新リース会計基準は中小企業に適用されるか|非上場企業の判定基準
目次
- 新リース会計基準の適用対象を決める枠組み
- 会計基準の適用が求められる会社
- 強制適用の時期と早期適用
- 中小企業・非上場企業における適用要否の判定
- 会社法上の大会社への該当
- 会計監査人の任意設置
- 適用義務がない場合の取扱い
- 中小企業の会計に関する指針との関係
- 指針の適用対象
- 指針におけるリース取引の定め
- 適用義務がなくても対応が必要になる場面
- 上場企業・会計監査人設置会社のグループ会社
- 上場を目指す企業
- 適用対象と判定した後に確認する論点
- 対象となるリースの範囲と適用除外
- 短期リース・少額リースの簡便的な取扱い
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 非上場企業であれば新リース会計基準の適用は不要ですか。
- 資本金が5億円未満であれば大会社には該当しませんか。
- 中小企業の会計に関する指針では、リース取引はどのように扱われますか。
- 上場企業の子会社である非上場会社はどう考えればよいですか。
- 適用対象になった場合、いつまでに準備すればよいですか。
新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」)が自社に適用されるのかどうかは、上場しているかどうかだけでは決まりません。判断の軸になるのは、法令に基づく会計監査を受ける会社に該当するかという点です。中小企業・非上場企業であっても、会社法上の大会社に該当する場合や、会計監査人を任意で設置している場合には適用対象になります。
本記事では、新リース会計基準の適用が求められる会社の範囲を、金融商品取引法・会社法の条文と「中小企業の会計に関する指針」の定めに沿って整理します。適用義務がない場合でも対応が必要になる場面まで確認し、自社の立ち位置を判定できる状態を目指します。
新リース会計基準の適用対象を決める枠組み
新リース会計基準は、借手がすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上することを求める会計基準です(リースに関する会計基準 第33項)。この基準は2024年9月13日に公表され、2025年4月23日には会計処理及び開示に関する定めを実質的に変更しない範囲での修正が行われています。
もっとも、会計基準そのものは「どの会社が従わなければならないか」を定めていません。適用が求められるかどうかは、その会社がどの法令に基づいて計算書類・財務諸表を作成しているかによって決まります。
会計基準の適用が求められる会社
会計基準の適用が法令上求められるのは、大きく分けて金融商品取引法に基づく開示を行う会社と、会社法上の会計監査人設置会社です。前者は、有価証券報告書に含める財務諸表を内閣府令の定めに従って作成する必要があり(金融商品取引法 第24条第1項、第193条)、その内閣府令に定めのない事項は一般に公正妥当と認められる企業会計の基準によるものとされています(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第1条)。さらに、公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければなりません(金融商品取引法 第193条の2第1項)。
後者の会計監査人設置会社では、計算書類及びその附属明細書について監査役等と会計監査人の監査を受ける必要があります(会社法 第436条第2項第1号)。監査を受ける以上、その計算書類は一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従って作成されているかどうかを問われることになります(会社法 第431条)。
| 金融商品取引法に 基づく開示を行う会社 |
有価証券報告書等に含める財務諸表について、公認会計士又は監査法人の監査証明を受ける必要があります(金融商品取引法 第24条第1項、第193条の2第1項) |
|---|---|
| 会社法上の大会社 | 資本金5億円以上または負債200億円以上に該当する株式会社で、会計監査人を置かなければなりません(会社法 第2条第6号、第328条) |
| 会計監査人を 任意で設置する会社 |
定款の定めにより会計監査人を置いた会社も、計算書類について会計監査人の監査を受けます(会社法 第326条第2項、第436条第2項第1号) |
強制適用の時期と早期適用
新リース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項)。適用指針の適用時期も会計基準と同様です(リースに関する会計基準の適用指針 第112項)。
決算期ごとの適用初年度や経過措置の詳細は、別のコラムで整理しています。適用時期そのものを確認したい場合は、あわせてご覧ください。
関連コラム新リース会計基準はいつから?適用時期と対象会社の範囲を解説▸
中小企業・非上場企業における適用要否の判定
非上場であっても、会社法上の会計監査人設置会社に該当すれば新リース会計基準の適用対象になります。実務で見落とされやすいのは、次の2つの経路です。
会社法上の大会社への該当
会社法上の大会社は、最終事業年度に係る貸借対照表を基準に、次のいずれかに該当する株式会社をいいます(会社法 第2条第6号)。いずれか一方を満たせば大会社に該当するため、資本金が小さくても負債総額が大きい会社は該当し得ます。
| 資本金の額 | 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること |
|---|---|
| 負債の合計額 | 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であること |
