IPO監査とは|N-2期からの逆算スケジュールと監査契約までの流れ
目次
- IPO監査の定義と法令上の位置づけ
- IPO監査を引き受けられる監査事務所の要件
- N-3期以前から申請期までの逆算スケジュール
- 監査対象期間に入ってからの依頼は難しい
- ショートレビューから監査契約までの流れ
- 独立性の制約とアドバイザリー契約の切替え
- 監査法人がIPO監査の受嘱を判断する着眼点
- CFO・管理部長を置くべき時期
- 監査対象期間に入る前に整える準備項目
- 上場後の内部統制監査に関する経過的な取扱い
- 監査法人が決まらないときの確認手順
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- IPO監査は何期分必要ですか。
- ショートレビューは監査と同じものですか。
- どの監査事務所でもIPO監査を依頼できますか。
- N-2期に入ってからでも監査法人を探せますか。
- 上場すると内部統制監査もすぐに必要になりますか。
- 会社法監査とIPO監査は別に受ける必要がありますか。
IPO監査とは、上場申請に向けて、申請期の直前2期間(N-2期・N-1期)の財務諸表について監査法人または公認会計士から監査証明を受ける一連の会計監査をいいます。上場時に提出する有価証券届出書などの財務計算に関する書類には、特別の利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明が必要とされており、上場申請の段階ではこれに準じた監査(実務上「準金商法監査」と呼ばれます)を受けることになります(金融商品取引法 第193条の2第1項)。
IPO監査で最もつまずきやすいのは、監査の中身そのものではなく時間軸です。監査対象期間であるN-2期の期首に入ってしまってから監査法人を探し始めると、遡って監査を受けること自体が難しく、上場スケジュールが1年単位で後ろ倒しになります。本記事では、N-3期以前から申請期までの逆算スケジュール表、ショートレビューから監査契約までの手順、監査法人が受嘱を判断するときの着眼点、そして監査対象期間に入る前に整えておきたい準備項目を、法令と公的機関の公表資料だけを根拠に整理します。
IPO監査の定義と法令上の位置づけ
IPO監査という言葉は法令上の用語ではなく、上場準備の過程で受ける会計監査の総称として使われています。実務では、上場申請書類に添付する財務諸表を対象とする監査と、上場時に金融商品取引法に基づいて提出する書類を対象とする監査が連続して行われます。
上場までに関係してくる監査を整理すると、次のように分かれます。
| 準金商法監査 | 上場申請書類に添付する直前2期間(N-2期・N-1期)の財務諸表を対象とする監査。金融商品取引法に準じた基準で実施される |
|---|---|
| 金商法監査 | 上場時に提出する有価証券届出書、上場後の有価証券報告書に含まれる財務計算に関する書類を対象とする監査(金融商品取引法 第193条の2第1項) |
| 会社法監査 | 会計監査人設置会社の計算書類・附属明細書・連結計算書類を対象とする監査(会社法 第396条第1項)。大会社は会計監査人の設置義務がある(会社法 第2条第6号、第328条) |
会社法上の大会社とは、最終事業年度の貸借対照表で資本金として計上した額が5億円以上、または負債の部の合計額が200億円以上の株式会社をいいます(会社法 第2条第6号)。公開会社である大会社は監査役会と会計監査人を、公開会社でない大会社は会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条第1項、第2項)。会計監査人になれるのは公認会計士または監査法人に限られます(会社法 第337条第1項)。
上場準備会社が大会社に該当しない段階であっても、準金商法監査は別途必要になります。両者は根拠も対象書類も異なるため、「会社法監査を受けていないからIPO監査も不要」という整理にはなりません。
関連コラム会社法監査とは|金商法監査との違いと対応スケジュール▸
IPO監査を引き受けられる監査事務所の要件
2023年4月1日以降、上場会社等の財務書類について金融商品取引法上の監査証明業務を行うには、日本公認会計士協会が備える上場会社等監査人名簿への登録が必要です(公認会計士法 第34条の34の2、第34条の34の3)。金融商品取引法側でも、特定発行者が上場会社等に該当する場合の監査証明は、この登録を受けた公認会計士または監査法人に限ると定められています(金融商品取引法 第193条の2第1項)。
