使用権資産と償却資産申告【判定表】リース資産の固定資産税の申告者
目次
- 会計上の計上と固定資産税の納税義務者は別の物差し
- 使用権資産の定義と貸借対照表での表示
- 固定資産税は所有者に課される
- 償却資産申告の基本ルール
- 判定表|借手・貸手と契約類型別の申告区分
- 借手側の判定表
- 貸手側の判定表
- 会計の「所有権移転」区分と法的所有権のずれ
- リース料に含まれる固定資産税相当額の会計処理
- 申告前に確認したい5つのポイント
- 新リース会計基準の適用時期
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 使用権資産を計上したら、償却資産申告に載せる必要がありますか?
- 所有権移転条項のあるリースは、借手が申告するのですか?
- 少額リースとして費用処理しているリース物件はどうなりますか?
- 新リース会計基準はいつから適用されますか?
新リース会計基準の適用で、借手はオペレーティング・リースを含むほぼすべてのリースについて使用権資産を貸借対照表に計上します。そこで経理の現場から多く聞かれるのが、「使用権資産も毎年1月の償却資産申告に載せる必要があるのか」という疑問です。
結論から言えば、使用権資産を計上したことだけを理由に、借手が固定資産税(償却資産)の申告者になるわけではありません。固定資産税は固定資産の所有者に課される税であり、会計上どちらの貸借対照表に資産が載るかとは別の物差しで判定されるためです(地方税法 第343条第1項・第3項)。本記事では、借手・貸手の立場と契約類型ごとに、償却資産申告の区分を判定表で整理します。
会計上の計上と固定資産税の納税義務者は別の物差し
最初に押さえたいのは、会計基準と地方税法が「資産」を判断する視点の違いです。会計は経済的な実質を、固定資産税は法的な所有関係と課税台帳への登録を基準にしています。
使用権資産の定義と貸借対照表での表示
使用権資産とは、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産をいいます(リースに関する会計基準 第10項)。借手はリース開始日にリース負債を計上し、これにリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用等を加減した額で使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。
表示は、原資産を自ら所有していたと仮定した場合の科目に含める方法と、有形固定資産・無形固定資産等の区分の中で「使用権資産」として区分する方法のいずれかによります(リースに関する会計基準 第49項)。どちらの方法でも、計上しているのは「使う権利」であり、原資産そのものの所有権が借手に移るわけではない点が出発点になります。
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固定資産税は所有者に課される
固定資産税は、固定資産の所有者に課されます(地方税法 第343条第1項)。償却資産についての「所有者」とは、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者をいいます(地方税法 第343条第3項)。
課税対象となる償却資産は、土地・家屋以外の事業の用に供することができる資産で、その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の所得の計算上、損金又は必要な経費に算入されるものです(地方税法 第341条第4号)。会計基準の「使用権資産」という区分は、地方税法のこれらの定めには登場しません。申告の要否は、あくまで原資産の法的な所有者は誰か、という観点から考えることになります。
償却資産申告の基本ルール
判定表に入る前に、償却資産申告の骨格を確認しておきます。リース資産の申告区分を考える際にも、賦課期日や少額資産の除外は前提として効いてきます。
| 賦課期日 | 当該年度の初日の属する年の1月1日(地方税法 第359条) |
|---|---|
| 申告期限と申告先 | 毎年1月1日現在の償却資産について、1月31日までに所在地の市町村長へ申告(地方税法 第383条) |
| 課税対象から 除かれる主な資産 |
鉱業権・漁業権・特許権その他の無形減価償却資産、自動車税・軽自動車税の課税客体である自動車等(地方税法 第341条第4号) |
| 少額資産の除外 | 法人税法施行令の少額減価償却資産・一括償却資産の規定で取得価額の全部又は一部が損金算入される資産は除外。リース資産は、所有者が取得した際の取得価額が20万円未満のものが除外対象(地方税法施行令 第49条) |
| 免税点 | 同一の者が同一市町村内に所有する償却資産の課税標準額が150万円未満なら原則として課税されない(地方税法 第351条) |
| 標準税率 | 1.4%(地方税法 第350条第1項) |
注目したいのは、地方税法施行令第49条ただし書です。リース資産(法人税法第64条の2第1項に規定するもの)の少額判定は、「当該リース資産の所有者」が取得した際の取得価額で行うとされています。施行令自体が、リース資産について借手とは別に所有者が存在することを前提に組み立てられていることが読み取れます。
判定表|借手・貸手と契約類型別の申告区分
ここからが本題です。会計上の処理と、固定資産税の申告区分を立場ごとに並べます。表中の「申告区分の考え方」は地方税法の条文から導かれる基本線であり、実際の取扱いは契約内容と市町村の運用で確定する点に注意してください。
借手側の判定表
| 所有権移転条項のない 一般的なリース |
