労働組合の決算書エクセルひな形|収支計算書・貸借対照表の入力手順
目次
労働組合の決算書は、市販の会計ソフトを入れなくても、エクセルの1ブック(5シート構成)で毎年つくり直せる形に整えられます。組合費の入金と活動費の支払という取引の型がほぼ固定されているため、科目の一覧と集計式さえ最初に組んでおけば、2年目以降は金額を入力するだけで収支計算書と貸借対照表が出来上がります。
この記事では、労働組合の会計担当者がそのまま持ち帰れるように、シートの分け方・列の並び・大科目の並び・入力の順番・貸借一致のチェック式までを具体的に示します。会計報告そのものの位置づけや大会での公表ルールではなく、「エクセルの表として何をどう並べるか」に絞った内容です。
エクセルで組む決算書ひな形の全体像
労働組合の規約には、すべての財源および使途、主要な寄附者の氏名ならびに現在の経理状況を示す会計報告を、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表する旨の規定を含めなければならないとされています(労働組合法 第5条第2項第7号)。エクセルのひな形は、この「財源」「使途」「現在の経理状況」の3つを、それぞれ収入の部・支出の部・貸借対照表として過不足なく取り出せる形にしておくのが出発点です。
推奨するブック構成は次の5シートです。シートを分けておくと、入力する場所と印刷して配る場所がはっきり分かれ、監査時に「どの数字がどこから来たか」を説明しやすくなります。
| 01_科目マスタ | 大科目・中科目・科目コードの一覧。ここを直せば全シートの科目名が揃う |
|---|---|
| 02_取引入力 | 日付・科目コード・摘要・入金額・出金額・相手先を1行1取引で入力する台帳 |
| 03_収支計算書 | 科目・予算額・決算額・差異・備考の5列。決算額は取引入力から集計式で拾う |
| 04_貸借対照表 | 科目・金額の2列。資産の部・負債の部・正味財産の部に区分する |
| 05_附属明細 | 現金預金・有形固定資産・借入金・積立金など、内訳が必要な科目の明細表 |
実務では、この5シートに加えて「06_前年度」として前年の確定値を貼り付けたシートを置いておくと、前年比較や差異の説明が一気に楽になります。組合員向けの説明で最も質問が出るのは前年との増減だからです。
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収支計算書シートの列構成と科目の並べ方
列は「科目・予算額・決算額・差異・備考」の5列
労働組合の収支計算書は、企業の損益計算書と違って予算との対比が主役です。大会で承認した予算に対して実際いくら使ったのかを示す書類なので、エクセルでも金額欄を1本にせず、予算額と決算額を横に並べて差異を自動計算させます。
| 列 | 入れる内容 |
|---|---|
| 科目 | 大科目と中科目を階層で表示する。中科目はインデントを1段下げる |
| 予算額 | 大会で承認された予算書の金額をそのまま転記する |
| 決算額 | 取引入力シートから科目コード単位で集計する |
| 差異 | 予算額から決算額を差し引いた金額を数式で表示する |
| 備考 | 差異が大きい科目の理由を1行で書く。監査での質問がここで減る |
差異の欄は空欄のまま提出されることが多いのですが、ここを埋めておくと会計監査の場での説明が短くなります。目安として差異が予算額の20パーセントを超える科目には必ず一言入れる、というルールをシートの上部に書いておくと運用が続きます。
収入の部・支出の部の大科目
科目の並びは組合の規模や活動内容で加除して構いませんが、実務で一般的に用いられている作例は次のとおりです。まずこの形で組み、自組合にない科目を削るほうが早く仕上がります。
| 組合費収入 | 組合員から徴収した組合費、新規加入者の加入金 |
|---|---|
| 交付金収入 | 上部団体から交付されたもの |
| 賦課金収入 | 傘下の組合から納入されたもの |
| 寄付金収入 | 他団体・個人からの寄付金。主要な寄附者は明細に氏名を残す |
| 雑収入 | 受取利息配当金、その他の雑収入 |
| 前年度繰越金 | 前年度からの繰越金。収入の部の大科目として表示する |
支出の部は、人件費・事務局費・会議費・事業費・情宣費・会費という活動の区分で並べます。
| 人件費 | 専従役員・職員の給料諸手当、厚生費(労働保険料・社会保険料) |
|---|---|
| 事務局費 | 旅費交通費、通信費、消耗品費、印刷費、図書費、雑費 |
| 会議費 | 大会費、委員会費、賃金補償費、その他の諸会議費 |
| 事業費 | 組織部費、文化部費、青年部・女性部費などの専門部活動費 |
| 情宣費 | 機関紙の発行費・発送費、情報宣伝活動の諸費用 |
