税率変更時の繰延税金資産の再計算【計算例】差額の計上区分
目次
- 税率変更時に繰延税金資産・繰延税金負債を再計算する理由
- 再計算に用いる税率と判定の時点
- 再計算の対象から除かれるもの
- 修正差額の計上区分|法人税等調整額とその他の包括利益の振り分け
- 【計算例】税率変更があった期の再計算と仕訳
- 損益に計上した一時差異に係る再計算
- 純資産に直接計上した評価差額に係る再計算
- 再計算の全体像を検算する
- 防衛特別法人税の創設と実務対応報告第48号
- 関連する会計基準の改正の経緯
- 実務上の留意点|注記と決算日後の税率変更
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 税率変更による修正差額は、どの年度の損益に計上しますか。
- その他有価証券評価差額金に係る修正差額を法人税等調整額に計上してしまった場合、どのような影響がありますか。
- 資本連結時に子会社の資産・負債を時価評価して計上した繰延税金負債は、子会社の税率が変更された場合にどう処理しますか。
- 未実現利益の消去に係る繰延税金資産も再計算が必要ですか。
- 決算日の翌日に税率変更を伴う法律が成立した場合、期末の繰延税金資産は新税率で計算し直す必要がありますか。
- 防衛特別法人税は法定実効税率にどう反映しますか。
税率変更時の繰延税金資産・繰延税金負債の再計算とは、税法の改正によって回収または支払が見込まれる期の税率が変わったときに、過年度に計上済みの繰延税金資産および繰延税金負債を新たな税率で計算し直す手続です。再計算によって生じた修正差額は、原則として税率が変更された年度に法人税等調整額を相手勘定として計上します(税効果会計に係る会計基準注解 (注6)(注7)、税効果会計に係る会計基準の適用指針 第51項)。
ただし、その他有価証券の評価差額金のように評価差額等を直接純資産の部に計上している項目については、修正差額を法人税等調整額ではなく評価・換算差額等またはその他の包括利益に振り替えます。この振り分けを誤ると、税引前当期純利益と法人税等の対応関係が崩れ、税効果会計の注記における差異分析も合わなくなります。
防衛特別法人税の創設により、2026年4月1日以後に開始する事業年度から法人税に対する付加税が課されることとなりました。これに伴い法定実効税率が変動する企業では、税率変更時の再計算と差額の計上区分が決算実務上の論点になります。本記事では、用いる税率と再計算の時点、差額の振り先、そして自社作例による計算例と仕訳を整理します。
税率変更時に繰延税金資産・繰延税金負債を再計算する理由
税効果会計は資産負債法によっており、繰延税金資産または繰延税金負債の金額は、回収または支払が行われると見込まれる期の税率に基づいて計算します(税効果会計に係る会計基準 第二 二 2、税効果会計に係る会計基準の適用指針 第45項)。将来の税率が変われば、将来の減額税金・増額税金の見積額も変わるため、計上済みの残高を据え置くことはできません。
この点について、法人税等について税率の変更があった場合には、過年度に計上された繰延税金資産および繰延税金負債を新たな税率に基づき再計算するものとされています(税効果会計に係る会計基準注解 (注6))。再計算は一時差異そのものを変えるのではなく、一時差異に乗じる税率だけを入れ替える手続です。
再計算に用いる税率と判定の時点
繰延税金資産および繰延税金負債の額は、決算日において国会で成立している税法に規定されている方法に基づいて計算します。ここでいう決算日において国会で成立している税法とは、決算日以前に成立した税法を改正するための法律を反映した後の税法をいいます(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第44項)。
税率については、国税と地方税で判定の道筋が分かれます。法人税などの国税に係る税率は、決算日において国会で成立している法人税法等に規定されている税率によります(同適用指針 第46項)。住民税(法人税割)や事業税(所得割)などの地方税に係る税率は、決算日において国会で成立している地方税法等に基づく税率によります(同適用指針 第47項)。
地方税については、地方税法等を改正する法律が成立していても、それを受けた改正条例が決算日以前に各地方公共団体の議会等で成立しているかどうかで用いる税率が変わります。改正条例が未成立で、かつ決算日において成立している条例が超過課税による税率で課税することを規定しているときは、改正地方税法等の標準税率に、従前の超過課税による税率が改正直前の標準税率を超える差分を考慮した税率を用います(同適用指針 第48項(2)②、第49項)。
| 判定の基準日 | 決算日(連結財務諸表で子会社の決算日が異なる場合は、決算手続の方法に応じて連結決算日または子会社の決算日に読み替えます) |
|---|---|
| 国税に用いる税率 | 決算日において国会で成立している法人税法等に規定されている税率 |
| 地方税に用いる税率 | 決算日において国会で成立している地方税法等に基づく税率。改正条例の成立状況により標準税率・超過課税による税率・差分を考慮する税率のいずれかを用いる |
