業種別の監査報酬【一覧表】会社法監査9業種と負債200億円超の水準
目次
- 会社法監査の監査報酬|業種別一覧表(2024年度)
- 業種別の平均監査時間と時間単価
- 同じ売上規模で比べた業種差|売上高100億円以上500億円未満
- 業種平均を読むときの注意点
- 負債200億円以上で大会社になった会社の監査報酬
- 公認会計士法上の大会社等に当たる会社の水準
- 自社の見積りを業種平均に当てる手順
- 報酬を決めるときに必要な手続
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 会社法監査の監査報酬が最も高い業種はどこですか。
- 不動産業の監査報酬が平均より低いのはなぜですか。
- 負債200億円を超えて大会社になった場合、監査報酬はどのくらいですか。
- 業種平均より高い見積りを受けた場合、どこを確認すればよいですか。
会計監査人に支払う監査報酬は、同じ会社法監査でも業種によって平均額が大きく異なります。日本公認会計士協会の監査実施状況調査(2024年度)で会社法監査の1社当たり平均監査報酬を業種別にみると、最も低い農業・林業・漁業・鉱業の7,562千円から、最も高い金融保険業の23,526千円まで約3.1倍の開きがあります。
売上高の規模をそろえても差は残ります。売上高100億円以上500億円未満の会社で比べると、金融保険業の平均は23,945千円、不動産業は11,417千円で、約2.1倍です。本記事では、この調査の業種別・負債総額別の集計を一覧表にまとめ、自社の見積りを業種平均に当てはめて確かめる手順までを整理します。売上高区分だけで見た全体の相場は、下記のコラムで扱っています。
関連コラム会社法監査の費用相場と決まり方|会計監査人報酬の実務▸
会社法監査の監査報酬|業種別一覧表(2024年度)
監査実施状況調査は、会員が日本公認会計士協会へ提出する監査概要書(写し)と監査実施報告書から、監査に関与した人数・監査時間・監査報酬額を集計した統計です。2024年度の調査は、2024年4月期から2025年3月期までの1年間を対象としています。
この調査の「会社法監査」には、会計監査人設置会社を含む会社法適用会社だけが集計されています。金融商品取引法に基づく監査も受けている会社は別の区分(金融商品取引法監査)に集計されるため、ここに並ぶのは会社法監査だけを受けている会社です。上場していない大会社や、定款で会計監査人を任意に置いている会社の相場を知りたいときに、最も近い統計といえます。
2024年度の会社法監査6,160社について、業種ごとの1社当たり平均監査報酬は次のとおりです。金額は消費税等抜きで、カッコ内は集計対象の会社数です。
| 金融保険業 | 23,526千円(630社) |
|---|---|
| 製造業 | 18,683千円(1,495社) |
| 卸売業・小売業 | 18,352千円(959社) |
| 運輸業・情報通信業 | 17,383千円(778社) |
| 建設業 | 15,409千円(283社) |
| サービス業 | 11,735千円(1,207社) |
| 不動産業 | 9,781千円(536社) |
| 電気業・ガス業 | 9,463千円(219社) |
| 農業・林業・漁業・鉱業 | 7,562千円(53社) |
| 会社法監査全体 | 16,253千円(6,160社) |
9業種の会社数を合計すると6,160社となり、会社法監査の全体と一致します。全体平均16,253千円を上回るのは金融保険業・製造業・卸売業・小売業・運輸業・情報通信業の4業種で、残る5業種は全体平均を下回っています。
業種別の平均監査時間と時間単価
報酬の差がどこから生じているかは、1社当たりの平均監査時間と時間当たり平均単価に分けると見えてきます。同じ調査の業種別の数値は次のとおりです。
| 業種 | 平均監査時間/ 時間当たり平均単価 |
|---|---|
| 金融保険業 | 1,927.9時間/12,203円 |
| 製造業 | 1,410.1時間/13,249円 |
| 卸売業・小売業 | 1,359.1時間/13,503円 |
| 運輸業・情報通信業 | 1,159.6時間/14,991円 |
| 建設業 | 1,174.2時間/13,122円 |
| サービス業 | 861.5時間/13,621円 |
| 不動産業 | 722.9時間/13,531円 |
| 電気業・ガス業 | 698.7時間/13,544円 |
| 農業・林業・漁業・鉱業 | 540.5時間/13,992円 |
時間単価は12,203円から14,991円の範囲に収まり、最大でも1.2倍程度の差です。これに対して平均監査時間は540.5時間から1,927.9時間まで約3.6倍の開きがあります。業種による報酬差の大部分は、単価ではなく監査に投じられる時間の差として表れています。平均単価が最も低い金融保険業が、平均報酬では最も高くなっているのはこのためです。
同じ売上規模で比べた業種差|売上高100億円以上500億円未満
業種全体の平均は、その業種に売上高の小さい会社がどれだけ含まれるかに左右されます。そこで、7業種で共通の区分として集計されている売上高100億円以上500億円未満の会社に絞って比べます。
| 業種 (売上高100億円以上500億円未満) |
平均監査報酬/平均監査時間 |
|---|---|
| 金融保険業(125社) | 23,945千円/1,944.6時間 |
| 製造業(667社) | 14,520千円/1,132.0時間 |
| サービス業(278社) | 14,436千円/1,095.3時間 |
