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会計監査

計算書類の監査報告書の記載事項と通知期限|会社法監査の実務

目次
  1. 会社法監査における監査報告の全体像
  2. 計算書類の範囲と作成義務
  3. 会計監査報告と監査報告の違い
  4. 会計監査報告の記載事項
  5. 監査意見の3類型と記載内容
  6. 追記情報として記載する事項
  7. 監査役等の監査報告の記載事項
  8. 会計監査人設置会社の監査役の監査報告
  9. 会計監査人非設置会社の監査役の監査報告
  10. 監査役会・監査等委員会・監査委員会の監査報告
  11. 監査報告の通知期限
  12. 会計監査報告の通知期限
  13. 監査役等の監査報告の通知期限
  14. 期限までに通知しない場合のみなし規定
  15. 計算書類が確定するまでの実務スケジュール
  16. 決算日から定時株主総会までの流れ
  17. 定時株主総会の承認特則
  18. 記載事項をめぐる実務上の留意点
  19. まとめ
  20. 参考文献
  21. よくある質問
  22. 会計監査報告と監査報告書は同じものですか。
  23. 監査役の監査報告に監査意見を書く必要はありますか。
  24. 会計監査報告の通知期限を合意で延ばすことはできますか。
  25. 通知期限までに監査報告の内容が通知されないとどうなりますか。
  26. 監査報告は株主へ提供する必要がありますか。

会社法監査では、決算期末を迎えてから定時株主総会までの限られた期間に、会計監査人と監査役等がそれぞれ監査報告を作成し、定められた期限までに内容を通知しなければなりません。記載すべき事項も通知の期限も会社計算規則に細かく定められており、一つでも欠けると計算書類の確定手続そのものに影響します。

この記事では、会計監査人が作成する会計監査報告と、監査役・監査役会・監査等委員会・監査委員会が作成する監査報告について、それぞれの記載事項と通知期限を条文に沿って整理します。あわせて、計算書類が定時株主総会で確定するまでの実務スケジュールも確認します。

会社法監査における監査報告の全体像

記載事項を確認する前に、会社法上どの書類が監査の対象となり、誰が何を作成するのかを押さえておきます。ここを取り違えると、必要な報告書の一部が漏れてしまいます。

計算書類の範囲と作成義務

株式会社は、各事業年度に係る計算書類および事業報告ならびにこれらの附属明細書を作成しなければなりません(会社法 第435条第2項)。ここでいう計算書類とは、貸借対照表と損益計算書に加えて、法務省令で定めるものとして株主資本等変動計算書および個別注記表が含まれます(会社計算規則 第59条第1項)。つまり計算書類は4つの書類の総称であり、事業報告は計算書類には含まれません。

会計監査人設置会社では、計算書類およびその附属明細書は監査役(監査等委員会設置会社では監査等委員会、指名委員会等設置会社では監査委員会)および会計監査人の監査を受け、事業報告およびその附属明細書は監査役等のみの監査を受けます(会社法 第436条第2項)。会計監査人を置いていない監査役設置会社では、計算書類・事業報告とその附属明細書のすべてが監査役の監査対象となります(会社法 第436条第1項)。

会計監査人設置会社のうち、事業年度末日に大会社であって有価証券報告書の提出義務がある会社は、連結計算書類の作成が義務づけられ、これも監査役等および会計監査人の監査を受けます(会社法 第444条第3項、第444条第4項)。

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会計監査報告と監査報告の違い

会計監査人は、計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類ならびに連結計算書類を監査し、法務省令の定めに従って会計監査報告を作成します(会社法 第396条第1項)。一方、監査役・監査役会・監査等委員会・監査委員会が作成するのは監査報告であり、両者は名称も記載事項も異なります。

実務では両者をまとめて「監査報告書」と呼ぶことが多いのですが、会社計算規則は会計監査報告を第126条に、監査役等の監査報告を第122条・第123条・第127条から第129条までに分けて規定しています。会計監査人設置会社かどうかによって監査役の監査報告の記載事項が変わる点が、特に間違えやすいところです。

会計監査人が作成する
会計監査報告
計算関係書類が財産および損益の状況を適正に表示しているかどうかについての意見を中心とする報告(会社計算規則 第126条第1項)
監査役等が作成する
監査報告
会計監査人設置会社では、会計監査人の監査の方法または結果の相当性を中心とする報告(会社計算規則 第127条)。会計監査人非設置会社では、計算関係書類の適正性についての意見を含む報告(会社計算規則 第122条第1項)

