使用権資産の計上額と償却【計算例と仕訳】新リース会計基準
目次
- 使用権資産の定義と単一の会計処理モデル
- 使用権資産の計上額【一覧表】
- リース負債に含める借手のリース料
- 加算・控除する4項目の実務上の論点
- 使用権資産の計上額の計算例と仕訳
- ステップ1:リース負債の計上額
- ステップ2:使用権資産の計上額
- リース開始日の仕訳
- 使用権資産の償却方法【判定表】
- 所有権が移転すると認められるリースの判定
- 耐用年数・残存価額・償却方法
- 償却額の計算例
- 1年目期末の仕訳例
- 実務で迷いやすい4つのポイント
- 残価保証額を残存価額にしない
- 附属設備の耐用年数との関係
- 借地権の設定に係る権利金等
- 使用権資産総額に重要性が乏しい場合
- 貸借対照表の表示と適用時期
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 使用権資産の計上額はリース負債と同じ金額ですか。
- 使用権資産の減価償却に定率法を使えますか。
- 借手のリース期間より短い耐用年数で償却できますか。
- 残価保証がある場合、残存価額は残価保証額とするのですか。
- 使用権資産は貸借対照表のどこに表示しますか。
新リース会計基準(企業会計基準第34号)では、借手はオペレーティング・リースを含むほぼすべてのリースについて、貸借対照表に使用権資産を計上します。実務の担当者が最初につまずくのは、「使用権資産はいくらで計上するのか」と「何年で、どの方法で償却するのか」の2点です。
結論を先に示すと、使用権資産の計上額はリース負債の計上額を出発点に、4つの項目を加算・控除して求めます(リースに関する会計基準 第33項)。償却は原資産の所有権が借手に移転すると認められるかどうかで耐用年数と残存価額の決め方が分かれます(リースに関する会計基準 第37項、第38項)。本記事では、計上額の構成要素を一覧表で整理したうえで、自社作例の計算例と仕訳で両者をつなげて確認します。
使用権資産の定義と単一の会計処理モデル
使用権資産とは、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産をいいます(リースに関する会計基準 第10項)。原資産そのものではなく「使う権利」を資産として計上する点が、自社で購入した固定資産との出発点の違いです。
借手の費用配分は、リースがファイナンス・リースかオペレーティング・リースかにかかわらず、使用権資産に係る減価償却費とリース負債に係る利息相当額を別々に計上する単一の会計処理モデルによります(リースに関する会計基準 BC39項)。そのため、従来は賃借料として一括計上していた不動産や設備の賃借も、減価償却費と支払利息に分かれて損益計算書に現れます。
使用権資産の計上額【一覧表】
借手は、リース開始日にリース負債を計上し、そのリース負債に一定の項目を加算・控除した額で使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項、リースに関する会計基準の適用指針 第18項)。リース開始日とは、貸手が借手による原資産の使用を可能にする日をいいます(リースに関する会計基準 第18項)。構成要素は次のとおりです。
| 出発点: リース負債の計上額 |
リース開始日において未払である借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除した現在価値(第34項) |
|---|---|
| 加算:リース開始日までに 支払った借手のリース料 |
リース開始日より前に貸手へ支払った前払分 |
| 加算:付随費用 | リース開始日までに借手が負担した付随費用 |
| 加算:資産除去債務に 対応する除去費用 |
資産除去債務として計上した負債と同額(適用指針第28項) |
| 控除:受け取った リース・インセンティブ |
貸手から受け取ったリース・インセンティブの額(第33項) |
従来の企業会計基準適用指針第16号では、リース資産の計上額をリース料総額の割引現在価値と貸手の購入価額等のいずれか低い額としていました。新基準ではこの比較をやめ、借手のリース料の現在価値を基礎として算定する方法に改めています(リースに関する会計基準の適用指針 BC36項)。旧基準の感覚で「見積現金購入価額と比べる」手順を残さないよう注意が必要です。
リース負債に含める借手のリース料
出発点となるリース負債の計上額は、借手のリース料の現在価値で決まります。借手のリース料は、(1)借手の固定リース料、(2)指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料、(3)残価保証に係る借手による支払見込額、(4)借手が行使することが合理的に確実である購入オプションの行使価額、(5)借手のリース期間に解約オプションの行使を反映している場合の違約金の支払額で構成されます(リースに関する会計基準 第34項、第35項)。
