新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」)の対象企業は、結論から言えば「金融商品取引法または会社法に基づく会計監査を受ける会社」です。上場会社をはじめとする有価証券報告書提出会社、会社法上の大会社、会計監査人を任意で設置する会社がこれに当たります。
会計基準そのものには「上場企業に適用する」といった企業の属性による限定がありません。適用が求められるかどうかは、その会社が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従って財務諸表や計算書類を作成する義務を負うかどうかで決まります。この構造さえ押さえれば、自社が対象かどうかの判定は短時間で終わります。
本記事では、対象企業の判定を3つのステップに分解し、上場企業・上場準備企業・連結グループ会社それぞれの取扱いと、対象から外れるリースの範囲までを整理します。強制適用は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からです(リースに関する会計基準 第58項)。
新リース会計基準の対象企業の全体像
対象企業の判定は、会計基準の中を探しても答えが見つかりません。答えは会計基準の外側、つまり金融商品取引法と会社法という2つの法令の枠組みにあります。まずこの前提を確認します。
対象企業を決める2つの法令上の枠組み
1つ目は金融商品取引法の枠組みです。有価証券の発行者である会社は、一定の場合に事業年度ごとに有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならず(金融商品取引法 第24条第1項)、金融商品取引所に上場されている有価証券の発行会社等が提出する財務計算に関する書類には、公認会計士または監査法人の監査証明が必要とされています(金融商品取引法 第193条の2第1項)。そして、これらの財務諸表について規則に定めのない事項は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとされています(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第1条第1項)。
2つ目は会社法の枠組みです。株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとされています(会社法 第431条)。会計監査人設置会社では、計算書類およびその附属明細書について監査役および会計監査人の監査を受けなければならず(会社法 第436条第2項第1号)、大会社は会計監査人を置くことが義務づけられています(会社法 第328条第1項、第2項)。ここでいう大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上、または負債の部に計上した額の合計額が200億円以上の株式会社です(会社法 第2条第6号)。
この2つのいずれかに当てはまる会社は、企業会計基準委員会が公表する会計基準に従う立場にあります。したがって新リース会計基準も、その適用時期が到来すれば当然に適用されることになります。
会計基準側に企業属性の限定がない理由
新リース会計基準は、その範囲に定めるリースに関する会計処理および開示について定めることを目的としており(リースに関する会計基準 第1項)、範囲を定める規定も企業の規模や上場の有無ではなく対象となる取引の側から書かれています(リースに関する会計基準 第3項、第4項)。企業の属性による適用除外の定めは置かれていません。
また、企業会計基準委員会は本会計基準の開発にあたり、連結財務諸表のみに適用すべきか、連結財務諸表と個別財務諸表の両方に適用すべきかを検討し、両方に同様に適用する従来の考え方を覆すに値する事情は存在しないと判断しています(リースに関する会計基準 第BC20項)。対象企業に該当した場合、連結財務諸表だけでなく個別財務諸表にも同じ会計処理が求められる点は、判定の出発点として押さえておく必要があります。
新リース会計基準の対象企業を判定する3ステップ
ここからが実際の判定です。次の3ステップを順に確認すれば、自社が対象企業に当たるか、当たる場合にどの範囲まで影響が及ぶかを整理できます。
ステップ1|適用が求められる財務諸表の特定
最初に、自社がどの法令に基づいてどの財務書類を作成しているかを特定します。次の順で確認します。
- 金融商品取引法に基づき有価証券報告書を提出しているか(提出していれば連結財務諸表および個別財務諸表が対象)
- 会社法上の大会社に該当するか(該当すれば会計監査人設置が義務となり、計算書類が対象)
- 大会社でなくても、定款の定めにより会計監査人を任意で設置しているか(設置していれば計算書類が対象)
- 上記のいずれにも当たらないか(当たらない場合、法令上の適用義務は生じにくい)
1から3のいずれかに該当すれば、その時点で対象企業と判定されます。判定にあたって、リース契約の件数や金額を数える必要はありません。
ステップ2|会社類型別の該当性判定
ステップ1の結果を会社類型に落とし込むと、次のように整理できます。
| 上場会社・ 有価証券報告書提出会社 |
対象。連結財務諸表と個別財務諸表の双方に適用されます |
