新リース会計基準の目的と適用範囲を徹底解説
目次
- 新リース会計基準の目的
- 原則:名称を問わずリースに適用
- 適用範囲から除かれる3つの取引
- 公共施設等運営権の取得
- 貸手による知的財産のライセンスの供与
- 非再生型資源を探査・使用する権利の取得
- 無形固定資産のリース:基準を適用しないことができる
- 借地権は無形固定資産のリースに当たらない
- 個別財務諸表にも同じ基準を適用
- 適用時期
- 適用範囲の判定手順
- 実務ケーススタディ
- ケース1:リース会社を通じたソフトウェアの利用
- ケース2:資源探査会社による掘削設備のリース
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 新リース会計基準の適用範囲から除かれる取引は何ですか。
- ソフトウェアのリースは発生時の費用として処理できますか。
- 借地権も第4項により新リース会計基準を適用しないことができますか。
- 貸手による知的財産のライセンスの供与は適用範囲に含まれますか。
- 個別財務諸表にも新リース会計基準は適用されますか。
- 天然ガスを探査する権利と探査用の掘削設備のリースは同じ扱いですか。
新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」)は、契約の名称を問わずリースに適用されるのが原則です。そのうえで、公共施設等運営権の取得、収益認識会計基準の範囲に含まれる貸手の知的財産のライセンスの供与、非再生型資源を探査又は使用する権利の取得の3つを範囲から除き、無形固定資産のリースについては基準を適用しないことができると定めています(リースに関する会計基準 第3項、第4項)。
本記事では、公認会計士事務所の実務の視点から、新リース会計基準の目的と「どの取引に適用されるか」という意味での適用範囲を、条項番号に沿って整理します。範囲の判定は、契約の洗い出しや影響額の試算より前に済ませておくべき入口の作業です。判定を誤ると、オンバランスすべき契約を見落としたり、逆に対象外の取引まで台帳に載せたりすることになります。
なお「適用範囲」という言葉は、「どの会社が新リース会計基準を適用するか(対象企業)」の意味で使われることもあります。対象企業の判定は、別のコラムで整理しています。
関連コラム新リース会計基準の対象企業|判定3ステップと適用除外▸
新リース会計基準の目的
企業会計基準第34号は、基準の範囲に定めるリースについて、会計処理と開示を定めることを目的としています(リースに関する会計基準 第1項)。範囲は第3項と第4項で定められているため、目的の条文そのものが「まず範囲を確かめよ」という構造になっています。
また、本基準を適用する際には、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」もあわせて参照する必要があります(リースに関する会計基準 第2項)。適用指針の範囲は会計基準の範囲と同じとされており、両者を一体で読むのが前提です(リースに関する会計基準の適用指針 第2項)。
目的の条文に関連して実務で見落とされやすいのが、借地権の設定に係る権利金等です。企業会計原則では地上権は無形固定資産に属するとされていますが、適用指針は、地上権を含む借地権の設定に係る権利金等を使用権資産の取得価額に含めることとし、その開示については適用指針を優先して適用するとしています(リースに関する会計基準の適用指針 第1項、第27項、BC6項)。
原則:名称を問わずリースに適用
本基準は、契約の名称などにかかわらず、基準の範囲に定めるリースに適用されます(リースに関する会計基準 第3項、BC14項)。「賃貸借契約」「レンタル契約」「業務委託契約」といった名称ではなく、契約の実質で判断するということです。
ここでいう「リース」は、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分をいいます(リースに関する会計基準 第6項)。契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、その契約はリースを含むと判断します(リースに関する会計基準 第26項)。実務では、範囲除外に当たるかどうかを見る前に、この「リースを含むか」の識別で対象外と整理できる契約も少なくありません。
関連コラムリースの識別|リースを含む契約の判定フローと事例▸
適用範囲から除かれる3つの取引
リースに該当する取引であっても、次の3つは本基準の範囲から除かれます(リースに関する会計基準 第3項)。