| 決算日後に 成立した改正 |
当該決算日の財務諸表には反映せず、その内容および影響を注記する |
子会社の決算日が連結決算日と異なる場合は、連結決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続により決算を行うときは第44項から第49項の「決算日」を「連結決算日」と、子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行うときは「子会社の決算日」と読み替えます(同適用指針 第50項)。
再計算の対象から除かれるもの
すべての繰延税金資産・繰延税金負債が再計算の対象になるわけではありません。未実現損益の消去に係る繰延税金資産または繰延税金負債の額については、税法の改正に伴い税率等が変更されても修正しません(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第56項)。連結会社間取引の未実現損益に係る税効果は、売却元の売却年度の税率で固定する取扱いが維持されているためです。
また、税率以外の納付税額の計算方法が変更されたことにより繰延税金資産および繰延税金負債の額が修正された場合も、税率変更の場合と同様に処理します(同適用指針 第53項)。税率の数値が動いたかどうかだけでなく、課税標準の算定方法の改正も再計算の契機になる点に注意が必要です。
関連コラム法定実効税率の計算方法|算式と標準税率・防衛特別法人税の反映▸
修正差額の計上区分|法人税等調整額とその他の包括利益の振り分け
税率変更時の実務でもっとも間違えやすいのが、再計算で生じた修正差額をどこに計上するかです。繰延税金資産および繰延税金負債の計算に用いる税法の改正に伴い税率が変更されたこと等により繰延税金資産および繰延税金負債の額が修正された場合、一定の例外を除き、当該修正差額を当該税率が変更された年度において法人税等調整額を相手勘定として計上します(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第51項)。
例外は3つで、いずれも「もともとの一時差異の相手勘定が損益ではない」ものです(同適用指針 第51項(1)から(3))。期中の通常の税効果の計上でも同じ振り分けが採られており(同適用指針 第9項)、税率変更時の修正差額はその延長線上にあると理解すると整理しやすくなります。
| 修正差額の対象となる一時差異 | 相手勘定 |
|---|---|
| 原則(損益に計上された収益・費用の帰属年度の相違等に係る一時差異) | 法人税等調整額 |
| 評価差額等を直接純資産の部に計上する場合(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、土地再評価差額金など) | 純資産の部の評価・換算差額等 |
| 評価差額等をその他の包括利益で認識したうえで、その他の包括利益累計額に計上する場合 | その他の包括利益 |
| 連結財務諸表において、子会社に対する投資に係る親会社の持分変動による差額を直接資本剰余金に計上する場合 | 資本剰余金 |
| 子会社の資産および負債の時価評価により生じた評価差額に係る一時差異(子会社において税率が変更された場合) | 法人税等調整額 |
表の最後の行は誤りやすい論点です。資本連結時に評価差額から控除して計上した繰延税金資産・繰延税金負債であっても、その後に子会社において税率が変更されたことによる修正差額は、当該税率が変更された連結会計年度において法人税等調整額を相手勘定として計上します(同適用指針 第52項)。取得時の評価差額に戻して処理するのではない点を押さえておく必要があります。
土地再評価差額金に係る繰延税金資産または繰延税金負債の額が税法改正により修正された場合は、第51項(1)または(2)に従い、純資産の部の評価・換算差額等(土地再評価差額金)またはその他の包括利益を相手勘定として計上します(同適用指針 第54項)。租税特別措置法上の諸準備金等に係る繰延税金負債の額が修正された場合は、法人税等調整額を相手勘定として処理するとともに、同額の諸準備金等を計上または取り崩します(同適用指針 第55項)。
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【計算例】税率変更があった期の再計算と仕訳
ここからは自社作例により、税率変更があった期の再計算を数値で確認します。前提は次のとおりです。金額の単位は千円、決算日は2026年3月31日、当社は連結財務諸表を作成しておらず個別財務諸表のみを対象とします。改正前の法定実効税率を30.6%、改正後(決算日において成立している税法に基づく税率)を31.5%と仮定します。実際の税率は納税主体の所在地や超過課税の適用状況により異なります。
