03-6773-5062

受付時間 平日 10:00〜18:00

お問い合わせ フォームは24時間受付
財務会計

株式交付信託の会計処理|実務対応報告第30号の総額法と開示

目次
  1. 実務対応報告第30号の適用範囲
  2. 従業員持株会型(ESOP信託)の仕組み
  3. 受給権付与型(株式交付信託)の仕組み
  4. 適用対象外となる取引
  5. 総額法による会計処理
  6. 総額法の適用要件
  7. 信託が保有する自社の株式の表示
  8. 信託の損益・借入金の取扱い
  9. 費用の認識と測定
  10. ポイント割当時の費用計上
  11. 株式交付時の引当金の取崩し
  12. 主な仕訳例
  13. ストック・オプションとの比較
  14. 1株当たり情報の取扱い
  15. 注記・開示
  16. 適用時期と改正の経緯
  17. まとめ
  18. 参考文献
  19. よくある質問
  20. 株式交付信託にはどの会計基準が適用されますか。
  21. 信託が保有する自社の株式は貸借対照表にどのように表示されますか。
  22. 費用はいつ、いくら計上しますか。
  23. 1株当たり情報の算定では信託保有株式をどう扱いますか。
  24. 実務対応報告第30号はいつから適用されていますか。

株式交付信託(信託を通じて従業員等に自社の株式を交付する制度。従業員持株ESOP信託を含みます)の会計処理は、実務対応報告第30号「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い」に定められています。委託者である企業は期末において総額法を適用して信託の財産を個別財務諸表に計上し、信託に残存する自社の株式は株主資本において自己株式として計上します。本記事では、対象となる信託の範囲、総額法による処理、費用の認識・測定、1株当たり情報と注記までを実務の観点から整理します。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

実務対応報告第30号の適用範囲

実務対応報告第30号は、従業員又は従業員持株会(以下「従業員等」といいます)に信託を通じて自社の株式を交付する取引について、当面必要と考えられる実務上の取扱いを明らかにするものです。対象は同報告第3項及び第4項の2つの取引に限られます。実務では、制度の呼称ではなくこの2類型のいずれに整理されるかを確認することが出発点となります。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

従業員持株会型(第3項の取引) 企業を委託者、従業員持株会に加入する一定の要件を満たした従業員を受益者、信託会社を受託者とする信託が、自社の株式を取得して時価で従業員持株会へ売却する取引
受給権付与型(第4項の取引) 企業が金銭を信託し、信託が取得した自社の株式を、株式給付規程に基づき割り当てたポイントに応じて受給権が確定した従業員に交付する取引

従業員持株会型(ESOP信託)の仕組み

従業員持株会型では、受託者が信託における金融機関等からの借入金により企業の株式を取得します。この取得は、募集株式の発行等の手続による新株の発行若しくは自己株式の処分、又は市場からの株式の取得により行われます。借入金の全額に企業の債務保証が付され、信託は保有株式の売却代金と配当金を原資に借入金及び借入利息を返済します。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

信託終了時に資金の余剰が生じた場合、その余剰金は従業員に分配され、企業に帰属することはありません。一方、資金が不足した場合は企業が債務保証の履行等により不足額を負担します。この非対称性が、総額法の適用や引当金の検討に直結します。

受給権付与型(株式交付信託)の仕組み

受給権付与型では、企業は信託された金銭により自社の株式を取得させ、株式給付規程に基づき、受給権の算定の基礎となるポイントを、信託が保有する株式の範囲で従業員に割り当てます。ポイントは一定の要件を満たすことにより受給権として確定し、受託者は確定した受給権に基づいて信託が保有する株式を従業員に交付します。この類型でも、信託終了時の余剰金は従業員に分配され、企業に帰属することはありません。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

適用対象外となる取引

上記2取引が対象であるため、企業会計基準適用指針第25号に定めのある退職給付信託や、金融商品会計基準等に定めのある実質的ディフィーザンスには適用されません。役員に自社の株式を交付する取引や、従業員等に親会社の株式を交付する取引も対象範囲に含まれておらず、内容に応じて同報告を参考にすることが考えられるとされています。実務では、役員を対象に含める制度の判断根拠を監査法人と早期にすり合わせる必要があります。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

総額法による会計処理

実務対応報告第30号の中核は、委託者である企業が信託の財産を自らの財務諸表に取り込む総額法です。総額法とは、信託の資産及び負債を企業の資産及び負債として貸借対照表に計上し、信託の損益を企業の損益として計上することを意味します。

