公認会計士法の大会社等【一覧表】会社法の大会社との違いと規制の範囲
目次
- 公認会計士法の大会社等【一覧表】
- 第1号:会計監査人設置会社のうち一定規模以上のもの
- 第2号:金融商品取引法の監査証明を受ける者
- 上場準備中の会社も「みなし大会社等」になる
- 会社法の大会社との違い
- 自社がどちらに当たるかを判別する手順
- 大会社等に該当した場合にかかる規制
- ローテーション(継続的監査の制限)の期間
- 非監査業務の同時提供の禁止
- 就職制限は大会社等に限られない
- 実務で見落としやすい3つの点
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 会社法の大会社であれば、公認会計士法上の大会社等にも当たりますか。
- 上場会社は資本金が小さくても大会社等に該当しますか。
- 大会社等に該当すると、会社側に新しい義務が生じますか。
- ローテーションで交代した会計士は、その後も担当できないのですか。
公認会計士法の「大会社等」は、会社法の「大会社」とは別の概念です。会社法の大会社が「会計監査人を置かなければならない会社」を決める枠組みであるのに対し、公認会計士法の大会社等は「その会社を監査する公認会計士・監査法人に、どこまで厳しい独立性のルールをかけるか」を決める枠組みです。基準となる金額も対象となる法人の範囲も一致しません。
そのため、会社法の大会社に該当していても公認会計士法の大会社等には当たらない会社があり、逆に、会社法の大会社ではないのに大会社等として扱われる会社もあります。この記事では、公認会計士法上の大会社等に含まれる法人を一覧表で整理し、会社法の大会社との違い、そして大会社等に該当したときに監査人側へかかるローテーションなどの規制を、条文にさかのぼって確認します。
公認会計士法の大会社等【一覧表】
大会社等は、公認会計士法のなかで独立して定義されているわけではなく、非監査業務との同時提供を禁止する条文のなかで「次の各号のいずれかに該当する者」として定義されています(公認会計士法 第24条の2)。同条が掲げるのは次の6つの類型です。
| 会計監査人設置会社 (第24条の2第1号) |
会計監査人を置く株式会社。ただし政令で定める規模未満の株式会社は除かれます。 |
|---|---|
| 金融商品取引法の 監査証明を受ける者(第2号) |
金融商品取引法第193条の2第1項または第2項により監査証明を受けなければならない者。政令で定める者は除かれます。 |
| 銀行・長期信用銀行 ・保険会社(第3号〜第5号) |
銀行法上の銀行、長期信用銀行法上の長期信用銀行、保険業法上の保険会社。規模にかかわらず該当します。 |
| 政令で定める法人(第6号) | 全国を地区とする信用金庫連合会・労働金庫連合会・信用協同組合連合会、農林中央金庫、一定の独立行政法人、国立大学法人・大学共同利用機関法人、一定の地方独立行政法人。 |
このうち実務で判断が必要になるのは第1号と第2号です。第3号から第5号までは業態で決まり、第6号は政令に法人名が列挙されているため、迷う余地がほとんどありません(公認会計士法施行令 第10条)。
第1号:会計監査人設置会社のうち一定規模以上のもの
第1号は「会計監査人設置会社」と書かれていますが、そのすべてが大会社等になるわけではありません。政令は、最終事業年度に係る貸借対照表の資本金の額が100億円未満であり、かつ負債の部に計上した額の合計額が1,000億円未満である株式会社を大会社等から除いています(公認会計士法 第24条の2第1号、公認会計士法施行令 第8条)。
裏返すと、会計監査人設置会社のうち第1号で大会社等になるのは、資本金100億円以上または負債合計1,000億円以上のいずれかに当てはまる会社です。除外の要件が「かつ」で結ばれているため、どちらか一方の基準に達した時点で除外から外れ、大会社等に入ります。
第2号:金融商品取引法の監査証明を受ける者
第2号は、有価証券報告書などに添付する財務計算に関する書類について監査証明を受けなければならない者です(公認会計士法 第24条の2第2号)。ここでも政令による除外がありますが、除外されるのは、金融商品取引法第24条第1項第3号または第4号に該当することにより有価証券報告書を提出する発行者のうち、資本金5億円未満または売上高10億円未満で、かつ負債合計200億円未満という小規模の要件をすべて満たす者などに限られます(公認会計士法施行令 第9条)。
