給与明細の組合費【一覧表】天引きの根拠と控除額の確認方法
目次
- 組合費とは何か
- 会社ではなく組合員が負担する理由
- 金額を決めるのは組合の規約と大会
- 給与から天引きできる法的根拠
- 労働基準法第24条第1項ただし書の労使協定
- 協定が決めるのは「控除してよい項目」
- 給与明細の控除項目と天引きの根拠【一覧表】
- 組合費の控除額を確認する手順
- 手順1 規約で計算方法を確認する
- 手順2 給与明細と賃金台帳の控除額を照らす
- 手順3 賃金控除協定の内容を確認する
- 手順4 会計報告で使い道を確認する
- 疑問別の確認先【一覧表】
- 組合費と税金・社会保険料の違い
- 確認するときに見落としやすい点
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 組合費の天引きに本人の同意は必要ですか。
- 組合費の金額は会社が決めているのですか。
- 組合費は年末調整で控除できますか。
- 給与明細の組合費が正しいか自分で確認する方法はありますか。
- 集めた組合費の使い道はどこで確認できますか。
給与明細の控除欄に「組合費」とあり、毎月いくらか差し引かれているけれど、何の根拠で会社が天引きしているのか、金額は正しいのか分からない。入社して初めて労働組合に加入した方や、組合費が改定された月に明細を見直した方から、こうした疑問をよく伺います。
結論から示すと、組合費とは労働組合の活動資金として組合員が負担する会費であり、給与からの天引きは労働基準法第24条第1項ただし書の労使協定を根拠に会社が代わりに差し引いているものです。金額そのものは会社ではなく組合の規約と大会の決議で決まるため、確認先は「天引きの根拠」は会社、「金額と使い道」は組合、と分かれます。
この記事では、給与明細に並ぶ控除項目を根拠別に一覧表で整理し、組合費の控除額を自分で確かめる手順と、疑問ごとの確認先を条文に沿ってまとめます。対象は民間企業に雇用される労働者と、その企業内の労働組合です。
組合費とは何か
組合費は、労働組合が団体交渉や組合員への情報提供、上部団体への分担金などの活動を行うための財源です。会社が負担する福利厚生費ではなく、組合員一人ひとりが自分で負担するお金である点が出発点になります。
会社ではなく組合員が負担する理由
労働組合法上の労働組合は、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体をいいます(労働組合法 第2条)。団体の運営のための経費の支出について使用者の経理上の援助を受けるものは、労働組合法上の労働組合に当たりません(労働組合法 第2条第2号)。使用者の側から見ても、労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えることは不当労働行為として禁じられています(労働組合法 第7条第3号)。
つまり、組合費を会社に肩代わりしてもらうことは制度上想定されていません。会社が関わるのは「組合員の給与から差し引いて組合へ渡す」という徴収の手続だけで、負担しているのはあくまで組合員本人です。
金額を決めるのは組合の規約と大会
組合費の額や計算方法は、法令で一律に決まっているものではありません。各組合が規約や大会(総会)の決議で定めています。実務では、基本給などに一定の率を掛ける定率方式、等級や給与の階層ごとに金額を決める定額方式、その両方を組み合わせる方式が使われています。
このため、同じ会社に勤めていても、所属する組合や給与水準によって控除額は変わります。平均的な水準を知りたい場合は、統計データを整理した次のコラムが参考になります。
関連コラム労働組合の組合費の相場|1人平均月額と決め方・使途の公開義務▸
給与から天引きできる法的根拠
会社が給与から何かを差し引くときは、必ず法律上の根拠が必要です。賃金については、通貨払・直接払・全額払が原則とされているからです(労働基準法 第24条第1項)。
労働基準法第24条第1項ただし書の労使協定
この全額払の原則には例外があり、賃金の一部を控除して支払うことができるのは次の2つの場合に限られます(労働基準法 第24条第1項ただし書)。
- 法令に別段の定めがある場合(所得税・住民税や社会保険料など)
- 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、それがなければ労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合
組合費は法令で天引きが定められた項目ではないため、後者の書面による協定(一般に「賃金控除協定」「24協定」と呼ばれます)が天引きの根拠になります。会社が組合費を差し引いて組合に一括で渡す仕組みはチェックオフと呼ばれ、協定に加えて労働協約にチェックオフ条項を置く組合も多く見られます。労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによってその効力を生じます(労働組合法 第14条)。
協定が決めるのは「控除してよい項目」
ここで押さえておきたいのは、労使協定が定めるのは「どの項目を給与から控除してよいか」であって、組合費をいくらにするかではない点です。控除額の根拠は組合の規約と大会決議にあり、会社は組合から通知された金額や計算方法に従って差し引いています。