総額法の適用要件

対象となる信託が、①委託者が信託の変更をする権限を有している場合、②企業に信託財産の経済的効果が帰属しないことが明らかであるとは認められない場合、という要件をいずれも満たす場合には、企業は期末において総額法を適用し、信託の財産を個別財務諸表に計上します。上記2取引はいずれも①を取引の構成に含み、②についても、従業員持株会型は信託の借入金に企業が債務保証を行っていること、受給権付与型は労働サービスの対価として自社の株式が交付されると考えれば経済的効果が企業に帰属する側面もあることから、これを満たすものとされています。実務上、典型的なスキームでは総額法の適用が前提です。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

信託が保有する自社の株式の表示

期末において信託に残存する自社の株式、すなわち従業員持株会に売却していない株式又は従業員に交付していない株式は、信託における帳簿価額(付随費用の金額を除きます)により、株主資本において自己株式として計上します。付随費用は信託に関する諸費用に含めます。審議では資産計上する方法も検討されましたが、自己株式を株主資本から控除すると定める自己株式等会計基準に適合しない可能性があることなどから、株主資本から控除する方法が採られました。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

関連コラム自己株式の会計処理を徹底解説|取得・処分・消却の仕訳と資本の部の表示▸

なお、企業が保有する自己株式と信託が保有する自社の株式は法的な保有者が異なるため、それらの帳簿価額は通算しません。実務では自己株式の単価管理を信託分と自社保有分で分ける必要があり、上場準備では、信託の残存株式が純資産の部の自己株式として表示される結果、株主資本の見え方が変わる点に留意が必要です。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

信託の損益・借入金の取扱い

従業員持株会型では、従業員持株会に売却された株式に係る売却差損益、信託が保有する株式に対する企業からの配当金、及び信託に関する諸費用の純額が、正の値となる場合には負債に、負の値となる場合には資産に計上します。信託における損益は最終的に従業員に帰属するため、将来精算される仮勘定として計上するという考え方です。受給権付与型でも、配当金及び諸費用の純額について同様に処理します。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

従業員持株会型では信託の借入金も企業の貸借対照表に計上されます。信託終了時に借入金の返済や諸費用の支払のための資金が不足する可能性がある場合には、企業会計原則注解(注18)に従い負債性の引当金の計上の要否を判断します。実務では、株価の下落により信託が取得価額を下回る価格で株式を売却している局面で、この検討が論点になります。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

企業が信託に支払った配当金等の企業と信託との間の取引は、相殺消去を行いません。また連結財務諸表においては、信託が子会社又は関連会社に該当するか否かの判定を要しません。総額法により信託財産が個別財務諸表に計上される結果、実質的に信託財産がすべて連結財務諸表に反映済みであるためであり、個別財務諸表における総額法の処理はそのまま引き継ぎます。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

公認会計士事務所プライムパートナーズ オフィス 公認会計士へまずはご相談 公認会計士事務所プライムパートナーズ お問い合わせはこちら

費用の認識と測定

受給権付与型では、従業員へのポイントの割当てに応じて費用及び引当金を計上します。費用の測定基礎については3つの方法が検討され、取引開始後の株価を反映しない処理とすべきであること、企業の負担は信託への資金拠出時点で確定していることなどから、その後の株価変動を反映しない考え方が採られています。

ポイント割当時の費用計上

企業は、従業員に割り当てられたポイントに応じた株式数に、信託が自社の株式を取得したときの株価を乗じた金額を基礎として、費用及びこれに対応する引当金を計上します。資金拠出時ではなく株式取得時の株価が基礎とされたのは、引当金の取崩しが株式の取得原価を基礎に行われることなどが考慮されたためです。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

ポイントの割当てに係る費用 = 割り当てられたポイントに応じた株式数 × 信託が自社の株式を取得したときの株価

信託による自社の株式の取得が複数回にわたる場合には、費用及び引当金は平均法又は先入先出法により算定します。実務では、取得ロットごとの株価と株式数を制度開始時から継続して記録できる管理体制が不可欠です。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

株式交付時の引当金の取崩し

信託から従業員に株式が交付される場合、企業はポイントの割当時に計上した引当金を取り崩します。取崩額は、信託が自社の株式を取得したときの株価に交付された株式数を乗じて算定し、株式の取得が複数回にわたる場合は平均法又は先入先出法によります。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

引当金の取崩額 = 信託が自社の株式を取得したときの株価 × 交付された株式数

ポイント割当時に費用を計上し、交付時に引当金を取り崩す構造のため、株式の交付そのものによって新たな費用は生じません。設例では、交付に伴う引当金の取崩処理を期末に一括して行う整理が示されています。

主な仕訳例

設例は税効果会計を考慮しない前提であり、示されている勘定科目は会計処理を行うための例示です。信託が保有する自社の株式は、設例では「A社株式」という科目名で表されています。主な処理は次のとおりです。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