|---|---|
| 会社法上の大会社 (非上場を含む) |
対象。会計監査人設置が義務づけられ、計算書類に適用されます |
| 会計監査人を任意で設置する会社 | 対象。計算書類が会計監査の対象となるため適用されます |
| 上記以外の中小企業 | 法令上の適用義務は生じにくく、中小企業向けの指針に拠ることが一般的です |
| 上場会社の非上場子会社 | 子会社単体では義務が無くても、親会社の連結財務諸表作成のため対応が必要になります |
非上場であることだけを理由に対象外と判断するのは危険です。資本金が5億円未満でも、負債の合計額が200億円以上であれば大会社に該当します(会社法 第2条第6号)。中小企業や非上場企業の判定基準は、次の記事で詳しく整理しています。
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ステップ3|対象となる契約の絞り込み
対象企業と判定されたら、次はどの契約が新リース会計基準の対象になるかを確認します。ここでいうリースとは、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約または契約の一部分をいいます(リースに関する会計基準 第6項)。契約の名称が賃貸借契約かどうかは関係ありません。
契約の締結時に、契約の当事者は当該契約がリースを含むか否かを判断します。契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、その契約はリースを含みます(リースに関する会計基準 第25項、第26項)。使用を支配する権利が移転しているといえるのは、顧客が特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し、かつ当該資産の使用を指図する権利を有する場合です(リースに関する会計基準の適用指針 第5項)。
この判断の結果、旧基準ではオペレーティング・リース取引として賃貸借処理していた事務所賃借や車両の契約も、原則として使用権資産およびリース負債の計上対象になります(リースに関する会計基準 第33項、第34項)。対象企業の判定より、この契約の洗い出しのほうが実務負荷は大きくなります。
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新リース会計基準の対応、影響額の簡易試算から
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上場企業・上場準備企業における対象範囲
対象企業の中心となるのは上場企業です。あわせて、上場を目指す企業がいつから対応を求められるかも整理します。
有価証券報告書提出会社の連結財務諸表と個別財務諸表
有価証券報告書提出会社では、連結財務諸表と個別財務諸表の双方が新リース会計基準の適用対象になります。会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されると定めており、連結と個別を区別していません(リースに関する会計基準 第58項)。
この点は実務上の影響が大きい部分です。連結財務諸表だけを新基準で作成し、個別財務諸表は従来どおりという対応は認められません。連結財務諸表と個別財務諸表で異なる会計処理を求める会計基準を開発することは適切ではないという考え方が、基準開発の前提に置かれているためです(リースに関する会計基準 第BC20項)。
IFRS任意適用会社における日本基準の適用部分
連結財務諸表について指定国際会計基準を適用している会社も、対象企業の判定からは外れません。指定国際会計基準特定会社が指定国際会計基準により作成できるのは連結財務諸表であり(連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則 第1条の2)、個別財務諸表は引き続き日本基準によって作成されるためです。
したがって、連結ではすでにIFRS第16号「リース」に基づく使用権モデルを適用している会社でも、個別財務諸表では新リース会計基準への移行対応が必要になります。連結側の対応が済んでいるからといって、個別側の準備を後回しにしないよう注意が必要です。
上場準備企業の対応時期の目安
上場準備企業では、上場申請に先立つ監査対象期間の財務諸表が金融商品取引法に準じた基準で作成されている必要があります。このため、上場予定時期から逆算して、どの事業年度から新リース会計基準を反映するかを決めることになります。
会計基準は2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からの早期適用を認めています(リースに関する会計基準 第58項)。監査対象期間が強制適用の時期をまたぐ場合、期間ごとに会計処理が変わることを避ける目的で早期適用を選択する判断もあり得るため、監査法人と協議のうえ方針を固めることが実務的です。
連結グループ内で対象となる会社の範囲
親会社が対象企業に該当する場合、影響はグループ全体に及びます。子会社側で見落としが起きやすい部分を確認します。
連結子会社の個別財務諸表と連結上の取扱い
連結財務諸表は、連結会社の個別財務諸表を基礎として作成されます。したがって、親会社が新リース会計基準の対象企業である以上、連結対象となる子会社のリース契約についても新基準に基づく数値が必要になります。子会社が非上場かつ会計監査人非設置であっても、この点は変わりません。