| 運輸業・情報通信業(200社) | 13,459千円/1,009.9時間 |
| 卸売業・小売業(248社) | 12,875千円/1,010.1時間 |
| 建設業(111社) | 12,282千円/935.5時間 |
| 不動産業(161社) | 11,417千円/836.6時間 |
同じ売上規模でも、金融保険業の平均監査報酬は不動産業の約2.1倍です。一方で、金融保険業を除く6業種は11,417千円から14,520千円の範囲に収まり、業種全体の平均で比べたときほどの開きはありません。
業種全体の平均で製造業(18,683千円)とサービス業(11,735千円)に約7,000千円の差があったのに、同じ売上区分では14,520千円と14,436千円でほぼ並びます。業種全体の平均の差は、主にその業種に含まれる会社の規模構成の違いによるものと読めます。自社の水準を測るときは、業種全体の平均ではなく、業種と売上高の両方がそろう区分の数値を使うのが基本です。
業種平均を読むときの注意点
業種別の数値を使う前に、集計の前提を3つ押さえておく必要があります。
- 売上高の区分が業種ごとに異なる: 調査では20件未満となる区分を20件以上にまとめて集計しています。たとえば電気業・ガス業は「100億円未満」「100億円以上」の2区分、農業・林業・漁業・鉱業は「10億円未満」「10億円以上」の2区分しかありません。
- 小規模な会社の比率が平均を押し下げる: 不動産業は536社のうち100社が売上高10億円未満、電気業・ガス業は219社のうち109社が売上高100億円未満の区分に属しています。これらの業種の全体平均が低いのは、規模の小さい会社の比率が高いことが影響しています。
- 同じ区分の中でも金額の幅は大きい: 製造業の売上高100億円以上500億円未満の区分では、監査報酬の最高額が118,105千円、最低額が800千円です。平均値は出発点であり、個社の報酬はこの幅のどこにでも位置し得ます。
調査自体も、監査業務は業種・業態・規模、内部統制の状況、監査リスク、取引の複雑性などによって異なり、一律の指標を示すものではないと注記しています。業種平均は「自社の見積りを説明してもらうための物差し」として使うのが適切です。
負債200億円以上で大会社になった会社の監査報酬
大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に計上した資本金が5億円以上であるか、負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である株式会社をいいます(会社法 第2条第6号)。大会社は、公開会社でないものも含めて会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条第1項、第2項)。
資本金が5億円未満でも、借入金などの負債が大きい会社は、負債基準だけで大会社に該当します。監査実施状況調査は、この層を資本金5億円未満かつ負債総額200億円以上の会社として別に集計しています。2024年度の対象は1,499社で、1社当たり平均監査報酬は14,902千円、平均監査時間は1,130.7時間、時間当たり平均単価は13,179円でした。
| 負債総額区分 (資本金5億円未満) |
平均監査報酬/平均監査時間 |
|---|---|
| 200億円以上250億円未満(248社) | 11,954千円/902.9時間 |
| 250億円以上300億円未満(222社) | 11,245千円/858.6時間 |
| 300億円以上400億円未満(292社) | 12,215千円/930.3時間 |
| 400億円以上500億円未満(184社) | 13,922千円/1,030.4時間 |
| 500億円以上700億円未満(174社) | 14,776千円/1,139.1時間 |
| 700億円以上1,000億円未満(141社) | 17,951千円/1,277.8時間 |
| 1,000億円以上(238社) | 23,728千円/1,852.2時間 |
負債200億円をわずかに超えて大会社となった段階(200億円以上300億円未満)では、平均監査報酬は11,000千円台から12,000千円弱の水準です。負債が1,000億円以上になると平均は23,728千円となり、200億円台の約2倍になります。平均監査時間も902.9時間から1,852.2時間へ伸びており、負債区分による報酬差の多くは監査時間の差として表れています。
負債基準で初めて大会社になる会社は、それまで監査を受けた経験がないことも多く、最初の見積りの妥当性を判断する材料が社内にありません。負債額と業種の2つの軸で平均値を拾っておくと、提示された金額が極端に外れていないかを確かめる目安になります。負債の部の合計額の数え方は、下記のコラムで整理しています。
関連コラム大会社の判定|負債200億円に含める科目一覧と計算例▸
公認会計士法上の大会社等に当たる会社の水準
監査実施状況調査は、会社法監査のうち公認会計士法第24条の2の大会社等に当たる会社(資本金100億円以上または負債1,000億円以上の会社、銀行、保険会社)も別に集計しています。2024年度の対象は923社で、1社当たり平均監査報酬は41,228千円、平均監査時間は2,990.5時間でした。
会社法監査全体の平均16,253千円の約2.5倍にあたります。資本金や負債がこの水準に達している会社は、業種別の平均よりも、この区分の数値と照らし合わせるほうが実態に近くなります。会社法の大会社と公認会計士法の大会社等の違いは、下記のコラムで一覧にしています。