  • 企業から信託への自己株式の処分時は、(借)現金預金 /(貸)自己株式・その他資本剰余金。認識時点は信託からの対価の払込期日です。
  • 従業員へのポイント割当時は、(借)福利厚生費 /(貸)引当金(設例では便宜的に福利厚生費を用いています)。
  • 期末に信託の保有株式を振り替える際は、(借)自己株式 /(貸)信託が保有する自社の株式。
  • 従業員へ株式の交付が行われた部分は、(借)引当金 /(貸)信託が保有する自社の株式。
  • 信託保有株式に対する配当金の支払時は、(借)その他利益剰余金 /(貸)未払配当金。
  • 信託から保証料を受け取る場合は、(借)現金預金 /(貸)受取保証料。債務保証の履行時は、(借)債務保証損失 /(貸)現金預金。

実務では、信託の試算表を毎期入手して企業側の帳簿へ取り込む決算手続を定型化しておくことが効果的です。

ストック・オプションとの比較

受給権付与型の株式交付信託は、将来自社の株式を従業員に交付することを約束する点でストック・オプションに類似した性質があります。もっとも、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」については、超長期にわたる従業員サービスの対価として自社の株式を交付する場合が想定されているか否かが明らかではないという意見などがあり、実務対応報告第30号が別途の取扱いを定めています。退職給付関係の基準も直接は適用されないと考えられています。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

株式交付信託(実務対応報告第30号) ストック・オプション(企業会計基準第8号)
信託が保有する自社の株式が従業員等に交付されます 自社株式オプションが付与され、権利行使により株式が交付されます
実務対応報告第30号が適用され、ストック・オプション会計基準は直接適用されません 自社株式オプション又は自社の株式を用いる取引に適用されます
信託の財産を総額法により企業の個別財務諸表に計上します 信託を用いないため、総額法の適用は問題となりません
信託が保有する株式は潜在株式として取り扱いません 保有者が普通株式を取得できる権利として潜在株式に想定されています

実務では、費用計上額の測定基礎がいつの株価で固定されるか、純資産の部の表示にどのような影響が生じるかが、制度選択の比較軸になります。ストック・オプションそのものの費用計上実務は別のコラムで解説しています。

関連コラムストック・オプション等に関する会計基準の費用計上実務▸

なお、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引については、実務対応報告第41号に別の取扱いが定められています。

関連コラムリストリクテッド・ストックの会計処理|実務対応報告第41号▸

1株当たり情報の取扱い

総額法により純資産の部から控除される信託保有の自社の株式は、1株当たり情報の算定でも控除対象の自己株式として扱われます。1株当たり当期純利益の算定上は期中平均株式数の計算において控除する自己株式に含め、1株当たり純資産額の算定上は期末発行済株式総数から控除する自己株式に含めます。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

一方、信託が保有する株式は通常の自己株式と異なり自益権や共益権を有します。そこで、1株当たり情報に関する注記を記載する場合には、控除する自己株式に含めている旨並びに期末及び期中平均の自己株式の数を注記します。なお、信託の保有する株式は潜在株式としては取り扱いません。実務では、信託の残存株式数が多い制度ほど1株当たり当期純利益が押し上げられるため、投資家向け説明資料と注記の整合を確認しておくことが求められます。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

関連コラム1株当たり当期純利益(EPS)とは|算式と希薄化EPSの実務▸

注記・開示

対象となる取引を行っている場合、各期の連結財務諸表及び個別財務諸表において、①取引の概要、②総額法の適用により計上された自己株式について純資産の部に自己株式として表示している旨・帳簿価額及び株式数、③従業員持株会型の取引において計上された借入金の帳簿価額を注記します。連結と個別の注記の内容が同一となる場合には、個別財務諸表の注記は連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって代えることができます。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

借入金の帳簿価額の注記が求められる理由は、当該借入金が、株価が下落しない場合には保有株式の売却資金で返済されるため一定の返済原資が確保されており、また借入金利息を企業が負担しないことから、通常の借入等の債務とは性格が異なる点にあります。取引の概要については注記項目の列挙が行われていないため、実務では自社の制度の要点が読み取れる記載を組み立てることになります。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

あわせて、株主資本等変動計算書の注記事項として自己株式の種類及び株式数に関する事項並びに配当に関する事項を記載する場合には、当期首及び当期末の自己株式数に含まれる信託保有株式数、当期に増減した自己株式数に含まれる信託が取得・売却・交付した株式数、配当金の総額に含まれる信託保有株式に対する配当金額を注記します。なお、同報告が対象とする信託は関連当事者には該当せず、関連当事者と信託との取引も関連当事者との取引には該当しないと考えられています。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

適用時期と改正の経緯

実務対応報告第30号は平成25年(2013年)12月25日に公表され、平成26年(2014年)4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されています。公表時には、公表後最初に終了する事業年度の期首又は四半期会計期間の期首からの早期適用も認められていました。すでに適用済みの取扱いであり、株式交付信託を導入している上場企業では、この定めに従った会計処理と注記が行われています。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

