監査役会議事録【記載例】常勤監査役の選定と監査役選任議案への同意
目次
監査役会議事録は、監査役会の議事について作成が義務づけられている書面または電磁的記録です(会社法 第393条第2項)。とくに定時株主総会の前後には、監査役選任議案への同意と常勤監査役の選定という、監査役会にしか決められない決議が続きます。
この記事では、この2つに議長の選定を加えた3つの議題について、そのまま下敷きにできる議事録の記載例を示します。あわせて、会社法施行規則が求める記載事項、取締役会議事録との違い、実務で誤りやすい点を条文に沿って整理します。
監査役会議事録の法定記載事項
議事録の中身は会社法施行規則で決まっています。書面または電磁的記録のいずれかで作成し(会社法施行規則 第109条第2項)、次の事項を記載します(会社法施行規則 第109条第3項)。
| 開催日時・場所 | その場所にいない監査役・取締役・会計参与・会計監査人がオンライン等で出席した場合は、その出席の方法も記載します(第1号)。 |
|---|---|
| 議事の経過の要領 とその結果 |
議案ごとに、説明の要旨と賛否の結果を記載します(第2号)。 |
| 述べられた意見・発言 の概要 |
取締役による会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実の報告、会計監査人による取締役の不正行為等の報告など、法定の報告があった場合に記載します(第3号)。 |
| 出席した取締役等 の氏名 |
監査役会に出席した取締役・会計参与・会計監査人の氏名または名称を記載します(第4号)。 |
| 議長の氏名 | 議長が存するときに記載します(第5号)。 |
書面で作成した場合は、出席した監査役が署名または記名押印します(会社法 第393条第2項)。電磁的記録で作成した場合は、署名・記名押印に代えて電子署名を行います(会社法 第393条第3項、会社法施行規則 第225条第1項第7号)。作成した議事録は、監査役会の日から10年間本店に備え置きます(会社法 第394条第1項)。
定時株主総会の前後に必要な3つの決議
監査役会設置会社では、監査役は3人以上で、そのうち半数以上を社外監査役とする必要があります(会社法 第335条第3項)。この体制を維持するために、監査役の改選期には次の決議を総会の前後で順に行います。
| 決議の内容 | 根拠と時期 |
|---|---|
| 監査役選任議案への同意 | 取締役が監査役の選任議案を総会に提出するには監査役会の同意が必要です(会社法 第343条第1項、第3項)。総会の招集を決める取締役会より前に行います。 |
| 議長の選定(置く場合) | 会社法に議長を置く義務の規定はなく、置く場合は監査役会規則等の社内ルールで定めます。総会で監査役の構成が変わった後の監査役会で決めます。 |
| 常勤監査役の選定 | 監査役会は監査役の中から常勤の監査役を選定しなければなりません(会社法 第390条第2項第2号、第3項)。総会で新しい監査役が就任した後に行います。 |
監査役会設置会社にあたるかどうかの判定や、監査役会を立ち上げるまでの手順は、次のコラムで整理しています。
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記載例1 監査役選任議案への同意
監査役会設置会社では、監査役選任議案への同意権は個々の監査役ではなく監査役会にあります(会社法 第343条第3項)。そのため、監査役が個別に同意書へ署名するだけでは足りず、監査役会の決議として同意したことを議事録に残します。この同意は新任の候補者だけでなく、任期満了に伴う再任の候補者を含む選任議案に必要です。
議事録の記載例
監査役会議事録
1.日時 2027年5月20日(木)午前10時00分から午前10時40分まで
2.場所 当社本店 第2会議室(社外監査役丙山三郎は、ウェブ会議システムにより出席した。)
3.監査役の総数 3名 出席監査役 3名(常勤監査役 甲野一郎、社外監査役 乙川二郎、社外監査役 丙山三郎)
4.出席者 代表取締役 丁田四郎(第1号議案の説明のため)
5.議長 常勤監査役 甲野一郎議長は、監査役全員が出席したので本監査役会は適法に成立した旨を述べ、議事に入った。
第1号議案 監査役選任議案に対する同意の件
代表取締役丁田四郎から、2027年6月開催予定の第○回定時株主総会に提出する監査役選任議案について、候補者を次のとおりとしたい旨、候補者の略歴、当社との特別の利害関係の有無、社外監査役候補者とした理由等の説明があり、同意を求められた。
監査役候補者 戊谷五郎(社外監査役候補者・新任)
審議の結果、議長が本議案に同意することの賛否を諮ったところ、出席監査役全員一致をもって同意することを決議した。以上をもって本日の議事を終了したので、議長は午前10時40分に閉会を宣した。議事の経過の要領及びその結果を明らかにするため、本議事録を作成し、出席監査役がこれに記名押印する。
