監査法人の規模別比較一覧|体制と被監査会社数を公的データで確認
目次
- 監査法人の規模区分と該当する法人
- 区分別の監査事務所数
- 「大規模監査法人」という別の区分
- 規模別の人員体制
- 規模別の被監査会社の分布
- 上場国内会社の会社数と時価総額
- 金商法・会社法に基づく被監査会社のシェア
- 会社法監査のみを受ける会社の担い手
- 業種による偏り
- 規模別の組織・品質管理体制の違い
- 規模別のモニタリングの受け方
- 規模を比較したあとに必要になる会社法の手続
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 大手・準大手・中小規模監査事務所の区分は法令で定められているのですか。
- 中小規模監査事務所と中小監査法人は同じ意味ですか。
- 非上場の大会社はどの規模の監査法人に依頼していますか。
- 上場会社の監査はどの監査法人にも依頼できますか。
- 大手監査法人の上場会社シェアが下がっているのはなぜですか。
- 規模が小さい監査法人は監査の品質が低いのですか。
監査法人を比較するとき、最初に押さえるべきなのが「規模別の区分」です。公認会計士・監査審査会は監査事務所を大手監査法人・準大手監査法人・中小規模監査事務所の3区分に分けており、区分ごとに事務所数、人員体制、担当している被監査会社の層が大きく異なります。
この記事では、公認会計士・監査審査会が2026年7月に公表した令和8年版モニタリングレポートの数値をもとに、規模別の区分の定義・事務所数・人員体制・被監査会社数を一覧表で整理します。会計監査人の選任を検討する会社が、どの規模の監査事務所がどの層を担っているのかを一度に確認できる形にまとめました。
監査法人の規模区分と該当する法人
規模区分は法令上の分類ではなく、公認会計士・監査審査会がモニタリングの対象を整理するために用いている区分です。ただし監査業界の統計はこの区分で公表されるため、実務上の比較軸としても広く使われています。
| 大手監査法人 | 上場国内会社を概ね100社以上被監査会社として有し、かつ常勤の監査実施者が1,000名以上いる監査法人。有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ、EY新日本有限責任監査法人、PwC Japan有限責任監査法人の4法人 |
|---|---|
| 準大手監査法人 | 大手監査法人に準ずる規模の監査法人。仰星監査法人、三優監査法人、太陽有限責任監査法人、東陽監査法人の4法人 |
| 中小規模監査事務所 | 大手監査法人および準大手監査法人以外の監査事務所。監査法人のほか、共同事務所(他の公認会計士と共同して監査証明業務を行う者)と個人事務所を含む |
| 中小監査法人 | 中小規模監査事務所のうち、監査法人の形態をとるもの |
「中小規模監査事務所」と「中小監査法人」は同じ意味ではありません。前者は個人事務所や共同事務所も含む広い概念で、後者はそのうち監査法人だけを指します。統計を読むときはどちらの語が使われているかを必ず確認してください。
区分別の監査事務所数
2025年3月末時点の監査事務所数は次のとおりです。中小規模監査事務所の内訳は、監査概要書および監査実施報告書に記載された2024年度(決算日が2024年4月1日から2025年3月31日までのもの)の事務所数に基づいています。
| 大手監査法人 | 4事務所 |
|---|---|
| 準大手監査法人 | 4事務所 |
| 中小規模監査事務所 | 2,403事務所(うち中小監査法人288、共同事務所48、個人事務所2,067) |
数のうえでは監査事務所の大半が中小規模監査事務所です。一方で、後述のとおり被監査会社の分布は大きく偏っており、事務所数のシェアと担当会社数のシェアは一致しません。
「大規模監査法人」という別の区分
規模区分とは別に、直近の会計年度において監査証明業務を行った上場会社等の総数が100以上となっている監査法人を「大規模監査法人」と呼びます。令和8年版モニタリングレポートでは、大手監査法人4法人に仰星監査法人と太陽有限責任監査法人を加えた6法人がこれに該当します。監査法人のガバナンス・コードに沿った体制整備義務の適用開始時期など、この区分で取扱いが分かれる場面があるため、大手・準大手の区分とは別物として押さえておく必要があります。
規模別の人員体制
監査チームに投入できる人員の厚みは、規模区分の差がそのまま表れる部分です。2025年度の社員(パートナー)数と常勤職員数は次のとおりです。中小監査法人については決算月が広範にわたり2025年度分が未集計のため2024年度までが対象で、社員数と常勤職員数が突出している1法人は除かれています。
