03-6773-5062

受付時間 平日 10:00〜18:00

お問い合わせ フォームは24時間受付
財務会計

リース管理システム比較の観点|ツールが解決すること・しないこと

目次
  1. リース管理システム比較の前提となる新リース会計基準の要求事項
  2. リースの識別と契約データの網羅的な把握
  3. 使用権資産とリース負債の計上額と利息法による配分
  4. システムが自動生成すべき仕訳の型
  5. リース期間の見直しとリース負債の再測定
  6. 注記情報の集計要件
  7. 新リース会計基準 システム対応でツールが解決することとしないこと
  8. 解決することとしないことの対比
  9. システムが担う定型処理の範囲
  10. 人の判断が必要な論点
  11. Excel管理の限界とシステム移行の判断目安
  12. Excel管理が破綻しやすい兆候
  13. 重要性の判定と簡便的な取扱いの関係
  14. 移行時の作業量という視点
  15. リース管理システムの選定基準と要件定義の観点
  16. 機能要件のチェック観点
  17. データ要件と連携の観点
  18. 内部統制と監査対応の観点
  19. リース管理システム導入の選定ステップ
  20. 第1段階 要件定義とリース契約の棚卸し
  21. 第2段階 データ整備と移行方式の決定
  22. 第3段階 並行稼働と運用定着
  23. まとめ
  24. 参考文献
  25. よくある質問
  26. リース管理システムの比較で最初に確認すべき機能はどれですか。
  27. システムを導入すればリースの識別も自動化できますか。
  28. Excelでの管理を続けられるかどうかの目安はありますか。
  29. システム導入はいつまでに完了させるべきですか。
  30. 経過措置の選択はシステム要件に影響しますか。

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます(リースに関する会計基準 第58項)。借手はリースの種類を問わず使用権資産とリース負債を計上することになるため、対象契約が数十件を超える企業では、管理台帳の作り方そのものを見直す必要が生じます。

その過程で「リース管理システムの比較検討」が課題として挙がります。ただし、製品を横並びに眺める前に固めるべきものがあります。自社が基準対応として何を機械に任せ、何を人の判断として残すのか、という要件の切り分けです。ここが曖昧なまま比較表を作ると、機能の多寡だけで判断してしまい、導入後に「結局Excelで補正している」という状態に陥ります。

本記事では、公認会計士の実務視点から、新リース会計基準がシステムに要求する処理を条項に沿って整理し、ツールが解決できること・できないことを切り分けたうえで、選定基準と導入ステップを解説します。個別の製品名には触れず、どの製品を評価する場合にも共通して使える要件定義の軸を示します。

リース管理システム比較の前提となる新リース会計基準の要求事項

システムに求める機能は、基準が要求する処理から逆算して決めます。まず、借手の会計処理として基準が定めている論点を確認します。

リースの識別と契約データの網羅的な把握

契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断します(リースに関する会計基準 第25項)。この判断は、契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転するかどうかによります(同 第26項)。支配の移転は、顧客が特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し、かつ、当該資産の使用を指図する権利を有する場合に認められます(リースに関する会計基準の適用指針 第5項)。

実務上の負荷はここに集中します。従来の賃貸借処理では会計システムに乗らなかった不動産賃貸借契約、車両の使用契約、倉庫や設備の利用契約などが、洗い出しの対象になるためです。システムに求められるのは、契約書単位でリース該当性の判断結果と判断根拠を保持し、後から検証できる状態にすることです。

また、借手および貸手は、リースを含む契約について、原則としてリースを構成する部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理を行います(リースに関する会計基準 第28項)。ただし借手は、原資産のグループごとに、これらを分けずに合わせて会計処理することを選択できます(同 第29項)。この選択はグループ単位で一貫して適用するため、システム側でグループ区分を持てることが要件になります。

使用権資産とリース負債の計上額と利息法による配分

借手は、リース開始日に、リース負債を計上します。そして当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用および資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。リース負債の計上額は、原則として、リース開始日において未払である借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定します(同 第34項)。

現在価値の算定に用いる割引率は、貸手の計算利子率を知り得る場合は当該利率により、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率によります(リースに関する会計基準の適用指針 第37項)。利息相当額は、借手のリース期間にわたり、原則として利息法により配分します(リースに関する会計基準 第36項)。利息法では、各期の利息相当額をリース負債の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定します(同適用指針 第39項)。

