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財務会計

無形固定資産のリース【判定表】ソフトウェアと新リース会計基準の仕訳

目次
  1. 第4項が定める無形固定資産のリースの選択
  2. 選択が認められた理由
  3. 無形固定資産のリースに当たるかの判定表
  4. 判定の進め方(4ステップ)
  5. 適用する場合と適用しない場合の仕訳の違い
  6. 第34号を適用する場合
  7. 第34号を適用しない場合
  8. 選択後の表示と重要性の判定
  9. 選択の判断で押さえる実務ポイント
  10. まとめ
  11. 参考文献
  12. よくある質問
  13. 月額課金のソフトウェア利用サービスは無形固定資産のリースに当たりますか。
  14. 借地権も第4項により新リース会計基準を適用しないことができますか。
  15. 第4項を選択した場合、注記は必要ですか。
  16. 使用権資産の重要性の判定に無形固定資産の残高を含めますか。

ソフトウェアの利用契約を新リース会計基準でどう扱うかは、多くの経理担当者が最初に迷う論点です。結論からいえば、無形固定資産のリースについては、企業会計基準第34号を適用しないことを選択できます(リースに関する会計基準 第4項)。ただし、この選択に入る前に「そもそもリースを含む契約か」「範囲から除外される取引ではないか」「借地権のように無形固定資産のリースに当たらないものではないか」を順に確かめる必要があります。

本記事では、公認会計士事務所の実務の視点から、無形固定資産のリースに当たるかどうかの判定表と、基準を適用する場合・適用しない場合で仕訳がどう変わるかを、自社作成の設例で整理します。新リース会計基準は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から強制適用され、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。

第4項が定める無形固定資産のリースの選択

企業会計基準第34号は、公共施設等運営権の取得など3つの類型を除き、リースに関する会計処理及び開示に適用されます(リースに関する会計基準 第3項)。そのうえで第4項は、前項の定めにかかわらず、無形固定資産のリースについては本会計基準を適用しないことができると定めています(リースに関する会計基準 第4項)。

ここで押さえておきたいのは、無形固定資産のリースが「範囲外」とされているのではなく、範囲に含まれたうえで、適用しないことを選べるという整理である点です。適用指針の結論の背景でも、無形固定資産のリースへの適用は任意としつつ、無形固定資産のリースを会計基準の範囲に含めていると説明されています(リースに関する会計基準の適用指針 BC68項)。

選択が認められた理由

借手については、ソフトウェアのリースが企業会計基準第13号に基づいて会計処理されている実務を変更する必要がないようにすること、また無形資産のリースへの適用を求めていないIFRS第16号との整合性を図ることが理由として挙げられています(リースに関する会計基準 BC18項)。貸手についても、その他の無形固定資産のリースが広範に行われているようには見受けられないことなどから、適用が任意とされています(リースに関する会計基準 BC18項)。

つまり第4項は、ソフトウェアのリースについて従来の会計処理を続けられる余地を残すための定めです。ただし、第4項を選択した場合の具体的な会計処理の方法は第34号の本文に定めがありません。結論の背景の趣旨から、従来の実務を継続することが想定されていると読めますが、自社がどの処理を採るかは、監査人と事前に擦り合わせておくのが安全です。

無形固定資産のリースに当たるかの判定表

第4項の選択を検討する前に、対象の取引がどの区分に入るかを確認します。実務で問い合わせの多い取引を、判定結果とあわせて一覧にしました。

ソフトウェアのリース
(借手)
無形固定資産のリースとして、第34号を適用するか適用しないかを選択できる(リースに関する会計基準 第4項)
借地権
(地上権を含む)
土地に関する使用権資産として扱うため無形固定資産のリースに該当せず、第34号が適用される(リースに関する会計基準の適用指針 第27項、BC7項)
貸手による知的財産の
ライセンスの供与
収益認識会計基準の範囲に含まれるものは第34号の範囲外。製造又は販売以外を事業とする貸手は第34号を適用できる(リースに関する会計基準 第3項(2))
鉱物・石油・天然ガス等を
探査又は使用する権利
第34号の範囲外。探査に使う掘削設備などの個々の資産は、リースの定義と識別に従って別途判断する(リースに関する会計基準 第3項(3)、BC19項)
クラウドサービス等の
利用契約
特定された資産の使用を支配する権利が移転しなければ、そもそもリースを含まない(リースに関する会計基準 第26項)