関連コラム公認会計士法の大会社等【一覧表】会社法の大会社との違いと規制の範囲▸
会社法監査・会計監査人の選任は公認会計士へ
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自社の見積りを業種平均に当てる手順
監査法人から受け取った見積りが業種の水準と比べてどうなのかは、次の4つの手順で確かめられます。総額どうしを比べるだけでは、差の理由が分かりません。
- 業種と売上高の区分を特定する: 自社の業種と売上高から、調査の該当区分の平均監査報酬と平均監査時間を拾います。業種によっては区分が粗いため、区分の上下の数値も併せて控えておきます。
- 負債基準の大会社なら負債区分も拾う: 資本金5億円未満で負債200億円以上の会社は、負債総額区分の数値も拾い、業種の数値と並べます。
- 見積りを時間と単価に分解する: 見積りの想定監査時間と時間単価を監査法人に確認し、平均監査時間と平均単価のどちらが乖離しているかを見ます。
- 乖離の理由を説明してもらう: 時間が多い場合は、連結子会社の数、初年度の期首残高の検証、内部統制の整備状況など、どの手続に時間がかかる想定なのかを確認します。
手順3の考え方を、製造業・売上高100億円以上500億円未満の区分で確かめます。この区分の平均監査時間と時間当たり平均単価を掛け合わせると、平均監査報酬とほぼ一致します。
同じ区分の会社が、想定監査時間1,400時間・時間単価13,000円の見積りを受け取ったとします(当事務所による設例)。
時間単価は区分平均12,828円との差が1.3%程度にとどまるのに対し、想定監査時間は平均より約24%多くなっています。この場合に確認すべきなのは単価の水準ではなく、平均より約270時間多い工数がどの手続に充てられる想定なのかです。初年度監査で期首残高の検証が加わる、海外子会社の往査がある、といった説明がつくのであれば、平均を上回ること自体は不自然ではありません。
報酬を決めるときに必要な手続
業種平均と照らして金額の見通しがついても、会計監査人の報酬は取締役だけでは決められません。取締役が会計監査人の報酬等を定める場合には、監査役(監査役が2人以上ある場合はその過半数)の同意が必要です(会社法 第399条第1項)。監査役会設置会社では監査役会、監査等委員会設置会社では監査等委員会、指名委員会等設置会社では監査委員会が同意します(会社法 第399条第2項から第4項)。
同意の判断材料として、業種別・負債区分別の平均と、見積りを時間と単価に分解した結果を監査役等に示しておくと、同意の検討が具体的になります。同意の手続と事業報告での開示は、下記のコラムで扱っています。
関連コラム会計監査人の報酬と監査役会の同意|手続と事業報告の開示▸
まとめ
日本公認会計士協会の監査実施状況調査(2024年度)によると、会社法監査の1社当たり平均監査報酬は、業種別で7,562千円(農業・林業・漁業・鉱業)から23,526千円(金融保険業)まで約3.1倍の開きがあります。ただし売上高100億円以上500億円未満にそろえると、金融保険業を除く6業種は11,417千円から14,520千円に収まり、業種全体の平均の差の多くは会社の規模構成の違いによるものです。
資本金5億円未満で負債200億円以上の大会社は平均14,902千円、公認会計士法上の大会社等に当たる会社は平均41,228千円です。見積りを受け取ったら、業種と売上高(必要に応じて負債総額)の区分で平均を拾い、時間と単価に分解して乖離の理由を確かめることが、報酬の妥当性を判断する近道です。業種特有の論点を踏まえた監査工数の見立てなど、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
会社法監査の監査報酬が最も高い業種はどこですか。
日本公認会計士協会の監査実施状況調査(2024年度)では、会社法監査の1社当たり平均監査報酬が最も高いのは金融保険業の23,526千円です。次いで製造業18,683千円、卸売業・小売業18,352千円の順です。金融保険業は時間単価が最も低い一方、平均監査時間が1,927.9時間と最も長く、これが報酬を押し上げています。
不動産業の監査報酬が平均より低いのはなぜですか。
不動産業は536社のうち100社が売上高10億円未満の区分に属しており、規模の小さい会社の比率が高いことが業種全体の平均を下げています。売上高100億円以上500億円未満にそろえると不動産業の平均は11,417千円で、同じ区分の他業種との差は業種全体の平均で比べたときより小さくなります。
負債200億円を超えて大会社になった場合、監査報酬はどのくらいですか。
同調査で資本金5億円未満・負債総額200億円以上の会社1,499社の平均監査報酬は14,902千円です。負債200億円以上250億円未満の区分では11,954千円、1,000億円以上の区分では23,728千円と、負債の規模に応じて上がります。大会社は会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条第1項、第2項)。
業種平均より高い見積りを受けた場合、どこを確認すればよいですか。
見積りを想定監査時間と時間単価に分解し、どちらが平均から離れているかを確認します。業種別の時間単価は12,203円から14,991円の範囲に収まるため、乖離の多くは監査時間の側に現れます。時間が多い場合は、連結子会社の数や初年度の期首残高の検証など、どの手続に工数を見込んでいるのかを監査法人に説明してもらいます。
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