会計監査報告の記載事項

会計監査人は、計算関係書類を受領したときに会計監査報告を作成します。記載すべき事項は会社計算規則 第126条第1項に7つ列挙されており、いずれも省略できません。

監査の方法および
その内容
会計監査人が実施した監査の方法とその内容(会社計算規則 第126条第1項第1号)
適正表示に関する意見 計算関係書類が財産および損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見(同項第2号)
意見がない場合の
その旨と理由
意見を表明しないときは、その旨およびその理由(同項第3号)
継続企業の前提に
関する注記に係る事項
継続企業の前提に関する注記に係る事項(同項第4号)
事業報告等との
重要な相違等
意見があるときは、事業報告およびその附属明細書の内容と、計算関係書類の内容または監査の過程で得た知識との間の重要な相違等について、報告すべき事項の有無および内容(同項第5号)
追記情報 会計監査人の判断に関して説明を付す必要がある事項等(同項第6号)
会計監査報告を
作成した日
会計監査報告を作成した日(同項第7号)

監査意見の3類型と記載内容

適正表示に関する意見は、意見の種類ごとに記載すべき内容が具体的に定められています(会社計算規則 第126条第1項第2号イからハまで)。無限定適正意見であればその旨を記載すれば足りますが、限定付適正意見と不適正意見では除外事項や理由まで書かなければならない点が異なります。

無限定適正意見 監査の対象となった計算関係書類が、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に準拠して、当該期間の財産および損益の状況を全ての重要な点において適正に表示していると認められる旨(会社計算規則 第126条第1項第2号イ)
除外事項を付した
限定付適正意見
除外事項を除き適正に表示していると認められる旨、除外事項、および限定付適正意見とした理由(同号ロ)
不適正意見 監査の対象となった計算関係書類が不適正である旨およびその理由(同号ハ)

監査範囲の制約などによって意見を表明できない場合には、意見に代えてその旨とその理由を記載します(会社計算規則 第126条第1項第3号)。この場合、後述する定時株主総会の承認特則の要件を満たさなくなるため、計算書類の確定手続にも影響が及びます。

追記情報として記載する事項

追記情報とは、会計監査人の判断に関して説明を付す必要がある事項、または計算関係書類の内容のうち強調する必要がある事項をいい、会計方針の変更・重要な偶発事象・重要な後発事象が例示されています(会社計算規則 第126条第2項)。例示は限定列挙ではないため、これら以外でも該当する事項があれば記載します。

実務では、重要な後発事象の把握が期末後の限られた期間に集中します。取締役会の議事録や重要な契約書のドラフトなど、期末後に発生した事象を追いかける資料の提出が遅れると、追記情報の検討が終わらず報告書の作成日が後ろ倒しになります。

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監査役等の監査報告の記載事項

監査役等の監査報告は、会計監査人を置いているかどうかで記載事項が大きく変わります。会計監査人設置会社では会計監査人の監査の相当性が中心となり、非設置会社では監査役自身が計算関係書類の適正性について意見を述べます。

会計監査人設置会社の監査役の監査報告

会計監査人設置会社の監査役は、計算関係書類および会計監査報告を受領したときに、次の事項を内容とする監査報告を作成します(会社計算規則 第127条)。監査役会設置会社の監査役が作成する監査報告では、このうち第1号から第5号までの事項が内容となります。

監査の方法および
その内容
監査役が実施した監査の方法とその内容(会社計算規則 第127条第1号)
会計監査人の監査の
相当性に関する事項
会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認めたときは、その旨およびその理由(同条第2号)
重要な後発事象 会計監査報告の内容となっているものを除く重要な後発事象(同条第3号)
会計監査人の職務遂行の
適正確保体制
会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項(同条第4号)
調査ができなかった
場合のその旨と理由
監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨およびその理由(同条第5号)
監査報告を作成した日 監査報告を作成した日(同条第6号)

第2号は「相当でないと認めたとき」に記載する事項です。相当と認める場合に何も書かないのでは報告として成り立たないため、実務上は「会計監査人の監査の方法および結果は相当であると認めます」という趣旨の記載を置くのが一般的です。

第4号の体制に関する事項は、会計監査人から通知を受けた情報を踏まえて判断します。会計監査人は、会計監査報告の内容を特定監査役に通知する際に、独立性に関する事項その他監査に関する法令および規程の遵守に関する事項、監査契約の受任および継続の方針に関する事項、職務の遂行が適正に行われることを確保するための体制に関するその他の事項を通知しなければなりません(会社計算規則 第131条)。