ここで見落とされやすいのが、上場前のIPO準備会社もこの「上場会社等」に含まれるという点です。取引所に株券等を上場しようとする者で、取引所の規則に従って募集または売出しを行うために有価証券届出書の届出をしようとするものは、政令上の上場会社等とされています(公認会計士法施行令 第29条の2第1項第3号)。つまり、IPO監査の依頼先を検討する段階で、その事務所が登録上場会社等監査人かどうかを最初に確認する必要があります。
上場会社等監査人名簿は公衆の縦覧に供することとされており(公認会計士法 第34条の34の5第3項)、登録を受けた事務所の概要は日本公認会計士協会のウェブサイトで確認できます。日本公認会計士協会の公表によれば、経過期間中に申請のあった事務所の審査がすべて終了した結果、2025年7月1日時点の登録上場会社等監査人は127事務所となっています。
実務上の確認手順は次のとおりです。
- 候補となる監査事務所が登録上場会社等監査人であるかを名簿で確認する
- 公表されている品質管理システムの概要と、事務所の規模・体制を確認する
- 自社の事業規模、海外子会社の有無、想定する市場区分に見合う人員が確保できるかを面談で確認する
- ショートレビューから監査契約までのスケジュール感と、想定される報酬水準をすり合わせる
関連コラム監査法人の選び方7つの基準|判定表と相見積りの進め方▸
N-3期以前から申請期までの逆算スケジュール
IPO監査のスケジュールは、申請期(N期)を起点に逆算して組み立てます。監査証明が必要になるのは申請期の2期前からであるため、N-2期の期首時点で監査契約が締結され、期首残高の検証を含む監査手続が開始できている状態が目標になります。逆算すると、監査法人への相談はN-3期以前に始めることになります。
| N-3期以前 (準備期間) |
監査法人・アドバイザーへの相談、ショートレビューの実施と課題の洗い出し、CFOや管理部長の選任、決算体制と内部管理体制の整備着手、関係会社と関連当事者取引の整理、監査契約の締結交渉 |
|---|---|
| N-2期 (直前々期) |
監査対象期間の開始。準金商法監査の1期目。上場会社と同様の管理体制を整備し、運用の段階に入る。内部統制報告制度への対応(構築・文書化)、主幹事証券会社の選定、資本政策の実行 |
| N-1期 (直前期) |
準金商法監査の2期目。整備した管理体制を期首から継続運用する。内部統制の運用・評価、上場申請書類のドラフト作成、引受審査への対応準備 |
| N期 (申請期) |
上場申請、主幹事証券会社の引受審査と取引所審査への対応。上場時には有価証券届出書に係る金商法監査を受ける。上場後は有価証券報告書と内部統制報告書の提出義務が生じる |
この表で注意したいのは、N-3期以前の欄に並ぶ項目の多さです。監査契約はN-2期に入ってから結べばよいと考えられがちですが、監査法人側には契約手続と会社規模に見合った人員配置の準備が必要で、依頼してもすぐに受け入れられるとは限りません。日本公認会計士協会も、上場スケジュールを踏まえて十分な余裕をもって依頼するよう促しています。
監査対象期間に入ってからの依頼は難しい
すでにN-2期の期中に入ってしまった会社が、遡って監査を受けたいと相談するケースは少なくありません。しかし、IPOでは監査対象期間に入る前に一定の準備が完了していることが前提となるため、重要な課題を整理しないまま監査契約を締結することは困難です。
例外的に遡及監査が検討できるのは、たとえば次のような条件が整っている場合に限られます。
- 会計監査の導入前に、決算体制や内部管理体制の重要な課題がすでに解決されている
- 在庫の実地棚卸について、監査法人による立会いが実施済みである
- 上場会社の子会社や事業部門のスピンオフで、従前から当該子会社・事業部門が会計監査の対象となっていた
いずれにも当てはまらない場合、申請期を1年後ろ倒しにしてN-2期を取り直すのが現実的な選択肢になります。スケジュールを守ること自体が目的化して準備不足のまま監査対象期間に突入すると、結果的により大きな手戻りが生じます。
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ショートレビューから監査契約までの流れ
