暗号資産の会計処理【仕訳例】活発な市場の判定と期末評価・売却
目次
- 暗号資産の会計処理の全体像【一覧表】
- 対象となる暗号資産と企業の範囲
- 暗号資産に当たらないもの:電子決済手段・セキュリティ・トークン
- 活発な市場の判定【判定表】
- 活発な市場がある暗号資産の期末評価【仕訳例】
- 期末評価に使う市場価格
- 仕訳例:取得から期末評価まで
- 活発な市場がない暗号資産の期末評価【仕訳例】
- 仕訳例:処分見込価額への切下げ
- 活発な市場の判断が変わったときの処理
- 売却損益の認識時点と純額表示【仕訳例】
- 仕訳例:期末評価後の暗号資産を売却した場合
- 注記事項【一覧表】
- 暗号資産交換業者が預かった暗号資産の処理
- 法人税の期末時価評価との関係
- 決算で確認したい実務チェックリスト
- 適用状況と改正の経緯
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 暗号資産を外国通貨や有価証券として会計処理することはできますか。
- 複数の取引所で価格が違う場合、期末評価にはどの価格を使いますか。
- 活発な市場がない暗号資産を切り下げた後、価格が回復したら戻し入れますか。
- 自社が発行したトークンにも実務対応報告第38号が適用されますか。
- ステーブルコインは暗号資産として会計処理しますか。
暗号資産の会計処理は、実務対応報告第38号に定められています。期末に保有する暗号資産は、活発な市場があれば市場価格で評価して帳簿価額との差額を当期の損益に計上し、活発な市場がなければ取得原価で評価します。後者は処分見込価額が取得原価を下回ったときに切り下げ、その後に価格が戻っても戻入れはしません(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第5項〜第7項)。売却損益は売買の合意が成立した時点で認識し、損益計算書には売却収入から売却原価を差し引いた純額で表示します(同 第13項、第16項)。
実務で判断が分かれやすいのは、保有する銘柄に「活発な市場」があるかどうかの判定と、その判定が期中に変わったときの扱いです。本記事では、公認会計士事務所プライムパートナーズ/株式会社プライムパートナーズコンサルティングの実務の視点から、判定表と自社作成の数値例による仕訳で、期末評価から売却・注記までの流れを整理します。
暗号資産の会計処理の全体像【一覧表】
暗号資産は、外国通貨・金融資産・棚卸資産・無形固定資産のいずれとして処理するかが検討されましたが、どれも直接参照できる既存基準とはいえないため、第38号は既存の会計基準を当てはめず、暗号資産独自の会計処理を定めています(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第29項〜第33項)。法律上の財産権かどうかは明らかでないものの、売買・換金を通じて資金の獲得に貢献し得ることから、会計上の資産として扱われます(同 第27項)。
まず、論点ごとの結論を一覧で押さえておきます。
| 期末評価 (活発な市場あり) |
市場価格に基づく価額を貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額を当期の損益に計上(第5項) |
|---|---|
| 期末評価 (活発な市場なし) |
取得原価で評価。処分見込価額が取得原価を下回れば処分見込価額まで切り下げ、差額を当期の損失に計上(第6項) |
| 切下げ後の戻入れ | 行わない(切放し法のみ。第7項) |
| 市場価格の選び方 | 銘柄ごとに、通常使用する自己の取引実績が最も大きい取引所・販売所の取引価格。付随費用は含めない(第9項) |
| 売却損益の認識時点 | 売買の合意が成立した時点(第13項) |
| 損益計算書の表示 | 売却収入から売却原価を控除した純額(第16項) |
| 注記 | 保有する暗号資産の貸借対照表価額の合計額、銘柄ごとの保有数量と貸借対照表価額など(第17項) |
対象となる暗号資産と企業の範囲
第38号の対象は、資金決済法に規定する暗号資産です。ただし、自己(自己の関係会社を含みます)が発行した暗号資産は対象から除かれます(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第3項)。自社や関係会社が発行したトークンは、発行時点では暗号資産に当たらず後から当たることになったものも含めて除外されている点に注意が必要です。一方、マイニング(採掘)で取得した暗号資産は通常、自己以外の者が発行したものなので、第38号の範囲に含まれます(同 第26項)。
処理の主体は、資金決済法上の登録を受けた「暗号資産交換業者」と、それ以外の企業である「暗号資産利用者」の2つに分けて定義されています(同 第4項(2)、(3))。決済や投資のために暗号資産を保有する一般の事業会社は、暗号資産利用者に当たります。期末評価・売却・表示・注記のルールは両者に共通で、預託者から預かった暗号資産の処理だけが暗号資産交換業者に固有の論点です。
暗号資産に当たらないもの:電子決済手段・セキュリティ・トークン