したがって「天引きの仕組みそのもの」に疑問があれば会社の協定を、「金額」に疑問があれば組合の規約を確認する、という切り分けになります。チェックオフの要件や労働組合側の会計処理を詳しく知りたい場合は、次のコラムで整理しています。
関連コラムチェックオフとは|労働組合費の控除要件と会計処理▸
給与明細の控除項目と天引きの根拠【一覧表】
給与明細の控除欄には、法令に基づいて差し引かれる項目と、労使協定に基づいて差し引かれる項目が混在しています。組合費がどちらに属するかを、代表的な項目と並べて確認しておきます。
| 控除項目の例 | 天引きの根拠 |
|---|---|
| 所得税(源泉徴収)・住民税(特別徴収) | 法令に別段の定めがある場合として控除 |
| 健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料 | 法令に別段の定めがある場合として控除 |
| 組合費 | 過半数労働組合または過半数代表者との書面による協定 |
| 闘争積立金・共済掛金など組合が組合費とは別に集める資金 | 書面による協定に控除項目として定められていることが必要 |
| 労働金庫の返済金・団体扱いの保険料など組合経由で払うもの | 書面による協定に控除項目として定められていることが必要 |
| 社宅費・財形貯蓄・社内預金など会社関係の控除 | 書面による協定に控除項目として定められていることが必要 |
上の表の根拠は、いずれも労働基準法第24条第1項ただし書の2つの例外のどちらに当たるかで分けています(労働基準法 第24条第1項)。明細上は「組合費」1行に見えても、組合によっては闘争積立金や共済掛金を別の行に分けていたり、合算して表示していたりします。合計額だけを見て「組合費が高い」と判断する前に、行ごとの内訳を確かめることが大切です。
また、法令以外の控除はすべて協定が前提になります。協定に定めのない項目は、全額払の原則の例外に当たらないため、会社は一方的に差し引くことができません。
組合費の控除額を確認する手順
控除額が正しいかどうかは、次の順で確認すると迷いません。手順ごとに、見る書類と確認する点を示します。
手順1 規約で計算方法を確認する
まず組合の規約(または組合費に関する規程)で、計算方式と基準となる給与の範囲を確認します。定率方式であれば、何に率を掛けるのか(基本給だけか、手当を含むか)、率は何パーセントか、上限や下限があるかが要点です。
たとえば、規約で「基本給の1.5%、100円未満切り捨て」と定められている組合で、基本給が305,000円の場合は次のとおりです(説明のための当事務所の作例で、実在の組合の数値ではありません)。
明細の組合費がこの金額と一致していれば、計算どおりに控除されています。昇給や等級変更の月、規約改正で率が変わった月は、ずれが生じやすいので特に照合しておきます。
手順2 給与明細と賃金台帳の控除額を照らす
会社は、労働基準法第24条第1項の規定によって賃金の一部を控除した場合、その額を労働者ごとに賃金台帳へ記入しなければなりません(労働基準法 第108条、労働基準法施行規則 第54条第1項第8号)。給与明細の組合費は、この記録と一致しているはずの数字です。
過去の月と比べて金額が変わっていれば、変更の理由が「自分の給与が変わったため」か「組合費の率や額が変わったため」かを切り分けます。前者は人事・給与担当、後者は組合の会計担当が確認先です。
手順3 賃金控除協定の内容を確認する
組合費以外の行(積立金や共済掛金など)が並んでいる場合は、その項目が賃金控除協定に定められているかを確認します。使用者は、第24条第1項ただし書の協定を、作業場への掲示・備え付け、書面の交付、または各作業場で常時確認できる機器への記録といった方法で労働者に周知させなければなりません(労働基準法 第106条第1項、労働基準法施行規則 第52条の2)。
社内の掲示板やイントラネットで協定が見つからないときは、人事部門に閲覧方法を尋ねるのが近道です。
手順4 会計報告で使い道を確認する
控除額が正しいことが分かったら、次は集めた組合費の使い道です。労働組合の規約には、すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告を、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表する旨を含めなければなりません(労働組合法 第5条第2項第7号)。
大会で配られる決算書(収支計算書)を見れば、自分が払った組合費がどの費目にどれだけ使われたかを確かめられます。読み方は次のコラムで記載例とともに解説しています。
関連コラム組合費の使い道【記載例】収支計算書の内訳と決算書の読み方▸
疑問別の確認先【一覧表】
給与明細の組合費について疑問が生じたときの確認先を、内容ごとにまとめます。会社と組合のどちらに聞くべきかを先に決めておくと、問い合わせが一度で済みます。
| 組合費の金額が 前月と変わった |
組合の会計担当と規約(率・額の改定や大会決議の有無)、あわせて人事・給与担当(基本給などの変動) |
|---|---|
| 組合費以外の 組合関係の控除がある |
組合の会計担当(積立金・共済掛金などの目的と金額)と、会社の賃金控除協定(控除項目として定められているか) |