ショートレビューは、監査法人やアドバイザーが上場に向けた課題を抽出するための調査で、予備調査、短期調査、制度調査、クイックレビューなどとも呼ばれます。法令に基づく監査ではなく任意の調査であり、調査範囲を会計面に限定するか、労務や法務まで広げるかは案件ごとに異なります。
典型的な進み方は次のとおりです。
- 初回相談:上場の意向、想定市場、想定申請期、事業内容と直近の決算状況を共有する
- ショートレビューの実施:会計方針、決算体制、内部管理体制、関係会社や関連当事者との取引、人事労務や許認可の遵守状況などを調査する
- 報告書の受領と課題の整理:抽出された課題を、対応期限と担当部署に割り当てて計画に落とし込む
- 改善作業:規程の整備、決算早期化、証憑管理のルール化、関係会社の整理などを進める
- 監査契約の締結:改善の見通しが立った段階で、N-2期の期首から監査を開始できるよう契約を締結する
ショートレビューの結果は、最終的な上場意思決定の判断材料にもなります。報告書を受け取って終わりにせず、課題ごとに「いつまでに、誰が、どの水準まで」対応するかを決めておくことが、その後のスケジュール管理を左右します。
独立性の制約とアドバイザリー契約の切替え
ショートレビューやその後のアドバイザリー業務を、会計監査を依頼する予定の監査法人が実施する場合があります。ただし監査法人には独立性が求められ、アドバイザリー業務の提供には一定の制限が課されるため、監査契約と並行して同じ法人から助言を受けられないことがあります。
このため、監査契約への切替えを想定している場合は、どの業務がいつまで提供可能かを早い段階で確認し、必要に応じて監査法人とは別のアドバイザーを登用することも検討しておきます。監査契約を締結してから「相談していた内容が相談できなくなった」と気づくのでは、改善作業が止まってしまいます。
関連コラム初年度監査の準備|開始残高の検証と追加で求められる資料一覧▸
監査法人がIPO監査の受嘱を判断する着眼点
監査法人がIPO監査を引き受けるかどうかを、どのような基準で判断しているかは外からは見えにくい部分です。この点について、日本公認会計士協会が公表した事前準備ガイドブックには、2025年4月に実施されたアンケートの結果が収録されています。調査対象は、2024年に上場を果たした会社のうち83%(71社)を監査した上位9監査法人に所属するIPO監査の実施者です。
「IPO監査を受嘱する際に最も重要視するポイント」への回答は、次の構成でした。
| 業績 (中期経営計画を含む) |
43% |
|---|---|
| 成長性・将来性 | 22% |
| 内部管理体制 | 14% |
| 業種・業界等 | 7% |
| 事業内容の社会的意義 | 7% |
| 自社の受嘱方針との一致 | 7% |
回答の6割強が業績と成長性に集中している点は示唆的です。内部管理体制の整備は当然の前提として、その会社が上場後も成長を続け、投資家の期待に応えられるかという説明が受嘱判断を左右していると読み取れます。同じ調査では、今後のIPO監査の受嘱スタンスについて、69%が「より積極的に取り組んでいく」、31%が「従来どおりに取り組んでいく」と回答しており、受嘱に消極的という回答はありませんでした。
したがって、監査法人への打診にあたっては、決算書と管理体制の資料だけを用意するのでは足りません。なぜ上場するのかという目的、事業の成長シナリオ、それを裏づける中期経営計画を、客観的に説明できる形で準備しておくことが実務上の勘所になります。
CFO・管理部長を置くべき時期
同じアンケートでは、CFOや管理部長の適切な就任時期も尋ねられています。
| CFO・管理部長の 適切な就任時期 |
回答割合 |
|---|---|
| ショートレビュー実施前 | 69% |
| N-2期に入る前 | 23% |
| N-1期に入る前 | 8% |
約7割が、ショートレビューを受けるより前に管理部門の責任者を置くべきだと回答しています。アドバイザーへの依頼時期についても、ショートレビュー実施前が39%、N-2期に入る前が38%と、8割近くが監査対象期間より前の関与を挙げています。逆算スケジュールで言えば、N-3期以前の欄に「人を置く」というタスクが入るということです。
監査対象期間に入る前に整える準備項目
会計監査を受けるための最低ラインは、決算に必要な情報が収集できること、それを支える一定の内部統制が存在すること、決算の内容を外部の第三者が検証できることの3点です。この水準に届いていなければ、そもそも監査を受けられません。