金融商品取引所への上場に伴って有価証券報告書を提出する会社は、この除外に当たりません。したがって上場会社は、資本金や負債の規模にかかわらず第2号で大会社等になります。第1号の100億円という金額基準だけを見て「自社は大会社等ではない」と判断すると誤ることがあるのは、この点です。
上場準備中の会社も「みなし大会社等」になる
上場を目指している段階の会社も、規制の対象から外れているわけではありません。金融商品取引所に有価証券を上場しようとする者などが上場日の属する会計期間より前の会計期間について監査関連業務を受けた場合、その会社は大会社等とみなされ、ローテーションの規定が適用されます(公認会計士法 第24条の3第2項、第34条の11の5第1項、公認会計士法施行令 第13条)。上場申請の直前々期から監査法人と関係が始まることを踏まえた規定です。
会社法の大会社との違い
会社法の大会社は、最終事業年度に係る貸借対照表の資本金の額が5億円以上、または負債の部に計上した額の合計額が200億円以上の株式会社です(会社法 第2条第6号)。大会社は会計監査人を置かなければならず、公開会社であれば監査役会もあわせて設置する必要があります(会社法 第328条第1項、第2項)。
両者は、規律する相手も、金額の水準も、対象に入る法人の種類も異なります。
| 会社法の大会社 | 公認会計士法の大会社等 |
|---|---|
| 規律の相手は株式会社そのもの。機関設計と監査を受ける義務を定めます。 | 規律の相手は監査を行う公認会計士・監査法人。独立性の確保のための制限を定めます。 |
| 金額基準は資本金5億円以上または負債合計200億円以上。 | 会計監査人設置会社は資本金100億円以上または負債合計1,000億円以上。上場会社は金額を問わず該当。 |
| 対象は株式会社に限られます。 | 株式会社のほか、銀行・保険会社・独立行政法人・国立大学法人なども対象です。 |
| 該当すると会計監査人の設置義務が生じます。 | 該当しても会社側に新たな設置義務は生じず、監査人側の制限が強まります。 |
| 根拠は会社法第2条第6号・第328条。 | 根拠は公認会計士法第24条の2と同法施行令第8条から第10条まで。 |
金額基準が20倍から5倍ほど離れているため、会社法の大会社であっても公認会計士法の大会社等には当たらない会社のほうが数としては多いのが実態です。資本金5億円以上100億円未満で、負債合計が1,000億円に届かない非上場会社は、会計監査人を置く義務はあっても大会社等ではありません。会社法の大会社かどうかの判定そのものについては、負債200億円の数え方を扱った次のコラムで詳しく解説しています。
関連コラム大会社の判定|負債200億円に含める科目一覧と計算例▸
自社がどちらに当たるかを判別する手順
実務では、次の順で確認すると迷いません。会社法の判定と公認会計士法の判定を切り離して考えるのが要点です。
- 会社法の大会社かどうかを判定する。最終事業年度の貸借対照表で、資本金5億円以上または負債合計200億円以上に当たるかを見ます(会社法 第2条第6号)。該当すれば会計監査人の設置義務が生じます(会社法 第328条)。
- 金融商品取引法の監査証明を受ける立場かどうかを確認する。上場会社であれば、この時点で公認会計士法の大会社等です(公認会計士法 第24条の2第2号)。
- 業態を確認する。銀行・長期信用銀行・保険会社であれば規模を問わず大会社等です(公認会計士法 第24条の2第3号から第5号まで)。独立行政法人・国立大学法人なども政令で列挙されています(公認会計士法施行令 第10条)。
- 上のいずれにも当たらない会計監査人設置会社は、金額基準で見る。資本金100億円以上または負債合計1,000億円以上であれば大会社等、いずれも下回れば大会社等ではありません(公認会計士法施行令 第8条)。
第1段階で会計監査人の設置義務がないと分かれば、通常はそこで検討が終わります。設置義務の線引きは機関設計によっても変わるため、判定フローを整理した次のコラムもあわせてご確認ください。
関連コラム会計監査人の設置義務【判定フロー表】機関設計別の線引きと任意設置▸
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大会社等に該当した場合にかかる規制
大会社等に該当して変わるのは、会社側の義務ではなく監査人側の制限です。会社にとっては「監査人を自由に選び続けられなくなる」「監査人に頼める業務が狭まる」という形で影響が現れます。
| 継続的監査の制限 (ローテーション) |