資金決済法上の暗号資産の定義からは、本邦通貨・外国通貨・通貨建資産と並んで電子決済手段が除かれており、金融商品取引法上の電子記録移転権利を表示するものも除かれています(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第24項)。いわゆるステーブルコインのうち電子決済手段に当たるものは、第38号ではなく別の実務対応報告(第45号)で扱われるため、同じブロックチェーン上のトークンでも適用する基準が異なります。また、プリペイドカードやポイントは資金決済法上の暗号資産に該当しないとされています(同 第25項)。
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活発な市場の判定【判定表】
期末評価の方法は「活発な市場が存在するか」で分かれます。活発な市場が存在する場合とは、保有する暗号資産について、継続的に価格情報が提供される程度に、暗号資産取引所または暗号資産販売所で十分な数量と頻度の取引が行われている場合をいいます(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第8項)。
数値の閾値は示されておらず、保有する暗号資産の種類、その暗号資産の過去の取引実績、取引の対象となっている取引所・販売所の状況などを勘案し、個々の暗号資産の実態に応じて判断するとされています(同 第47項)。結論の背景で示されている考え方を、決算時に確認する観点として並べると次のとおりです。
| 取引の数量と頻度 | 取引所・販売所で、継続的に価格情報が提供される程度に十分な数量と頻度の取引が行われているか(第8項) |
|---|---|
| 取引所間の価格差 | 合理的な範囲で入手できる価格情報が取引所・販売所ごとに著しく異なる場合は、通常、活発ではないと判断される(第47項) |
| 売り手と買い手の 希望価格差 |
売り手と買い手の希望する価格差が著しく大きい場合も、通常、活発ではないと判断される(第47項) |
| 勘案する事情 | 暗号資産の種類、その暗号資産の過去の取引実績、取引の対象となっている取引所・販売所の状況など(第47項) |
| 大量保有の影響 | 活発な市場がある場合、大量保有による市場価格への影響を考慮する必要性は高くないとされている(第39項) |
実務では、期末日だけでなく期末日前後の一定期間の取引量や価格の推移を記録し、判定の根拠として残しておくと監査対応が円滑になります。上場準備中の企業では、銘柄ごとの判定理由を決算資料として整えておくことが、監査人との協議の出発点になります。
活発な市場がある暗号資産の期末評価【仕訳例】
活発な市場が存在する暗号資産は、市場価格に基づく価額を貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理します(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第5項)。時価の変動により保有者が価格変動リスクを負うことから、時価の変動により利益を得ることを目的として保有する資産と同じく時価で評価する、という整理です(同 第36項、第38項)。
期末評価に使う市場価格
市場価格として取引所・販売所の取引価格を用いるときは、保有する暗号資産の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績が最も大きい取引所または販売所の取引価格を使います。取引価格がない場合は、取引所の気配値または販売所が提示する価格を用います(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第9項)。海外も含めたすべての取引所の取引量を網羅的に把握するのは困難であるため、「最も活発な市場」ではなく「自社が最も多く使う市場」を基準にしている点が特徴です(同 第49項)。
期末評価に用いる市場価格には、取得や売却に要する付随費用を含めません(同 第9項)。一方、取得原価は支払対価に手数料等の付随費用を加算した額で算定するため(同 第4項(8))、取得時と期末とで手数料の扱いが異なる点に注意します。
仕訳例:取得から期末評価まで
当社(暗号資産利用者)が、活発な市場が存在する暗号資産Xを10単位、1単位500で購入し、取引手数料5を支払った例で考えます(単位:千円。自社作例。税効果は省略)。取得原価は付随費用を含めて5,005です(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第4項(8))。期末日に、通常使用する取引所での取引価格が1単位560であったため、5,600で評価し、差額595を当期の損益に計上します(同 第5項、第9項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 暗号資産 | 5,005 | 現金預金 | 5,005 |
| 暗号資産 | 595 | 暗号資産評価益 | 595 |