売上高に連動する賃料や使用量に連動する料金のように、指数又はレート以外に連動する変動リース料はリース負債に含めません(リースに関する会計基準 BC42項)。その結果、使用権資産の計上額にも含まれません。割引に用いる利率の決め方は、別のコラムで算定例とともに解説しています。
関連コラム追加借入利子率の決め方|基準金利とスプレッドの算定例▸
加算・控除する4項目の実務上の論点
加算項目のうち付随費用は、何を含めるかで計上額が変わりやすい項目です。リースの当初直接費用との関係も含めて範囲を確認しておくと、契約ごとの判断がぶれにくくなります。
関連コラムリースの当初直接費用の会計処理|付随費用との違いと借手・貸手の仕訳▸
資産除去債務は、関連する有形固定資産が使用権資産である場合、負債の計上額と同額を使用権資産の帳簿価額に加えます(リースに関する会計基準の適用指針 第28項)。賃借した建物に原状回復義務がある場合や、借りた設備の撤去義務を借手が負う場合が典型です。
控除項目のリース・インセンティブは、貸手から金銭を受け取る型と、賃料そのものが減る型とで反映先が異なります。前者は使用権資産から直接控除し、後者は借手のリース料を通じてリース負債の段階で反映されます。
関連コラムリース・インセンティブとフリーレントの借手処理|使用権資産からの控除▸
使用権資産の計上額の計算例と仕訳
ここでは、製造業のA社が工場に設置する生産設備をリースするケースで計算します。数値はすべて説明用に設定した自社作例です。
| 原資産 | 工場内に設置する生産設備 |
|---|---|
| 借手のリース期間 | 5年(延長・解約オプションなし、購入オプションなし) |
| 借手のリース料 | 年額1,200千円を毎年度末に後払い(固定) |
| 割引率 | 年3% |
| リース開始日までに 支払った借手のリース料 |
なし |
| 付随費用 | 300千円(リース開始日までに現金で支払済み) |
| 資産除去債務 | リース終了時の撤去義務について430千円を計上(別途算定済み) |
| リース・インセンティブ | 貸手から導入支援金100千円を現金で受領 |
ステップ1:リース負債の計上額
未払である借手のリース料を割引率で割り引き、現在価値を求めます(リースに関する会計基準 第34項)。5年・3%の年金現価係数は約4.5797です。
ステップ2:使用権資産の計上額
リース負債に付随費用と除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除します(リースに関する会計基準 第33項、リースに関する会計基準の適用指針 第18項、第28項)。
リース負債(5,496千円)と使用権資産(6,126千円)は一致しません。加算・控除項目がある限り両者は別の金額になるため、「使用権資産=リース負債」と決め打ちした固定資産台帳の設計は避ける必要があります。
リース開始日の仕訳
リース開始日の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。現金預金は、支払った付随費用300千円と受け取った導入支援金100千円の差引200千円を貸方に計上しています(リースに関する会計基準 第33項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 使用権資産 | 6,126 | リース負債 | 5,496 |
| 資産除去債務 | 430 | ||
| 現金預金 | 200 |
使用権資産の償却方法【判定表】
使用権資産の減価償却は、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースかどうかで、耐用年数と残存価額の決め方が変わります(リースに関する会計基準 第37項、第38項)。この区分はファイナンス・リースかオペレーティング・リースかの区分とは別の軸であり、借手はすべてのリースについてこの判定を行います。
所有権が移転すると認められるリースの判定
次のいずれかに該当するリースは、所有権が借手に移転すると認められるリースに当たります(リースに関する会計基準の適用指針 第43項)。
| 所有権移転条項 | 契約期間終了後又は契約期間の中途で、原資産の所有権が借手に移転することとされている |
|---|---|
| 購入オプション | 契約期間終了後又は契約期間の中途で、借手による購入オプションの行使が合理的に確実である |
| 特別仕様 | 原資産が借手の用途等に合わせた特別の仕様で製作・建設され、返還後に貸手が第三者へ再びリース又は売却することが困難なため、使用可能期間を通じて借手のみが使用することが明らか |