| 会費 | 上部団体会費、その他の諸会費 |
| 予備費・ 次年度繰越金 |
予備費の使用額は注記に残す。差額が次年度繰越金となる |
収入と支出は総額で並べるのが原則です。たとえば大会の参加費を集めて会場費に充てた場合でも、参加費収入と大会費支出を相殺せず、両方を計上します。相殺してしまうと、組合費がいくら集まりいくら使われたのかという最も知りたい情報が見えなくなるためです。
貸借対照表シートの区分と科目
貸借対照表は「科目」「金額」の2列だけの単純な表で足ります。エクセルで報告式(縦に資産・負債・正味財産を積み上げる形)にしておくと、A4縦1枚に収まり印刷が楽です。区分は資産の部・負債の部・正味財産の部の3つで、資産の部はさらに流動資産と固定資産に、固定資産は有形固定資産とその他の固定資産に分けます。
| 流動資産 | 現金・預金、未収組合費、未収金、前払金、一時所有の有価証券 |
|---|---|
| 有形固定資産 | 土地、建物、構築物、車両運搬具、什器備品 |
| その他の 固定資産 |
電話加入権、敷金、保証金、投資有価証券、出資金、積立預金 |
| 流動負債 | 未払金、前受組合費、預り金(源泉所得税・社会保険料)、短期借入金 |
| 固定負債 | 長期借入金、退職給与引当金 |
正味財産の部は、企業会計の純資産とは並びが異なります。労働組合の作例では、次の3区分にするのが一般的です。
| 固定資産等 見返正味財産 |
固定資産や固定負債など、資金の範囲に入らない項目を計上したことで生じる見返勘定 |
|---|---|
| 積立金 | 闘争積立金、退職積立金など目的を定めて留保した額。対応する拘束資産と金額を一致させる |
| 次年度繰越金 | 収支計算書の末尾と一致する。ここが合わないブックは必ずどこかで入力漏れがある |
初めてひな形を組むときに最もつまずくのが「固定資産等見返正味財産」です。備品を現金で買うと、収支計算書では支出になる一方で、貸借対照表には資産が残ります。この差を吸収するための箱がこの科目だと理解しておけば、金額の決め方に迷いません。積立金は必ず同額の預金(拘束資産)と対になっている点も押さえてください。積立金だけ計上して裏付けの預金がない状態は、監査で最初に指摘される論点です。
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エクセルへの入力手順
シートができたら、決算のたびに次の順番で作業します。この順番を守ると、途中で数字が合わなくなっても原因の切り分けが1ステップ内で済みます。
- 科目マスタを更新する。前年度から新設・廃止した活動がないかを確認し、科目コード(例:収入は100番台、支出は200番台、資産は300番台)を振り直さずに追加する。
- 取引入力シートに1年分を入力する。通帳と現金出納帳を突き合わせながら、日付順に1行1取引で入れる。摘要には相手先と用途を必ず書く。
- 期末残高を確認する。入力後の現金預金残高が、通帳残高と手許現金の実査額に一致するかを先に合わせる。ここが合う前に決算書へ進まない。
- 収支計算書の決算額を集計する。科目コードをキーに集計関数で拾い、手打ちしない。手打ちすると翌年の再利用ができなくなる。
- 貸借対照表を作る。期末の資産・負債を科目ごとに入力し、正味財産の3区分を埋める。
- チェック式で検算する。下表の3つがすべてゼロになるまで確定させない。
- 附属明細を作り、監査に回す。現金預金、有形固定資産、借入金、積立金の明細を出力し、証憑と一緒に会計監査人へ渡す。
検算は、シートの右上など目立つ場所に3つの式をまとめて置くのが実用的です。数字が動くたびに自動で再計算されるため、修正のたびに全体を見直す必要がなくなります。
| チェック項目 | 置く式の考え方 |
|---|---|
| 収支の一致 | 収入合計から支出合計を差し引いた額が、次年度繰越金と一致するか |
| 貸借の一致 | 資産合計から、負債合計と正味財産合計の和を差し引いた額がゼロか |
| 繰越金の一致 | 収支計算書の次年度繰越金と、貸借対照表の次年度繰越金が同額か |
あわせて、取引入力シートの入金額と出金額の合計が、収支計算書の収入合計・支出合計(前年度繰越金と次年度繰越金を除く)と一致するかも見ておくと、集計関数の範囲指定漏れをその場で見つけられます。集計範囲は行を追加しても崩れないよう、テーブル機能か列全体で指定してください。
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ひな形を運用するうえでの注意点
エクセルで組む最大の利点は自由度ですが、それがそのまま弱点にもなります。実務で繰り返し見かける論点を挙げます。