表のうち最も誤解が多いのが借地権です。地上権は企業会計原則で無形固定資産に属するとされてきましたが、適用指針では借地権の設定に係る権利金等を使用権資産の取得価額に含めることとし、その開示についても適用指針を優先して適用するとしています(リースに関する会計基準の適用指針 第1項、第27項、BC6項)。そのため、借地権を「無形固定資産だから第4項で外せる」と判断することはできません。

関連コラムリースの識別|リースを含む契約の判定フローと事例▸

判定の進め方(4ステップ)

  1. リースを含むかの識別:契約の締結時に、特定された資産の使用を支配する権利が一定期間にわたり対価と交換に移転するかを判断します(リースに関する会計基準 第25項、第26項)。
  2. 範囲除外の確認:公共施設等運営権の取得、収益認識会計基準の範囲に含まれる貸手の知的財産のライセンスの供与、非再生型資源の権利の取得に当たらないかを確認します(リースに関する会計基準 第3項)。
  3. 無形固定資産のリースかの確認:借地権は無形固定資産のリースに該当しない点に注意します(リースに関する会計基準の適用指針 BC7項)。
  4. 第4項の選択:第34号を適用するか、適用しないかを決めます。適用する場合は、短期リース・少額リースの簡便的な取扱いの対象になるかも確認します(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。

実務では、ステップ1で「リースを含まない」と整理できる契約が少なくありません。資産が契約に明記されていても、サプライヤーが使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力を持ち、代替により経済的利益を得る場合は、特定された資産に該当しません(リースに関する会計基準の適用指針 第6項)。月額課金のソフトウェア利用サービスでは、提供側が利用環境を自由に入れ替えられる契約も多く、契約ごとにこの要件を確かめることになります。第4項の検討は、ステップ1〜3を通過した契約に限って行えば足ります。

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適用する場合と適用しない場合の仕訳の違い

選択によって財務諸表がどう変わるかを、次の自社作成の設例で比較します。前提は、ソフトウェアを5年間利用する契約で、借手のリース料は年1,200千円(毎期末払い・5回)、所有権は移転せず、借手の追加借入利子率を3%とするものです(単位:千円)。

第34号を適用する場合

借手は、リース開始日に、未払の借手のリース料から利息相当額を控除した現在価値でリース負債を計上し、同額を基礎に使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項、第34項)。設例のリース負債は次のとおり算定します。

リース負債 = 1,200 × (1 − 1.03−5) ÷ 0.03 ≒ 5,496

リース開始日の仕訳は次のとおりです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
使用権資産 5,496 リース負債 5,496

1年目の期末には、利息相当額を利息法で配分し(リースに関する会計基準 第36項)、所有権が移転しないリースの使用権資産は、借手のリース期間を耐用年数・残存価額ゼロとして減価償却します(リースに関する会計基準 第38項)。支払利息は5,496×3%≒165、減価償却費は5,496÷5≒1,099です。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
支払利息 165 現金預金 1,200
リース負債 1,035
減価償却費 1,099 減価償却累計額 1,099

関連コラム使用権資産の計上額と償却【計算例と仕訳】新リース会計基準▸

第34号を適用しない場合

第4項を選択し、従来の実務を続ける場合を考えます。企業会計基準第13号のもとでは、ファイナンス・リース取引は売買処理に準じてリース資産・リース債務を計上し(リース取引に関する会計基準 第9項、第10項)、オペレーティング・リース取引は通常の賃貸借取引に準じて処理していました(リース取引に関する会計基準 第15項)。設例の契約を従来オペレーティング・リース取引として扱っていた場合、1年目の期末の仕訳は次のとおりです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
支払リース料 1,200 現金預金 1,200

比べると、適用する場合は貸借対照表に約5,500千円の資産と負債が計上され、損益計算書の費用も1年目は1,264千円(支払利息165+減価償却費1,099)と、定額の1,200千円より前倒しになります。従来ファイナンス・リース取引として資産計上していた契約であれば、科目名は変わっても貸借対照表への影響は小さく、選択による差は主にオペレーティング・リース取引として扱っていた契約で生じます。