この現在価値計算と利息法の期間配分が、システムに任せるべき定型処理の中核です。1件あたりの計算は難しくありませんが、契約件数が増えるほど手作業では検算が追いつかなくなります。

関連コラム借手の割引率と追加借入利子率|新リース会計基準の決定手順▸

システムが自動生成すべき仕訳の型

要件定義の場では、求める出力を仕訳の形で示すと認識のずれが起きにくくなります。ここでは自社作例により、リース期間5年、リース料が毎年度末後払いで年額1,200千円、借手の追加借入利子率が年5パーセント、付随費用およびリース・インセンティブがない前提で、リース開始日の計上を示します(単位:千円)。根拠となる定めは、リース負債の現在価値による算定(リースに関する会計基準 第34項)と、使用権資産の計上額(同 第33項)です。

年利5パーセント・5年の年金現価係数は4.32948であるため、リース負債の計上額は次のとおり算定されます。

リース負債 = 年額リース料1,200 × 年金現価係数4.32948 = 5,195
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
使用権資産 5,195 リース負債 5,195

続いて、初年度末のリース料支払と使用権資産の減価償却です。利息相当額はリース負債の未返済元本残高5,195に5パーセントを乗じて260、元本返済額は支払額1,200との差額940となります(リースに関する会計基準の適用指針 第39項)。減価償却は、所有権が移転すると認められるリース以外のリースについて、原則として借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして算定します(リースに関する会計基準 第38項)。5,195を5年で定額償却し、年間1,039を計上します(単位:千円)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
支払利息 260 現金預金 1,200
リース負債 940
減価償却費 1,039 使用権資産減価償却累計額 1,039

システムに求めるのは、この2つの型を契約件数分だけ誤りなく生成し、支払スケジュールの変更があれば残高を再計算し直す能力です。逆に言えば、この程度の出力しか得られない製品であれば、後述する再測定や注記の要件を満たせません。

リース期間の見直しとリース負債の再測定

借手のリース期間は、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間と、借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間を加えて決定します(リースに関する会計基準 第31項)。

この期間は固定ではありません。借手は、リースの契約条件の変更が生じていない場合で、借手の統制下にあり、かつ延長オプションを行使するか否かの借手の決定に影響を与える重要な事象または重要な状況が生じたときに、行使が合理的に確実であるかどうかを見直し、借手のリース期間を変更してリース負債の計上額の見直しを行います(同 第41項)。また、リース期間に変更がなくリース料に変更がある場合にも、リース負債の計上額の見直しを行います(同 第40項)。

再測定を行う場合、リース負債は当該事象の内容を反映した借手のリース料の現在価値まで修正し、修正額に相当する金額を使用権資産に加減します(リースに関する会計基準の適用指針 第46項)。選定時に見落とされやすいのがこの再測定機能です。初期計上だけを自動化した仕組みでは、契約変更や期間見直しのたびに手作業が発生し、履歴も残りません。

関連コラムリース期間の判定|延長・解約オプションと新リース会計基準▸

注記情報の集計要件

リースに関する注記として、借手は会計方針に関する情報、リース特有の取引に関する情報、当期および翌期以降のリースの金額を理解するための情報を注記します(リースに関する会計基準 第55項(1))。このうち金額を理解するための情報としては、リースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額、使用権資産の増加額、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごとの使用権資産に係る減価償却の金額を注記します(リースに関する会計基準の適用指針 第102項)。短期リースの簡便的な取扱いを適用した場合の費用の発生額なども注記の対象です(同 第100項)。

注記の観点で重要なのは、集計の切り口が「原資産の科目ごと」である点です。契約データに原資産の分類コードを持たせていないと、期末に手作業で振り分ける羽目になります。システム比較では、この分類軸で残高・増加額・減価償却額を出力できるかを確認します。

公認会計士事務所プライムパートナーズ 新リース会計基準対応支援 新リース会計基準の対応、影響額の簡易試算から 公認会計士が対応方針までご案内|公認会計士事務所プライムパートナーズ 無料試算・ご相談はこちら