1行目が取得時、2行目が期末評価の仕訳です。第38号は評価差額の勘定科目名や損益計算書上の区分までは定めていないため、本作例の科目名は一例です。保有目的や金額の重要性に応じて、表示区分を決めておく必要があります。
活発な市場がない暗号資産の期末評価【仕訳例】
活発な市場が存在しない暗号資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とします。期末の処分見込価額(ゼロまたは備忘価額を含みます)が取得原価を下回る場合は、処分見込価額を貸借対照表価額とし、差額を当期の損失として処理します(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第6項)。時価を客観的に把握することが難しく、時価で直ちに売買・換金することにも制約があるため、時価の変動を企業活動の成果とは捉えない、という考え方です(同 第37項)。
処分見込価額は、たとえば独立した第三者との相対取引を行った場合の価額など、資金の回収が確実な金額に基づくことが考えられます。資金の回収が確実な金額を見積ることが困難な場合は、ゼロまたは備忘価額を処分見込価額とすることになると考えられています(同 第43項)。
仕訳例:処分見込価額への切下げ
当社が、活発な市場が存在しないトークンYを1,200で取得して期末まで保有し、期末に独立した第三者との相対取引で見込まれる処分価額が300であった例で考えます(単位:千円。自社作例。税効果は省略)。処分見込価額が取得原価を下回るため、300まで切り下げ、差額900を当期の損失に計上します(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第6項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 暗号資産評価損 | 900 | 暗号資産 | 900 |
翌期末に処分見込価額が800まで回復しても、前期に計上した900の損失は戻し入れません(同 第7項)。取引形態や価格形成の仕組みが現状では明らかでないことから、保守的に切放し法だけが認められています(同 第44項)。棚卸資産のように洗替え法を選ぶ余地はないため、翌期の帳簿価額は300のまま据え置かれます。
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活発な市場の判断が変わったときの処理
期中に市場の状況が変わり、判定が入れ替わることもあります。第38号は、どちらの方向に変わった場合も評価基準を切り替えると定めています(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第51項)。
- 活発な市場がある → なくなった ── 活発な市場が存在しなくなる前に最後に観察された市場価格に基づく価額を取得原価とし、評価差額は当期の損益に計上します。その後の期末評価は、取得原価と処分見込価額による評価に移ります(同 第11項)。
- 活発な市場がない → 生じた ── その後の期末評価は、市場価格に基づく評価に切り替えます(同 第12項)。過去に切り下げた銘柄が時価評価に戻ると、帳簿価額との差額を当期の損益に計上するため、結果的に過去の損失相当額が当期の損益に含まれることがあり得るとされています(同 第51項)。
前の章のトークンYで、翌期中に取引所への上場により活発な市場が生じ、期末の市場価格が1,000になった場合、帳簿価額300との差額700を当期の損益に計上します。切放し法で戻入れが禁じられていても、評価基準の変更を通じて実質的に損益へ反映される場面がある、という点は決算時の説明資料に書き添えておくとよい論点です。
売却損益の認識時点と純額表示【仕訳例】
暗号資産の売却損益は、売買の合意が成立した時点で認識します(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第13項)。ネットワーク上で取引が記録されるまでのプロセスは銘柄や交換業者によって異なるものの、通常、売り手は売買の合意が成立した時点で価格変動リスクに実質的にさらされておらず、売却損益は確定していると考えられるためです(同 第53項)。期末日直前に約定し、受渡しが翌期になる取引は、約定日の属する期に売却損益を計上します。
損益計算書では、売却取引に係る売却収入から売却原価を控除した純額を表示します(同 第16項)。暗号資産利用者が時価の変動による利益の獲得や決済手段として保有する場合も、暗号資産交換業者と同じく、売買に伴う差益を純額で示すことが適切とされています(同 第62項)。
仕訳例:期末評価後の暗号資産を売却した場合
前の章で期末に1単位560で評価した暗号資産Xのうち4単位を、翌期に1単位580で売却する合意が成立し、代金は翌日に受け取る例で考えます(単位:千円。自社作例。前期末の評価後の帳簿価額を売却原価の算定に用いる前提。手数料・税効果は省略)。合意成立時点で、売却収入2,320と売却原価2,240の差額80を売却益として純額で計上します(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第13項、第16項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 未収入金 | 2,320 | 暗号資産 | 2,240 |