日本公認会計士協会の事前準備ガイドブックは、初めてショートレビューや会計監査を受ける会社に生じやすい指摘として、次の項目を挙げています。監査法人へ打診する前のセルフチェックとして使えます。
- 会計データと裏付証憑の整理:仕訳の根拠資料が検証可能な状態で網羅的に保管されているか
- 発生主義会計と収益認識会計基準への対応:現金主義で処理している項目を発生主義に直せるか、売上の取引条件が整理されているか
- 棚卸資産管理:実地棚卸を適切に実施しているか、受払記録を作成しているか
- 原価計算体制:原価計算を実施するための体制が整備されているか
- 資産・負債の管理:固定資産台帳の資産が実在するか、内容不明の残高が勘定科目内訳に残っていないか
- 連結決算:連結範囲の確定前に整理すべき関係会社がないか、子会社に連結決算へ対応できる体制があるか
- 関連当事者取引の把握・整理:関連当事者との取引を網羅的に把握できているか
- 内部管理体制の構築:決算書を作成するための体制が子会社を含めて整備・運用されているか
- 労務管理:未払残業代や36協定など労務管理に課題がないか
- 情報システムの内部統制:IT全社統制・IT全般統制が整っているか、外部ITサービスの信頼性を確かめているか
- 不正への対応:役職員の不正防止体制があるか、資金の出納と記帳の分離が図られているか
- 会計上の見積り:減損や引当金など将来の見積りを検討する体制が整備されているか
- 会計基準の選択:上場時の会計基準として日本基準とIFRSのどちらを選択するか
このうち実務で時間がかかりやすいのは、証憑管理のルール化、関係会社と関連当事者取引の整理、労務管理の是正の3つです。いずれも過去に遡って直す作業が伴い、監査対象期間に入ってからでは間に合わないことがあります。
上場後の内部統制監査に関する経過的な取扱い
上場後は、経営者が財務報告に係る内部統制を評価した内部統制報告書を提出し、その報告書について監査を受けることになります。ただし、資本の額その他の経営の規模が内閣府令で定める基準に達しない新規上場会社については、上場有価証券の発行者に初めて該当することとなった日その他政令で定める日以後3年を経過する日までの間、内部統制報告書の監査が免除されます(金融商品取引法 第193条の2第2項第4号)。内閣府令上の基準は、資本金100億円未満かつ負債総額1,000億円未満です。
免除されるのはあくまで監査であり、内部統制報告書の提出自体は免除されません。上場準備期間中に内部統制の評価体制、評価範囲、評価時期を監査法人と協議しておく必要がある点は変わりません。
監査法人が決まらないときの確認手順
IPO監査の引受先が決まらない状況は、上場準備における深刻なボトルネックです。この課題については、金融庁に「株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会」が設置され、2020年3月に報告書が公表されました。これを受けて、日本公認会計士協会は、IPOを目指す企業の監査の担い手となる中小監査事務所のリストを公表し、IPO監査に関する相談窓口も設けています。
断られた場合に確認しておきたいのは、次の順序です。
- 断られた理由を説明してもらう:何が課題とされたのかを具体的に聞き取り、改善可能なものと構造的なものを分ける
- アドバイザー・主幹事証券会社と共有する:課題の重さと、申請期を維持できるかを第三者と一緒に判断する
- 候補を大手・準大手に限定していないか見直す:中小規模の監査事務所も上場準備会社の監査を実施しており、会社の規模や事業の複雑性に見合う先を選ぶ発想に切り替える
- 公表リストと名簿を突き合わせる:中小監査事務所リストと上場会社等監査人名簿で、実際に依頼できる事務所を洗い出す
- 申請期の見直しを検討する:改善に1年かかるなら、無理に現在の申請期を維持しない
候補を規模の大きい事務所だけに絞ると、リソースの制約でそもそも土俵に乗らないことがあります。日本公認会計士協会も、大手や準大手だけでなく中小規模の監査法人も上場準備会社の監査を実施していることを明示しており、ビジネスモデルと会社規模を踏まえた選定を促しています。
関連コラム監査法人が見つからないときの手順|断られる理由と一時会計監査人▸
関連コラム中小監査法人へ依頼できる監査の範囲|登録制度と選任手続▸
まとめ
IPO監査は、申請期の直前2期間の財務諸表を対象とする会計監査で、上場時の監査証明義務につながる一連の手続です。依頼先は上場会社等監査人名簿に登録された事務所に限られ、上場前のIPO準備会社もこの規律の対象に含まれます(公認会計士法 第34条の34の2、公認会計士法施行令 第29条の2第1項第3号)。