新リース会計基準 システム対応でツールが解決することとしないこと

ここまでの要求事項を、機械に任せられるものと人の判断が必要なものに切り分けます。この切り分けが選定基準の土台になります。

解決することとしないことの対比

システム対応の範囲を大づかみに整理すると次のとおりです。

システムが
解決すること
システムでは解決せず
人の判断が必要なこと
確定した条件に基づく現在価値計算とリース負債の算定 割引率として貸手の計算利子率を知り得るかどうかの評価と、追加借入利子率の見積り
利息法による各期の利息相当額の配分と残高の繰越 延長オプションの行使が合理的に確実かどうかの判断
使用権資産の減価償却計算と仕訳の自動生成 契約がリースを含むか否か、支配が移転しているか否かの識別
条件変更を入力した後の再測定計算と履歴の保持 リースを構成しない部分との対価の配分に用いる独立価格の見積り
注記に必要な金額の集計と原資産の科目別の出力 短期リース・少額リースの簡便的な取扱いを適用する範囲の方針決定
契約データの一元管理と支払スケジュールの管理 借地権の設定に係る権利金等など、個別性の高い論点の会計方針の決定

システムが担う定型処理の範囲

左列と右列の違いは、入力が確定していれば答えが一意に決まるかどうかです。リース料、リース期間、割引率という3つのインプットが確定すれば、リース負債も使用権資産も償却費も一意に決まります。ここは全面的に機械へ寄せるべき領域です。

簡便的な取扱いを適用する場合の管理も定型化できます。借手は、短期リースについて、使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用計上することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。短期リースとは、リース開始日において借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいいます(同 第4項(2))。少額リースについても同様の簡便的な取扱いが定められています(同 第22項)。判定基準さえ方針として決めれば、該当判定と費用計上はシステムで処理できます。

人の判断が必要な論点

一方、右列は見積りと判断の領域です。延長オプションの行使が合理的に確実かどうかを判定するにあたっては、経済的インセンティブを生じさせる要因を考慮します。これには、延長オプションまたは解約オプションの対象期間に係る契約条件、大幅な賃借設備の改良の有無、リースの解約に関連して生じるコスト、企業の事業内容に照らした原資産の重要性、オプションの行使条件が含まれます(リースに関する会計基準の適用指針 第17項)。

これらは事業計画や店舗戦略といった社内の意思と結びついた判断であり、契約書の文言だけからは導けません。システムはあくまで判断結果を入力として受け取り、計算と記録を担う位置づけになります。したがって選定時には「判断機能があるか」ではなく「判断の根拠と担当者、判断日を監査証跡として残せるか」を見るのが正しい観点です。

借地権の設定に係る権利金等のように、日本基準に固有の論点も人の判断が残ります。権利金等は使用権資産の取得価額に含め、原則として借手のリース期間を耐用年数として減価償却を行いますが、旧借地権または普通借地権の設定に係る権利金等のうち一定のものは、減価償却を行わないものとして取り扱うことができます(リースに関する会計基準の適用指針 第27項)。どの取扱いを選ぶかは会計方針の選択であり、システムの設定項目に反映させる前に方針を確定させる必要があります。

Excel管理の限界とシステム移行の判断目安

すべての企業がシステムを導入すべきというわけではありません。契約件数と論点の複雑さによっては、表計算ソフトによる管理で足りる場合もあります。判断の目安を整理します。

Excel管理が破綻しやすい兆候

限界に達しているかどうかは、次の兆候で判断できます。第一に、リースの契約条件の変更や期間の見直しが年に複数回発生し、そのたびにシートを差し替えている状態です。再測定は過去の残高を起点に将来を組み替える処理であり、シートのコピーで運用すると版管理が崩れます。第二に、注記に必要な原資産の科目別集計を、期末にピボットテーブルで作り直している状態です。第三に、支払実績を管理するシートと会計仕訳を作るシートが分かれ、両者の突合を目視で行っている状態です。いずれも誤りを検出できない構造であり、監査対応の負荷も高くなります。

重要性の判定と簡便的な取扱いの関係

使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合には、借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法や、利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に定額法により配分する方法を適用することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第40項)。使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過の借手のリース料の期末残高が当該期末残高、有形固定資産および無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合をいいます(同 第41項)。

10パーセント未満であれば利息法によらない簡便的な処理が可能であり、計算負荷は大きく下がります。ただし、この割合は毎期の判定であり、設備投資やリース契約の増加によって基準を超える可能性があります。将来の契約件数の見通しを踏まえた判断が必要です。

移行時の作業量という視点

もう一つの判断材料が、適用初年度の移行作業の量です。会計基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します。ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第118項)。