実務上は、連結決算に取り込む段階で修正する方法と、子会社の個別決算の段階から新基準で処理する方法があります。いずれの方法でも、子会社が締結しているリース契約を親会社側が把握できていなければ数値を作れません。
会計監査人非設置の子会社における実務対応
会計監査人を設置していない子会社では、自社の計算書類に新リース会計基準を適用する法令上の義務は生じにくい一方、連結パッケージでは新基準に沿った情報の提出を求められます。この二重構造が、現場で混乱を招きやすい点です。
短期リースや少額リースの簡便的な取扱いを適用するかどうかの選択は、原資産の科目ごとまたは性質および企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに行うことができます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。グループ内で選択が食い違うと連結上の調整が煩雑になるため、方針をあらかじめ統一しておくことが望ましいといえます。
対象外となるリースと範囲からの除外
対象企業と判定された場合でも、すべての契約が会計基準の範囲に入るわけではありません。範囲から除外される取引を確認します。
会計基準の範囲から除外される3類型
新リース会計基準は、次の3つに該当する場合を除き、リースに関する会計処理および開示に適用されます(リースに関する会計基準 第3項)。
- 実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」の範囲に含まれる運営権者による公共施設等運営権の取得
- 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」の範囲に含まれる貸手による知的財産のライセンスの供与(ただし、製造または販売以外を事業とする貸手は、本会計基準を適用することができます)
- 鉱物、石油、天然ガスおよび類似の非再生型資源を探査するまたは使用する権利の取得
いずれも限定的な取引であり、一般の事業会社で頻繁に登場するものではありません。裏を返せば、それ以外のリースは原則としてすべて範囲に含まれるということになります。
無形固定資産のリースの選択的な除外
前記3類型とは別に、無形固定資産のリースについては、本会計基準を適用しないことができるとされています(リースに関する会計基準 第4項)。適用しないことが強制されるのではなく、企業が選択できる取扱いである点が特徴です。ソフトウェアの利用契約などは、まずリースに該当するかを確認したうえで、この選択適用の余地を検討する順序になります。
短期リース・少額リースの簡便的な取扱い
会計基準の範囲に含まれるリースであっても、借手のリース期間が12か月以内である短期リースについては、リース開始日に使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料をリース期間にわたって原則として定額法により費用計上することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。
また、重要性が乏しい減価償却資産について購入時に費用処理する方法を採用している場合など、一定の要件を満たす少額のリースについても同様の簡便的な取扱いが認められています(リースに関する会計基準の適用指針 第22項)。これらは対象企業から外れる規定ではなく、対象企業が個々の契約について選択できる規定である点に注意が必要です。
対象企業と判定された後の適用時期
自社が対象企業に該当すると判定できたら、次に確認するのは適用時期と適用初年度の取扱いです。
強制適用と早期適用の開始時期
新リース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項)。適用指針の適用時期も会計基準と同様です(リースに関する会計基準の適用指針 第112項)。本記事の執筆時点では、強制適用の時期はまだ到来していません。
本会計基準は2024年9月13日に新設された基準であり、既存の基準の改正ではありません。本会計基準の適用により、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」、企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」、実務対応報告第31号および移管指針第3号については、これらに従って会計処理されている取引に関する適用が終了します(リースに関する会計基準 第59項)。
関連コラム新リース会計基準はいつから?適用時期と対象会社の範囲を解説▸
適用初年度における会計方針の変更としての取扱い
適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します。ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することもできます(リースに関する会計基準の適用指針 第118項)。
