リースを含む契約において、契約対価をリース部分と非リース部分に適切に配分することは、正確な会計処理の基盤となります。本記事では、借手および貸手における対価の配分原則、維持管理費用相当額の取扱い、貸手におけるオペレーティング・リースの代替的な取扱い(便法)について、具体的なケーススタディを交えながら詳しく解説いたします。
借手における対価の配分原則とコスト処理
リース構成部分と非リース部分の区分
リースを含む契約を締結した場合、借手は契約全体をリースを構成する部分と、リースを構成しない部分(非リース部分)に区分する必要があります。リースを構成する部分についてはリース会計基準等に定める方法で会計処理を行い、非リース部分については該当する他の会計基準等に従って処理します(企業会計基準適用指針第33号 第10項)。
| 構成部分 | 適用する会計基準 |
|---|---|
| リースを構成する部分 | リース会計基準等 |
| リースを構成しない部分 | 該当する他の会計基準等 |
独立価格に基づく配分方法
借手は、契約における対価の総額を、リース構成部分と非リース部分それぞれの独立価格の比率に基づいて配分します(企業会計基準適用指針第33号 第11項)。独立価格とは、貸手または類似のサプライヤーが企業に個別に請求するであろう価格を指します。もし独立価格が直接観察できない場合は、利用可能な情報を最大限に活用して見積もる必要があります(企業会計基準適用指針第33号 BC17項)。
財やサービスを移転しないコストの取扱い
契約対価の中に、事務手数料や契約のセットアップ費用など、借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストが含まれる場合があります。この場合、借手は当該金額を契約対価から控除してはなりません。対価の一部に含めた上で、独立価格の比率に従ってリース構成部分と非リース部分に配分します(企業会計基準適用指針第33号 第11項、BC18項)。
貸手における対価の配分原則と維持管理費用の処理
貸手における独立販売価格の配分
貸手においても借手と同様に、契約におけるリース構成部分と非構成部分を区分し、それぞれ該当する会計基準に従って処理を行います(企業会計基準適用指針第33号 第12項)。貸手は、契約における対価の総額を、それぞれの部分の独立販売価格の比率に基づいて配分します(企業会計基準適用指針第33号 第13項)。
維持管理費用相当額の2つの処理方法
貸手における対価の中に、原資産の維持管理に伴う固定資産税や保険料等の諸費用(維持管理費用相当額)が含まれる場合、貸手は以下の2つのいずれかの方法を選択して会計処理を行います(企業会計基準適用指針第33号 第13項)。なお、維持管理費用相当額がリース構成部分の金額に対する割合において重要性が乏しい場合は、控除せずにそのまま配分対象に含めることが認められています(企業会計基準適用指針第33号 第13項ただし書き)。
| 処理方法 | 内容 |
|---|---|
| 配分に含める方法 | 維持管理費用相当額を控除せず、契約対価の一部として各構成部分に配分する方法 |
| 控除して処理する方法 | 維持管理費用相当額を契約対価から控除し、収益計上または固定資産税等の費用の控除額として処理する方法 |
貸手のオペレーティング・リースに関する代替的取扱い
代替的取扱い(便法)の適用要件
貸手における実務上の負担を軽減するため、特定の要件を満たす場合には、リース構成部分と非リース部分を分けずに合わせて取り扱う代替的な処理(便法)を選択できます。この便法を適用するためには、リースを構成しない部分が収益認識会計基準の適用対象であり、かつ以下の2つの要件をいずれも満たす必要があります(企業会計基準適用指針第33号 第14項)。
| 適用要件 | 詳細 |
|---|---|
| 収益計上の時期とパターンの合致 | リース構成部分と非リース部分の収益計上の時期およびパターンが同じであること |
| オペレーティング・リースへの分類 | リースを構成する部分がオペレーティング・リースに分類されること |
主たる部分の判定と会計処理
代替的取扱いを適用する場合、貸手はリース構成部分が契約全体の主たる部分であるかどうかに応じて、以下の通り会計処理を行います(企業会計基準適用指針第33号 第15項)。
| 主たる部分の判定 | 会計処理の方法 |
|---|---|
| リース構成部分が主たる部分である | 両者を合わせ、リース構成部分として「オペレーティング・リース」に係る会計処理を行う |
| リース構成部分が主たる部分でない | 両者を合わせ、収益認識会計基準に従って「単一の履行義務」として会計処理を行う |
会計基準における背景と結論の根拠
借手の維持管理費用控除が廃止された理由
旧基準では、借手においてもリース料総額から固定資産税や保険料等の維持管理費用相当額を控除することが求められていました。しかし、新基準ではIFRS第16号との整合性を図る観点や、借手が貸手から正確な維持管理費用相当額を入手することが実務上困難であるという指摘から、借手における控除規定は廃止されました(企業会計基準適用指針第33号 BC19項、BC20項)。これにより、借手はすべての対価を独立価格の比率に基づき配分するというシンプルな定めに統一されました(企業会計基準適用指針第33号 BC21項)。一方で、貸手は自ら固定資産税等の金額を把握しているため、控除して別途処理できる規定が存続しています(企業会計基準適用指針第33号 BC23項)。
