監査法人の規模ランキング【従業員数・売上高・被監査会社数の一覧表】
目次
監査法人の規模ランキングは、どの指標で並べるかによって順位の意味が変わります。公認会計士・監査審査会が毎年7月に公表する「令和8年版モニタリングレポート」では、監査法人を大手・準大手・中小規模の3区分に分け、人員数、業務収入(売上高)、被監査会社数といった規模の実額が公表されています。
この記事では、その公的データをもとに、従業員数(社員・常勤職員数)、売上高(業務収入)、被監査会社数(上場国内会社数)の3つの指標別に一覧表を並べ、それぞれの順位が何を意味するのかを整理します。あわせて、公認会計士事務所として実務で用いている「規模だけで選ばないための判断軸」も示します。
監査法人の規模ランキングの結論
結論から申し上げますと、3つの指標のいずれで並べても順位は大手監査法人、準大手監査法人、中小規模監査事務所の順になりますが、区分間の差の大きさは指標ごとに大きく異なります。
人員数では大手4法人の合計が2万人を超える一方、売上高(業務収入)では大手の集中度がさらに高く、監査業務収入に占める大手の割合は約8割に達します。逆に、被監査会社数(社数ベース)では大手のシェアが6割を下回っており、社数だけで見ると中小規模監査事務所の存在感が相対的に大きくなります。この「指標によってシェアが変わる」点が、規模ランキングを読むうえで最も重要な前提です。
規模区分と該当する監査法人
審査会のレポートでは、大手監査法人を「上場国内会社を概ね100社以上被監査会社として有し、かつ常勤の監査実施者が1,000名以上いる監査法人」と定義し、準大手監査法人を大手に準ずる規模の監査法人としています。区分ごとの事務所数は次のとおりです(2025年3月末時点)。
| 区分 | 事務所数 |
|---|---|
| 大手監査法人 | 4法人 |
| 準大手監査法人 | 4法人 |
| 中小規模監査事務所 | 2,403事務所(うち中小監査法人288、共同事務所48、個人事務所2,067) |
区分は法令上の分類ではなく、審査会がモニタリングの都合で用いている規模の区分です。なお、上場会社等の監査を行った総数が100以上の監査法人は「大規模監査法人」と呼ばれ、大手4法人に準大手2法人を加えた6法人が該当します。どの法人がどの区分に属するかは、審査会のレポートに法人名で明記されています。
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従業員数ランキング(社員・常勤職員数)
監査法人の従業員数に相当するのは、出資者である社員(パートナー)と、雇用されている常勤職員の合計です。区分別の合計人数は次のとおりです。
| 区分(集計対象) | 社員・常勤職員数の合計 |
|---|---|
| 大手監査法人(4法人・2025年度) | 23,921人 |
| 中小監査法人(281法人・2024年度) | 4,534人 |
| 準大手監査法人(4法人・2025年度) | 2,001人 |
法人数が異なるため、合計の順位は「1法人あたりの規模」とは一致しません。上の数値を集計対象の法人数で割ると、1法人あたりの人員は大手が約5,980人、準大手が約500人、中小監査法人が約16人となります。中小監査法人は法人数が多いために合計では準大手を上回りますが、1法人あたりでは大きな差があります。
審査会は1法人あたりの人員の幅も公表しています。2025年度の状況は次のとおりです。
| 区分 | 1法人あたりの常勤職員数 |
|---|---|
| 大手監査法人 | 約3,400人から約6,800人 |
| 準大手監査法人 | 約230人から約950人 |
| 中小監査法人 | 約120人まで |
社員数でみると、大手は約250人から約550人、準大手は約40人から約100人、中小監査法人は約50人までの幅です。中小監査法人の数値は決算月が広範にわたるため2024年度までが集計対象で、社員数と常勤職員数が大きく乖離する1法人は除かれています。
人員を公認会計士の登録者数の側から見ることもできます。2026年3月末時点の公認会計士登録者数は37,715人で、そのうち監査法人に所属する者は14,915人(39.5%)、さらにそのうち大手監査法人に所属する者が10,507人と約7割を占めています。監査の担い手としての人的資源が大手に集中している状況が続いています。
売上高ランキング(業務収入)
監査法人の売上高は、審査会のレポートでは「業務収入」として公表されています。業務収入には監査証明業務のほか、株式公開支援やIFRS導入支援などの非監査証明業務の収入も含まれます。