2027年5月20日
○○株式会社 監査役会
常勤監査役 甲野一郎 印
社外監査役 乙川二郎 印
社外監査役 丙山三郎 印
記載のポイント
- 同意の対象を特定する: 候補者の氏名と、新任・再任、社外監査役候補者かどうかを明記します。株主総会参考書類には、社外監査役候補者である旨やその理由の記載が求められるため(会社法施行規則 第76条第4項)、審議で確認した事項と参考書類の内容をそろえておきます。
- 説明者を出席者として記載する: 取締役が出席して説明した場合は、その氏名を記載します(会社法施行規則 第109条第3項第4号)。
- 日付の順序を確認する: 株主総会の目的である事項は取締役会が決議して定めます(会社法 第298条第1項第2号、第4項)。同意の監査役会は、この取締役会より前の日付にします。
監査役会には、同意だけでなく、監査役の選任を株主総会の目的とすることや、選任議案を提出することを取締役に請求する権限もあります(会社法 第343条第2項、第3項)。請求に基づいて提出された議案は、その旨を株主総会参考書類に記載します(会社法施行規則 第76条第1項第4号)。
記載例2 常勤監査役の選定と議長の選定
常勤監査役の選定と解職は、監査役会の職務として定められています(会社法 第390条第2項第2号)。会社法には「常勤」の定義規定はなく、また常勤監査役は登記事項でもありません(登記されるのは監査役の氏名と、社外監査役である旨です。会社法 第911条第3項第17号、第18号)。誰が常勤監査役かを対外的に示す根拠は、この選定決議の議事録になります。
議事録の記載例
監査役会議事録
1.日時 2027年6月25日(金)午後2時00分から午後2時20分まで
2.場所 当社本店 第2会議室
3.監査役の総数 3名 出席監査役 3名(甲野一郎、丙山三郎、戊谷五郎)本日の定時株主総会終結後最初の監査役会であり、議長が選定されるまでの間、監査役甲野一郎が仮議長となり、監査役全員が出席したので本監査役会は適法に成立した旨を述べ、議事に入った。
第1号議案 監査役会議長選定の件
仮議長は、監査役会規則第○条に基づき監査役会の議長を選定する必要がある旨を述べ、その選定を諮ったところ、出席監査役全員一致をもって監査役甲野一郎を議長に選定した。被選定者はその就任を承諾した。第2号議案 常勤監査役選定の件
議長は、会社法第390条第3項に基づき監査役の中から常勤の監査役を選定する必要がある旨を述べ、その選定を諮ったところ、出席監査役全員一致をもって監査役甲野一郎を常勤監査役に選定した。被選定者はその就任を承諾した。以上をもって本日の議事を終了したので、議長は午後2時20分に閉会を宣した。議事の経過の要領及びその結果を明らかにするため、本議事録を作成し、出席監査役がこれに記名押印する。
2027年6月25日
○○株式会社 監査役会
議長 常勤監査役 甲野一郎 印
社外監査役 丙山三郎 印
社外監査役 戊谷五郎 印
記載のポイント
- 就任後に開く: 常勤監査役は「監査役の中から」選定します(会社法 第390条第3項)。総会で選任される予定の候補者を、就任前の監査役会で先に選定することはできないため、総会終結後に開催します。
- 常勤の人数: 条文は常勤の監査役を選定する義務を定めるもので、人数の上限はありません。2名以上を常勤とする場合は、議案に全員の氏名を記載します。
- 解職も同じ決議で行う: 常勤監査役を非常勤に変える場合も、監査役会の決議による解職として議事録に残します(会社法 第390条第2項第2号)。
- 議長は任意の機関: 議長の氏名は「議長が存するとき」の記載事項です(会社法施行規則 第109条第3項第5号)。議長を置かない運営であれば、議長選定の議案は不要です。
総会後に監査役会設置会社として必要な手続のうち、監査役の就任・退任があれば、その変更登記を2週間以内に行います(会社法 第915条第1項)。社外監査役が交代した場合は、社外監査役である旨の登記も変わります(会社法 第911条第3項第18号)。
招集権者と招集手続の記載
監査役会は各監査役が招集します(会社法 第391条)。取締役会では定款または取締役会で招集する取締役を定められますが(会社法 第366条第1項)、監査役会にはこれに相当する規定がありません。監査役会規則で「原則として議長が招集する」と定める場合も、他の監査役が招集できることを妨げない書き方にしておきます。
招集通知は、監査役会の日の1週間前までに各監査役へ発します。定款でこれより短い期間を定めることもでき、監査役全員の同意があれば招集手続を経ずに開催できます(会社法 第392条)。招集手続を省略した回は、「監査役全員の同意により招集手続を省略して開催した」旨を議事録の冒頭に書いておくと、手続の適法性を後から確認できます。