後者の方法を選択する借手は、旧基準でオペレーティング・リース取引に分類していたリースについて、適用初年度の期首時点における残りの借手のリース料を同時点の追加借入利子率で割り引いた現在価値によりリース負債を計上し、使用権資産をリース負債と同額とする方法を選択できます(リースに関する会計基準の適用指針 第123項)。次の仕訳例は、3月決算の会社が2027年4月1日開始事業年度を適用初年度とし、期首時点で残存リース期間3年・年間リース料1,200千円のオフィス賃借契約について、追加借入利子率3パーセントで割り引いた現在価値3,394千円を計上する場合の自社作例です(単位:千円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 使用権資産 | 3,394 | リース負債 | 3,394 |
この方法を選択すると、適用初年度の期首時点で保有するリース契約の一覧と、契約ごとの残存リース料および割引率が必要になります。対象企業と判定された時点から契約の棚卸しに着手しておくと、適用初年度の負荷を平準化できます。
まとめ
新リース会計基準の対象企業は、金融商品取引法に基づく監査証明を受ける会社と、会社法上の会計監査人設置会社です。上場会社・有価証券報告書提出会社、資本金5億円以上または負債200億円以上の大会社、会計監査人を任意で設置する会社が該当し、いずれも連結財務諸表と個別財務諸表の双方が適用対象になります(会社法 第2条第6号、第328条、リースに関する会計基準 第BC20項)。
対象企業に該当したら、次はどの契約がリースを含むかの判断に進みます。範囲から除外されるのは公共施設等運営権の取得など3類型に限られ、無形固定資産のリースは適用しないことを選択できます(リースに関する会計基準 第3項、第4項)。強制適用は2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からで、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からの早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。
大会社への該当判定、連結グループ内での対応範囲、上場スケジュールと早期適用の関係は、いずれも会社ごとの事情に左右されます。具体的なケースの判断に迷う場合は、公認会計士へのご相談をおすすめします。
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- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
- e-Gov法令検索 会社法
- e-Gov法令検索 金融商品取引法
- e-Gov法令検索 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
- e-Gov法令検索 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則
よくある質問
新リース会計基準の対象企業はどのように判定しますか。
金融商品取引法に基づく監査証明を受けるか、会社法上の会計監査人設置会社に該当するかで判定します。上場会社・有価証券報告書提出会社に加え、資本金5億円以上または負債の合計額が200億円以上の大会社、会計監査人を任意で設置する会社が対象です(金融商品取引法 第193条の2第1項、会社法 第2条第6号、第328条、第436条第2項第1号)。
対象企業に該当する場合、個別財務諸表にも適用されますか。
適用されます。会計基準は連結会計年度および事業年度の期首から適用すると定めており、連結と個別を区別していません(リースに関する会計基準 第58項)。企業会計基準委員会も、連結財務諸表と個別財務諸表の両方に同様に適用する考え方を維持しています(リースに関する会計基準 第BC20項)。
連結財務諸表にIFRSを任意適用していれば対象外になりますか。
対象外にはなりません。指定国際会計基準により作成できるのは連結財務諸表であり(連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則 第1条の2)、個別財務諸表は日本基準によって作成されます。個別財務諸表では新リース会計基準への対応が必要です。
新リース会計基準の範囲から除外されるリースはありますか。
公共施設等運営権の取得、収益認識会計基準の範囲に含まれる貸手による知的財産のライセンスの供与、非再生型資源を探査するまたは使用する権利の取得の3類型が範囲から除かれます(リースに関する会計基準 第3項)。また、無形固定資産のリースについては本会計基準を適用しないことができます(リースに関する会計基準 第4項)。
対象企業と判定された場合、いつまでに準備すればよいですか。
強制適用は2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からで、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からの早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。適用初年度は会計方針の変更として取り扱うため、期首時点の契約一覧と残存リース料の把握から着手することが実務的です(リースに関する会計基準の適用指針 第118項)。