| 公共施設等運営権の取得 | 実務対応報告第35号の範囲に含まれる運営権者による取得が対象(第3項(1)) |
|---|---|
| 貸手による知的財産の ライセンスの供与 |
収益認識会計基準の範囲に含まれるものが対象。製造又は販売以外を事業とする貸手は本基準を適用できる(第3項(2)) |
| 非再生型資源を探査する 又は使用する権利の取得 |
鉱物、石油、天然ガス及び類似の資源が対象。探査に使う機械装置等の個々の資産は含まれない(第3項(3)、BC19項) |
公共施設等運営権の取得
実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」の範囲に含まれる運営権者による公共施設等運営権の取得は、本基準の範囲に含まれません(リースに関する会計基準 第3項(1))。実務対応報告第35号が運営権を分割せずに一括して会計処理することとしているため、運営権の構成要素にリースが含まれるかどうかを検討しないこととしたものです(リースに関する会計基準 BC15項)。
貸手による知的財産のライセンスの供与
収益認識会計基準の範囲に含まれる貸手による知的財産のライセンスの供与は、本基準の範囲から除かれます(リースに関する会計基準 第3項(2))。収益認識の適用指針では知的財産のライセンスにソフトウェアのライセンスが含まれるとされているため、ソフトウェアのライセンスの供与には原則として収益認識会計基準を適用する整理です(リースに関する会計基準 BC16項)。
ただし、製造又は販売以外を事業とする貸手は、このライセンスの供与について本基準を適用することができます(リースに関する会計基準 第3項(2)ただし書き)。リースを主たる事業とする企業のように、ソフトウェアの機能を提供するためではなく、専ら金融取引として利息相当額を稼得するためにリースを利用している貸手では、ライセンスの供与だけを切り出して収益認識会計基準で処理する有用性が乏しいと考えられたためです(リースに関する会計基準 BC17項)。パソコンとソフトウェアを一体で貸し出すリース会社の取引が、この例外の典型的な場面です。
非再生型資源を探査・使用する権利の取得
鉱物、石油、天然ガス及び類似の非再生型資源を探査する又は使用する権利の取得は、本基準の範囲から除かれます(リースに関する会計基準 第3項(3))。借手の会計処理を国際的な会計基準と基本的に整合させていることを踏まえた除外です(リースに関する会計基準 BC19項)。
この除外には、探査にあたって土地等を使用する権利は含まれますが、掘削設備のように資源の探査に使用する機械装置等の個々の資産は含まれません。個々の資産がリースに該当するかどうかは、リースの定義と識別の定めに従って別途判断します(リースに関する会計基準 BC19項)。
無形固定資産のリース:基準を適用しないことができる
第3項の定めにかかわらず、無形固定資産のリースについては、本基準を適用しないことができるとされています(リースに関する会計基準 第4項)。ここで押さえておきたいのは、無形固定資産のリースは範囲から除外されているのではなく、範囲に含まれたうえで適用しないことを選べる、という整理である点です(リースに関する会計基準の適用指針 BC68項)。
第4項が置かれた理由は、借手と貸手で次のように説明されています(リースに関する会計基準 BC18項)。
- 借手:ソフトウェアのリースを企業会計基準第13号に基づいて処理している実務を変更しなくて済むようにすること、及び無形資産のリースへの適用を求めていないIFRS第16号との整合性を図ること
- 貸手:IFRS第16号には任意とする定めはないものの、その他の無形固定資産のリースが広範に行われているとは見受けられず、企業会計基準第13号の処理を変更しなくて済むようにすること
注意したいのは、第4項が認めているのは「本基準を適用しないこと」までであり、「発生時に費用として処理する」といった特定の処理方法を定めた規定ではないという点です。適用しない場合にどの方法で処理するかは第34号の本文に定めがなく、結論の背景の趣旨からは、従来の実務を続けることが想定されていると読めます(リースに関する会計基準 BC18項)。一方で、本基準の適用により企業会計基準第13号と企業会計基準適用指針第16号はその適用を終了するため(リースに関する会計基準 第59項)、第4項を選ぶ場合は、継続する処理を社内の会計方針として文書にし、監査人とも事前に擦り合わせておくのが安全です。