会計監査人非設置会社の監査役の監査報告

会計監査人を置いていない会社の監査役は、計算関係書類を受領したときに、次の事項を内容とする監査報告を作成します(会社計算規則 第122条第1項)。監査役会設置会社の監査役の監査報告では、このうち第1号から第4号までが内容となります。

監査の方法および
その内容
監査役が実施した監査の方法とその内容(会社計算規則 第122条第1項第1号)
適正表示に関する意見 計算関係書類が財産および損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見(同項第2号)
調査ができなかった
場合のその旨と理由
監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨およびその理由(同項第3号)
追記情報 監査役の判断に関して説明を付す必要がある事項等(同項第4号)
監査報告を作成した日 監査報告を作成した日(同項第5号)

会計監査人設置会社の監査役の監査報告には適正表示に関する意見が含まれないのに対し、非設置会社では監査役自身が意見を述べる点が決定的な違いです。会計監査人を新たに選任した年度に、前年度の様式をそのまま流用して意見を書いてしまう誤りが起こりやすいため、選任初年度は様式の切り替えを必ず確認します。

監査役会・監査等委員会・監査委員会の監査報告

監査役会設置会社では、各監査役が作成した監査報告に基づいて監査役会の監査報告を作成します。会計監査人設置会社の監査役会の監査報告には、監査役および監査役会の監査の方法およびその内容、会社計算規則 第127条第2号から第5号までの事項、監査役会監査報告を作成した日を記載します(会社計算規則 第128条第2項)。会計監査人非設置会社の監査役会の場合は、同規則 第123条第2項が同様の内容を定めています。

監査役会が監査役会監査報告を作成するときは、1回以上、会議の開催または同時に意見交換できる方法により内容を審議しなければなりません(会社計算規則 第128条第3項)。書面の持ち回りだけで済ませることはできない点に注意が必要です。また、監査役会監査報告の内容が各監査役の監査報告の内容と異なる場合には、各監査役の監査報告の内容を付記することができます(同条第2項後段)。

監査等委員会設置会社では監査等委員会が、指名委員会等設置会社では監査委員会が監査報告を作成し、いずれも監査委員会等の監査の方法およびその内容、会社計算規則 第127条第2号から第5号までの事項、作成日を内容とします(会社計算規則 第128条の2第1項、第129条第1項)。これらの監査報告の内容は、監査等委員会または監査委員会の決議をもって定めます(会社計算規則 第128条の2第2項、第129条第2項)。

監査報告の通知期限

記載事項と並んで実務上重要なのが通知期限です。会社計算規則は、会計監査報告と監査役等の監査報告のそれぞれについて、いつまでに誰へ内容を通知するかを定めています。

会計監査報告の通知期限

会計監査人は、次の日までに特定監査役および特定取締役に対して会計監査報告の内容を通知しなければなりません(会社計算規則 第130条第1項)。

各事業年度に係る
計算書類および附属明細書
計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日、附属明細書を受領した日から1週間を経過した日、特定取締役・特定監査役・会計監査人が合意により定めた日のうち、いずれか遅い日(会社計算規則 第130条第1項第1号)
臨時計算書類 臨時計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日と、三者の合意により定めた日のうち、いずれか遅い日(同項第2号)
連結計算書類 連結計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日(三者の合意により定めた日があるときはその日)(同項第3号)

ここでの「合意により定めた日」は、実務上きわめて重要な調整弁です。定時株主総会の日程から逆算すると4週間の法定期間では間に合わない場合が多く、あらかじめ三者で監査報告の通知日を合意しておくことで、決算スケジュールを現実的な形に組み立てられます。合意は書面で残し、監査契約や監査計画の説明資料に日程を明記しておくと後の確認が容易になります。

監査役等の監査報告の通知期限

会計監査人設置会社の特定監査役は、連結計算書類以外の計算関係書類についての監査報告であれば、会計監査報告を受領した日から1週間を経過した日と、特定取締役および特定監査役の間で合意により定めた日のうち、いずれか遅い日までに、特定取締役および会計監査人へ監査報告の内容を通知します(会社計算規則 第132条第1項第1号)。連結計算書類についての監査報告も、会計監査報告を受領した日から1週間を経過した日が原則です(同項第2号)。

会計監査人を置いていない会社では、特定監査役が、計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日、附属明細書を受領した日から1週間を経過した日、特定取締役および特定監査役が合意により定めた日のうち、いずれか遅い日までに、特定取締役へ監査報告の内容を通知します(会社計算規則 第124条第1項第1号)。