| 暗号資産売却益 | 80 |
売上高2,320・売上原価2,240と総額で計上するのは第38号の表示とは異なります。複数回の取得で単価が異なる場合、売却原価は一定の評価方法で計算します(同 第4項(8))。どの方法を使うかを銘柄ごとに決め、継続して適用することが実務上のポイントです。
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注記事項【一覧表】
期末日に保有する暗号資産と、暗号資産交換業者が預託者から預かっている暗号資産について、次の事項を注記します(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第17項)。
| 保有する暗号資産の 貸借対照表価額の合計額 |
暗号資産交換業者・暗号資産利用者の双方(第17項(1)) |
|---|---|
| 預託者から預かっている 暗号資産の 貸借対照表価額の合計額 |
暗号資産交換業者のみ(第17項(2)) |
| 種類ごとの保有数量と 貸借対照表価額 |
活発な市場がある暗号資産とない暗号資産の別に記載。貸借対照表価額が僅少な暗号資産は集約可(第17項(3)) |
| 注記を省略できる場合 | 暗号資産利用者は、保有する暗号資産の貸借対照表価額の合計額が資産総額に比して重要でない場合(第17項ただし書き) |
暗号資産交換業者の場合、注記の省略の判断は、保有分と預かり分の貸借対照表価額の合計額を合算した額で行います(同 第17項ただし書き)。種類ごとの内訳まで求められるのは、銘柄ごとにリスクが異なり、同じ銘柄でも取引所によって価格が異なり得るためです(同 第63項)。
暗号資産交換業者が預かった暗号資産の処理
暗号資産交換業者は、預託者との合意に基づいて暗号資産を預かった時に、預かった時の時価で資産を計上し、同時に同額の返還義務を負債として計上します(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第14項)。期末には、自己が保有する同一種類の暗号資産から簿価を分離したうえで保有分と同じ方法で評価し、負債は対応する資産と同額とするため、預かり分の期末評価からは損益が生じません(同 第15項)。一般の事業会社(暗号資産利用者)には関係しない論点ですが、交換業者の財務諸表を読むときの前提として押さえておくと理解が進みます。
法人税の期末時価評価との関係
法人税法でも、法人が期末に保有する暗号資産のうち活発な市場が存在するもの(市場暗号資産)は、時価法で評価します(法人税法 第61条)。2024年度税制改正では、市場暗号資産のうち一定の譲渡制限が付されたもの(特定譲渡制限付暗号資産。自己が発行したものを除きます)について、時価法と原価法のいずれかを法人が選定する仕組みが設けられ(法人税法 第61条第2項)、選定した評価方法は所轄税務署長に届け出ます(法人税法施行令 第118条の6第5項)。
会計上の「活発な市場」の判定と税務上の区分は、制度の目的が異なるため、結果が一致するとは限りません。評価差額に会計と税務の差が生じる場合は、税効果会計の検討も必要になります。税務上の具体的な取扱いは、国税庁の公表資料を確認したうえで税理士に相談することをおすすめします。
決算で確認したい実務チェックリスト
- 対象範囲の確認 ── 保有トークンが資金決済法上の暗号資産か、電子決済手段や電子記録移転権利に当たらないか。自社・関係会社が発行したものでないか(第3項、第24項)。
- 活発な市場の判定記録 ── 銘柄ごとに取引量・取引頻度・取引所間の価格差を確認し、判定理由を残しているか(第8項、第47項)。
- 市場価格の出所 ── 自社の取引実績が最も大きい取引所・販売所を特定し、付随費用を含めない価格を使っているか(第9項)。
- 処分見込価額の根拠 ── 活発な市場がない銘柄について、資金の回収が確実な金額を見積った根拠があるか(第6項、第43項)。
- 戻入れの有無 ── 前期に切り下げた銘柄で、誤って評価損を戻し入れていないか(第7項)。
- 約定日での計上 ── 期末日前後の取引を、受渡日ではなく売買の合意成立日で計上しているか(第13項)。
- 表示と注記 ── 売却損益を純額で表示し、種類ごとの保有数量と貸借対照表価額を注記しているか(第16項、第17項)。
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適用状況と改正の経緯
実務対応報告第38号は2018年3月14日に公表され、2018年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されています(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第18項)。公開草案の段階では「仮想通貨」の名称でしたが、現行版は資金決済法の用語に合わせて「暗号資産」と表記されています(同 第21項)。
