも一般的な複式簿記に沿った作例で、法令上の決まった仕訳があるわけではありません。
会計報告では、すべての財源と使途に加えて主要な寄附者の氏名を示す必要があります(労働組合法 第5条第2項第7号)。「主要な」の基準は法令に定めがないため、会計規程や注記で基準を明記し、毎年同じ基準で示すことが要になります。使用者からの寄附は福利その他の基金に限って認められており(労働組合法 第2条第2号、第7条第3号)、受け入れる会計と目的の確認が欠かせません。
カンパの集め方や送り先は組合ごとに異なり、寄附の目的によっては判断が分かれることもあります。具体的なケースの判断に迷われる場合は、公認会計士へのご相談をおすすめします。
労働組合監査の無料見積り・ご相談はこちら参考文献
- e-Gov法令検索 労働組合法
- 中央労働委員会 労働組合の資格審査について
- e-Gov法令検索 労働基準法
- e-Gov法令検索 法人税法
- e-Gov法令検索 法人税法施行令
- 国税庁 C1-6 公益法人等又は人格のない社団等の収益事業開始等の届出
- e-Gov法令検索 消費税法
よくある質問
組合員から集めたカンパは、組合の収入に計上しなければなりませんか。
集めた全額を決まった送り先へ届けるカンパは、組合が使い道を決められるお金ではないため、預り金で受けて送金時に取り崩す処理が向いています。一方、組合の名義で寄附すると決め、送り先や配分を組合が判断する場合は、寄附金収入とカンパ支出を両建てで記録するほうが実態に合います。
主要な寄附者とは、いくら以上の寄附者を指しますか。
労働組合法は、会計報告で主要な寄附者の氏名を示すことを規約に定めるよう求めていますが(労働組合法 第5条第2項第7号)、金額の基準は定めていません。1件あたりの金額や年間の累計額などで組合が基準を決め、会計規程や注記に明記したうえで、毎年同じ基準で示すのが実務的です。
会社からカンパや寄附を受け取っても問題ありませんか。
労働組合の運営のための経費につき使用者から経理上の援助を受けることは認められていません。ただし、厚生資金や、経済上の不幸もしくは災厄を防止・救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附は除かれています(労働組合法 第2条第2号、第7条第3号)。受け入れる場合は目的に合う会計で受け、主要な寄附者として会計報告で示します。
受け取ったカンパに法人税はかかりますか。
労働組合は法人税法上、法人であれば公益法人等、法人でなければ人格のない社団等に当たり、収益事業から生じた所得以外の所得には法人税が課されません(法人税法 第6条)。カンパそのものは事業の対価ではありませんが、カンパ集めのためにグッズ販売やバザーを継続して行うと、物品販売業として収益事業に当たる可能性があります(法人税法施行令 第5条第1項第1号)。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