一時差異は次の2つだけとします。①賞与引当金に係る将来減算一時差異100,000千円(損益を通じて計上したもの)、②その他有価証券の評価差額(評価益)50,000千円に係る将来加算一時差異(全部純資産直入法により、評価差額を直接純資産の部に計上しているもの)。いずれも解消見込年度は改正後の税率が適用される事業年度であり、繰延税金資産の回収可能性には問題がないものとします。
損益に計上した一時差異に係る再計算
賞与引当金に係る将来減算一時差異について、改正前後の繰延税金資産を算定します。
この一時差異は損益に計上された費用の帰属年度の相違から生じたものであり、第51項(1)から(3)の例外に該当しません。したがって修正差額900千円は、税率が変更された年度において法人税等調整額を相手勘定として計上します(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第51項)。単位は千円です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 900 | 法人税等調整額 | 900 |
損益計算書では法人税等調整額が900千円のマイナス(税負担の減少)として表示され、当期純利益が同額増加します。税率が引き下げられる改正であれば、逆に繰延税金資産が減少し法人税等調整額が増加します。
純資産に直接計上した評価差額に係る再計算
その他有価証券の評価差額に係る一時差異については、繰延税金資産または繰延税金負債を純資産の部の評価・換算差額等を相手勘定として計上します(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第11項、第9項(1))。税率変更による修正差額も同じ区分に計上します(同適用指針 第51項(1))。
繰延税金負債が450千円増加し、その相手勘定はその他有価証券評価差額金です。法人税等調整額は動きません。単位は千円です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| その他有価証券評価差額金 | 450 | 繰延税金負債 | 450 |
その他の包括利益を経由して純資産の部のその他の包括利益累計額に計上する連結財務諸表では、相手勘定はその他の包括利益となります(同適用指針 第51項(2))。個別財務諸表では評価・換算差額等、連結財務諸表ではその他の包括利益と、表示の場所が異なる点に留意してください。
再計算の全体像を検算する
2つの一時差異を合算すると、税率変更による影響は次のとおり整理できます。単位は千円です。
| 繰延税金資産の増加額 | 900(賞与引当金に係る将来減算一時差異) |
|---|---|
| 繰延税金負債の増加額 | 450(その他有価証券の評価差額に係る将来加算一時差異) |
| 法人税等調整額への影響 | 900の減少(利益の増加) |
| その他有価証券 評価差額金への影響 |
450の減少 |
| 純資産合計への影響 | 450の増加(900の利益増加と450の評価差額金減少の差額) |
検算のポイントは、繰延税金資産・繰延税金負債の増減額の合計と、法人税等調整額・評価・換算差額等・資本剰余金への計上額の合計が一致することです。再計算の作業をワークシート上で行う場合は、一時差異の一覧に「損益区分」「純資産直入区分」の列を設け、区分ごとに税率を乗じて差額を集計する手順にしておくと、振り分けの誤りを機械的に防げます。
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防衛特別法人税の創設と実務対応報告第48号
2025年3月31日に公布された「所得税法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第13号)により「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」が改正され、防衛特別法人税が創設されました。これに伴い、2026年4月1日以後開始する事業年度から、法人税・地方法人税に加えて防衛特別法人税の申告・納付が必要となります。
防衛特別法人税は、法人税額から基礎控除額を控除した額を課税標準として課されるため、法人税に対する付加税という点で地方法人税と共通の性質を有すると整理されています(防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い BC7項)。この性質を踏まえ、企業会計基準委員会は実務対応報告第48号を公表し、次の取扱いを定めました。
| 当期税金の会計処理 | 地方法人税と同様に行うものとして、法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準の定めに従う(第7項) |
|---|---|
| 繰延税金資産・負債の 計算に用いる税率 |
地方法人税と同様に取り扱うものとして、税効果会計に係る会計基準の適用指針 第46項の定めに従う(第8項) |
| 法定実効税率 | 地方法人税率と同様に防衛特別法人税率を考慮して算定する(第9項) |
| 表示 | 地方法人税と同様に行うものとして、法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準の定めに従う(第13項) |