その後も他の基準等の公表に伴う修正が加えられており、企業会計基準委員会の一覧では直近の修正日は2024年11月1日とされています。たとえば時価の算定に関する会計基準の公表に際しては、暗号資産は同基準の範囲外であるため、第38号の内容に変更はないことが明記されました(同 第22-2項)。暗号資産は時価算定会計基準ではなく、第38号の「時価」「市場価格」の定義に従って評価する点に注意が必要です(同 第4項(6)、(7))。
なお、第38号は当面必要と考えられる最小限の項目だけを定めたもので、定めのない事項は今後の実務の状況などに応じて別途対応の要否が判断されるとされています(同 第22項)。自己発行トークンやステーキングなど第38号に直接の定めがない取引は、取引の実態に照らした個別の検討が欠かせません。
まとめ
暗号資産の会計処理は、まず銘柄ごとに活発な市場の有無を判定し、活発な市場があれば市場価格で評価して差額を当期の損益に、なければ取得原価で評価して処分見込価額への切下げを行い、戻入れはしない、という流れで整理できます(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第5項〜第8項)。売却損益は売買の合意成立時に認識して純額で表示し、期末には種類ごとの保有数量と貸借対照表価額を注記します(同 第13項、第16項、第17項)。
判定の根拠や市場価格の出所、処分見込価額の見積りは、監査で必ず確認される部分です。上場準備企業や暗号資産を新たに保有する企業では、決算前に判定と評価の手順を文書化しておくと安心です。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
お問い合わせはこちら参考文献
- 企業会計基準委員会 実務対応報告第38号 資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い
- 企業会計基準委員会 実務対応報告第45号 資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い
- e-Gov法令検索 法人税法
- 国税庁 C1-28 短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出方法・特定譲渡制限付暗号資産の評価方法の届出
よくある質問
暗号資産を外国通貨や有価証券として会計処理することはできますか。
できません。暗号資産は法定通貨ではないため外国通貨には当たらず、金融資産の定義にも該当しないと整理されています。棚卸資産や無形固定資産としての処理も適当でないとされ、第38号が暗号資産独自の会計処理を定めています(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第29項〜第33項)。
複数の取引所で価格が違う場合、期末評価にはどの価格を使いますか。
保有する暗号資産の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績が最も大きい取引所または販売所の取引価格を使います。取引価格がない場合は、取引所の気配値または販売所が提示する価格を用い、取得や売却に要する付随費用は含めません(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第9項)。
活発な市場がない暗号資産を切り下げた後、価格が回復したら戻し入れますか。
戻し入れません。前期以前に処分見込価額まで切り下げた損失は、当期に戻入れを行わない切放し法のみが認められています(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第7項)。ただし、その後に活発な市場が生じて市場価格での評価に切り替わった場合は、帳簿価額との差額が当期の損益に計上されます(同 第12項、第51項)。
自社が発行したトークンにも実務対応報告第38号が適用されますか。
適用されません。自己(自己の関係会社を含みます)が発行した暗号資産は、第38号の範囲から除かれています(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第3項)。発行時点では暗号資産に当たらず、後から当たることになったものも除外の対象です(同 第26項)。
ステーブルコインは暗号資産として会計処理しますか。
資金決済法上の電子決済手段に当たるものは、暗号資産の定義から除かれているため、第38号の対象になりません(資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い 第24項)。電子決済手段は、資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理を定めた別の実務対応報告(第45号)で扱われます。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



