監査法人の最低人数と設立要件【一覧表】有限責任監査法人の追加要件
目次
- 監査法人の設立要件【一覧表】
- 社員5人以上の根拠と人数の数え方
- 設立時は公認会計士5人以上で定款を作成
- 公認会計士でない社員(特定社員)と75%基準
- 設立後に4人以下になった場合の扱い
- 監査法人の設立手続の流れ
- 有限責任監査法人の追加要件【一覧表】
- 最低資本金と供託金の計算例
- 供託金に代わる契約と責任保険
- 無限責任監査法人から有限責任監査法人への移行
- 無限責任と有限責任の社員の責任の違い
- 会社が監査法人を選ぶときの確認点
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 監査法人には最低何人の公認会計士が必要ですか?
- 公認会計士でない人も監査法人の社員になれますか?
- 有限責任監査法人の資本金はいくら必要ですか?
- 有限責任監査法人と無限責任監査法人は名称で見分けられますか?
監査法人を設立するには、社員(出資者)になろうとする者の中に公認会計士が5人以上含まれていなければなりません(公認会計士法 第34条の7第1項)。「監査法人には最低何人の公認会計士が必要か」という問いへの答えは、この「社員として5人以上」です。
ただし、人数の要件はこの1本だけではありません。公認会計士でない社員を置く場合の割合、設立後に人数を割り込んだときの扱い、さらに有限責任監査法人では資本金・供託金・登録といった追加の要件がかかります。本記事では、公認会計士法と同法施行令・施行規則の条文をもとに、監査法人の設立要件を一覧表で整理します。
監査法人の設立要件【一覧表】
まず、すべての監査法人(無限責任・有限責任の両方)に共通する要件を一覧にします。監査法人とは、財務書類の監査証明業務を組織的に行うことを目的として、公認会計士法に基づき設立された法人をいいます(公認会計士法 第1条の3第3項)。
| 設立できる者 | 公認会計士(外国公認会計士を含む)と、特定社員の登録を受けた者(公認会計士法 第34条の2の2第1項) |
|---|---|
| 公認会計士である社員の最低人数 | 設立時の社員になろうとする者のうち5人以上(公認会計士法 第34条の7第1項) |
| 公認会計士である 社員の割合 |
社員全体の75%以上(公認会計士法 第34条の4第3項、公認会計士法施行規則 第19条) |
| 社員になれない者 | 業務停止処分の期間中の者、解散・業務停止を命じられた他の監査法人の処分前30日以内の社員で処分から3年(業務停止の場合はその期間)を経過しない者など(公認会計士法 第34条の4第2項) |
| 名称 | 名称中に「監査法人」の文字を使用(公認会計士法 第34条の3第1項) |
| 定款 | 社員になろうとする者が共同して作成(公認会計士法 第34条の7第1項) |
| 成立 | 主たる事務所の所在地での設立の登記により成立(公認会計士法 第34条の9) |
| 成立後の届出 | 成立の日から2週間以内に、登記事項証明書と定款の写しを添えて内閣総理大臣へ届出(公認会計士法 第34条の9の2) |
人数について条文が下限を置いているのは、事務所で働く職員の数ではなく、出資して法人の構成員となる「社員」のうち公認会計士である者の数です。所属する公認会計士の総数や補助者の数と混同しないよう注意が必要です。
社員5人以上の根拠と人数の数え方
設立時は公認会計士5人以上で定款を作成
監査法人を設立するには、社員になろうとする者が共同して定款を定め、その中に5人以上の公認会計士を含めなければなりません(公認会計士法 第34条の7第1項)。この章でいう「公認会計士」には外国公認会計士が含まれます(公認会計士法 第34条の2の2第1項)。
定款には、少なくとも次の事項を記載します(公認会計士法 第34条の7第3項)。
- 目的・名称・事務所の所在地
- 社員の氏名及び住所
- 社員の全部が無限責任社員か有限責任社員かの別
- 社員の出資の目的(有限責任社員は金銭その他の財産に限る)及びその価額又は評価の標準
- 業務の執行に関する事項
公認会計士でない社員(特定社員)と75%基準
監査法人の社員のうち、公認会計士・外国公認会計士以外の者を「特定社員」といいます(公認会計士法 第1条の3第6項)。特定社員になろうとする者は、日本公認会計士協会に備える特定社員名簿への登録を受けなければなりません(公認会計士法 第34条の10の8、第34条の10の9)。
特定社員を置く場合でも、社員全体に占める公認会計士である社員の割合は75%以上でなければなりません(公認会計士法 第34条の4第3項、公認会計士法施行規則 第19条)。また、監査証明業務(公認会計士法第2条第1項の業務)を執行する権利と義務を負うのは、公認会計士である社員だけです(公認会計士法 第34条の10の2第1項)。
75%基準から、置ける特定社員の上限は次の式で求まります(端数切捨て)。
公認会計士である社員の数ごとに当てはめると、次のとおりです(当事務所による試算)。
| 公認会計士である社員の数 | 置ける特定社員の上限 (社員総数) |
|---|---|
| 5人(設立時の最低人数) | 1人(社員6人。割合は約83%) |