| 区分(集計対象) | 業務収入 |
|---|---|
| 大手監査法人(4法人・2025年度) | 468,296百万円 |
| 中小監査法人(合計・2024年度) | 68,555百万円 |
| 準大手監査法人(4法人・2025年度) | 33,261百万円 |
1法人あたりに換算すると、大手は約1,171億円、準大手は約83億円、中小監査法人は約2億4千万円となります。売上高は人員数よりも区分間の差が大きく、規模の違いがそのまま収入規模の違いに表れています。
収入の中身も区分によって異なります。2025年度の業務収入に占める監査証明業務収入の割合は、大手監査法人が約70%、準大手監査法人が約95%、中小監査法人が約90%です。大手は人材育成や監査品質の向上を目的に一定程度の非監査証明業務を担う方針をとっており、準大手・中小は監査証明業務を中心とした業務運営を行っています。
監査業務収入だけを取り出したシェアも公表されています。2025年3月末時点の296監査法人の監査業務収入4,303億円のうち、大手監査法人が77.9%を占めています。同時点の監査証明業務数22,443社に占める大手の割合は52.2%、所属公認会計士数14,625人に占める割合は71.4%です。社数では約半分でも収入では約8割という差は、大手が規模の大きな会社の監査を担っていることを示しています。
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被監査会社数ランキング(上場国内会社数)
被監査会社数は、監査法人の規模を「担当している会社の数」で測る指標です。2026年3月末時点の上場国内会社3,843社の会計監査人を規模別に集計すると、次のとおりです。
| 区分 | 上場国内会社数 |
|---|---|
| 大手監査法人 | 2,177社 |
| 中小規模監査事務所 | 1,056社 |
| 準大手監査法人 | 610社 |
社数のシェアは大手が56.6%、準大手が15.9%、中小規模監査事務所が27.5%です。一方、監査先の時価総額でみると大手が1,163兆7,024億円で95.2%を占め、準大手は25兆61億円、中小規模監査事務所は33兆9,874億円にとどまります。社数ベースでは大手のシェアが6割を下回る一方、時価総額ベースでは9割を超えるという差が生じており、規模の大きな上場会社の監査には多数の監査人員と多様な専門能力が必要になるためと説明されています。
金融商品取引法または会社法に基づく被監査会社等の数も公表されています。2024年度は10,028社で、規模別のシェアは大手が68.8%、準大手が9.6%、中小監査法人が21.6%です。大手のシェアは近年減少傾向にあり、準大手と中小のシェアが増加しています。
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規模データの読み方と注意点
集計年度と基準日のずれ
3つの指標は、それぞれ集計の基礎が異なります。人員数と業務収入は各監査法人が提出する業務報告書に基づく年度別の集計で、中小監査法人については決算月が広範にわたるため最新年度が未集計となり、1年ずれた数値が使われています。被監査会社数と時価総額は各年3月末時点のデータです。実務では、異なる指標の数値を単純に足したり比率を計算したりする前に、集計年度と基準日をそろえられるかを確認しています。
また、2023年12月に準大手監査法人の1法人が大手監査法人に合併したため、区分別の合計値は合併の前後で不連続になっています。過去の数値と比較する場合は、この組織再編の影響を除いて見る必要があります。
規模と監査品質は別の指標
規模ランキングの上位が、そのまま監査品質の順位を示すわけではありません。審査会は監査事務所の品質管理の状況を検査し、区分ごとの傾向として、大手では品質管理の主体を本部から現場に近い部門へ移すなかで浸透状況と実効性の検証が課題となり、準大手では品質管理を担う本部機能が大手と比べて脆弱である点が課題とされています。規模が大きい区分にも固有の課題があり、規模と品質は別の軸で確認すべきものです。
準大手・中小規模監査事務所の側にも、監査証明業務に集中した業務運営や、経営層との距離の近さといった特徴があります。実務では、規模の数値は「自社の監査に必要な人員と専門性が確保できるか」を判断する材料として使い、品質は品質管理体制や検査結果の公表内容から別に確認しています。
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規模ランキングを選定に使うときの判断軸
規模のデータを監査法人の選定に使う場合は、順位そのものではなく、次の観点に読み替えて確認することをおすすめします。