| 大手監査法人 | 社員数 約250人〜約550人/常勤職員数 約3,400人〜約6,800人 |
|---|---|
| 準大手監査法人 | 社員数 約40人〜約100人/常勤職員数 約230人〜約950人 |
| 中小監査法人 | 社員数 〜約50人/常勤職員数 〜約120人 |
常勤職員数で見ると、大手監査法人と中小監査法人の間には数十倍の開きがあります。連結子会社が多い会社、海外拠点を持つ会社、決算月が3月に集中する時期に大量の往査工数を要する会社では、この人員の厚みが受嘱可否そのものを左右します。
なお、監査法人の社員は公認会計士に限られません。2007年の公認会計士法改正で、経営・法律・IT・年金数理などの知識を持つ公認会計士以外の者にも社員資格を認める特定社員制度が創設されました。ただし公認会計士である社員が社員全体の75%以上を占める必要があります。2025年度の大手監査法人の社員合計1,811人のうち、特定社員は139人です。
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規模別の被監査会社の分布
「どの規模の監査事務所が、どんな会社を監査しているのか」は、自社が打診先を絞り込むうえで最も実用的な情報です。統計の切り口によって見える姿が変わるため、3つの角度から確認します。
上場国内会社の会社数と時価総額
2026年3月末時点の上場国内会社3,843社の会計監査人を規模別に見ると、次のとおりです。
| 大手監査法人 | 2,177社(会社数シェア56.6%)/時価総額1,163兆7,024億円(シェア95.2%) |
|---|---|
| 準大手監査法人 | 610社(会社数シェア15.9%)/時価総額25兆61億円(シェア2.0%) |
| 中小規模監査事務所 | 1,056社(会社数シェア27.5%)/時価総額33兆9,874億円(シェア2.8%) |
会社数では大手監査法人が6割弱にとどまる一方、時価総額では約9割を占めます。大手監査法人の会社数シェアは2022年3月末の63.8%から2026年3月末の56.6%まで年々低下していますが、時価総額シェアは同じ期間に88.0%から95.2%へ上昇しており、大手監査法人は「社数を絞りつつ大型案件に集中する」方向へ動いていることが読み取れます。時価総額の大きい会社は業務規模が大きく国際的な取引も多いため、多数の監査人員と多様な専門能力を要することが背景にあると分析されています。
金商法・会社法に基づく被監査会社のシェア
上場・非上場を通じた法定監査全体で見ると、様相が変わります。2024年度に各監査法人から提出された業務報告書によれば、金融商品取引法または会社法に基づく被監査会社等数は10,028社で、規模別シェアは大手監査法人68.8%、準大手監査法人9.6%、中小監査法人21.6%です。中小監査法人のシェアは2020年度の16.7%から毎年上昇しています。
会社法監査のみを受ける会社の担い手
非上場の大会社など、金融商品取引法に基づく監査を伴わず会社法監査だけを受ける会社の担い手構成は、上場会社とは大きく異なります。2024年4月期から2025年3月期に係る監査実施状況を集計したデータでは、会社法監査を受けている会社の監査主体は次のとおりです。
| 監査法人 | 5,519社(大手監査法人4,212社、準大手監査法人309社、中小監査法人998社) |
|---|---|
| 共同事務所 | 42社 |
| 個人事務所 | 737社 |
会社法監査のみの領域でも大手監査法人が最大の担い手ですが、中小監査法人が約1,000社、個人事務所も737社を担当しています。会社法上、会計監査人は公認会計士または監査法人であれば足り(会社法 第337条第1項)、監査法人の規模による制限はありません。上場国内会社を監査する場合に限って、日本公認会計士協会の上場会社等監査人名簿への登録が必要とされています(公認会計士法 第34条の34の2)。非上場の大会社であれば、中小監査法人や個人事務所も現実的な選択肢に入るということです。
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業種による偏り
業種によっては規模別の偏りがさらに強く出ます。2026年3月末時点の上場金融機関117社の会計監査人は、大手監査法人105社、準大手監査法人6社、中小規模監査事務所6社で、大手監査法人が約9割を占めます。時価総額ベースでは大手監査法人が99.6%です。上場金融機関では業態特有の会計・監査への対応が必要になるため、大手監査法人は監査業務部門の中に業態特化の部署を設置し、一部の準大手監査法人も金融機関の会計処理に関する照会を専門に扱う支援体制を整えています。