| 6人 | 2人(社員8人。割合は75%) |
| 9人 | 3人(社員12人。割合は75%) |
| 12人 | 4人(社員16人。割合は75%) |
公認会計士である社員が5人の場合、特定社員を2人にすると割合は5÷7で約71%となり、75%を下回ります。設立時の最低人数で発足する場合、特定社員は1人までと考えておくと判断を誤りません。
設立後に4人以下になった場合の扱い
5人以上の要件は設立時だけのものではありません。公認会計士である社員が4人以下になり、その日から引き続き6か月間、5人以上に戻らなかった場合には、その6か月を経過した時に監査法人は解散します(公認会計士法 第34条の18第2項)。社員の退職・登録抹消が重なる時期は、後任の社員を6か月以内に確保できるかが存続の分かれ目になります。
なお、公認会計士である社員は公認会計士の登録の抹消によって、特定社員は特定社員の登録の抹消によって、それぞれ監査法人から脱退します(公認会計士法 第34条の17)。
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監査法人の設立手続の流れ
無限責任監査法人の設立は、次の順序で進みます。有限責任監査法人の場合は、これに加えて後述の登録と供託が必要です。
- 定款の作成:公認会計士5人以上を含む社員予定者が共同して定款を定める(公認会計士法 第34条の7第1項)。会社法第30条第1項(定款の認証)の規定が準用されます(公認会計士法 第34条の7第2項)。
- 設立の登記:政令の定めに従い登記を行い、主たる事務所の所在地での設立の登記によって成立する(公認会計士法 第34条の6第1項、第34条の9)。
- 成立の届出:成立の日から2週間以内に内閣総理大臣へ届け出る(公認会計士法 第34条の9の2)。届出書には登記事項証明書・定款の写しのほか、社員である公認会計士・特定社員の登録年月日と登録番号を記載した書類などを添付します(公認会計士法施行規則 第20条第2項)。
- 成立日の貸借対照表の作成:成立の日における貸借対照表を作成する(公認会計士法 第34条の16第1項)。
成立後は、毎会計年度経過後2か月以内に計算書類と業務報告書を作成して内閣総理大臣に提出し(公認会計士法 第34条の16第2項)、業務を公正かつ的確に遂行するための業務管理体制を整備する義務も負います(公認会計士法 第34条の13第1項)。
有限責任監査法人の追加要件【一覧表】
有限責任監査法人とは、社員の全部を有限責任社員とする定款の定めのある監査法人をいいます(公認会計士法 第1条の3第4項)。社員の責任が出資の価額に限られる代わりに、無限責任監査法人にはない次の要件が上乗せされます。
| 名称 | 名称中に「有限責任」の文字を使用(公認会計士法 第34条の3第2項、公認会計士法施行規則 第18条) |
|---|---|
| 登録 | 内閣総理大臣の登録を受けなければ監査証明業務等を行えない(公認会計士法 第34条の24) |
| 最低資本金 | 社員の総数×100万円。これに満たないと登録拒否(公認会計士法 第34条の27第1項第3号、公認会計士法施行令 第22条) |
| 公認会計士である 社員の割合 |
75%を下回ると登録拒否(公認会計士法 第34条の27第1項第4号、公認会計士法施行規則 第64条) |
| 供託金 | 社員の総数×200万円を供託所に供託。届出後でなければ業務を行えない(公認会計士法 第34条の33第1項・第5項、公認会計士法施行令 第25条) |
| 計算書類の監査 | 収益の額が10億円以上の会計年度は、特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付(公認会計士法 第34条の32第1項、公認会計士法施行令 第24条) |
| 指定有限責任社員 | すべての証明について、証明ごとに業務を担当する社員を指定(公認会計士法 第34条の10の5第1項) |
最低資本金と供託金の計算例
最低資本金と供託金は、どちらも社員の総数(特定社員を含む)に一定額を乗じて計算します(公認会計士法施行令 第22条、第25条)。公認会計士である社員5人・特定社員1人の計6人で有限責任監査法人を設立する場合は、次のとおりです。
社員が増えれば、両方の金額も比例して増えます。社員を受け入れるたびに登録事項(資本金の額・社員の氏名等)の変更登録が必要になる点にも注意します(公認会計士法 第34条の25第1項、第34条の28第1項)。
供託金に代わる契約と責任保険
供託金は全額を現金で積む方法に限られません。内閣総理大臣の命令に応じて供託金が供託される旨の契約を銀行等と締結して届け出れば、その契約金額の分は供託しないことができます(公認会計士法 第34条の33第3項、公認会計士法施行令 第26条)。また、業務上の責任に関する保険契約を締結して内閣総理大臣の承認を受けた場合も、保険金額に応じて供託の全部又は一部を省略できます(公認会計士法 第34条の34第1項)。
無限責任監査法人から有限責任監査法人への移行
