組合費の勘定科目【仕訳例】給与天引きから労働組合への納付まで(会社側)
目次
- 組合費の勘定科目【一覧表】場面ごとの処理
- 預り金で処理する理由
- 組合費の仕訳例【給与支給から納付まで】
- 給与支給日の仕訳(組合費の控除)
- 労働組合への納付日の仕訳
- 共済掛金などを一緒に控除して納付する場合
- 給与天引き(チェック・オフ)の法的根拠
- 労働基準法第24条第1項ただし書の労使協定
- 給与担当者が確認しておく書類
- 会社が組合費を負担する場合の注意点
- 経費援助(労働組合法第2条第2号・第7条第3号)
- 会社負担分の税務上の扱い
- 実務で起こりやすいミスと防ぎ方
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 組合費は未払金で処理してもよいですか。
- 組合費の天引きに労使協定は必要ですか。
- 会社が組合費を負担してもよいですか。
- 源泉徴収税額は組合費を差し引いた後の金額で計算しますか。
- 組合を脱退した従業員から控除してしまった場合はどうしますか。
組合員の給与から組合費を差し引き、まとめて労働組合の口座へ振り込む。給与計算を担当していると毎月必ず発生する処理ですが、「差し引いた組合費はどの勘定科目で受けるのか」「振り込んだときの仕訳はどうなるのか」は、社内の経理規程に書かれていないことも少なくありません。
結論から示すと、会社側では、給与から差し引いた組合費を「預り金」(補助科目「組合費」)で受け、労働組合へ振り込んだ時点で預り金を取り崩します。組合費は会社の費用でも収益でもなく、組合員から預かって組合へ引き渡すまで一時的に持っているお金だからです。
この記事では、給与支給日から納付日までの仕訳例を数値付きで示したうえで、天引きの法的な根拠(労働基準法 第24条第1項ただし書)と、会社が組合費を負担した場合に生じる経費援助・給与課税の論点を、給与担当者の目線で整理します。労働組合側の帳簿で使う勘定科目は扱いません。
組合費の勘定科目【一覧表】場面ごとの処理
会社側で組合費が動く場面は、大きく「給与から控除する」「組合へ納付する」の2つです。月末や決算日をまたぐ場合や、組合費以外の項目を一緒に控除する場合も含めて、使う科目を先に一覧にします。
| 給与から組合費を 控除したとき |
預り金(補助科目:組合費)を貸方に計上 |
|---|---|
| 労働組合の口座へ 振り込んだとき |
預り金(組合費)を借方に計上して取り崩す |
| 月末・決算日に 未納付の残高があるとき |
預り金のまま流動負債に残す(振替仕訳は不要) |
| 共済掛金など 組合費以外も控除するとき |
預り金を項目別の補助科目に分けて計上 |
| 会社が組合費を 負担するとき |
原則として行わない(経費援助・給与課税の論点が生じる) |
ポイントは、組合費が会社の損益に一切影響しないことです。給与手当(または給料)として費用になるのは控除前の総支給額であり、組合費はその内訳のうち「本人に代わって組合へ支払う部分」にすぎません。
預り金で処理する理由
預り金は、取引先や従業員などから一時的に預かり、後日その人や第三者へ返還・支払いをする金額を表す負債の科目です。組合費は、組合員が組合に支払うべき会費を、会社が給与支給の際に差し引いて一時的に保管し、組合へ引き渡すものです。組合費を負担するのは組合員本人であり、会社は差し引いた会費を組合員に代わって組合へ引き渡す立場にあるため、自社の費用の未払いを表す未払金より、預り金のほうが取引の実態に合います。
実務上は、源泉所得税・住民税・社会保険料と同じ「預り金」勘定にまとめつつ、補助科目で「組合費」を区別しておく運用が扱いやすくなります。補助科目を分けておけば、毎月の納付後に残高がゼロに戻っているかを一目で確認でき、控除漏れや二重払いに気づきやすくなります。
組合費の仕訳例【給与支給から納付まで】
ここからは、ある会社の1か月分を例に、給与支給日と組合への納付日の仕訳を順に示します。数値はすべて説明用の作例です。
給与支給日の仕訳(組合費の控除)
前提として、組合員50名の当月給与の総支給額が15,000,000円、本人負担の社会保険料が2,250,000円、源泉所得税が450,000円、住民税(特別徴収)が600,000円、組合費が1人3,000円で合計150,000円とします(単位:円)。差引支給額11,550,000円を普通預金から振り込みます。会社負担分の社会保険料は別途、法定福利費として処理するためこの仕訳には含めません。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 給与手当 | 15,000,000 | 預り金(社会保険料) | 2,250,000 |
| 預り金(源泉所得税) | 450,000 | ||
| 預り金(住民税) | 600,000 | ||
| 預り金(組合費) | 150,000 | ||
| 普通預金 | 11,550,000 |
給与手当の金額は、組合費を差し引く前の総支給額のままです。組合費の150,000円は会社の費用を減らすものではなく、組合員の手取りの一部を組合へ回すための預かりとして貸方に立ちます。
労働組合への納付日の仕訳
翌月10日に、控除した組合費150,000円を労働組合の指定口座へ振り込んだとします(単位:円)。振込手数料を会社が負担する場合の扱いは、後の「経費援助」の節で触れます。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金(組合費) | 150,000 | 普通預金 | 150,000 |
