03-6773-5062

受付時間 平日 10:00〜18:00

お問い合わせ フォームは24時間受付
会計監査

会計監査人の設置義務【判定フロー表】機関設計別の線引きと任意設置

目次
  1. 設置義務が生じる2つの入口
  2. 機関設計・規模別の判定フロー表
  3. 大会社に当たるかの判定基準
  4. 委員会型の機関設計を選んだ場合
  5. 設置義務がない会社の任意設置
  6. 任意設置により得られる会社法上の取扱い
  7. 任意設置で連動して必要になる機関
  8. 設置義務が生じた場合の手続と登記
  9. 判定でつまずきやすい論点
  10. まとめ
  11. 参考文献
  12. よくある質問
  13. 資本金がちょうど5億円の場合、大会社に該当しますか。
  14. 大会社に該当しなくなった場合、会計監査人を置かないことはできますか。
  15. 非公開の中小企業が監査等委員会設置会社へ移行すると、会計監査人は必要ですか。
  16. 会計監査人を任意で設置すると、他に必要になる機関はありますか。

会計監査人の設置義務は、「大会社に当たるか」と「監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社に当たるか」の2つの入口だけで決まります。どちらにも当たらない株式会社には設置義務がなく、置きたい場合は定款で任意に設置します。公開会社か非公開会社かは、会計監査人の要否そのものではなく、監査役会まで併せて必要になるかどうかを分ける論点です。

この記事では、会社法上の株式会社について、機関設計と規模の区分ごとに設置義務の有無を1枚の判定フロー表にまとめます。あわせて、任意設置を選んだときに連動して必要になる機関、設置義務が生じた場合の登記の期限、実務で見落とされやすい論点まで整理します。なお、社会福祉法人・医療法人・学校法人・公益法人など会社法以外の法律で会計監査人の設置基準が定められている法人は、本記事の対象外です。

設置義務が生じる2つの入口

会社法は、株式会社の機関設計を原則として定款自治に委ねています。取締役会・会計参与・監査役・監査役会・会計監査人・監査等委員会・指名委員会等は、定款の定めによって置くことができる機関です(会社法 第326条第2項)。つまり、会計監査人は本来「置くこともできる」機関であり、一定の会社についてだけ例外的に設置が義務づけられる構造になっています。

その例外は2つです。1つ目は規模による義務で、大会社は会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条第1項、第2項)。2つ目は機関設計による義務で、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は、規模にかかわらず会計監査人を置かなければなりません(会社法 第327条第5項)。この2つのどちらにも当たらない株式会社には、会社法上の設置義務はありません。

会計監査人は公認会計士または監査法人でなければならず、計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を監査して会計監査報告を作成します(会社法 第337条第1項、第396条第1項)。したがって設置義務の判定は、そのまま監査法人の選定に着手すべきかどうかの判断につながります。

関連コラム法定監査と任意監査の違い|種類一覧と対象会社の判定▸

機関設計・規模別の判定フロー表

判定は次の順序で行うと迷いません。第1に、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社かどうかを見ます。第2に、大会社に当たるかどうかを見ます。第3に、大会社であれば公開会社かどうかで監査役会の要否が分かれます。第1と第2のいずれにも当たらなければ、会計監査人の設置は任意です。

指名委員会等設置会社 規模にかかわらず設置義務あり(会社法 第327条第5項)
監査等委員会設置会社 規模にかかわらず設置義務あり(会社法 第327条第5項)
公開会社である大会社
(委員会型を除く)
設置義務あり。監査役会も併せて設置義務あり(会社法 第328条第1項)
公開会社でない大会社 設置義務あり。監査役会は義務ではない(会社法 第328条第2項)
大会社でない公開会社 設置義務なし。定款の定めにより任意設置が可能(会社法 第326条第2項)
大会社でない非公開会社 設置義務なし。定款の定めにより任意設置が可能(会社法 第326条第2項)

表のとおり、公開会社かどうかは会計監査人の要否を左右しません。公開会社でない大会社にも会計監査人の設置義務があり、違いは監査役会まで必要になるかどうかだけです(会社法 第328条第2項)。非公開の同族会社だから会計監査人は不要だ、という理解は誤りで、負債規模が大きい会社ほどこの誤解が実務上の事故につながります。

大会社に当たるかの判定基準

大会社とは、次の2つの要件のいずれかに該当する株式会社をいいます(会社法 第2条第6号)。いずれか一方を満たせば大会社であり、両方を満たす必要はありません。

資本金基準 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること(会社法 第2条第6号イ)
負債基準 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であること(会社法 第2条第6号ロ)