IFRS適用会社も同様に大手監査法人へ集中しています。海外展開を行う会社が多く、大規模なグローバルネットワークと提携している大手監査法人に監査が集まる構造です。
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規模別の組織・品質管理体制の違い
人員数や担当社数と並んで、監査の受け方に影響するのが組織体制です。公認会計士・監査審査会の検査・報告徴収・業務報告書に基づく規模別の特徴は次のとおりです。
| 大手監査法人 | 最高意思決定機関である社員(総)会の下に理事会や経営会議等を設置。経営執行機関を監督・評価する機関を置き、指名・報酬・監査の小委員会に加えて公益の小委員会も設置。複数の監査事業部と金融専門部門、品質管理・リスク管理の担当部門を持ち、三大都市に加えて全国規模で地区事務所を展開している例が多い |
|---|---|
| 準大手監査法人 | 社員(総)会の下に理事会等を設置。監督・評価機関は置くが権限は大手監査法人と比べて限定的で、指名・報酬・監査の小委員会を設置していない法人が多い。複数の監査事業部と品質管理の担当部門を持ち、主たる事務所に加えて三大都市に事務所を置く例が多い |
| 中小監査法人 | 社員(総)会で多くの意思決定を行い、小規模を理由に監督・評価機関を設けず社員間の相互牽制によることが多い。部門を設けず主要業務の担当社員を任命する例が多く、品質管理は監査業務を兼任する社員が担当する例が多い。主たる事務所のみの例が多い |
品質管理の担い手についても差があります。大手監査法人では品質管理部門の下に監査マニュアルの整備、会計処理の相談、審査、定期的な検証の担当部門が置かれ、近年は品質管理の主体を本部から監査現場に近い監査業務部門へ移す動きも見られます。準大手監査法人では本部機能の強化が進む一方、監査リスクの高い業務をサポートする体制の構築などに課題が指摘されています。中小監査法人では、社員の兼業が認められている場合が多く非常勤職員の割合も高いことから、品質管理に十分な時間を割けていない状況が指摘されています。
なお、監査法人のガバナンス・コードに沿った体制整備義務は、上場会社等の監査を行う監査法人等に課されており、2024年7月1日(大規模監査法人は2023年7月1日)以後開始する被監査会社等の会計期間の開始の日から適用されています。
規模別のモニタリングの受け方
公認会計士・監査審査会による検査の頻度も規模で異なります。2026事務年度(2026年7月〜2027年6月)の監査事務所等モニタリング基本計画では次のように整理されています。
| 大手監査法人 | フルスコープ検査とフォローアップ検査に加え、品質管理システムの運用状況等に対象を絞った検査や水平的レビューを組み合わせた通年モニタリングを実施 |
|---|---|
| 準大手監査法人 | 原則2年に一度の頻度でフルスコープ検査を実施。業務運営が継続的に良好な法人は検査頻度の見直しを検討 |
| 中小規模監査事務所 | 日本公認会計士協会の品質管理レビュー結果、業務管理態勢、上場被監査会社のリスクの程度等を踏まえ、リスクベースで検査先を選定してフルスコープ検査を実施 |
中小規模監査事務所は検査の総合評価が大手監査法人・準大手監査法人と比べて下方にシフトしていますが、これはリスクベースで検査先を選定していることが一因と説明されています。公表されている検査結果の分布を「規模区分ごとの品質の平均値」として読むのは適切ではありません。個々の事務所の品質管理体制は、契約前に直接確認する必要があります。
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規模を比較したあとに必要になる会社法の手続
打診先の規模区分を絞り込んだあとは、会社法の手続に沿って選任へ進みます。公開会社である大会社は監査役会および会計監査人を置かなければならず、公開会社でない大会社も会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条)。会計監査人は公認会計士または監査法人である必要があり、会社の子会社等から公認会計士・監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者などは会計監査人となることができません(会社法 第337条)。