この仕訳で預り金(組合費)の残高はゼロに戻ります。月末や決算日の時点で納付前の組合費が残っていれば、その金額は預り金として貸借対照表の流動負債に含まれます。費用や未払金へ振り替える必要はありません。
共済掛金などを一緒に控除して納付する場合
組合費のほかに、組合を通じて加入する共済の掛金なども給与から差し引き、組合へまとめて振り込む会社があります。前提として、当月の組合費150,000円に加えて共済掛金40,000円を控除済みで、合計190,000円を組合へ一括で振り込むとします(単位:円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金(組合費) | 150,000 | 普通預金 | 190,000 |
| 預り金(共済掛金) | 40,000 |
振込は1本でも、預り金は項目別に取り崩します。組合側は受け取った資金を組合費とそれ以外に分けて記帳する必要があるため、振込とあわせて項目別・組合員別の控除明細を組合へ渡すと、双方の照合が楽になります。組合費以外の項目を控除する場合も、後述する労使協定にその項目が定められていることが前提です。
関連コラムチェックオフ協定の書き方|組合費の賃金控除協定と条文の作例▸
給与天引き(チェック・オフ)の法的根拠
会社が組合員の給与から組合費を差し引いて組合へ渡す仕組みは、チェック・オフと呼ばれます。仕訳そのものは単純ですが、そもそも控除してよいかどうかは労働基準法の賃金全額払いの原則との関係で決まります。
労働基準法第24条第1項ただし書の労使協定
労働基準法は、賃金を通貨で直接労働者に支払い、しかも全額を支払うことを原則としています(労働基準法 第24条第1項)。そのうえで、法令に別段の定めがある場合、または事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(それがない場合は労働者の過半数を代表する者)との書面による協定がある場合には、賃金の一部を控除して支払うことができます(労働基準法 第24条第1項ただし書)。
所得税や社会保険料は、それぞれの法令に控除の定めがある項目です。これに対して組合費は法令で控除が定められているものではないため、給与から差し引くには書面による労使協定が必要になります。協定が無いまま控除を続けていれば、仕訳が正しくても賃金の一部を支払っていない状態になる点に注意が必要です。
給与担当者が確認しておく書類
経理・給与の側では、次の3点が手元でそろっているかを年に一度は確認しておくと安心です。
- 賃金控除に関する書面の協定:控除項目に「組合費」(共済掛金なども控除するならその項目)が具体的に挙がっているか、有効期間を定めている場合はそれが切れていないか
- 組合からの控除額の通知:組合員ごとの金額や、定率・定額などの計算方法。組合費の改定があった月の反映漏れが起こりやすい箇所です
- 加入・脱退の連絡:脱退した従業員から控除を続けていないか、新規加入者の控除開始月がいつか
控除額の誤りが分かった場合は、組合へ納付する前であれば預り金(組合費)を修正し、本人へ差額を返金します。すでに納付済みであれば、組合から返金を受けて本人へ返すのか、翌月の納付額で調整するのかを組合と取り決め、その経緯を記録に残しておきます。
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会社が組合費を負担する場合の注意点
「福利厚生の一環として組合費を会社で持てないか」という相談を受けることがあります。結論としては、労働組合法と税務の両面から、会社が組合費を肩代わりすることは避けるべき処理です。
経費援助(労働組合法第2条第2号・第7条第3号)
労働組合法は、団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受ける団体を、同法上の労働組合から除いています(労働組合法 第2条第2号)。使用者の側にも、労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えることを、不当労働行為として禁じています(労働組合法 第7条第3号)。
組合費は労働組合の運営経費の財源そのものです。これを会社が肩代わりすれば、組合の運営経費を使用者が賄う形になるため、経理上の援助に当たるおそれがあります。組合の側から見ても、第2条と同条第2項の規約の要件に適合することを労働委員会で立証できなければ、労働組合法に規定する手続に参与する資格を持たず、同法の救済も受けられません(労働組合法 第5条第1項)。会社の善意が、組合の資格審査に影響しかねない点は押さえておきたいところです。
一方で、条文は次のものを経理上の援助に当たらないものとして定めています(労働組合法 第2条第2号ただし書、第7条第3号ただし書)。
| 労働時間中の 協議・交渉 |
労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議・交渉することを、使用者が許すこと |
|---|---|
| 福利その他の 基金への寄附 |
厚生資金又は経済上の不幸・災厄の防止・救済のための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附 |
| 事務所の供与 | 最小限の広さの事務所の供与 |
組合費の肩代わりは、このいずれにも当たりません。組合への振込手数料や控除事務の手間を会社が負担しているケースもありますが、その扱いを含め、組合への便宜供与の範囲は労使で取り決めた内容に沿って運用し、新たに会社負担を増やすときは事前に労使で整理しておくのが無難です。