判定の基礎になるのは最終事業年度に係る貸借対照表です(会社法 第2条第6号)。期中の残高や見込みではなく、確定した直近の計算書類の数値で判断します。連結ではなく単体の貸借対照表である点も、判定を誤りやすいところです。負債の部に計上した額の合計額をどう集計するか、どの科目が対象になるかの詳細は、別のコラムで扱っています。

関連コラム大会社の判定|負債200億円に含める科目一覧と計算例▸

資本金基準については、資金調達の設計段階で結論が変わる余地があります。株式の発行に際して払込みを受けた財産の額は原則として全額が資本金となりますが、その2分の1を超えない額は資本金として計上せず、資本準備金として計上することができます(会社法 第445条第1項から第3項)。増資の規模によっては、払込額の一部を資本準備金に振り分けることで資本金が5億円未満にとどまり、大会社に該当しないという整理になります。実務では、増資の実行後に登記を見て初めて大会社化に気づく例があるため、払込金額と資本金組入額は増資の意思決定の段階で確認しておくことをおすすめします。

委員会型の機関設計を選んだ場合

監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければなりません(会社法 第327条第5項)。この義務は規模と無関係で、資本金1,000万円の非公開会社であっても、監査等委員会設置会社へ移行した時点で会計監査人が必要になります。これらの会社は監査役を置くことができないため(会社法 第327条第4項)、監査役に代わる会計の専門家による監査を法が求めている、という建て付けです。

実務で目立つのは、社外取締役の活用やガバナンス体制の見直しを目的に監査等委員会設置会社への移行を検討し、会計監査人の設置義務が付いてくることを後から知るケースです。移行は株主総会の特別決議による定款変更で行いますが、会計監査人の選任議案もあわせて用意しなければ、移行と同時に法定の機関設計を欠くことになります。移行を議題にする株主総会の3か月から6か月前には、監査法人の選定と受嘱の可否確認に着手しておくと安全です。

なお、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は取締役会を置かなければならず(会社法 第327条第1項第3号、第4号)、機関設計の変更は会計監査人だけで完結しません。移行の検討では、取締役会・委員会・会計監査人の3点を一体で設計する必要があります。

公認会計士事務所プライムパートナーズ 会社法監査 会社法監査・会計監査人の選任は公認会計士へ 大手品質×中堅価格の会社法監査|公認会計士事務所プライムパートナーズ 無料見積り・ご相談はこちら

設置義務がない会社の任意設置

大会社でも委員会型でもない株式会社は、定款の定めによって会計監査人を置くことができます(会社法 第326条第2項)。任意設置であっても、いったん会計監査人設置会社になれば、会計監査人の権限・資格・任期に関する会社法の規律はすべて同じように適用されます(会社法 第337条第1項、第396条第1項)。

任意設置により得られる会社法上の取扱い

会計監査人設置会社には、計算書類の確定手続について特則があります。取締役会の承認を受けた計算書類が法務省令で定める要件に該当する場合には、定時株主総会の承認は不要となり、取締役が計算書類の内容を報告すれば足ります(会社法 第439条)。決算の確定が株主総会の決議に左右されなくなる点は、実務上の利点です。

また、一定の要件を満たす会計監査人設置会社は、剰余金の配当などを取締役会が決定できる旨を定款で定めることができます(会社法 第459条第1項)。この定款の定めは、最終事業年度に係る計算書類が法令および定款に従い財産および損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合に限り効力を有します(会社法 第459条第2項)。機動的な配当を可能にしたい会社にとって、会計監査人の任意設置はその前提条件になります。

任意設置で連動して必要になる機関

見落としが多いのが、会計監査人を置くと監査役も必要になる点です。会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除く)は、監査役を置かなければなりません(会社法 第327条第3項)。会計監査人だけを追加して他の機関構成は据え置く、という設計はできません。

上場準備の局面では、この規律が実務の順序を決めます。監査役の選任、監査役と会計監査人の連携体制、監査役会を置くかどうかの判断を、会計監査人の選任議案と同じ株主総会で整える必要があるためです。定款変更・監査役選任・会計監査人選任の3つを1回の株主総会に収めるスケジュールを、逆算して組むことをおすすめします。

設置義務が生じた場合の手続と登記

会計監査人は株主総会の決議によって選任します(会社法 第329条第1項)。大会社に該当することとなった場合は、定款に会計監査人を置く旨の定めがなければ定款変更も必要になるため、定時株主総会の議案は定款変更と選任の2本立てになります。

会計監査人設置会社であるときは、その旨および会計監査人の氏名または名称が登記事項です(会社法 第911条第3項第19号)。登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店の所在地において変更の登記をしなければなりません(会社法 第915条第1項)。登記を怠ったときは100万円以下の過料に処せられます(会社法 第976条第1号)。設置の意思決定と登記は別の手続であり、株主総会の後に登記申請が止まったまま期限を過ぎる例があるため、総会後の司法書士への依頼まで含めて日程に組み込んでおく必要があります。