ソフトウェアのリースが無形固定資産のリースに当たるかの判定表と、適用する場合・しない場合の仕訳の違いは、次のコラムで設例を使って整理しています。
関連コラム無形固定資産のリース【判定表】ソフトウェアと新リース会計基準の仕訳▸
借地権は無形固定資産のリースに当たらない
借地権は、有形固定資産である土地に関する使用権資産として取り扱われます。そのため借手にとって借地権は無形固定資産のリースには該当せず、第4項で適用しないことを選ぶことはできません(リースに関する会計基準の適用指針 第27項、BC7項)。借地権の設定に係る権利金等は使用権資産の取得価額に含め、原則として借手のリース期間を耐用年数として減価償却します。ただし、旧借地権又は普通借地権の設定に係る権利金等のうち一定のものは、減価償却を行わないものとして取り扱うことができます(リースに関する会計基準の適用指針 第27項)。
| 資産・権利の種類 | 第34号の取扱い |
|---|---|
| ソフトウェア等の無形固定資産のリース | 範囲に含まれるが、適用しないことができる(第4項) |
| 借地権(地上権を含む) | 土地に関する使用権資産として本基準を適用(適用指針 第27項、BC7項) |
個別財務諸表にも同じ基準を適用
本基準は、連結財務諸表だけでなく個別財務諸表にも同じく適用されます。ASBJは、連結財務諸表のみに適用するか両方に適用するかについて、国際的な比較可能性、法人税法や分配規制などの関連諸法規等との利害調整、中小規模の企業における適用上のコスト、連結と個別で異なる処理を定める影響の4項目を審議しました(リースに関する会計基準 BC20項)。
そのうえで、懸念の多くは個別財務諸表に固有の論点ではなく、連結と個別の会計処理は同一であるべきとする基本的な考え方を覆す事情はないと判断しています。公開草案へのコメントを踏まえて再検討した後も、この判断は変わっていません(リースに関する会計基準 BC20項、BC21項)。グループ会社を抱える企業では、親会社だけでなく子会社の個別決算でも同じ範囲判定が必要になる点に注意が必要です。
適用時期
本基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項)。3月決算の会社であれば2028年3月期が適用初年度となるため、範囲の判定と契約の洗い出しは、適用初年度の期首より前に終えておく必要があります。
適用範囲の判定手順
実務では、次の順に確認すると判定の漏れを防げます。
- リースを含むかの識別:特定された資産の使用を支配する権利が、一定期間にわたり対価と交換に移転するかを確認します(リースに関する会計基準 第26項)。
- 範囲除外の3類型の確認:公共施設等運営権の取得、収益認識会計基準の範囲に含まれる貸手の知的財産のライセンスの供与、非再生型資源の権利の取得に当たらないかを確認します(リースに関する会計基準 第3項)。
- 無形固定資産のリースかの確認:該当すれば第4項の選択を検討します。借地権は無形固定資産のリースに当たらない点に注意します(リースに関する会計基準 第4項、リースに関する会計基準の適用指針 BC7項)。
- 簡便的な取扱いの検討:本基準を適用する契約について、短期リース・少額リースの簡便的な取扱いの対象になるかを確認します(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。
上場準備企業では、この4ステップの判定結果を契約ごとに一覧にしておくと、監査人への説明資料としてそのまま使えます。特に第4項を選ぶかどうかと、範囲除外と判断した根拠は、後から問われやすい論点です。
実務ケーススタディ
判定手順を、具体的な取引に当てはめてみます(いずれも当事務所が作成した例です)。
ケース1:リース会社を通じたソフトウェアの利用
ある企業が、リース会社との契約により、業務用のパッケージソフトウェアを5年間利用するケースです。リース会社はソフトウェアの開発や販売を行っておらず、取引は専ら金融取引として行われています。
貸手であるリース会社は製造又は販売以外を事業とする貸手に当たるため、このライセンスの供与について本基準を適用することができます(リースに関する会計基準 第3項(2)ただし書き、BC17項)。本基準を適用し、取引がファイナンス・リースのうち所有権移転外ファイナンス・リースに分類されれば、リース投資資産を計上します(リースに関する会計基準 第43項、第44項、第46項)。