大会社に該当した場合、公開会社であるかどうかにかかわらず会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条第1項、第2項)。つまり、非上場の同族企業であっても、大会社に該当した時点で新リース会計基準の適用対象になるという構造です。設備投資や借入によって負債が積み上がっている会社では、判定を毎期見直す必要があります。
会計監査人の任意設置
大会社に該当しない株式会社でも、定款の定めによって会計監査人を置くことができます(会社法 第326条第2項)。また、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、規模にかかわらず会計監査人を置かなければなりません(会社法 第327条第5項)。
実務では、金融機関や取引先との関係、あるいは将来の上場を見据えて任意で会計監査人を設置している非上場企業が一定数あります。この場合も計算書類は会計監査の対象となるため、新リース会計基準への対応が必要になります。
適用義務がない場合の取扱い
金融商品取引法の適用も受けず、会計監査人も設置していない株式会社では、新リース会計基準の適用が法令上求められる場面は限られます。ただし、これは「リースの会計処理を考えなくてよい」という意味ではありません。株式会社の会計は一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとされており(会社法 第431条)、その慣行として何によるかを選ぶ必要があります。中小企業の場合、その拠りどころとなるのが次に述べる「中小企業の会計に関する指針」です。
新リース会計基準の対応、影響額の簡易試算から
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中小企業の会計に関する指針との関係
「中小企業の会計に関する指針」は、日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会の関係4団体が作成しているもので、直近では2025年9月29日に修正版が公表されています。
指針の適用対象
この指針は、中小企業が計算書類の作成に当たり拠ることが望ましい会計処理や注記等を示すものとされ、中小企業が指針に拠って計算書類を作成することが推奨されています(中小企業の会計に関する指針 3)。適用対象は、次の会社を除く株式会社です(中小企業の会計に関する指針 4)。
| 指針の適用対象外となる会社 | 対象外とされる理由 |
|---|---|
| 金融商品取引法の適用を受ける会社並びにその子会社及び関連会社 | 公認会計士又は監査法人の監査を受けるため、会計基準に基づき計算書類を作成することによります |
| 会計監査人を設置する会社(大会社以外で任意に設置する株式会社を含む)及びその子会社 | 同じく監査を受けるため、会計基準に基づき計算書類を作成することによります |
ここで注目すべきは、指針の適用対象外に金商法適用会社の子会社・関連会社と、会計監査人設置会社の子会社が含まれている点です。自社が中小企業であっても、親会社が上場企業や会計監査人設置会社であれば、指針ではなく会計基準による処理が前提とされています。
指針におけるリース取引の定め
現行の指針では、リース取引の定めは所有権移転外ファイナンス・リース取引を対象としています。借手は通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うことが原則ですが、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うこともでき、その場合は未経過リース料を注記します(中小企業の会計に関する指針 75-3、75-4)。
2025年9月29日に公表された修正版においても、リース取引の定めが参照している会計基準は企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第16号のままであり、企業会計基準第34号の内容は取り込まれていません。指針に拠って計算書類を作成している中小企業では、現時点でオペレーティング・リースを含むすべてのリースをオンバランスすることまでは求められていない、という理解になります。
適用義務がなくても対応が必要になる場面
「自社は大会社でも会計監査人設置会社でもない」と判定できた場合でも、実務上は次の2つの場面で新リース会計基準への対応が必要になります。
上場企業・会計監査人設置会社のグループ会社
新リース会計基準は、連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます(リースに関する会計基準 第58項)。親会社が連結財務諸表を作成する場合、子会社の数値は連結の対象となるため、子会社側でも新基準に基づく数値を把握できる体制が求められます。とりわけ、事業年度末日において大会社であり、かつ有価証券報告書の提出義務がある会社は、連結計算書類の作成が義務付けられています(会社法 第444条第3項)。
前述のとおり、中小企業の会計に関する指針も、金商法適用会社の子会社及び関連会社と会計監査人設置会社の子会社を適用対象から除いています(中小企業の会計に関する指針 4)。上場企業グループに属する非上場子会社は、自社単体の規模にかかわらず、親会社と同じ会計基準による報告を求められる可能性が高いと考えておくのが実務的です。
上場を目指す企業
上場すれば、事業年度ごとに有価証券報告書を提出し(金融商品取引法 第24条第1項)、その財務諸表について公認会計士又は監査法人の監査証明を受ける必要があります(金融商品取引法 第193条の2第1項)。財務諸表は、内閣府令に定めのない事項について一般に公正妥当と認められる企業会計の基準によるものとされています(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第1条)。
新リース会計基準の強制適用は2027年4月1日以後開始する事業年度からであり、早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。上場準備を進めている企業では、申請期・直前期に作成する財務諸表がどの期に当たるかを踏まえ、どの時点から新基準による数値が必要になるかを逆算しておくことが実務上の論点になります。