一定期間を超えて同じ会計士が監査を続けられません(公認会計士法 第24条の3、第34条の11の3、第34条の11の4)。 |
|---|---|
| 非監査業務の同時提供の禁止 | 記帳代行など一定の業務で継続的な報酬を受けていると監査ができません(公認会計士法 第24条の2、第34条の11の2)。 |
| 共同監査等の義務 | 個人の公認会計士が監査する場合は、他の会計士・監査法人との共同や補助者の使用が必要です(公認会計士法 第24条の4)。 |
| 説明書類の縦覧 | 大会社等を監査した公認会計士は、業務の状況を記載した説明書類を作成し公衆の縦覧に供します(公認会計士法 第28条の4第1項)。 |
ローテーション(継続的監査の制限)の期間
ローテーションは、担当者を一定期間で交代させて監査人の独立性を保つ仕組みです。公認会計士法は、個人の会計士が監査する場合、監査法人の社員が監査する場合、大規模監査法人が上場会社等を監査する場合の3つに分けて期間を定めています。期間はいずれも法律が上限を示し、実際の年数は政令で決まります。
| 公認会計士(個人)が 大会社等を監査する場合 |
連続する7会計期間のすべてについて監査関連業務を行うと、その後の2会計期間は同じ大会社等の監査関連業務を行えません。 |
|---|---|
| 監査法人の社員が 大会社等を監査する場合 |
同じ社員が連続する7会計期間関与すると、その後の2会計期間はその社員に監査関連業務を行わせられません。 |
| 大規模監査法人の 筆頭業務執行社員等 |
上場有価証券発行者等については連続する5会計期間が上限で、その後5会計期間は交代が必要です。 |
個人の公認会計士については7会計期間と2会計期間(公認会計士法 第24条の3第1項、公認会計士法施行令 第11条、第12条)、監査法人の社員についても同じく7会計期間と2会計期間です(公認会計士法 第34条の11の3、公認会計士法施行令 第16条、第17条)。大規模監査法人の筆頭業務執行社員等だけが5会計期間と5会計期間という短い周期になります(公認会計士法 第34条の11の4第1項、公認会計士法施行令 第19条、第20条)。
ここでいう大規模監査法人とは、直近の会計年度に監査証明業務を行った上場有価証券発行者等の総数が100以上である監査法人をいいます(公認会計士法 第34条の11の4第2項、公認会計士法施行規則 第24条)。また筆頭業務執行社員等は、監査報告書の筆頭に署名する社員1名と、審査に最も重要な責任を有する者1名を指します(公認会計士法施行規則 第23条)。上場会社を監査していても、その監査法人が大規模監査法人に当たらなければ、5会計期間ではなく7会計期間の枠が適用される点は誤解されやすいところです。
非監査業務の同時提供の禁止
大会社等から一定の非監査業務によって継続的な報酬を受けている場合、その大会社等の財務書類について監査を行うことはできません(公認会計士法 第24条の2)。監査法人についても、法人自身が報酬を受けている場合と、その社員が報酬を受けている場合の双方が禁止されています(公認会計士法 第34条の11の2第1項、第2項)。
対象となる業務は内閣府令で限定列挙されており、会計帳簿の記帳代行その他の財務書類の調製に関する業務、財務・会計に係る情報システムの整備または管理、現物出資財産等の証明・鑑定評価、保険数理、内部監査の外部委託、そして自らが作成した財務書類を監査することになる業務や被監査会社等の経営判断に関与する業務です(公認会計士法施行規則 第5条)。同意手続や報酬の考え方を含めた実務は、次のコラムで扱っています。
関連コラム会計監査人の非監査業務と報酬|同時提供禁止の判定表と同意手続▸
就職制限は大会社等に限られない
監査を担当した会計士が被監査会社の役員に就くことを制限する規定は、大会社等かどうかにかかわらず適用されます。公認会計士が会社の財務書類について監査証明業務を行った場合、その会計期間の翌会計期間の終了の日までは、その会社またはその連結会社等の役員等に就くことができません(公認会計士法 第28条の2)。監査法人についても、関与社員が同様の期間内に役員等となった場合、その期間の財務書類について監査ができないと定められています(公認会計士法 第34条の11第1項第3号)。
大会社等の議論のなかで就職制限が語られることが多いため、大会社等固有の規制と受け取られがちですが、条文上は対象が限定されていません。会計監査人を置かない会社であっても、監査を依頼した会計士を翌期に役員として迎える計画には注意が必要です。