後者を選択する借手は、従来オペレーティング・リース取引に分類していたリースおよび新たに識別されたリースについて、適用初年度の期首時点における残りの借手のリース料を、同時点の借手の追加借入利子率を用いて割り引いた現在価値によりリース負債を計上できます(同 第123項)。このとき、特性が合理的に類似した複数のリースに単一の割引率を適用する方法などを併用できます(同 第124項)。

この移行計算は一度きりの作業ですが、対象契約が多いと膨大になります。加えて、適用初年度の期首の貸借対照表に計上されているリース負債に適用している借手の追加借入利子率の加重平均などの注記が求められます(同 第125項)。移行作業の見積工数がシステム導入コストを上回るのであれば、導入の合理性は高いといえます。

関連コラム新リース会計基準はいつから?適用時期と対象会社の範囲を解説▸

リース管理システムの選定基準と要件定義の観点

比較検討に入る前に、自社の要件を次の3つの観点で言語化します。この3点を埋めた要件定義書があれば、どの製品に対しても同じ質問ができ、比較が成立します。

機能要件のチェック観点

機能面では、前章で整理した「システムが解決すること」の6項目を満たすかを確認します。特に確認すべきは、初期計上ではなく再測定です。リースの契約条件の変更を独立したリースとして処理する場合と、リース負債の計上額を見直す場合の両方に対応できるかを問います(リースに関する会計基準 第39項)。

次に、簡便的な取扱いの適用範囲を原資産のグループ単位で設定できるかを確認します。短期リースの簡便的な取扱いは、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと、または性質および用途が類似する原資産のグループごとに適用の可否を選択します(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。契約単位でしか設定できない仕組みでは、方針の一貫性を担保しにくくなります。三つ目は、適用初年度の期首時点での一括再計算など、移行計算に対応できるかです。

データ要件と連携の観点

データ面では、契約1件あたりに保持すべき項目を先に定義します。最低限、原資産の分類、解約不能期間、延長オプションと解約オプションの有無および対象期間、固定リース料、変動リース料の算定根拠、残価保証の有無、購入オプションの有無、割引率とその決定根拠が必要です。これらは基準がリース料の構成要素として列挙している項目に対応します(リースに関する会計基準 第35項)。

そのうえで、会計システムへの仕訳連携方式、固定資産システムとの関係、支払管理システムとの重複を整理します。どのシステムを契約情報の正本とするかを先に決めておかないと、運用開始後に不整合が生じます。

内部統制と監査対応の観点

三つ目の観点が、内部統制です。判断が介在する項目については、誰がいつどの根拠で判断したかを記録できることが要件になります。特にリース期間の判断、割引率の決定、簡便的な取扱いの適用可否は、監査人から根拠を求められる論点です。

また、計算ロジックがブラックボックスにならないことも重要です。システムが出した使用権資産の金額を自社で再計算して検証できるだけの中間データを出力できるか確認します。上場準備企業では、権限設定と変更履歴の保持も要件に加わります。

リース管理システム導入の選定ステップ

要件が固まったら、次の順序で進めます。2027年4月1日以後開始する事業年度から適用されることを踏まえると、移行計算と並行稼働の期間を確保するため、適用初年度の前期からの着手が現実的です。

第1段階 要件定義とリース契約の棚卸し

最初に行うのは製品調査ではなく、自社のリース契約の棚卸しです。契約がリースを含むか否かの判断は契約の締結時に行うため(リースに関する会計基準 第25項)、既存契約についても同じ判断を遡って行う必要があります。賃貸借契約、業務委託契約、保守契約などを幅広く洗い出し、特定された資産の使用を支配する権利が移転しているかを個別に検討します。この結果として契約件数と論点の分布が判明し、はじめて必要な機能の水準が決まります。

第2段階 データ整備と移行方式の決定

次に、契約ごとに前章で挙げたデータ項目を埋めます。多くの企業でここが最も時間を要します。契約書の原本が部門ごとに保管されていたり、口頭や取引慣行による取決めが含まれていたりするためです。リースを含む契約には、書面のほか口頭、取引慣行等による契約も含まれます(リースに関する会計基準 第5項)。

あわせて、前章で触れた経過措置のどの方法を選択するかを決定します。累積的影響額を期首の利益剰余金に加減する方法を選ぶ場合、適用初年度の前連結会計年度および前事業年度の期末日において企業会計基準第13号を適用しているリース取引について、リースが含まれているか否かの判断を行わずに会計基準を適用する方法も選択できます(リースに関する会計基準の適用指針 第119項)。この選択を先に確定させることが、データ整備の範囲を絞る鍵になります。