会計上は使用権資産を計上するが、原資産の法的所有権は貸手に残る。所有者課税の原則から、借手が使用権資産を計上したことだけで借手の申告対象になるわけではない(地方税法 第343条第1項・第3項) |
|---|---|
| 短期リース・少額リースで オフバランスとしたもの |
使用権資産を計上しない簡便的な取扱いを選んでも、申告区分は所有関係で決まる点は同じ。会計上の計上の有無は申告区分を左右しない(リースに関する会計基準の適用指針 第20項・第22項) |
| 契約期間中又は終了後に 所有権が移転するリース |
所有権が借手に移転した後は、借手が所有者として申告する立場になる。移転前の期間について、売主が所有権を留保した売買に当たる場合は売主と買主の共有物とみなされる(地方税法 第342条第3項)。契約がこれに当たるかは市町村に確認 |
| 購入オプションの行使が 合理的に確実なリース |
会計上は所有権移転と同様に償却するが、行使するまで法的所有権は貸手にある。会計上の区分だけで申告者を借手に切り替えない(リースに関する会計基準の適用指針 第43項) |
| 特別仕様の原資産のリース | 会計上は所有権が移転すると認められるリースに含まれるが、法的所有権の移転を意味しない。申告区分は契約上の所有関係で判断する(リースに関する会計基準の適用指針 第43項) |
| リース終了後に 買い取った資産 |
買取により借手が所有者となるため、以後の賦課期日(1月1日)時点で所有していれば借手の償却資産として申告対象となる(地方税法 第343条第1項、第359条) |
| 賃借した建物に 借手が取り付けた附帯設備 |
家屋に付合して家屋所有者の所有となった附帯設備でも、市町村は取り付けた借手を所有者とみなして課税できる(地方税法 第343条第10項)。所在地の市町村の取扱いを確認 |
| 自動車・ソフトウェアのリース | 自動車税・軽自動車税の課税客体である自動車等や、無形減価償却資産はそもそも償却資産から除かれる(地方税法 第341条第4号) |
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貸手側の判定表
| ファイナンス・リースの貸手 | 会計上は原資産を固定資産として計上せず、リース債権(所有権移転)又はリース投資資産(所有権移転外)を計上する(リースに関する会計基準 第46項)。一方、法的所有者である限り固定資産税の所有者課税の対象となる(地方税法 第343条第1項) |
|---|---|
| オペレーティング・リースの貸手 | 通常の賃貸借取引に準じて処理し、原資産を自社の固定資産として保有する(リースに関する会計基準 第48項)。所有者として申告対象となる(地方税法 第343条第1項、第383条) |
| 信託会社が譲渡を条件に 賃貸している償却資産 |
賃借人の事業の用に供するものは、賃借人を所有者とみなす特別な定めがある(地方税法 第343条第9項) |
貸手側で見落としやすいのは、ファイナンス・リースの貸手です。会計上は固定資産の残高がなくても、地方税法上は所有者として扱われる可能性があるため、固定資産台帳とは別にリース物件の申告用リストを持つ運用が欠かせません。
会計の「所有権移転」区分と法的所有権のずれ
判定を誤りやすいのは、会計上「所有権が借手に移転すると認められるリース」に当たるケースです。このリースには、①所有権が移転することとされているもの、②借手による購入オプションの行使が合理的に確実なもの、③借手の用途に合わせた特別仕様で、返還後に貸手が再びリース又は売却することが困難なもの、の3つが含まれます(リースに関する会計基準の適用指針 第43項)。
このうち②と③は、契約上の所有権移転を伴わなくても会計上は所有権移転のリースとして扱われます。その場合、使用権資産は原資産を自ら所有していたと仮定した場合と同一の方法で、経済的使用可能予測期間にわたり償却します(リースに関する会計基準 第37項)。会計上は「自社資産と同様」に償却していても、固定資産税の所有者は貸手のままというずれが生じ得るわけです。
なお、法人税法では、所定の要件を満たすリース取引について、リース資産の引渡しの時に売買があったものとして所得の金額を計算します(法人税法 第64条の2第1項・第3項)。法人税・会計・固定資産税の3つで「誰の資産か」の見え方が異なるため、どれか1つの区分を他の申告にそのまま流用しないことが実務上のポイントです。
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リース料に含まれる固定資産税相当額の会計処理
貸手が負担する固定資産税は、リース料に織り込まれて借手から回収されるのが一般的です。新リース会計基準では、この固定資産税相当額の扱いが借手と貸手で異なります。
借手は、契約における対価の中に借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストについて支払う金額が含まれる場合、その金額を対価の一部としてリースを構成する部分とリースを構成しない部分に配分します(リースに関する会計基準の適用指針 第11項)。旧基準のように固定資産税相当額を「維持管理費用相当額」としてリース料から控除する定めは、借手については置かれていません(リースに関する会計基準の適用指針 BC15項、BC19項)。
貸手は、対価の中に原資産の維持管理に伴う固定資産税、保険料等の諸費用(維持管理費用相当額)が含まれる場合、対価の一部として配分する方法のほか、対価から控除して収益に計上する方法、又は貸手の固定資産税等の費用の控除額として処理する方法を選べます(リースに関する会計基準の適用指針 第13項)。