実務で見落としやすい3つの点
大会社等の判定と規制の適用で、上場準備企業や管理部門から相談を受けることが多いのは次の3点です。
第一に、大会社等に該当しても会社側に新たな法定義務は生じないことです。会社が対応すべきなのは、監査人が交代の時期を迎えたときの引継ぎや、監査法人に依頼している他の業務が禁止対象に当たらないかの確認です。会社の機関設計や計算書類の監査の枠組み自体は、会社法の側で決まります(会社法 第396条第1項、第436条第2項)。
第二に、判定の基準日が最終事業年度の貸借対照表である点です。会社法の大会社も公認会計士法の大会社等の第1号も、最終事業年度に係る貸借対照表の数値で判断します(会社法 第2条第6号、公認会計士法施行令 第8条)。増資や大型の資金調達を行った年度は、その事業年度が終了して初めて判定が変わります。
第三に、上場準備の段階でローテーションの起算が始まっていることです。上場しようとする者が上場日の属する会計期間より前の会計期間について監査関連業務を受けていれば、その期間も連続会計期間に算入されます(公認会計士法 第24条の3第2項、第34条の11の5)。上場後に「まだ数年あるはず」と考えていると、交代の時期が想定より早く訪れることがあります。
大会社等への該当や規制の適用は、資本構成や上場準備の進み方によって結論が変わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
まとめ
公認会計士法の大会社等は、会社法の大会社とは目的も基準も異なる概念です。会社法の大会社は資本金5億円以上または負債合計200億円以上の株式会社を指し、会計監査人の設置義務を導きます(会社法 第2条第6号、第328条)。これに対し公認会計士法の大会社等は、会計監査人設置会社のうち資本金100億円以上または負債合計1,000億円以上のもの、金融商品取引法の監査証明を受ける者、銀行・長期信用銀行・保険会社、政令で定める法人という4系統で構成されます(公認会計士法 第24条の2、公認会計士法施行令 第8条から第10条まで)。
該当した場合に動くのは監査人側のルールで、ローテーション、非監査業務の同時提供の禁止、共同監査等の義務、説明書類の縦覧が課されます。判定に迷ったときは、上場の有無と業態を先に確認し、そのうえで会計監査人設置会社としての金額基準を見る順序で整理すると、会社法の大会社との混同を避けられます。
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よくある質問
会社法の大会社であれば、公認会計士法上の大会社等にも当たりますか。
当たるとは限りません。会社法の大会社は資本金5億円以上または負債合計200億円以上の株式会社ですが(会社法 第2条第6号)、公認会計士法の大会社等の第1号は、会計監査人設置会社のうち資本金100億円未満かつ負債合計1,000億円未満の株式会社を除いています(公認会計士法施行令 第8条)。上場しておらず金額基準にも達しない大会社は、大会社等ではありません。
上場会社は資本金が小さくても大会社等に該当しますか。
該当します。上場に伴い金融商品取引法の監査証明を受けなければならない会社は第2号で大会社等となり、政令による除外の対象にも当たりません(公認会計士法 第24条の2第2号、公認会計士法施行令 第9条)。資本金や負債の金額は判定に影響しません。
大会社等に該当すると、会社側に新しい義務が生じますか。
会社側に新たな法定義務が生じるわけではありません。公認会計士法が定めているのは、監査を行う公認会計士・監査法人に対する制限です。会社にとっては、監査担当者の交代時期や、監査法人へ依頼できる業務の範囲が実務上の論点になります(公認会計士法 第24条の2、第24条の3)。
ローテーションで交代した会計士は、その後も担当できないのですか。
一定期間を空ければ再び担当できます。個人の公認会計士と監査法人の社員は連続する7会計期間の関与後、2会計期間は監査関連業務を行えませんが、その期間が経過すれば制限は外れます(公認会計士法 第24条の3第1項、第34条の11の3、公認会計士法施行令 第11条、第12条、第16条、第17条)。大規模監査法人の筆頭業務執行社員等は5会計期間の関与後、5会計期間の間隔が必要です(公認会計士法 第34条の11の4第1項、公認会計士法施行令 第19条、第20条)。
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