資金の範囲を決めて注記に書く。 収支計算書でいう「収入」「支出」がどこまでを指すのかは、組合ごとに決めます。現金預金だけとする組合もあれば、短期の未収・未払や前受組合費まで含める組合もあります。どちらでも構いませんが、決めた範囲をシートの注記欄に明記し、毎年変えないことが重要です。範囲が年によって動くと、前年比較が意味を持たなくなります。
特別会計は別ブックにせず、シートを分ける。 闘争積立金や退職積立金の特別会計を設けている場合、一般会計と同じブックに「11_特別会計収支」「12_特別会計BS」として並べると、会計区分間の繰入・繰出の相殺漏れを防げます。別ファイルにすると、繰入額と繰出額が一致しないまま気づかない状態になりがちです。
数式を残したまま配布しない。 組合員に配る資料はPDFまたは値貼り付けにします。数式付きのブックをそのまま回すと、受け取った側の操作で数字が変わってしまい、どれが承認された決算書なのか分からなくなります。承認後のブックは編集不可の形で保管してください。
会計監査人の確認を受ける前提で列を残す。 労働組合法上、会計報告は職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに公表することとされています(労働組合法 第5条第2項第7号)。証憑番号や通帳の該当ページを記録する列を取引入力シートに用意しておくと、監査時の照合が短時間で終わります。
なお、不当労働行為の救済申立てや法人登記のための資格証明書の交付を受ける場合などには、労働委員会による資格審査を受ける必要があり、その都度、資格審査申請書と立証資料を管轄の労働委員会に提出することとされています。エクセルのひな形を毎年同じ形で運用しておくと、こうした場面で過年度分をそろえて提出する負担が小さくなります。
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まとめ
労働組合の決算書は、科目マスタ・取引入力・収支計算書・貸借対照表・附属明細の5シートで組めば、エクセルだけで毎年再現できます。収支計算書は科目・予算額・決算額・差異・備考の5列、貸借対照表は科目・金額の2列で資産・負債・正味財産の3区分に分ける、という並びを最初に固定してしまうことが、翌年以降の作業時間を最も大きく減らします。
入力は、期末残高を通帳と合わせてから集計へ進む順番を守り、収支の一致・貸借の一致・繰越金の一致という3つの検算式をシート上に常設してください。積立金と拘束資産の対応、資金の範囲の固定、特別会計の同一ブック管理の3点を押さえておけば、監査で指摘を受ける論点はかなり減ります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
参考文献
よくある質問
会計ソフトを使わずエクセルだけで決算書を作っても問題ありませんか。
労働組合法は会計報告の作成方法や使用するソフトを定めていません。求められているのは、すべての財源および使途と現在の経理状況を示す会計報告を、会計監査人の証明書とともに少なくとも毎年1回組合員に公表することです(労働組合法 第5条第2項第7号)。エクセルでも、取引の記録から収支計算書と貸借対照表が誘導的に作られ、証憑と突き合わせられる状態であれば足ります。
収支計算書に予算額の列は必ず必要ですか。
法令上の義務ではありませんが、労働組合の決算は大会で承認された予算の執行結果を報告する性格が強いため、実務では予算額と決算額を対比する形が一般的です。予算額の列がないと、差異の説明ができず、大会での質疑に答えにくくなります。
貸借対照表の「固定資産等見返正味財産」はどう計算しますか。
固定資産や固定負債など、収支計算書でいう資金の範囲に含まれない項目を貸借対照表に計上したことで生じる差額を受ける勘定です。実務では、固定資産などの残高から固定負債などの残高を差し引いた額として求め、結果として貸借が一致するように置きます。金額が動くのは、固定資産を取得・売却したときや、借入れ・返済をしたときです。
特別会計がある場合、貸借対照表は1枚にまとめるべきですか。
会計区分ごとに計算書類を作ったうえで、一般会計と特別会計を総合した貸借対照表を別に作るのが一般的な作例です。総合する際は、会計区分間の貸借を相殺し、特別会計の残高がその性格に応じて負債の部と正味財産の部のどちらに入るかを整理します。闘争資金のように組合の財産としての性格が強いものは正味財産の部に、退職積立のように将来の支出に備えるものは負債の部に置く整理が分かりやすいでしょう。
エクセルのひな形を毎年使い回すときの注意点は何ですか。
前年度のブックをコピーして使う場合は、取引入力シートの明細を消す前に、必ず前年の確定値を別シートへ値貼り付けで残してください。また、科目を削除すると集計関数の参照が崩れるため、使わなくなった科目は削除せず非表示にする運用が安全です。
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