公表時には経過的な取扱いも定められました。適用初年度の期首より前に締結された信託契約に係る会計処理については、同報告の方法によらず従来採用していた方法を継続することができるとされ、その場合には、取引の概要、従来の方法によっている旨、信託保有株式の帳簿価額・株式数などの一定の事項を注記します。上場準備では、この注記の有無を確認する場面があります。(参考:企業会計基準委員会 実務対応報告第30号 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い)

その後、同報告は平成27年(2015年)3月26日に改正され、これが最終改正となっています。平成26年3月26日に単体開示の簡素化を図るため「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」等が改正され、連結財務諸表を作成している会社について個別財務諸表における1株当たり情報及び自己株式に関する注記の記載を要しないこととされたことに伴い、これらの注記の取扱いを明らかにしたものです。この改正は公表日以後最初に終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用されています。(参考:企業会計基準委員会 改正企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準等の公表)

なお、2025年10月29日には、金融商品に関する会計基準の改正等に伴い、実務対応報告公開草案第71号(実務対応報告第30号の改正案)が公表されており、現時点では公開草案の段階にあります。実務では、この審議の動向を確認しておくことが望まれます。(参考:企業会計基準委員会 企業会計基準公開草案第89号 金融商品に関する会計基準(案)等の公表)

株式交付信託は制度設計によって信託契約の内容が大きく異なり、総額法の適用や引当金の判断にも個別性が伴います。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。公認会計士事務所プライムパートナーズ/株式会社プライムパートナーズコンサルティングでは、インセンティブ制度の会計処理と開示のご相談を承っています。

お問い合わせはこちら

まとめ

株式交付信託の会計処理は、期末において総額法を適用し、信託の財産を企業の個別財務諸表に計上することが基本となります。信託に残存する自社の株式は信託における帳簿価額により株主資本において自己株式として計上し、売却差損益・配当金・諸費用の純額は将来精算される仮勘定として資産又は負債に計上します。受給権付与型では、割り当てられたポイントに応じた株式数に信託が自社の株式を取得したときの株価を乗じた金額を基礎として費用及び引当金を計上し、株式の交付時に引当金を取り崩します。1株当たり情報では信託保有株式を控除する自己株式に含め、取引の概要・自己株式・借入金の帳簿価額などの注記が求められます。

参考文献

よくある質問

株式交付信託にはどの会計基準が適用されますか。

従業員又は従業員持株会に信託を通じて自社の株式を交付する取引には、実務対応報告第30号が適用されます。対象は、従業員持株会に信託を通じて自社の株式を交付する取引と、受給権を付与された従業員に信託を通じて自社の株式を交付する取引の2類型です。退職給付信託や実質的ディフィーザンスには適用されません。

信託が保有する自社の株式は貸借対照表にどのように表示されますか。

期末に信託に残存する自社の株式は、信託における帳簿価額(付随費用の金額を除きます)により、株主資本において自己株式として計上します。付随費用は信託に関する諸費用に含めます。企業が保有する自己株式と信託が保有する自社の株式は法的な保有者が異なるため、それらの帳簿価額は通算しません。

費用はいつ、いくら計上しますか。

受給権付与型では、従業員に割り当てられたポイントに応じた株式数に、信託が自社の株式を取得したときの株価を乗じた金額を基礎として、ポイントの割当時に費用及び引当金を計上します。株式の交付時には、同じ株価に交付された株式数を乗じた金額で引当金を取り崩します。信託による株式の取得が複数回にわたる場合は、平均法又は先入先出法により算定します。

1株当たり情報の算定では信託保有株式をどう扱いますか。

1株当たり当期純利益の算定上は期中平均株式数の計算において控除する自己株式に含め、1株当たり純資産額の算定上は期末発行済株式総数から控除する自己株式に含めます。1株当たり情報に関する注記を記載する場合には、控除する自己株式に含めている旨並びに期末及び期中平均の自己株式の数を注記します。信託の保有する株式は潜在株式としては取り扱いません。

実務対応報告第30号はいつから適用されていますか。

2014年(平成26年)4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されています。公表時には、公表後最初に終了する事業年度の期首又は四半期会計期間の期首からの早期適用も認められていました。その後、2015年(平成27年)3月26日に単体開示の簡素化に伴う改正が行われ、これが最終改正となっています。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

Office

公認会計士事務所プライムパートナーズ

大手監査法人出身の公認会計士が、会計・監査・株価算定のご相談をお受けしています。

  • オフィスが入居する IsaI AkasakA のエントランス
  • 代表 公認会計士 島本 雅史
  • プライムパートナーズの会議室
事務所名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
所在地
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2-33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062(平日 10:00〜18:00)
対応責任者
公認会計士 島本 雅史