| 天引きの根拠を 知りたい |
会社の人事部門(賃金控除協定の内容と周知の方法) |
| 加入した覚えがないのに 控除されている |
組合と人事部門の双方(労働協約で組合員であることを雇用条件とする定めがあるか、加入手続の状況) |
| 脱退・退職後も 控除が続いている |
組合の会計担当と人事・給与担当の双方(脱退・退職の連絡が給与計算に反映されているか) |
| 組合費の使い道を 知りたい |
大会資料の決算書と会計監査人の証明書、組合の会計担当 |
「加入した覚えがない」というケースでは、会社と労働組合が労働協約で組合員であることを雇用条件とする定め(いわゆるユニオン・ショップ協定)を結んでいることがあります。労働組合法は、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合に、こうした労働協約を締結することを妨げないとしています(労働組合法 第7条第1号ただし書)。自分がどの協約の対象になっているかは、組合と人事部門に確認するのが確実です。
組合費と税金・社会保険料の違い
給与明細では同じ控除欄に並ぶため、組合費も税金や社会保険料と同じように扱われると考えがちですが、性質は異なります。
所得税の所得控除の種類は、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、基礎控除などに限られており、組合費はこれに含まれていません(国税庁 タックスアンサーNo.1100)。社会保険料控除の対象も、健康保険・厚生年金保険の保険料や雇用保険の被保険者として負担する労働保険料などに限られています(国税庁 タックスアンサーNo.1130)。
そのため、組合費を差し引いた後の手取り額が減っても、年末調整や確定申告で組合費を控除として差し引くことはできません。源泉徴収票の社会保険料等の金額に組合費が入っていないのはこのためです。
確認するときに見落としやすい点
当事務所で労働組合の会計監査に携わる中でも、組合費の控除をめぐる疑問は、制度そのものよりも「明細の表示」と「連絡の行き違い」から生じることが多いと感じます。確認の際は次の3点を意識してください。
- 表示名と中身の違い:明細の項目名は会社の給与システムの設定によるため、「組合費」の行に積立金や共済掛金が合算されていることがあります。合計額ではなく内訳を組合に確認します。
- 賞与からの控除:月例給与だけでなく賞与からも組合費や臨時の徴収金を差し引く規約の組合があります。賞与明細に控除がある場合も、規約の定めを確認します。
- 手続の反映時期:加入・脱退・休職・異動の連絡が給与計算に反映されるまでに、締め日の関係で1か月程度ずれることがあります。差額の精算方法は組合と人事部門の双方に確認します。
まとめ
組合費とは、労働組合の活動資金として組合員が自ら負担する会費です。給与から天引きできるのは、過半数労働組合または過半数代表者との書面による協定があるからで、法令に基づいて控除される税金や社会保険料とは根拠が異なります(労働基準法 第24条第1項)。
控除額は組合の規約と大会決議で決まるため、金額の確認は「規約の計算方法 → 給与明細と賃金台帳 → 賃金控除協定 → 会計報告」の順で進めると、会社と組合のどちらに聞くべきかが明確になります。組合の規約や会計報告の作り方、外部の会計監査について具体的なケースで迷われる場合は、公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
組合費の天引きに本人の同意は必要ですか。
天引きの法的な根拠は、会社と過半数労働組合または過半数代表者との書面による協定です(労働基準法 第24条第1項ただし書)。一方で、組合費を負担する義務は組合に加入していることが前提になります。加入の手続や、労働協約で組合員であることを雇用条件としているかは組合と人事部門で確認できます。
組合費の金額は会社が決めているのですか。
会社ではなく、組合の規約や大会の決議で決まります。会社は賃金控除協定に基づいて、組合が定めた金額や計算方法に従い給与から差し引いて組合へ渡しているだけです。金額の根拠を知りたい場合は、組合の規約と組合費に関する規程を確認してください。
組合費は年末調整で控除できますか。
控除できません。所得税の所得控除の種類に組合費は含まれておらず、社会保険料控除の対象も健康保険・厚生年金保険の保険料や雇用保険料などに限られています(国税庁 タックスアンサーNo.1100、No.1130)。
給与明細の組合費が正しいか自分で確認する方法はありますか。
規約に定められた計算方法(率や等級別の金額)に自分の基本給などを当てはめて計算し、明細の金額と比べます。会社は控除した額を賃金台帳に記入する義務があり(労働基準法 第108条、労働基準法施行規則 第54条第1項第8号)、明細の金額はその記録と一致しているはずです。
集めた組合費の使い道はどこで確認できますか。
組合が少なくとも毎年1回公表する会計報告で確認できます。会計報告は、すべての財源及び使途などを示し、会計監査人による正確であることの証明書とともに組合員に公表することが規約の必要記載事項です(労働組合法 第5条第2項第7号)。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