関連コラム会計監査人の選任議案と監査役会の同意|記載例と決議要件▸

判定でつまずきやすい論点

設置義務の判定そのものは単純ですが、実務では次の点で判断が止まります。判定を終える前に、一通り確認しておくことをおすすめします。

判定の基礎となる
貸借対照表の取り違え
最終事業年度に係る単体の貸借対照表で判定する。連結の数値や期中の残高で判断しない(会社法 第2条第6号)
非公開会社なら不要
という思い込み
公開会社でない大会社にも設置義務がある。公開・非公開の別で分かれるのは監査役会の要否(会社法 第328条第2項)
委員会型への移行に伴う
義務の発生
移行した時点で規模にかかわらず設置義務が生じる。移行の議案と選任議案はセットで用意する(会社法 第327条第5項)
監査役の設置漏れ 会計監査人設置会社は監査役を置かなければならない。会計監査人だけを追加する設計はできない(会社法 第327条第3項)
変更登記の失念 設置は登記事項であり、変更が生じてから2週間以内に登記する。怠れば過料の対象(会社法 第911条第3項第19号、第915条第1項、第976条第1号)

加えて、大会社であって金融商品取引法の規定により有価証券報告書を提出しなければならない会社は、連結計算書類を作成しなければならず、連結計算書類も会計監査人の監査を受けます(会社法 第444条第3項、第4項)。監査の対象範囲が単体にとどまらないため、監査法人へ見積りを依頼する段階でこの点を伝えておくと、報酬と日程の前提がそろいます。

会社法以外の法律で会計監査人の設置基準が定められている法人は、判定の考え方も基準となる金額も別に定められています。

関連コラム公益法人の監査義務一覧|非営利法人7形態の会計監査人設置基準▸

まとめ

会計監査人の設置義務は、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社に当たるか(会社法 第327条第5項)、大会社に当たるか(会社法 第328条第1項、第2項)の2点で決まります。大会社の判定は、最終事業年度に係る貸借対照表の資本金5億円以上または負債合計200億円以上のいずれかです(会社法 第2条第6号)。どちらの入口にも当たらない会社は、定款の定めによる任意設置となります(会社法 第326条第2項)。

判定を終えたら、監査役の設置(会社法 第327条第3項)、株主総会での選任(会社法 第329条第1項)、2週間以内の変更登記(会社法 第915条第1項)まで一続きの段取りとして組み立ててください。増資や機関設計の変更を予定している会社では、意思決定の前に設置義務の有無を確認しておくと、決算期に慌てずに済みます。自社の区分の当てはめや監査法人の選定時期など、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

会社法監査の無料見積り・ご相談はこちら

参考文献

よくある質問

資本金がちょうど5億円の場合、大会社に該当しますか。

該当します。大会社の資本金基準は「資本金として計上した額が5億円以上であること」と定められており、5億円ちょうども含まれます(会社法 第2条第6号イ)。負債基準も「200億円以上」であるため、同じく200億円ちょうどで該当します(会社法 第2条第6号ロ)。

大会社に該当しなくなった場合、会計監査人を置かないことはできますか。

他に設置義務が生じる事由がなければ、会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止することで任意設置をやめられます。この定款変更をした場合、会計監査人の任期は定款変更の効力が生じた時に満了します(会社法 第338条第3項)。廃止も登記事項の変更にあたるため、変更の登記が必要です(会社法 第911条第3項第19号、第915条第1項)。

非公開の中小企業が監査等委員会設置会社へ移行すると、会計監査人は必要ですか。

必要です。監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は、会社の規模や公開・非公開の別にかかわらず会計監査人を置かなければなりません(会社法 第327条第5項)。移行を決議する株主総会で、会計監査人の選任議案もあわせて決議する必要があります(会社法 第329条第1項)。

会計監査人を任意で設置すると、他に必要になる機関はありますか。

監査役が必要になります。会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除く)は、監査役を置かなければならないと定められているためです(会社法 第327条第3項)。会計監査人だけを追加して機関構成をそのままにすることはできません。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

Office

公認会計士事務所プライムパートナーズ

大手監査法人出身の公認会計士が、会計・監査・株価算定のご相談をお受けしています。

  • オフィスが入居する IsaI AkasakA のエントランス
  • 代表 公認会計士 島本 雅史
  • プライムパートナーズの会議室
事務所名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
所在地
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2-33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062(平日 10:00〜18:00)
対応責任者
公認会計士 島本 雅史