以下は、オペレーティング・リースの貸手が年間リース料1,320のうち固定資産税相当額120を維持管理費用相当額として区分し、固定資産税の費用の控除額として処理する方法を選んだ場合の作例です(単位:千円。固定資産税の納付とリース料の受取を1年分まとめて表示)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 租税公課 | 120 | 現金預金 | 120 |
| 現金預金 | 1,320 | 受取リース料 | 1,200 |
| 租税公課 | 120 |
貸手は固定資産税の申告・納付を行う当事者であり、その金額を把握しているため、こうした区分処理が選択肢として認められています。これに対し借手は、リース料のうち固定資産税に充てられる額を知り得ない場合が多く、支払うリース料の総額を前提に処理を組み立てます。
関連コラム新リース会計基準における対価の配分と維持管理費用の実務対応▸
申告前に確認したい5つのポイント
新リース会計基準の導入を機に、固定資産台帳と償却資産申告の対象リストがずれやすくなります。毎年1月の申告前に、次の点を確認しておくと安心です。
- 台帳の切り分け:使用権資産を固定資産台帳に登録する場合、申告対象の自社所有資産と区別できる区分を設けているか。
- 契約書の所有権条項:所有権移転条項・購入オプション・所有権留保の有無と、移転の時期を契約書で確認したか。
- 買取・満了の時期:リース終了後に買い取った資産が、次の1月1日時点で自社所有として申告対象に加わっていないか。
- 附帯設備:賃借物件に自社で取り付けた設備について、所在地の市町村が、取り付けた者を所有者とみなして課税する取扱いをとっているか。
- 市町村への確認:所有権移転リースや特別仕様のリースなど判断が分かれ得る契約について、所在地の市町村の取扱いを事前に確認したか。
償却資産申告は市町村ごとに行うため、多拠点の企業ほど確認の手間が増えます。判断が分かれる契約は、拠点ごとの申告書を作り始める前に一覧化しておくことをおすすめします。
関連コラム新リース会計基準の申告調整|別表四・別表五(一)の記載と仕訳▸
新リース会計基準の適用時期
企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」と企業会計基準適用指針第33号は、2024年9月に公表されました(リースに関する会計基準の適用指針 BC3項)。2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。
3月決算の会社であれば、強制適用の場合の適用初年度は2028年3月期です。早期適用をしている会社では、すでに使用権資産の計上が始まっているため、次回の償却資産申告から台帳との突合が必要になります。
まとめ
- 使用権資産は「原資産を使う権利」を表す会計上の資産であり、計上したことだけで借手が償却資産申告の申告者になるわけではありません。
- 固定資産税(償却資産)は所有者に課され、所有者は償却資産課税台帳に登録された者です(地方税法 第343条第1項・第3項)。
- 会計上「所有権が移転すると認められるリース」でも、購入オプションや特別仕様によるものは法的所有権が移転していない場合があり、会計と固定資産税の区分がずれます。
- ファイナンス・リースの貸手は会計上原資産を計上しなくても、所有者として申告対象となり得ます。
- 所有権留保・附帯設備・信託など特別な定めもあるため、判断が分かれる契約は所在地の市町村に確認するのが確実です。
リース契約ごとの申告区分の判定は、契約内容や市町村の運用によって結論が変わることがあります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
新リース会計基準対応の無料相談はこちら参考文献
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
- e-Gov法令検索 地方税法
- e-Gov法令検索 地方税法施行令
- e-Gov法令検索 法人税法
よくある質問
使用権資産を計上したら、償却資産申告に載せる必要がありますか?
使用権資産を計上したことだけでは申告対象になりません。固定資産税は固定資産の所有者に課され、償却資産の所有者は償却資産課税台帳に所有者として登録されている者とされているためです(地方税法 第343条第1項・第3項)。原資産の法的所有権が貸手にある限り、借手の申告対象には含めないのが基本線です。
所有権移転条項のあるリースは、借手が申告するのですか?
所有権が借手に移転した後は、借手が所有者として申告する立場になります。移転前の期間については、売主が所有権を留保した売買に当たる場合に売主と買主の共有物とみなす定めがあります(地方税法 第342条第3項)。契約がこれに当たるかは内容次第のため、所在地の市町村に確認することをおすすめします。
少額リースとして費用処理しているリース物件はどうなりますか?
短期リースや少額リースの簡便的な取扱いは会計上の計上を省略するものであり(リースに関する会計基準の適用指針 第20項・第22項)、固定資産税の申告区分には影響しません。申告区分は所有関係で判断します。なお、リース資産の少額判定は、所有者が取得した際の取得価額が20万円未満かどうかで行います(地方税法施行令 第49条)。
新リース会計基準はいつから適用されますか?
2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。
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