個人の公認会計士を会計監査人に選任【一覧表】共同監査・補助者の要件
目次
- 個人の公認会計士に依頼する場合の人数要件【一覧表】
- 会計監査人は個人の公認会計士でもよい
- 監査法人に依頼する場合との違い
- 公認会計士法の大会社等に当たるかの判定
- 会社法の大会社との違い
- 判定の手順
- 大会社等の監査は共同監査か補助者で2人以上
- 共同監査と補助者の使い分け
- 1人で監査できる例外
- 上場会社等の金融商品取引法監査は5人以上の体制
- 個人に依頼するときのローテーションと独立性
- 選任前に確認する項目【チェックリスト】
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 会計監査には公認会計士が何人必要ですか?
- 会社法の大会社なら、個人の公認会計士1人には依頼できませんか?
- 補助者は公認会計士でなければなりませんか?
- 上場準備中の会社も上場会社等の人数要件の対象になりますか?
会計監査人には、監査法人だけでなく個人の公認会計士も選任できます(会社法 第337条第1項)。ただし、1件の監査に関与しなければならない公認会計士の人数は、会社の区分によって変わります。公認会計士法の「大会社等」に当たらない会社であれば、条文上は公認会計士1人でも監査を受けられます。
一方、公認会計士法の大会社等を監査するときは、他の公認会計士との共同監査か、公認会計士を補助者として使う形で2人以上の体制が必要です(公認会計士法 第24条の4)。上場会社等の金融商品取引法監査では、登録監査法人と共同するか、本人を含めて公認会計士5人以上が関与する体制が求められます(公認会計士法 第34条の34の13、公認会計士法施行令 第29条の5)。よく話題になる「監査法人は公認会計士5人以上」(公認会計士法 第34条の7第1項)は法人を設立するための要件で、監査1件ごとの人数とは別の話です。
個人の公認会計士に依頼する場合の人数要件【一覧表】
個人の公認会計士に会計監査人を依頼する場合に、条文上求められる体制を会社の区分ごとに並べると次のとおりです。区分の判定方法は後の見出しで説明します。
| 大会社等でない 会計監査人設置会社 |
人数の要件はなく、公認会計士1人でも可(会社法 第337条第1項。公認会計士法 第24条の4は大会社等の監査が対象) |
|---|---|
| 大会社等 (上場会社等以外) |
他の公認会計士・監査法人との共同監査、又は他の公認会計士を補助者として使用。公認会計士2人以上が関与(公認会計士法 第24条の4) |
| 上場会社等の 金融商品取引法監査 |
上場会社等監査人名簿への登録が前提。登録監査法人と共同するか、登録公認会計士1人以上と共同し、共同者と補助者の公認会計士が合計4人以上。本人を含め5人以上が関与(公認会計士法 第34条の34の2、第34条の34の13、公認会計士法施行令 第29条の5) |
| 参考:監査法人の 設立要件 |
社員になろうとする者の中に公認会計士5人以上(公認会計士法 第34条の7第1項)。監査1件あたりの関与人数を定めた規定ではない |
ここでいう「人数」に数えるのは公認会計士だけです。条文は補助者を「他の公認会計士」としているため、公認会計士の資格を持たない職員が監査チームにいても、人数要件を満たしたことにはなりません(公認会計士法 第24条の4)。
会計監査人は個人の公認会計士でもよい
会社法は、会計監査人を「公認会計士又は監査法人」でなければならないと定めています(会社法 第337条第1項)。法人であることは求められていないため、個人の公認会計士が単独で会計監査人に就任できます。
ここでいう公認会計士は、資格を持っているだけの人ではありません。公認会計士となる資格を持つ者が、日本公認会計士協会に備える公認会計士名簿に登録を受けて、初めて公認会計士になります(公認会計士法 第3条、第17条、第18条)。会計監査人に選任されると、会社は会計監査人設置会社である旨と、会計監査人の氏名を登記します(会社法 第911条第3項第19号)。
次の者は会計監査人になれません(会社法 第337条第3項)。
- 公認会計士法の規定により、計算書類について監査をすることができない者(第1号)
- 会社の子会社やその取締役・監査役等から、公認会計士・監査法人としての業務以外の業務で継続的な報酬を受けている者とその配偶者(第2号)
- 監査法人で、その社員の半数以上が第2号に当たる者(第3号)
監査法人に依頼する場合との違い
監査法人を会計監査人に選任した場合、監査法人は社員の中から会計監査人の職務を行うべき者を選び、会社に通知します(会社法 第337条第2項)。個人に依頼する場合は、選任した公認会計士本人が職務を行うので、この選定・通知の手順はありません。