なお、通知の相手方となる特定取締役・特定監査役は、あらかじめ定めがあればその者、定めがなければ計算関係書類の作成に関する職務を行った取締役や全ての監査役といった形で決まります(会社計算規則 第130条第4項、第130条第5項)。誰が特定監査役かを決めていない会社では全ての監査役が対象となるため、監査役会や取締役会の決議であらかじめ特定しておくと通知の実務が簡潔になります。

期限までに通知しない場合のみなし規定

計算関係書類は、特定監査役および特定取締役が会計監査報告の内容の通知を受けた日に会計監査人の監査を受けたものとされます(会社計算規則 第130条第2項)。監査役等の監査についても、特定取締役および会計監査人が監査報告の内容の通知を受けた日に監査を受けたものとされます(会社計算規則 第132条第2項)。

期限までに通知がされなかった場合には、通知をすべき日に監査を受けたものとみなされます(会社計算規則 第130条第3項、第132条第3項)。手続としては先へ進みますが、会計監査報告を受領しないまま監査報告を作成することになり、監査役等の監査報告には会計監査報告を受領していない旨を記載しなければなりません(会社計算規則 第127条第2号)。さらに、後述する定時株主総会の承認特則の要件からも外れます(会社計算規則 第135条第4号)。

つまり、みなし規定は救済措置ではなく、記載事項の追加と承認手続の変更を伴う例外的な帰結です。監査報告の通知が遅れそうな場合は、合意による期日の設定を早期に検討することが実務的な対応となります。

計算書類が確定するまでの実務スケジュール

監査報告の記載事項と通知期限は、計算書類の確定手続の一部として機能します。決算日から定時株主総会までの流れの中で位置づけると、期限の意味が理解しやすくなります。

決算日から定時株主総会までの流れ

  1. 取締役が計算書類・事業報告およびこれらの附属明細書を作成します(会社法 第435条第2項)。
  2. 計算関係書類を会計監査人へ提供するときは、監査役等に対しても同じ書類を提供します(会社計算規則 第125条)。
  3. 会計監査人が会計監査報告の内容を特定監査役および特定取締役へ通知します(会社計算規則 第130条第1項)。この通知に際して、職務の遂行に関する事項も併せて通知します(会社計算規則 第131条)。
  4. 監査役等が監査報告を作成し、特定取締役および会計監査人へ内容を通知します(会社計算規則 第132条第1項)。
  5. 取締役会設置会社では、監査を受けた計算書類・事業報告および附属明細書について取締役会の承認を受けます(会社法 第436条第3項)。
  6. 定時株主総会の招集通知に際して、承認を受けた計算書類・事業報告に監査報告または会計監査報告を含めて株主へ提供します(会社法 第437条、会社計算規則 第133条第1項)。
  7. 計算書類等を、定時株主総会の日の2週間前の日(取締役会設置会社以外は1週間前の日)から5年間、本店に備え置きます(会社法 第442条第1項第1号)。
  8. 定時株主総会に計算書類および事業報告を提出または提供し、計算書類は承認を受け、事業報告は内容を報告します(会社法 第438条第1項、第438条第2項、第438条第3項)。
  9. 定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社は貸借対照表および損益計算書)を公告します(会社法 第440条第1項)。

この流れのうち、会計監査報告の通知から取締役会の承認までがもっとも過密になります。会計監査報告の通知日を起点に監査役等の監査報告まで1週間を要するため、取締役会の開催日から逆算して各期日を設計することが欠かせません。

定時株主総会の承認特則

会計監査人設置会社では、取締役会の承認を受けた計算書類が法令および定款に従い財産および損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合、定時株主総会の承認は不要となり、取締役が計算書類の内容を報告すれば足ります(会社法 第439条)。

その要件は会社計算規則 第135条に定められており、次のすべてに該当することが必要です。

会計監査報告の内容 会計監査報告の内容に無限定適正意見に相当する事項が含まれていること(会社計算規則 第135条第1号)
監査役等の監査報告の
内容
会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認める意見がないこと(同条第2号)
付記された意見 監査役会・監査等委員会・監査委員会の監査報告に付記された内容が、上記の相当でないと認める意見でないこと(同条第3号)
みなし監査に
該当しないこと
計算関係書類が会社計算規則 第132条第3項の規定により監査を受けたものとみなされたものでないこと(同条第4号)
取締役会の設置 取締役会を設置していること(同条第5号)

監査意見が限定付適正意見や不適正意見となった場合、あるいは通知期限を徒過してみなし監査となった場合には、この特則が使えず定時株主総会の承認決議が必要になります。招集通知の議案構成が変わるため、監査意見の見通しは早い段階で共有しておく必要があります。