購入オプションについては、旧基準の「割安購入選択権の行使が確実に予想される場合」から、割安かどうかに限らず他の要因も考慮して「行使が合理的に確実な場合」へ判定の軸が変わっています(リースに関する会計基準の適用指針 BC71項)。割安でない購入オプションでも、事業上の理由で行使が合理的に確実なら該当し得る点に注意が必要です。
耐用年数・残存価額・償却方法
判定の結果に応じた償却の決め方は次のとおりです。
| 所有権移転と 認められるリース |
原資産を自ら所有していたと仮定した場合と同一の減価償却方法。耐用年数は経済的使用可能予測期間、残存価額は合理的な見積額(第37項) |
|---|---|
| 上記以外のリース | 定額法等から企業の実態に応じて選択した方法。耐用年数は原則として借手のリース期間、残存価額はゼロ(第38項) |
所有権が移転しないリースは、原資産を使える期間がリース期間に限られるため、借手のリース期間を耐用年数とするのが原則です。ただし、実態に応じて借手のリース期間より短い耐用年数で償却することは妨げられません(リースに関する会計基準 BC47項)。
償却額の計算例
前述のA社の設備は、所有権移転条項も購入オプションもなく、特別仕様でもないため、所有権が移転すると認められるリース以外のリースに当たります。定額法を選択し、借手のリース期間5年・残存価額ゼロで償却します(リースに関する会計基準 第38項)。
比較のため、別の設備B(使用権資産8,000千円、借手のリース期間5年)について、購入オプションの行使が合理的に確実で所有権が移転すると認められるリースに当たる場合を考えます。自社所有の同種設備に定額法を適用しており、経済的使用可能予測期間を8年、残存価額の合理的な見積額を400千円と置くと、償却額は次のとおりです(リースに関する会計基準 第37項)。
同じ設備Bが所有権の移転しないリースであれば、8,000千円 ÷ 5年で年1,600千円となり、年間の費用は650千円多くなります。なお、購入オプションの行使が合理的に確実な場合、その行使価額は借手のリース料に含まれるため(リースに関する会計基準 第35項)、リース負債と使用権資産の計上額自体も大きくなります。判定は計上額と償却の両方に効くため、契約締結時に一度で整理しておくと手戻りが減ります。
1年目期末の仕訳例
A社の1年目末の処理です(単位:千円)。利息相当額は利息法により、リース負債の未返済元本残高5,496千円に3%を乗じて165千円と算定し、支払額1,200千円との差額1,035千円をリース負債の元本返済とします(リースに関する会計基準 第36項、リースに関する会計基準の適用指針 第38項、第39項)。減価償却費は前述の1,225千円です(リースに関する会計基準 第38項)。資産除去債務の時の経過による調整額は、説明を簡潔にするため省略しています。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 165 | 現金預金 | 1,200 |
| リース負債 | 1,035 | ||
| 減価償却費 | 1,225 | 使用権資産減価償却累計額 | 1,225 |
1年目の費用合計は1,390千円(支払利息165千円+減価償却費1,225千円)で、年間の支払額1,200千円を上回ります。利息法では利息相当額が前半に大きく出るため、費用が前倒しで計上される形になります。利息相当額の配分方法の原則と例外は、次のコラムで整理しています。
関連コラム新リース会計基準の借手処理:利息配分と使用権資産の償却▸
実務で迷いやすい4つのポイント
残価保証額を残存価額にしない
旧基準では、所有権移転外ファイナンス・リース取引に残価保証の取決めがある場合、原則として残価保証額を残存価額としていました。新基準では、残価保証に係る借手による支払見込額が借手のリース料を構成するため、この取扱いは廃止されています(リースに関する会計基準 第35項、BC48項)。残価保証は償却計算ではなく、リース負債の測定で反映します。
附属設備の耐用年数との関係
賃借した建物に内装などの附属設備を設置した場合、その耐用年数と借手のリース期間は判断の閾値が異なるため、必ずしも一致しないと整理されています(リースに関する会計基準の適用指針 BC34項)。一方で、大幅な賃借設備の改良は延長オプションの行使可能性を判断する要因の一つに挙げられており(リースに関する会計基準の適用指針 第17項)、両者を別々に決めつつ、相互の影響を確認する姿勢が求められます。
借地権の設定に係る権利金等
借地権の設定に係る権利金等は使用権資産の取得価額に含め、原則として借手のリース期間を耐用年数として減価償却します(リースに関する会計基準の適用指針 第27項)。ただし、旧借地権又は普通借地権に係る権利金等で、適用前に償却していなかった場合などは、減価償却を行わない取扱いも認められています(同適用指針 第27項)。
使用権資産総額に重要性が乏しい場合