実務対応報告第48号は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されています(同実務対応報告 第18項)。したがって3月決算の企業では、2027年3月期がその適用初年度にあたります。
再計算の時点は、実務対応報告第48号の適用時期ではなく、改正税法が国会で成立した時期によって決まります。改正税法は2025年3月31日に成立しているため(同実務対応報告 第1項、BC2項)、繰延税金資産および繰延税金負債の計算に用いる税率の判定では、それ以後に到来する決算日から、防衛特別法人税を考慮した税率を用いることになります(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第44項、第46項)。解消見込年度が2026年4月1日以後開始する事業年度となる一時差異が、再計算の影響を受けます。
関連する会計基準の改正の経緯
税効果会計に係る会計基準の適用指針は、2018年の公表後、複数回の改正を経ています。2022年改正では税金費用の計上区分およびグループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果について改正が行われ、2024年改正では子会社株式を配当する場合の会計処理に関する改正を受けた対応が、2025年改正では特別法人事業税(基準法人所得割)の取扱いの明確化が行われました(同適用指針 第73-2項から第73-4項)。
直近の2026年改正では、法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準において適用対象となる税金の定め方が見直されたことなどを受け、法定実効税率の定義に関して具体的な税金の名称を使用した算式を削除し、定義を見直しています(同適用指針 第73-5項、第74-3項)。この2026年改正適用指針の適用時期は2026年改正法人税等会計基準と同様であり、2028年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます。ただし、2026年改正会計基準を公表した日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から早期適用することができます(同適用指針 第65-6項、法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準 第20-7項)。
なお、2026年改正法人税等会計基準の適用により、実務対応報告第48号の適用は終了することとされています(法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準 第21-2項)。防衛特別法人税の取扱いが実務対応報告から本体の会計基準へ吸収される形になるため、適用時期の管理が必要です。
実務上の留意点|注記と決算日後の税率変更
税率の変更により繰延税金資産および繰延税金負債の金額が修正されたときは、その旨および修正額を注記しなければなりません(税効果会計に係る会計基準 第四 3.)。金額的重要性の判断に迷う場合でも、税率変更という事象自体が財務諸表利用者の関心事であるため、修正額を把握したうえで注記の要否を検討する流れが安全です。
決算日後に税率が変更された場合は、当該変更された税率により計算した繰延税金資産および繰延税金負債の額を、当該決算日における財務諸表に反映しません。その代わりに、その内容および影響を注記します(税効果会計に係る会計基準 第四 4.、税効果会計に係る会計基準の適用指針 第64項)。税率の変更は修正後発事象としては取り扱わない、という整理です(同適用指針 第157項、第158項)。
この取扱いが選ばれた背景には、決算発表日や財務諸表の公表の承認日の直前に税率の変更を伴う法律または条例が成立した場合に実務上の手続が煩雑になること、また既存の会計基準でも見積計算に用いる情報は期末日現在のものが用いられていることが挙げられています(同適用指針 第157項)。なお、改正地方税法等が決算日以前に成立し、決算日後に改正条例が成立して超過課税による税率が変更された場合については、差分を考慮する税率により計算されていることから重要性は乏しいと考えられ、注記の対象に含めないこととされています(同適用指針 第158項)。
実務上のチェックポイントとしては、次の3点を決算スケジュールに組み込んでおくことが有効です。第一に、決算日時点で成立している税法と条例を一覧化し、税率の判定根拠を文書化すること。第二に、一時差異の解消スケジュールを年度別に並べ、どの年度の一時差異にどの税率を乗じるかを明示すること。第三に、修正差額の計上区分を一時差異ごとに事前に決めておき、決算作業で振り分けを迷わない状態にしておくことです。