既存の無限責任監査法人は、社員の全部を有限責任社員とする定款の変更によって有限責任監査法人になれます(公認会計士法 第34条の22第8項)。この場合も登録の申請が必要で(公認会計士法 第34条の25第1項)、社員の出資の払込み・給付が完了していなければ、定款変更の効力は完了した日に生じます(公認会計士法 第34条の22第11項)。定款変更をしたときは、変更の日から2週間以内に内閣総理大臣への届出も必要です(公認会計士法 第34条の22第10項)。
無限責任と有限責任の社員の責任の違い
無限責任監査法人では、法人の財産で債務を完済できないとき、各社員が連帯して弁済の責任を負います(公認会計士法 第34条の10の6第1項)。特定の証明について担当社員を指定し被監査会社等へ通知した場合には、その証明に関する債務を法人財産で完済できないときに指定社員が連帯して責任を負います(公認会計士法 第34条の10の4第1項・第4項、第34条の10の6第4項)。
有限責任監査法人の社員は、出資の価額(履行済みの分を除く)を限度として責任を負います(公認会計士法 第34条の10の6第7項)。ただし、指定有限責任社員は、担当した証明に関して法人財産で完済できない債務について連帯して弁済の責任を負います(公認会計士法 第34条の10の6第8項)。有限責任の形態を選んでも、証明を担当した社員の責任がなくなるわけではありません。
会社が監査法人を選ぶときの確認点
会社法監査を受ける会社の側から見ると、会計監査人は公認会計士又は監査法人でなければなりません(会社法 第337条第1項)。監査法人が会計監査人に選任された場合は、社員の中から職務を行うべき者を選定して会社に通知します(会社法 第337条第2項)。
依頼先が設立要件を満たした監査法人であることは前提として、実務では次の点を確認しておくと、契約後の想定外を減らせます。
- 公認会計士である社員の人数:5人前後の小規模な法人では、社員の退職が存続や担当交代に直結しやすいため、業務を担当する社員と交代時の体制を確認する。
- 無限責任か有限責任か:名称中の「有限責任」の有無で判別できる(公認会計士法 第34条の3第2項)。有限責任監査法人は金融庁に備え置かれる登録簿が公衆の縦覧に供される(公認会計士法 第34条の26第3項、公認会計士法施行規則 第63条)。
- 上場準備の有無:上場会社等の財務書類の監査証明業務を行うには、日本公認会計士協会の上場会社等監査人名簿への登録が別途必要(公認会計士法 第34条の34の2)。IPOを視野に入れる会社は、候補の監査法人が登録済みかを確認する。
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監査法人の規模や体制が自社の監査に合っているかは、事業内容や決算期、上場予定の有無によって判断が変わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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- 監査法人の設立には、社員の中に公認会計士5人以上が必要(公認会計士法 第34条の7第1項)。人数の下限は職員数ではなく社員の数にかかる。
- 公認会計士でない特定社員を置く場合も、公認会計士である社員の割合は75%以上。5人で発足するなら特定社員は1人まで。
- 設立後に公認会計士である社員が4人以下になり、6か月以内に5人へ戻らなければ解散する(公認会計士法 第34条の18第2項)。
- 有限責任監査法人は、内閣総理大臣の登録・社員数×100万円の最低資本金・社員数×200万円の供託金(契約・保険で代替可)・収益10億円以上での計算書類監査が追加される。
- 会社側は、社員の人数と担当体制、責任形態、上場会社等監査人名簿への登録の有無を選定時に確認する。
参考文献
よくある質問
監査法人には最低何人の公認会計士が必要ですか?
設立時に、社員になろうとする者の中に公認会計士が5人以上必要です(公認会計士法 第34条の7第1項)。設立後に公認会計士である社員が4人以下になり、6か月間5人以上に戻らなかった場合は解散します(公認会計士法 第34条の18第2項)。
公認会計士でない人も監査法人の社員になれますか?
特定社員の登録を受ければ社員になれます(公認会計士法 第34条の4第1項、第34条の10の8)。ただし、公認会計士である社員の割合は75%以上が必要で(公認会計士法施行規則 第19条)、監査証明業務を執行できるのは公認会計士である社員だけです(公認会計士法 第34条の10の2第1項)。
有限責任監査法人の資本金はいくら必要ですか?
社員の総数に100万円を乗じた額が最低資本金です(公認会計士法 第34条の27第1項第3号、公認会計士法施行令 第22条)。社員6人なら600万円です。これとは別に、社員の総数に200万円を乗じた額の供託金が必要です(公認会計士法施行令 第25条)。
有限責任監査法人と無限責任監査法人は名称で見分けられますか?
見分けられます。有限責任監査法人は、名称中に「有限責任」の文字を使用しなければなりません(公認会計士法 第34条の3第2項、公認会計士法施行規則 第18条)。
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