スケジュール面では、N-2期の期首時点で監査が開始できている状態を目標に、N-3期以前からショートレビュー、課題の改善、監査契約の締結を順に進めることになります。監査法人側の受嘱判断では業績と成長性が重視される一方、受嘱に前向きな姿勢自体は広く共有されています。準備が整っていれば引受先が見つからないという事態は避けやすく、逆に監査対象期間に入ってからの駆け込み依頼は成立しにくいのが実情です。
自社の申請期から逆算して、いま何期目に立っているのか、そして監査対象期間までに残された準備項目がどれだけあるのかを、本記事のスケジュール表とチェックリストで確認してみてください。監査を受けられる体制かどうかの見極めや、個別の課題の優先順位づけは判断が分かれる場面も多いため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
会社法監査の無料見積り・ご相談はこちら参考文献
- e-Gov法令検索 金融商品取引法
- e-Gov法令検索 公認会計士法
- e-Gov法令検索 公認会計士法施行令
- e-Gov法令検索 会社法
- 日本公認会計士協会 上場会社等監査人登録制度
- 日本公認会計士協会 みなし登録上場会社等監査人の登録の審査の終了について(お知らせ)
- 日本公認会計士協会 株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック~会計監査を受ける前に準備しておきたいポイント~
- 日本公認会計士協会 IPO を目指す企業の監査の担い手となる中小監査事務所リスト
- 金融庁 株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任に関する連絡協議会
よくある質問
IPO監査は何期分必要ですか。
申請期の直前2期間、すなわちN-2期(直前々期)とN-1期(直前期)の2期分の財務諸表について監査証明を受けるのが基本です。上場時には有価証券届出書に含まれる財務計算に関する書類について、金融商品取引法に基づく監査証明が必要になります(金融商品取引法 第193条の2第1項)。
ショートレビューは監査と同じものですか。
異なります。ショートレビューは上場に向けた課題を抽出するための任意の調査で、予備調査や短期調査とも呼ばれます。法令に基づく監査証明業務ではないため、監査意見は表明されません。監査契約の締結に先立って実施されるのが一般的です。
どの監査事務所でもIPO監査を依頼できますか。
依頼できません。上場会社等の財務書類について金融商品取引法上の監査証明業務を行うには、上場会社等監査人名簿への登録が必要です(公認会計士法 第34条の34の2)。上場しようとする者で有価証券届出書の届出をしようとするものも政令上の上場会社等に含まれるため(公認会計士法施行令 第29条の2第1項第3号)、IPO準備の段階から登録の有無を確認する必要があります。
N-2期に入ってからでも監査法人を探せますか。
難しい場合が多くなります。監査対象期間に入る前に一定の準備が必要とされており、重要な課題が未整理のまま監査契約を締結することは困難です。ただし、課題が会計監査の導入前に解決されている、在庫の実地棚卸に監査法人の立会いが実施済みであるなど、一定の条件が整えば遡及監査が可能な場合もあるため、まずは監査法人に相談することになります。
上場すると内部統制監査もすぐに必要になりますか。
内部統制報告書の提出は上場後すぐに必要です。一方で、資本の額その他の経営の規模が内閣府令で定める基準(資本金100億円未満かつ負債総額1,000億円未満)に達しない新規上場会社については、初めて該当することとなった日その他政令で定める日以後3年を経過する日までの間、内部統制報告書の監査が免除されます(金融商品取引法 第193条の2第2項第4号)。
会社法監査とIPO監査は別に受ける必要がありますか。
対象書類も根拠も異なるため、それぞれ必要になります。会社法監査は会計監査人設置会社の計算書類等を対象とし(会社法 第396条第1項)、大会社には会計監査人の設置義務があります(会社法 第2条第6号、第328条)。IPO監査は上場申請書類および上場時の開示書類に含まれる財務諸表を対象とするものです。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