監査法人側の仕組みとしては、次の点が定められています。
- 監査証明業務を執行できるのは、公認会計士である社員だけ(公認会計士法 第34条の10の2第1項、第34条の12第1項)
- 監査法人が証明をするときは、業務を執行した社員が証明書に資格を表示して署名(公認会計士法 第34条の12第2項)
- 無限責任監査法人は、特定の証明について担当社員を指定できる(指定社員。公認会計士法 第34条の10の4)
- 有限責任監査法人は、すべての証明について担当社員を指定しなければならない(指定有限責任社員。公認会計士法 第34条の10の5)
つまり監査法人に依頼しても、監査証明の業務を執行するのは公認会計士である社員です。個人の公認会計士に依頼する場合も、共同監査・補助者の人数要件は会社の区分によって決まります。
関連コラム監査法人の最低人数と設立要件【一覧表】有限責任監査法人の追加要件▸
公認会計士法の大会社等に当たるかの判定
人数要件の分かれ目になる「大会社等」は、公認会計士法第24条の2の各号に列挙された者をいいます(公認会計士法 第24条の2)。
- 会計監査人設置会社(政令で定める者を除く。第1号)
- 金融商品取引法第193条の2第1項・第2項の監査証明を受けなければならない者(政令で定める者を除く。第2号)
- 銀行(第3号)、長期信用銀行(第4号)、保険会社(第5号)
- これらに準ずる者として政令で定める者(第6号)
第1号から除かれるのは、最終事業年度の貸借対照表で資本金100億円未満かつ負債の合計額1,000億円未満の株式会社です(公認会計士法施行令 第8条)。第2号についても、金融商品取引法第24条第1項第3号・第4号により有価証券報告書を提出する会社のうち、資本金・売上高・負債が一定の規模に満たない会社などが除かれます(公認会計士法施行令 第9条)。第6号の準ずる者には、全国を地区とする信用金庫連合会や農林中央金庫などが挙げられています(公認会計士法施行令 第10条)。
会社法の大会社との違い
会社法の「大会社」は、最終事業年度の貸借対照表で資本金5億円以上、又は負債の部の合計額200億円以上の株式会社です(会社法 第2条第6号)。大会社は会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条第1項・第2項)。名前は似ていますが、公認会計士法の大会社等とは基準がまったく違います。
たとえば、非上場で資本金10億円・負債300億円の株式会社を考えます。会社法の大会社に当たるため会計監査人の設置が必要ですが、資本金100億円未満かつ負債1,000億円未満なので、会計監査人設置会社としては大会社等から除かれます(公認会計士法施行令 第8条)。金融商品取引法の監査証明を受けておらず、銀行・保険会社等でもなければ、この会社は会社法の大会社だが公認会計士法の大会社等ではないことになります。この場合、第24条の4の共同監査・補助者の義務はかからず、条文上は個人の公認会計士1人に会計監査人を依頼できます。
判定の手順
自社が大会社等に当たるかは、次の順に確認すると判断を誤りにくくなります。
- 金融商品取引法の監査証明の有無:上場会社や有価証券報告書の提出会社として監査証明を受けているかを確認する。受けていれば、施行令第9条の除外に当たらない限り大会社等(公認会計士法 第24条の2第2号)。上場会社等に当たれば、さらに上場会社等の要件もかかる。
- 業種:銀行・長期信用銀行・保険会社、又は施行令第10条に掲げる者に当たるかを確認する(公認会計士法 第24条の2第3号〜第6号)。
- 会計監査人設置会社の規模:最終事業年度の資本金が100億円以上、又は負債の合計額が1,000億円以上なら大会社等(公認会計士法 第24条の2第1号、公認会計士法施行令 第8条)。
- どれにも当たらない場合:大会社等ではない。会社法の大会社であっても、第24条の4の人数要件はかからない。
関連コラム公認会計士法の大会社等【一覧表】会社法の大会社との違いと規制の範囲▸
大会社等の監査は共同監査か補助者で2人以上
公認会計士が大会社等の財務書類について監査証明をするときは、他の公認会計士若しくは監査法人と共同するか、又は他の公認会計士を補助者として使用しなければなりません(公認会計士法 第24条の4)。個人の公認会計士が1人だけで大会社等の監査を引き受けることは、原則としてできないということです。
補助者として数えられるのは「他の公認会計士」に限られます。公認会計士が他の公認会計士や監査法人の補助者として業務に従事すること自体は、公認会計士法でも想定されています(公認会計士法 第2条第3項)。逆にいえば、資格のない職員を何人そろえても、第24条の4の体制にはなりません。