株主総会に提出する会計監査人の選任・解任・不再任に関する議案の内容は、監査役設置会社では監査役が決定し、監査役会設置会社では監査役会が決定します(会社法 第344条)。報酬等については、取締役が会計監査人または一時会計監査人の職務を行うべき者の報酬等を定める場合に、監査役(監査役が2人以上ある場合はその過半数)の同意が必要で、監査役会設置会社では監査役会の同意が必要です(会社法 第399条)。会計監査人は計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を監査し、会計監査報告を作成します(会社法 第396条第1項)。
規模の比較はあくまで打診先を絞る材料であり、最終的な選任は監査役会の同意を含む会社法上の手続を経て決まります。相見積りを取る段階から、監査役・監査役会に情報を共有しておくと手続がスムーズです。
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まとめ
監査法人を規模別に比較すると、次の点が見えてきます。
- 区分は大手4法人・準大手4法人・中小規模監査事務所2,403事務所(2025年3月末)で、事務所数では中小規模が圧倒的多数を占めます。
- 上場国内会社では大手監査法人が会社数の56.6%、時価総額の95.2%を担当しており(2026年3月末)、会社数シェアは低下傾向、時価総額シェアは上昇傾向にあります。
- 会社法監査のみを受ける会社では、中小監査法人998社・個人事務所737社が担い手となっており、非上場の大会社では中小規模の選択肢が現実的です。
- 上場金融機関やIFRS適用会社は大手監査法人に集中しており、業種・会計基準によって選択肢の幅は変わります。
- 組織・品質管理体制は規模で明確に異なりますが、検査結果の分布を規模区分ごとの品質の平均値として読むことは適切ではありません。
自社がどの層に位置するかを上記のデータと照らし合わせたうえで、打診先の規模区分を2つ程度に絞り、体制と受嘱可否を個別に確認していくのが実務的な進め方です。判断に迷うケースは個別性が高いため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
参考文献
よくある質問
大手・準大手・中小規模監査事務所の区分は法令で定められているのですか。
法令上の区分ではありません。公認会計士・監査審査会がモニタリングの対象を整理するために用いている区分で、大手監査法人は上場国内会社を概ね100社以上被監査会社として有し、かつ常勤の監査実施者が1,000名以上いる監査法人と定義されています。会社法上、会計監査人は公認会計士または監査法人であれば足り、規模による制限はありません(会社法 第337条第1項)。
中小規模監査事務所と中小監査法人は同じ意味ですか。
異なります。中小規模監査事務所は大手監査法人および準大手監査法人以外の監査事務所全体を指し、監査法人のほか共同事務所と個人事務所を含みます。中小監査法人はそのうち監査法人の形態をとるものだけを指します。2025年3月末時点で中小規模監査事務所2,403事務所のうち、中小監査法人は288法人です。
非上場の大会社はどの規模の監査法人に依頼していますか。
会社法監査のみを受ける会社では、監査法人5,519社のうち大手監査法人が4,212社、準大手監査法人が309社、中小監査法人が998社を担当しており、ほかに共同事務所42社、個人事務所737社が担い手となっています(2024年4月期から2025年3月期の集計)。上場国内会社と比べ、中小規模の担い手の割合が高いのが特徴です。
上場会社の監査はどの監査法人にも依頼できますか。
できません。上場会社等の財務書類について金融商品取引法上の監査証明業務を行うには、日本公認会計士協会による上場会社等監査人名簿への登録が必要です(公認会計士法 第34条の34の2)。打診の前に、候補となる監査事務所が名簿に登録されているかを確認してください。
大手監査法人の上場会社シェアが下がっているのはなぜですか。
大手監査法人の上場国内会社の会社数シェアは2022年3月末の63.8%から2026年3月末の56.6%へ低下している一方、時価総額シェアは88.0%から95.2%へ上昇しています。時価総額の大きい会社は業務規模が大きく国際的な取引も多いため大手監査法人以外では対応が難しく、大手監査法人が大型案件に集中する構造が強まっていることが背景にあると分析されています。
規模が小さい監査法人は監査の品質が低いのですか。
そのように断定することはできません。公認会計士・監査審査会の検査では中小規模監査事務所の総合評価が大手監査法人・準大手監査法人と比べて下方にシフトしていますが、これはリスクベースで検査先を選定していることが一因と説明されています。規模区分ごとの品質の平均値として読むのではなく、個々の事務所の品質管理体制を契約前に直接確認することが重要です。
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