取締役会議事録との違い
取締役会議事録の書式を流用すると、条文の違いを見落としやすくなります。主な違いは次のとおりです。
| 監査役会 | 取締役会 |
|---|---|
| 決議は「監査役の過半数」で行います。出席者ではなく在任する監査役全員の過半数が基準です(会社法 第393条第1項)。 | 議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数で決議します(会社法 第369条第1項)。 |
| 決議を書面で省略する規定はありません。決議は会議を開いて行います。 | 定款の定めにより、全員の書面同意で決議を省略できます(会社法 第370条)。 |
| 署名・記名押印するのは出席した監査役です(会社法 第393条第2項)。 | 出席した取締役と監査役が署名・記名押印します(会社法 第369条第3項)。 |
| 報告事項は、監査役全員への通知で報告を省略でき、その場合も議事録を作成します(会社法 第395条、会社法施行規則 第109条第4項)。 | 報告の省略は別の規定(会社法 第372条)によります。 |
監査役3名の会社で1名が欠席した場合でも、残る2名が賛成すれば「監査役の過半数」を満たします。一方、2名出席で賛否が1対1に割れた場合は可決になりません。出席者の過半数で足りると誤解して議事録を作ると、決議の成立そのものが争われる余地が生じます。
実務で誤りやすい点
- 反対意見を議事録に残していない: 決議に参加した監査役で議事録に異議をとどめない者は、その決議に賛成したものと推定されます(会社法 第393条第4項)。反対した監査役がいる場合は、氏名と反対の旨を議事録に記載します。
- 個々の監査役の同意書で済ませている: 監査役会設置会社では同意権が監査役会にあるため(会社法 第343条第3項)、監査役会の決議が必要です。同意書を取締役に提出する運用でも、その前提となる監査役会議事録を作成します。
- オンライン出席の方法が抜けている: ウェブ会議や電話で出席した監査役がいる場合は、その出席方法を記載します(会社法施行規則 第109条第3項第1号)。
- 議事録の保管場所が本店でない: 備置場所は本店で、期間は監査役会の日から10年間です(会社法 第394条第1項)。株主は裁判所の許可を得て閲覧・謄写を請求できます(会社法 第394条第2項)。
会計監査人を置く会社では、会計監査人の選任議案の内容も監査役会が決定します。その議事録の記載例は次のコラムで扱っています。
関連コラム会計監査人の選任議案と監査役会の同意|記載例と決議要件▸
まとめ
- 監査役会議事録の記載事項は会社法施行規則第109条第3項で定められ、出席した監査役が署名または記名押印し、本店に10年間備え置きます。
- 監査役選任議案への同意は監査役会の決議で行い、総会の招集を決める取締役会より前に済ませます。
- 常勤監査役の選定は、総会で新しい監査役が就任した後の監査役会で行います。議長は任意で、置く場合は社内規則で定めます。
- 決議要件は「監査役の過半数」であり、書面による決議の省略はできません。反対意見は議事録に残します。
機関設計や議事録の整備状況は会社ごとに異なります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
監査役会の決議を書面やメールの持ち回りで行えますか。
会社法には、取締役会の決議の省略(会社法 第370条)に相当する規定が監査役会にはありません。常勤監査役の選定や選任議案への同意は、ウェブ会議等を含め会議を開いて決議し、出席方法を議事録に記載します(会社法施行規則 第109条第3項第1号)。
監査役が2名しか出席していない場合でも決議できますか。
決議は監査役の過半数で行います(会社法 第393条第1項)。監査役3名の会社で2名が出席し、2名とも賛成すれば過半数を満たします。出席した2名のうち1名でも反対すれば可決になりません。
常勤監査役を選定したら登記は必要ですか。
常勤監査役であることは登記事項ではありません。登記されるのは監査役の氏名と、監査役会設置会社である旨および社外監査役である旨です(会社法 第911条第3項第17号、第18号)。監査役の就任・退任があれば、2週間以内に変更登記を行います(会社法 第915条第1項)。
議事録には取締役も署名しますか。
監査役会議事録に署名または記名押印するのは出席した監査役です(会社法 第393条第2項)。取締役が説明のために出席した場合は、その氏名を記載事項として記載します(会社法施行規則 第109条第3項第4号)。
監査役会議事録はいつまで保存しますか。
監査役会の日から10年間、本店に備え置きます(会社法 第394条第1項)。
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