貸手の代替的取扱いが導入された背景
貸手がオペレーティング・リースを行う際、リース構成部分と非構成部分の収益計上時期やパターンが同一であれば、双方を厳密に分けて会計処理を行っても最終的な収益計上額は変わりません。厳密な分離を強制することは、企業にとって適用上のコストと複雑性を増大させるだけであると判断されました。そのため、米国会計基準(Topic 842)を参考に、複雑性の低減を図る観点から、貸手に対してのみ代替的な取扱い(便法)が定められました(企業会計基準適用指針第33号 BC24項、BC25項)。
実務ケーススタディ:機械装置リースと保守サービスの対価配分
借手の会計処理実務
借手である企業が、貸手と機械装置のリース(リース期間5年)と保守サービスがセットになった契約(契約対価総額81,000千円)を締結したケースを想定します。独立価格はリース部分が72,000千円、保守サービスが18,000千円(比率4:1)、維持管理費用相当額は3,000千円です。借手は維持管理費用相当額を把握していても控除してはなりません(企業会計基準適用指針第33号 BC20項、BC21項)。したがって、総額81,000千円を4:1の比率で配分し、リース構成部分に64,800千円、非リース部分に16,200千円を割り当てます。借手は64,800千円を基礎として使用権資産およびリース負債を計上します(企業会計基準適用指針第33号 設例7)。
| 借手の配分結果 | 金額 |
|---|---|
| リース構成部分(使用権資産等) | 64,800千円 |
| 非リース部分(保守サービス費用) | 16,200千円 |
貸手の会計処理実務(原則と控除方法)
貸手は、原則的な方法として契約対価総額81,000千円をそのまま独立販売価格の比率(4:1)で配分し、リース構成部分に64,800千円、非構成部分に16,200千円を割り当てることができます(企業会計基準適用指針第33号 第13項(1))。一方で、貸手は自ら把握している維持管理費用相当額3,000千円を控除して配分する方法も選択可能です。この場合、81,000千円から3,000千円を控除した78,000千円を4:1で配分し、リース構成部分に62,400千円、非構成部分に15,600千円を割り当てます。控除した3,000千円は別途収益計上するか、固定資産税等の費用の控除額として処理します(企業会計基準適用指針第33号 第13項(2)、設例7)。
| 貸手の控除適用時の配分 | 金額 |
|---|---|
| リース構成部分 | 62,400千円 |
| 非リース部分 | 15,600千円 |
まとめ
リース会計における対価の配分は、借手と貸手で取扱いが異なります。借手は維持管理費用相当額を控除せず、すべての対価を独立価格の比率で配分するシンプルなルールに統一されました。一方、貸手は維持管理費用相当額を控除する方法や、一定の要件を満たす場合にリース構成部分と非リース部分を合わせて処理する代替的な取扱い(便法)を選択することが可能です。実務においては、自社が借手か貸手かを踏まえ、契約対価の総額や独立価格、維持管理費用相当額を正確に把握し、適切な会計基準に基づく処理を選択することが重要です。
リース会計の対価配分に関するよくある質問まとめ
Q.借手はリース契約における維持管理費用相当額を対価から控除できますか?
A.借手は維持管理費用相当額の金額を把握していても、契約における対価から控除することはできません。すべての対価を独立価格の比率に基づき配分する必要があります(企業会計基準適用指針第33号 第11項、BC20項)。
Q.借手における独立価格が明らかでない場合、どのように算定すべきですか?
A.独立価格が直接観察できない場合は、観察可能な情報を最大限に利用して見積もる必要があります(企業会計基準適用指針第33号 BC17項)。
Q.貸手は維持管理費用相当額をどのように処理できますか?
A.貸手は、維持管理費用相当額を契約対価の一部として配分する方法か、契約対価から控除して別途収益計上または費用の控除額として処理する方法のいずれかを選択できます(企業会計基準適用指針第33号 第13項)。
Q.貸手における代替的な取扱い(便法)の適用要件は何ですか?
A.リース構成部分と非リース部分の収益計上の時期およびパターンが同じであり、かつリース構成部分がオペレーティング・リースに分類される場合に適用できます(企業会計基準適用指針第33号 第14項)。
Q.貸手が代替的な取扱いを適用した場合、どのような会計処理になりますか?
A.リース構成部分が主たる部分である場合は合わせてオペレーティング・リースとして処理し、主たる部分でない場合は単一の履行義務として収益認識会計基準に従って処理します(企業会計基準適用指針第33号 第15項)。
Q.借手において、財やサービスを移転しない活動のコストはどのように扱われますか?
A.事務手数料などの財やサービスを移転しないコストは対価から控除せず、対価の一部に含めた上でリース構成部分と非構成部分に配分します(企業会計基準適用指針第33号 第11項)。
実際の会計処理は個別事情によって判断が分かれます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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