共同監査と補助者の使い分け
条文は「共同する」か「補助者として使用する」かのいずれかを求めており、条文上はどちらの形でもかまいません(公認会計士法 第24条の4)。共同の相手は、他の公認会計士でも監査法人でもかまいません。
共同する者と補助者の役割分担の細部までは、第24条の4は定めていません。会社から見ると、どちらの形で2人以上の体制を組むのか、相手方の公認会計士は誰かを、選任前に確認しておくことが大切です。体制の細部は事務所ごとに異なるため、契約前に書面で示してもらうと後の行き違いを防げます。
1人で監査できる例外
第24条の4には、共同監査や補助者の使用をしないことに内閣府令で定める「やむを得ない事情」がある場合の例外があります(公認会計士法 第24条の4ただし書)。やむを得ない事情として定められているのは、次の5つです(公認会計士法施行規則 第10条第1号〜第5号)。
- 共同監査人や補助者である公認会計士の登録が抹消されたこと
- 共同監査人や補助者が事故・病気などで業務を行えなくなったこと
- 移転により共同監査や補助ができなくなったこと
- 共同監査をしていた監査法人が解散したこと
- これらに準ずる事情で、本人の責めに帰すべき事由がないもの
いずれも、共同者や補助者がいる体制を前提に、その相手を失った場面を想定した事情です。初めから1人で大会社等の監査を引き受けることを想定した規定ではないため、会社としては、共同者が抜けたときにどう体制を補うかまで確認しておくと安心です。
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上場会社等の金融商品取引法監査は5人以上の体制
上場会社等の財務書類について金融商品取引法第193条の2第1項・第2項の監査証明業務を行うには、日本公認会計士協会の上場会社等監査人名簿に登録を受けなければなりません(公認会計士法 第34条の34の2)。登録の対象は監査法人だけでなく、個人の公認会計士も含まれます。
上場会社等の範囲には、上場している株券等の発行者のほか、株券等を上場しようとする者で、取引所の規則により募集・売出しのための届出をしようとするものも含まれます(公認会計士法施行令 第29条の2第1項第1号・第3号)。上場準備の段階でも、この届出に関わる監査証明は上場会社等の監査として扱われる場合がある点に注意が必要です。
登録を受けた個人の公認会計士が上場会社等の監査証明をするときは、次のいずれかの体制が必要です(公認会計士法 第34条の34の13)。
- 登録を受けた監査法人と共同する(第1号)
- 登録を受けた他の公認会計士1人以上と共同し、かつ、共同する登録公認会計士と補助者として使う公認会計士の合計が4人以上である(第2号イ・ロ、公認会計士法施行令 第29条の5第1項・第2項)
2つ目の形で本人を含めた人数を数えると、次のとおりです。
この規定は、令和4年法律第41号(公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律)により上場会社等監査人名簿の登録制度とともに設けられ、2023年4月1日から適用されています。個人の公認会計士が登録を申請するときは、共同で監査する他の公認会計士・監査法人の氏名・名称や、補助者として使う公認会計士の氏名等を申請書に記載します(公認会計士法 第34条の34の4第1項第1号ニ)。
途中で体制が欠けたときの例外は、施行規則第10条の5つの事情に、共同監査人の名簿登録が取り消されたことを加えた6つの事情として定められています(公認会計士法施行規則 第92条)。こちらも、初めから少人数で引き受けることを認める規定ではありません。
個人に依頼するときのローテーションと独立性
人数とあわせて確認したいのが、監査人の独立性に関する規定です。公認会計士は、本人や配偶者が会社の役員等である(過去1年以内を含む)場合、本人が会社の使用人である(過去1年以内を含む)場合、その他著しい利害関係がある場合には、その会社の財務書類を監査できません(公認会計士法 第24条第1項・第2項、公認会計士法施行令 第7条)。大会社等については、本人や配偶者等が、内閣府令で定める非監査業務によりその大会社等から継続的な報酬を受けている場合にも監査が制限されます(公認会計士法 第24条の2)。
大会社等の監査には、ローテーションの規定もあります。7会計期間連続で監査関連業務を行った公認会計士は、その後の2会計期間は同じ会社の監査関連業務を行えません(公認会計士法 第24条の3第1項、公認会計士法施行令 第11条・第12条)。個人の公認会計士に長く依頼している会社は、関与が何期目に当たるかを把握しておく必要があります。