借手である企業は、まず契約がリースを含むかを識別します(リースに関する会計基準 第26項)。リースを含み、かつソフトウェアのリースとして無形固定資産のリースに当たる場合は、本基準を適用するか、適用しないかを選択できます(リースに関する会計基準 第4項)。適用しない場合も「発生時に費用処理する」ことが基準で認められるわけではなく、従来の実務に沿った処理を会計方針として定めることになります(リースに関する会計基準 BC18項)。
| 当事者 | 会計処理の判断 |
|---|---|
| 貸手(リース会社) | 製造又は販売以外を事業とする貸手として本基準を適用できる |
| 借手(利用企業) | リースを含む場合、無形固定資産のリースとして本基準を適用しないことを選択できる |
ケース2:資源探査会社による掘削設備のリース
資源探査会社が天然ガスを探査する権利を取得し、探査作業のために建機リース会社から大型の掘削設備を借りるケースです。天然ガスを探査する権利の取得は、非再生型資源に関する権利として本基準の範囲から除かれます(リースに関する会計基準 第3項(3))。
一方、探査に使う掘削設備は除外の対象に含まれず、リースの定義と識別の定めに従ってリースに該当するかを判断します(リースに関する会計基準 BC19項)。リースに該当すれば、借手はリース開始日に使用権資産とリース負債を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。
| 対象資産・権利 | 判断 |
|---|---|
| 天然ガスを探査する権利 | 範囲から除外(第3項(3)) |
| 探査に使用する掘削設備 | リースの定義と識別に従って判断し、該当すれば本基準を適用 |
まとめ
- 新リース会計基準は、契約の名称を問わず基準の範囲に定めるリースに適用される(第3項、BC14項)。
- 公共施設等運営権の取得、収益認識会計基準の範囲に含まれる貸手の知的財産のライセンスの供与、非再生型資源の権利の取得の3つは範囲から除かれる(第3項)。
- 無形固定資産のリースは範囲に含まれたうえで、本基準を適用しないことができる(第4項)。費用処理を認める規定ではなく、適用しない場合の処理は会計方針として定める。
- 借地権は土地に関する使用権資産として扱い、第4項の対象にならない(適用指針 BC7項)。
- 個別財務諸表にも連結財務諸表と同じく適用される(BC20項、BC21項)。
どの契約が範囲に入るか、第4項を選ぶべきかは、契約条件や企業の状況によって判断が分かれます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
新リース会計基準対応の無料相談はこちら参考文献
よくある質問
新リース会計基準の適用範囲から除かれる取引は何ですか。
公共施設等運営権の取得、収益認識会計基準の範囲に含まれる貸手による知的財産のライセンスの供与、鉱物・石油・天然ガス等の非再生型資源を探査する又は使用する権利の取得の3つです(リースに関する会計基準 第3項)。
ソフトウェアのリースは発生時の費用として処理できますか。
基準が定めているのは、無形固定資産のリースについて本基準を適用しないことができるという選択までです(リースに関する会計基準 第4項)。費用処理という特定の方法を認める規定ではなく、適用しない場合は従来の実務に沿った処理を会計方針として定め、監査人と擦り合わせておくことになります(リースに関する会計基準 BC18項)。
借地権も第4項により新リース会計基準を適用しないことができますか。
できません。借地権は有形固定資産である土地に関する使用権資産として取り扱うため、無形固定資産のリースには該当しません(リースに関する会計基準の適用指針 BC7項)。
貸手による知的財産のライセンスの供与は適用範囲に含まれますか。
収益認識会計基準の範囲に含まれるものは除かれます。ただし、製造又は販売以外を事業とする貸手は、そのライセンスの供与について本基準を適用することができます(リースに関する会計基準 第3項(2))。
個別財務諸表にも新リース会計基準は適用されますか。
適用されます。連結財務諸表と個別財務諸表の会計処理は同一であるべきとする考え方を覆す事情はないと判断されています(リースに関する会計基準 BC20項、BC21項)。
天然ガスを探査する権利と探査用の掘削設備のリースは同じ扱いですか。
異なります。探査する権利の取得は範囲から除かれますが、掘削設備などの個々の資産は除外に含まれず、リースの定義と識別に従って判断します(リースに関する会計基準 第3項(3)、BC19項)。
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