未経過の借手のリース料の期末残高が、その期末残高と有形固定資産・無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満であれば、使用権資産総額に重要性が乏しいと認められます(リースに関する会計基準の適用指針 第41項)。この場合、借手のリース料から利息相当額を控除せずに使用権資産とリース負債を計上し、減価償却費のみを計上する方法などを選べます(リースに関する会計基準の適用指針 第40項)。計上額の算定そのものが変わるため、グループ全体でどの方法を採るかを先に決めておく必要があります。
貸借対照表の表示と適用時期
使用権資産は、(1)原資産を自ら所有していたと仮定した場合に表示するであろう科目に含める方法、又は(2)有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産等の表示区分の中で使用権資産として区分する方法のいずれかで表示します(リースに関する会計基準 第49項)。償却後の帳簿価額が減損の対象となる点は、別のコラムで設例とともに整理しています。
関連コラム使用権資産の減損とグルーピング【設例】割引前将来CFの見積期間▸
企業会計基準第34号は2024年9月に公表され、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から強制適用されます。2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項、リースに関する会計基準の適用指針 第112項、BC3項)。3月決算の会社であれば、2028年3月期が適用初年度となります。
まとめ
使用権資産の計上額は、リース負債の計上額に、リース開始日までに支払った借手のリース料・付随費用・資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除して求めます。リース負債と使用権資産は加算・控除項目の分だけ金額がずれるため、両者を別々に管理できる台帳の設計が欠かせません。
償却は、所有権が借手に移転すると認められるリースかどうかで、耐用年数(経済的使用可能予測期間か借手のリース期間か)と残存価額(合理的な見積額かゼロか)が分かれます。購入オプションの判定は「合理的に確実」へ軸が変わったため、既存契約も含めて見直しが必要です。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
参考文献
よくある質問
使用権資産の計上額はリース負債と同じ金額ですか。
同じとは限りません。使用権資産は、リース負債の計上額にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用、資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額で計上します(リースに関する会計基準 第33項)。これらの項目がない場合に限り、両者は同額になります。
使用権資産の減価償却に定率法を使えますか。
所有権が移転すると認められるリース以外のリースでは、定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じた方法を選択でき、自社所有資産と同一の方法にそろえる必要はありません(リースに関する会計基準 第38項)。所有権が移転すると認められるリースでは、原資産を自ら所有していたと仮定した場合と同一の方法で償却します(リースに関する会計基準 第37項)。
借手のリース期間より短い耐用年数で償却できますか。
できます。所有権が移転しないリースは借手のリース期間を耐用年数とするのが原則ですが、実態に応じてそれより短い耐用年数で減価償却費を算定することは妨げられていません(リースに関する会計基準 BC47項)。短くする場合は、その根拠となる使用実態を記録しておくことが大切です。
残価保証がある場合、残存価額は残価保証額とするのですか。
いいえ。新基準では、残価保証に係る借手による支払見込額を借手のリース料に含めてリース負債で反映するため、残価保証額を残存価額とする旧基準の取扱いは廃止されました(リースに関する会計基準 第35項、BC48項)。所有権が移転しないリースの残存価額は原則としてゼロです(リースに関する会計基準 第38項)。
使用権資産は貸借対照表のどこに表示しますか。
原資産を自ら所有していたと仮定した場合に表示するであろう科目に含める方法と、有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産等の区分の中で使用権資産として区分表示する方法のいずれかを選びます(リースに関する会計基準 第49項)。
新リース会計基準対応の無料相談はこちら本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。