選択後の表示と重要性の判定

第34号を適用した場合、使用権資産は、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に表示する科目に含める方法か、無形固定資産などの表示区分の中で使用権資産として区分する方法のいずれかで表示します(リースに関する会計基準 第49項)。ソフトウェアのリースであれば、無形固定資産の区分に表示されることになります。

また、使用権資産総額に重要性が乏しいかどうかの判定(未経過の借手のリース料の期末残高の割合が10パーセント未満かどうか)では、分母に有形固定資産だけでなく無形固定資産の期末残高も含めます(リースに関する会計基準の適用指針 第41項)。無形固定資産を判断基準に加えているのは、無形固定資産のリースを会計基準の範囲に含めているためと説明されています(リースに関する会計基準の適用指針 BC68項)。

関連コラムソフトウェアの減価償却【計算例】市場販売目的と自社利用の償却方法▸

選択の判断で押さえる実務ポイント

  • 注記の要否:借手の「会計方針に関する情報」として注記が求められる選択は、リースを構成しない部分を合わせて処理する選択など3つに限られており、第4項の選択は列挙されていません(リースに関する会計基準の適用指針 第97項)。重要な会計方針として注記するかどうかは、企業会計原則注解等に照らして企業が判断します(リースに関する会計基準の適用指針 BC138項)。ソフトウェアのリースの金額が大きい企業は、重要な会計方針として記載するかを検討します。
  • 旧基準の終了:第34号の適用により、企業会計基準第13号・企業会計基準適用指針第16号に従って会計処理されている取引については、これらの適用を終了します(リースに関する会計基準 第59項)。第4項を選ぶ場合に、従来の処理を何に基づいて継続するかを社内の会計方針として文書にしておくと、監査対応がスムーズです。
  • 機器とのセット契約:機器とソフトウェアを同時に借りる契約では、どこまでが無形固定資産のリースかの区分が問題になります。適用指針は、機器のリースと知的財産のライセンスの供与を同時に行う場合の会計単位の判断が難しいことを踏まえ、独立したリースの構成部分の判定を設けています(リースに関する会計基準の適用指針 第16項、BC26項)。

適用するかしないかは、グループ内で使っているソフトウェアのリースの規模、IFRS任意適用の予定、上場準備のスケジュールなどで最適解が変わります。上場準備企業では、監査人との協議記録を早めに残しておくと、申請期の審査対応でも説明がしやすくなります。

まとめ

  • 無形固定資産のリースは第34号の範囲に含まれたうえで、適用しないことを選択できる(リースに関する会計基準 第4項)。
  • 借地権は無形固定資産のリースに該当せず、第34号が適用される(リースに関する会計基準の適用指針 BC7項)。
  • 選択の前に、リースを含む契約か(第26項)、範囲除外の3類型でないか(第3項)を確認する。
  • 選択による差は、従来オペレーティング・リース取引として処理していた契約で大きくなる。
  • 強制適用は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から(リースに関する会計基準 第58項)。

ソフトウェアの契約がリースに当たるかどうか、第4項を選ぶべきかどうかは、契約条件や企業の状況によって判断が分かれます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

月額課金のソフトウェア利用サービスは無形固定資産のリースに当たりますか。

まずリースを含む契約かを判断します。契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合にリースを含むとされており(リースに関する会計基準 第26項)、これに当たらない利用サービスはリースではないため、第4項の選択を検討する必要もありません。

借地権も第4項により新リース会計基準を適用しないことができますか。

できません。借地権は有形固定資産である土地に関する使用権資産として取り扱うため、無形固定資産のリースには該当せず、適用指針の範囲に含まれます(リースに関する会計基準の適用指針 BC7項)。

第4項を選択した場合、注記は必要ですか。

借手の会計方針に関する情報として列挙されている3つの選択に第4項は含まれていません(リースに関する会計基準の適用指針 第97項)。重要な会計方針として注記するかどうかは、企業会計原則注解等に照らして企業が判断します(リースに関する会計基準の適用指針 BC138項)。

使用権資産の重要性の判定に無形固定資産の残高を含めますか。

含めます。未経過の借手のリース料の期末残高が、当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満かどうかで判定します(リースに関する会計基準の適用指針 第41項)。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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