記載事項をめぐる実務上の留意点

条文を満たしているつもりでも、実務では次のような点が指摘されがちです。いずれも、書類が完成してからでは修正の余地が小さいものばかりです。

作成日の記載漏れ 会計監査報告・監査報告のいずれも作成した日が法定の記載事項です(会社計算規則 第126条第1項第7号、第127条第6号)。日付欄を空欄のまま回付しない運用にします
機関設計変更後の
様式の流用
会計監査人の新規選任や監査等委員会設置会社への移行があった年度は、適用される条文が変わります。前年度の様式をそのまま使わず記載事項から確認します
監査役会の審議の
記録
監査役会監査報告は1回以上の審議が必要です(会社計算規則 第128条第3項)。監査役会議事録に審議の事実を残します
合意による期日設定の
不備
4週間・1週間の法定期間で間に合わない場合は、事前に三者または二者の合意で期日を定めます(会社計算規則 第130条第1項第1号、第132条第1項第1号)
連結計算書類の
失念
大会社かつ有価証券報告書提出会社は連結計算書類の作成義務があり、監査と報告も必要です(会社法 第444条第3項、第444条第4項)

上場準備の局面では、監査法人による会社法監査が初年度となる会社が多く、監査報告の様式と決算日程を同時に整えることになります。監査契約の締結時点で、会計監査報告の通知日と監査役等の監査報告の通知日を合意しておくと、初年度から無理のないスケジュールを組めます。

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まとめ

会社法監査における監査報告は、会計監査人が作成する会計監査報告と、監査役等が作成する監査報告の2種類に分かれます。会計監査報告の記載事項は会社計算規則 第126条第1項に7項目が定められ、監査意見の種類ごとに書くべき内容も具体化されています。監査役等の監査報告は、会計監査人設置会社では会社計算規則 第127条、非設置会社では同規則 第122条第1項が適用され、適正表示に関する意見を述べるかどうかが分かれ目となります。

通知期限は、会計監査報告が計算書類の全部を受領した日から4週間、監査役等の監査報告が会計監査報告を受領した日から1週間が原則で、いずれも当事者の合意による期日設定が認められています。期限までに通知しないと監査を受けたものとみなされ、定時株主総会の承認特則が使えなくなるなど、確定手続に影響が及びます。

記載事項も期限も条文に沿って形式的に定まる一方、実際の運用は機関設計や決算日程によって変わります。自社の機関設計に応じた具体的なケースは、公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

会計監査報告と監査報告書は同じものですか。

会社法上の正式な呼称は、会計監査人が作成するものが会計監査報告、監査役等が作成するものが監査報告です(会社法 第396条第1項、会社計算規則 第122条第1項)。実務では両者をまとめて監査報告書と呼ぶことがありますが、記載事項を定める条文はそれぞれ異なるため、書類を準備する際は区別して確認します。

監査役の監査報告に監査意見を書く必要はありますか。

会計監査人を置いていない会社の監査役は、計算関係書類が財産および損益の状況を適正に表示しているかどうかについての意見を記載します(会社計算規則 第122条第1項第2号)。一方、会計監査人設置会社の監査役の監査報告にはこの意見は含まれず、会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認めたときにその旨と理由を記載します(会社計算規則 第127条第2号)。

会計監査報告の通知期限を合意で延ばすことはできますか。

各事業年度に係る計算書類および附属明細書についての会計監査報告は、法定の期間と、特定取締役・特定監査役・会計監査人の三者が合意により定めた日のうち、いずれか遅い日までに通知します(会社計算規則 第130条第1項第1号)。合意により法定期間より後の日を定めることができるため、決算日程に合わせた調整が可能です。

通知期限までに監査報告の内容が通知されないとどうなりますか。

通知をすべき日に、計算関係書類について監査を受けたものとみなされます(会社計算規則 第130条第3項、第132条第3項)。この場合、監査役等の監査報告には会計監査報告を受領していない旨を記載する必要があり(会社計算規則 第127条第2号)、定時株主総会の承認を要しない特則の要件も満たさなくなります(会社計算規則 第135条第4号)。

監査報告は株主へ提供する必要がありますか。

取締役会設置会社では、定時株主総会の招集通知に際して、取締役会の承認を受けた計算書類および事業報告を株主へ提供します。監査役の監査または会計監査人の監査を受けている場合は、監査報告または会計監査報告も併せて提供の対象となります(会社法 第437条、会社計算規則 第133条第1項)。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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