| 自社の規模との 対応関係 |
候補法人が担当している被監査会社の規模が自社と近いかを確認します。時価総額シェアの偏りから、規模の大きな会社は大手に集中しています。 |
|---|---|
| 投入できる人員 | 1法人あたりの人員の幅を目安に、連結子会社数や拠点数に見合う監査チームを編成できるかを確認します。 |
| 非監査証明業務の 比重 |
監査証明業務収入の割合から、株式公開支援やアドバイザリーの体制を持つかを推測できます。同時提供の制限にも留意します。 |
| 上場会社等監査人 名簿への登録 |
上場国内会社の監査には名簿への登録が必要です。規模にかかわらず、候補法人が登録されているかを確認します。 |
| 合併の可能性 | 準大手の多くが業務運営戦略として合併を検討しており、中小監査法人でも約43%が相手先次第で合併を検討しています。中期的な体制変化も想定します。 |
なお、会計監査人になれるのは公認会計士または監査法人に限られます(会社法 第337条第1項)。監査法人が会計監査人に選任された場合は、その社員の中から会計監査人の職務を行うべき者を選定し、会社に通知することが求められます(会社法 第337条第2項)。規模の比較で候補を絞ったあとは、この選任手続の要件も併せて確認します。
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まとめ
監査法人の規模ランキングは、従業員数、売上高(業務収入)、被監査会社数のどれで並べるかによって、区分間の差の大きさが変わります。人員数では大手4法人の合計が23,921人、業務収入では468,296百万円と圧倒的な規模を示す一方、上場国内会社の社数シェアは56.6%で、中小規模監査事務所も1,056社を担っています。数値はいずれも公認会計士・監査審査会の令和8年版モニタリングレポートで確認できるもので、集計年度と基準日をそろえて読むことが前提になります。
規模の数値は候補を絞る出発点にはなりますが、監査品質や自社との相性までは示しません。自社の連結範囲や上場区分を踏まえた具体的なケースは、公認会計士へのご相談をおすすめします。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案への適用を保証するものではありません。実際の判断にあたっては、最新の公表資料と個別の状況に基づきご確認ください。
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よくある質問
監査法人の規模は何の指標で比べるのが適切ですか。
目的によって異なります。監査チームに投入できる人的資源を知りたい場合は社員・常勤職員数、担当している会社の層を知りたい場合は被監査会社数と監査先の時価総額、事業基盤の大きさを知りたい場合は業務収入が目安になります。1つの指標だけで順位を判断せず、3つを並べて確認することをおすすめします。
従業員数と所属する公認会計士の数は同じですか。
同じではありません。監査法人の人員には、公認会計士である社員と公認会計士の職員のほか、公認会計士試験合格者、IT専門家などの専門職員、監査アシスタントや事務職員が含まれます。直近の集計では、総人員に占める社員・公認会計士以外の人員の割合は、大手監査法人で37%、準大手監査法人で26%、中小監査法人で25%です。
監査法人ごとの売上高や従業員数は公表されていますか。
公認会計士・監査審査会のモニタリングレポートでは、区分ごとの合計値と1法人あたりの幅が公表されており、法人別の内訳は示されていません。したがって、公的データから法人ごとの順位表を作ることはできません。個別の法人の規模を確認する場合は、各監査法人が開示する説明書類等を確認することになります。
被監査会社数が多い監査法人ほど安心といえますか。
社数の多さは経験の蓄積を示す一方、監査の品質や自社への対応力を直接示すものではありません。審査会の検査では、規模の大きい区分にも品質管理上の課題が指摘されています。被監査会社数は候補を絞る材料とし、品質管理体制や担当チームの構成は個別に確認することが実務的です。
規模のデータはどのくらいの頻度で更新されますか。
公認会計士・監査審査会のモニタリングレポートは毎年7月に公表されており、人員数や業務収入、被監査会社数の最新値がそのたびに更新されます。選定資料として使う場合は、公表年度を明記して引用し、年度をまたぐ比較では組織再編の影響を確認してください。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