会社負担分の税務上の扱い
組合費は、組合員個人が組合に対して負う支払義務です。国税庁は、個人的債務を使用者が免除または負担したことによる経済的利益を現物給与の一つに挙げ、原則として給与所得の収入金額とするとしています(国税庁 タックスアンサーNo.2508)。会社が組合費を肩代わりすれば、この経済的利益として給与課税の対象になり得るため、源泉徴収の要否も含めて検討が必要になります。
なお、通常どおり組合員本人が負担する組合費は、源泉徴収税額の計算で差し引く項目ではありません。税額表に当てはめる給与等の金額は、給与等の金額から社会保険料等を控除した後の金額とされており(国税庁 タックスアンサーNo.2511)、ここで差し引く社会保険料は健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料など法律で列挙されたもの(所得税法 第188条、第74条第2項)で、組合費はこれに含まれないためです。給与計算ソフトで組合費を控除項目に設定する際は、課税対象額から差し引く設定になっていないかを確認しておきます。
関連コラム給与明細の組合費【一覧表】天引きの根拠と控除額の確認方法▸
実務で起こりやすいミスと防ぎ方
組合費の処理は金額が小さく毎月同じ形で流れるため、誤りがあっても気づかれにくい傾向があります。会社側で起こりやすいのは次の4つです。
- 組合費を費用で処理してしまう:控除額を福利厚生費などで受けると、納付時に費用が二重に計上されたり、預り金残高が実態とずれたりします。控除は必ず預り金で受けます。
- 預り金残高が月をまたいで残る:納付漏れや金額相違のサインです。毎月の納付後に、補助科目「組合費」の残高がゼロになっているかを確認します。
- 賞与からの控除を忘れる:規約で賞与からも組合費や臨時の徴収金を差し引く組合があります。賞与支給時も、給与支給日と同じ形で預り金に計上します。
- 組合費以外の控除を一括で処理する:共済掛金などを組合費と同じ補助科目に入れると、組合への明細と帳簿が一致しなくなります。項目ごとに補助科目を分けます。
労働組合の側では、会社から振り込まれた金額と控除明細を突き合わせて組合費収入を計上し、その会計報告は、職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表することを規約に定める必要があります(労働組合法 第5条第2項第7号)。会社が正確な明細を渡すことは、組合の会計監査をスムーズに進めるうえでも役立ちます。
関連コラム労働組合の勘定科目【一覧表】収支計算書・貸借対照表で使う科目と線引き▸
まとめ
会社側の組合費の勘定科目は「預り金」です。給与支給日に総支給額を給与手当で計上し、控除した組合費を預り金(組合費)として貸方に立て、組合へ振り込んだ日に取り崩します。組合費は会社の損益に影響しないため、費用科目で処理しないことが要点です。
給与から差し引けるのは書面による労使協定があるからであり(労働基準法 第24条第1項ただし書)、会社が組合費を負担することは経理上の援助に当たるおそれがあるうえ(労働組合法 第2条第2号、第7条第3号)、給与課税の問題も生じ得ます。チェック・オフや組合の会計・監査の扱いは労使の取決めによって異なるため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
組合費は未払金で処理してもよいですか。
組合費を負担するのは組合員本人で、会社は給与から差し引いた会費を預かって組合へ引き渡す立場なので、預り金で処理するのが実態に合います。源泉所得税や住民税と同じ預り金勘定にまとめ、補助科目で「組合費」を区別しておくと、納付後の残高確認がしやすくなります。
組合費の天引きに労使協定は必要ですか。
必要です。賃金は全額を支払うのが原則で、法令に別段の定めがない控除は、事業場の過半数労働組合または過半数代表者との書面による協定がある場合に限って認められます(労働基準法 第24条第1項ただし書)。組合費は法令で控除が定められた項目ではないため、協定に控除項目として定めておく必要があります。
会社が組合費を負担してもよいですか。
避けるべきです。労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えることは不当労働行為として禁じられており(労働組合法 第7条第3号)、援助を受ける団体は労働組合法上の労働組合に当たらないとされています(労働組合法 第2条第2号)。また、個人的債務を会社が負担した経済的利益として、給与課税の対象になり得ます(国税庁 タックスアンサーNo.2508)。
源泉徴収税額は組合費を差し引いた後の金額で計算しますか。
差し引きません。税額表に当てはめる給与等の金額は、給与等の金額から社会保険料等を控除した後の金額とされており(国税庁 タックスアンサーNo.2511)、ここで差し引く社会保険料は法律で列挙されたもの(所得税法 第188条、第74条第2項)で、組合費は含まれません。
組合を脱退した従業員から控除してしまった場合はどうしますか。
組合へ納付する前であれば、預り金(組合費)を修正して本人へ返金します。すでに納付済みであれば、組合から返金を受けて本人へ返すか、翌月の納付額で調整するかを組合と取り決めます。いずれの場合も、組合へ渡す控除明細と会社の帳簿を一致させておくことが大切です。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