個人の公認会計士(監査法人の社員でない者)に限り、周辺地域で公認会計士が不足しているなど交替が著しく困難な事情があり、会計期間ごとに内閣総理大臣の承認を受けた場合は、この制限の例外が認められます(公認会計士法 第24条の3第1項ただし書、公認会計士法施行規則 第8条)。また、上場しようとする会社は、上場日の属する会計期間の前3期の範囲内で府令が定める期に監査関連業務が行われた場合、大会社等とみなしてローテーションの規定が適用されます(公認会計士法 第24条の3第2項、公認会計士法施行令 第13条)。
選任前に確認する項目【チェックリスト】
個人の公認会計士を会計監査人の候補にするときは、次の項目を選任前に確認しておくと、人数要件や独立性の見落としを防げます。
- 自社の区分:公認会計士法の大会社等・上場会社等に当たるかを判定し、必要な人数(1人/2人以上/5人以上)を確定したか
- 体制の具体名:共同監査人や補助者となる公認会計士の氏名と人数が示されているか(資格のない職員は数えない)
- 名簿登録:上場会社等又は上場予定なら、候補者と共同者が上場会社等監査人名簿に登録済みか(登録者の一覧は日本公認会計士協会で公開)
- 連続関与期間:大会社等であれば、これまでの関与期間が7会計期間に近づいていないか
- 欠格・利害関係:会社法第337条第3項の欠格や、公認会計士法第24条の利害関係に当たる事情がないか
- 代替体制:共同者や補助者が抜けたときに、誰がどう補うかが決まっているか
- 登記:選任後に会計監査人の氏名を登記する段取りがついているか
上場会社等監査人名簿は、2024年11月1日からインターネットで縦覧できるようになっています。小規模な事務所に依頼する場合でも、人数要件を満たす体制を契約前に書面で示してもらうことが、選定の判断材料として最も確かです。
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まとめ
個人の公認会計士も会計監査人になれますが、1件の監査に必要な公認会計士の人数は会社の区分で決まります。公認会計士法の大会社等でなければ条文上1人でも可能で、大会社等なら共同監査か補助者で2人以上、上場会社等の金融商品取引法監査なら登録監査法人との共同か本人を含め5人以上の体制が必要です。会社法の大会社と公認会計士法の大会社等は基準が異なるため、資本金100億円・負債1,000億円の基準で必ず判定し直してください。自社の区分や候補者の体制が要件を満たすかなど、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
会計監査には公認会計士が何人必要ですか?
会社の区分によって異なります。公認会計士法の大会社等でなければ条文上1人でも可能です。大会社等の監査は共同監査か補助者の使用で2人以上が必要で(公認会計士法 第24条の4)、上場会社等の金融商品取引法監査は登録監査法人と共同するか、本人を含め5人以上の体制が必要です(公認会計士法 第34条の34の13、公認会計士法施行令 第29条の5)。
会社法の大会社なら、個人の公認会計士1人には依頼できませんか?
会社法の大会社でも、資本金100億円未満かつ負債1,000億円未満で、金融商品取引法の監査証明を受けておらず、銀行・保険会社等でもなければ、公認会計士法の大会社等には当たりません(公認会計士法 第24条の2、公認会計士法施行令 第8条)。この場合、第24条の4の共同監査・補助者の義務はかからないため、条文上は個人の公認会計士1人に依頼できます。
補助者は公認会計士でなければなりませんか?
大会社等の監査で人数要件を満たすための補助者は、他の公認会計士でなければなりません(公認会計士法 第24条の4)。公認会計士の資格がない職員が監査に加わっても、人数要件の計算には含まれません。
上場準備中の会社も上場会社等の人数要件の対象になりますか?
株券等を上場しようとする者で、取引所の規則により募集・売出しのための届出をしようとするものは、上場会社等に含まれます(公認会計士法施行令 第29条の2第1項第3号)。この届出に関わる金融商品取引法の監査証明は、上場会社等の監査として名簿登録と人数要件の対象になり得ます(公認会計士法 第34条の34の2、第34条の34の13)。どの時点から対象になるかは個別の状況で異なるため、上場スケジュールとあわせて確認してください。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