適用対象と判定した後に確認する論点
自社が適用対象に該当すると判定できたら、次はどの取引が基準の対象になるかを絞り込みます。
対象となるリースの範囲と適用除外
新リース会計基準は、次に該当する場合を除き、リースに関する会計処理及び開示に適用されます(リースに関する会計基準 第3項)。
- 実務対応報告第35号の範囲に含まれる運営権者による公共施設等運営権の取得
- 収益認識に関する会計基準の範囲に含まれる貸手による知的財産のライセンスの供与(製造又は販売以外を事業とする貸手は、本会計基準を適用することができます)
- 鉱物、石油、天然ガス及び類似の非再生型資源を探査する又は使用する権利の取得
また、無形固定資産のリースについては、本会計基準を適用しないことができるとされています(リースに関する会計基準 第4項)。契約の名称が「リース契約」でなくても実質的にリースに該当する取引が含まれるため、賃貸借契約・業務委託契約・保守契約などを含めた契約の棚卸しが出発点になります。
短期リース・少額リースの簡便的な取扱い
すべてのリースをオンバランスすることが原則ですが、実務負担に配慮した簡便的な取扱いも用意されています。いずれも、使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用計上できるという内容です。
| 短期リース | リース開始日において借手のリース期間が12か月以内であるリースが対象です(リースに関する会計基準の適用指針 第4項(2)、第20項) |
|---|---|
| 少額リース | 重要性が乏しい減価償却資産について購入時に費用処理する方法を採用している場合の基準額以下のリース等が対象です(リースに関する会計基準の適用指針 第22項) |
これらの簡便的な取扱いを適用できる範囲を早めに見極めておくと、オンバランスの対象となる契約数を現実的な水準に絞り込めます。使用権資産とリース負債の考え方そのものは、次のコラムで基礎から解説しています。
関連コラム新リース会計基準とは|使用権資産とリース負債をわかりやすく解説▸
まとめ
新リース会計基準が中小企業・非上場企業に適用されるかどうかは、上場の有無ではなく、法令に基づく会計監査を受ける会社に該当するかで決まります。非上場であっても、資本金5億円以上または負債200億円以上で会社法上の大会社に該当する場合や、会計監査人を任意で設置している場合は適用対象です(会社法 第2条第6号、第328条、第326条第2項)。
これらに該当しない中小企業は、中小企業の会計に関する指針に拠って計算書類を作成することが推奨されており、現行の指針には企業会計基準第34号の内容は取り込まれていません(中小企業の会計に関する指針 3、4)。一方で、上場企業グループの子会社や上場準備企業では、法令上の適用義務の有無にかかわらず、2027年4月1日以後開始する事業年度からの強制適用を見据えた準備が必要になります(リースに関する会計基準 第58項)。
大会社への該当判定や連結上の要請、上場スケジュールとの関係は個別性が高い論点です。自社が適用対象に当たるかの判断に迷う場合は、具体的なケースについて公認会計士へのご相談をおすすめします。
新リース会計基準対応の無料相談はこちら参考文献
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
- 企業会計基準委員会 中小企業の会計に関する指針
- e-Gov法令検索 会社法
- e-Gov法令検索 金融商品取引法
- e-Gov法令検索 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
よくある質問
非上場企業であれば新リース会計基準の適用は不要ですか。
上場していないことだけでは判断できません。非上場であっても、会社法上の大会社に該当する場合や会計監査人を任意で設置している場合は、計算書類が会計監査の対象となるため適用対象になります(会社法 第2条第6号、第328条、第326条第2項、第436条第2項第1号)。
資本金が5億円未満であれば大会社には該当しませんか。
資本金と負債はいずれか一方の要件を満たせば大会社に該当します。資本金が5億円未満でも、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であれば大会社です(会社法 第2条第6号)。
中小企業の会計に関する指針では、リース取引はどのように扱われますか。
所有権移転外ファイナンス・リース取引について、借手は通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うことが原則ですが、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた処理も認められ、その場合は未経過リース料を注記します(中小企業の会計に関する指針 75-3、75-4)。2025年9月29日に公表された修正版でも、企業会計基準第34号の内容は取り込まれていません。
上場企業の子会社である非上場会社はどう考えればよいですか。
新リース会計基準は連結会計年度及び事業年度の期首から適用され(リースに関する会計基準 第58項)、中小企業の会計に関する指針も金融商品取引法の適用を受ける会社の子会社や会計監査人設置会社の子会社を適用対象から除いています(中小企業の会計に関する指針 4)。親会社の連結財務諸表に取り込まれる以上、子会社側でも新基準に基づく数値を把握できる体制が必要になります。
適用対象になった場合、いつまでに準備すればよいですか。
2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。契約の棚卸しに時間がかかるため、対象契約の把握から着手することが実務的です。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。