とくに上場準備企業では、監査対応の過程で税率の判定根拠と再計算の証跡を求められます。自社の一時差異の構成や納税主体の状況によって論点は変わりますので、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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まとめ
税率変更時の繰延税金資産・繰延税金負債の再計算は、用いる税率の判定と修正差額の計上区分という2つの論点に分解できます。用いる税率は、決算日において国会で成立している税法に規定されている税率であり、地方税については改正条例の成立状況によって標準税率・超過課税による税率・差分を考慮する税率を使い分けます(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第44項、第46項から第49項)。
修正差額は、原則として税率が変更された年度に法人税等調整額を相手勘定として計上し、評価差額等を直接純資産の部に計上している場合は評価・換算差額等またはその他の包括利益、親会社の持分変動による差額に係るものは資本剰余金を相手勘定とします(同適用指針 第51項)。子会社の時価評価差額に係る修正差額は法人税等調整額、未実現損益の消去に係るものは修正しないという2つの例外も押さえておきましょう(同適用指針 第52項、第56項)。
防衛特別法人税の創設により、2026年4月1日以後開始する事業年度から法人税に対する付加税が課されます。実務対応報告第48号は2026年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されており、繰延税金資産および繰延税金負債の計算に用いる税率は地方法人税と同様に取り扱われます(実務対応報告第48号 第8項、第18項)。再計算の対象となる一時差異を洗い出し、計上区分ごとに集計する体制を決算前に整えておくことが実務対応の要点です。
参考文献
- 企業会計審議会 税効果会計に係る会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第28号 税効果会計に係る会計基準の適用指針
- 企業会計基準委員会 実務対応報告第48号 防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第27号 法人税等に関する会計基準
- 国税庁 防衛特別法人税に関する納付手続等について
よくある質問
税率変更による修正差額は、どの年度の損益に計上しますか。
税率が変更された年度に計上します。過年度に遡って修正するのではなく、変更後の税率で計算し直した残高と従前の残高との差額を、当該年度の法人税等調整額として計上します(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第51項)。
その他有価証券評価差額金に係る修正差額を法人税等調整額に計上してしまった場合、どのような影響がありますか。
税引前当期純利益と法人税等の対応関係が崩れ、その他有価証券評価差額金の残高も誤ることになります。評価差額等を直接純資産の部に計上している場合の修正差額は、純資産の部の評価・換算差額等を相手勘定として計上します(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第51項(1))。連結財務諸表でその他の包括利益を経由している場合は、その他の包括利益が相手勘定となります(同適用指針 第51項(2))。
資本連結時に子会社の資産・負債を時価評価して計上した繰延税金負債は、子会社の税率が変更された場合にどう処理しますか。
取得時の評価差額に戻すのではなく、当該税率が変更された連結会計年度において法人税等調整額を相手勘定として計上します(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第52項)。
未実現利益の消去に係る繰延税金資産も再計算が必要ですか。
必要ありません。未実現損益の消去に係る繰延税金資産または繰延税金負債の額については、税法の改正に伴い税率等が変更されても修正しないこととされています(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第56項)。
決算日の翌日に税率変更を伴う法律が成立した場合、期末の繰延税金資産は新税率で計算し直す必要がありますか。
計算し直しません。決算日後に税率が変更された場合、当該変更された税率により計算した繰延税金資産および繰延税金負債の額は当該決算日における財務諸表に反映せず、その内容および影響を注記します(税効果会計に係る会計基準 第四 4.、税効果会計に係る会計基準の適用指針 第64項)。
防衛特別法人税は法定実効税率にどう反映しますか。
地方法人税率と同様に、防衛特別法人税率を考慮して法定実効税率を算定します(実務対応報告第48号 第9項)。また、繰延税金資産および繰延税金負債の計算に用いる税率についても、地方法人税と同様に取り扱うものとされています(同実務対応報告 第8項)。
お問い合わせはこちら本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。