第3段階 並行稼働と運用定着

導入直後は、既存の管理方法とシステムの出力を一定期間並行させ、差異の原因を潰します。差異が生じる典型的な箇所は、割引率の適用、端数処理、リース料の支払時期の取扱いです。並行稼働の期間に検証手続を確立しておくと、適用初年度の決算での手戻りを防げます。

最後に、運用ルールを文書化します。新規契約が発生したときにリース該当性を誰が判断し、いつまでにシステムへ登録するか。契約条件の変更が生じたときに誰が経理部門へ連携するか。この業務フローが定まっていないと、どれほど高機能な製品を導入しても台帳の網羅性は確保できません。システムは網羅性を保証しないという点は、選定の段階から関係部門と共有しておくべきです。

まとめ

リース管理システムの比較は、製品の機能一覧を並べる作業ではなく、自社の要件を確定させる作業です。新リース会計基準は、リースの識別、使用権資産とリース負債の計上、利息法による配分、リース期間の見直しと再測定、注記情報の集計という処理を要求します。このうち、リース料・リース期間・割引率が確定した後の計算はシステムに寄せられる一方、リースの識別、延長オプションの評価、割引率の見積り、会計方針の選択は人の判断として残ります。

したがって選定基準は「どこまで自動化できるか」に加えて「人の判断の記録をどう残せるか」を含める必要があります。Excel管理を続けるか移行するかは、契約件数、再測定の頻度、注記集計の負荷、移行計算の作業量から判断します。使用権資産総額の重要性が乏しいと認められる場合の10パーセント基準(リースに関する会計基準の適用指針 第41項)は、その一つの目安になります。

導入は、契約の棚卸しによる要件定義、データ整備と経過措置の選択、並行稼働という順序で進めます。2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からの適用に向けて(リースに関する会計基準 第58項)、逆算した準備が求められます。なお、リースの識別や経過措置の選択は個別事情による判断を伴うため、具体的なケースについては公認会計士へのご相談をおすすめします。

関連コラム新リース会計基準とは|使用権資産とリース負債をわかりやすく解説▸

新リース会計基準対応の無料相談はこちら

参考文献

よくある質問

リース管理システムの比較で最初に確認すべき機能はどれですか。

再測定への対応です。リースの契約条件の変更が生じた場合、借手は変更前のリースとは独立したリースとしての会計処理を行うか、リース負債の計上額の見直しを行います(リースに関する会計基準 第39項)。また、契約条件の変更がない場合でも、借手のリース期間に変更があるときやリース料に変更があるときは、リース負債の計上額の見直しが必要です(同 第40項)。初期計上のみを自動化した仕組みでは、これらの場面で手作業が発生します。

システムを導入すればリースの識別も自動化できますか。

自動化できません。契約がリースを含むか否かは、特定された資産の使用を支配する権利が一定期間にわたり対価と交換に移転するかどうかで判断します(リースに関する会計基準 第26項)。この判断には、顧客が資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有するか、資産の使用を指図する権利を有するかの評価が必要です(リースに関する会計基準の適用指針 第5項)。システムに求められるのは、人が下した判断結果とその根拠を記録し、後から検証できる状態にすることです。

Excelでの管理を続けられるかどうかの目安はありますか。

一つの目安が、使用権資産総額の重要性です。未経過の借手のリース料の期末残高が、当該期末残高、有形固定資産および無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合には、利息相当額を控除しない方法や定額法により配分する方法を適用できます(リースに関する会計基準の適用指針 第40項、第41項)。この場合は計算負荷が下がります。ただし判定は毎期行うため、契約件数の増加見通しを踏まえて検討します。

システム導入はいつまでに完了させるべきですか。

会計基準は2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から早期適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項)。適用初年度の期首時点で移行計算を完了させる必要があるため、契約の棚卸しとデータ整備、並行稼働の期間を確保すると、適用初年度の前期から着手することが現実的です。

経過措置の選択はシステム要件に影響しますか。

影響します。原則として新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用しますが、累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する方法も選択できます(リースに関する会計基準の適用指針 第118項)。後者を選ぶ場合、適用初年度の期首時点における残りのリース料を期首時点の追加借入利子率で割り引く計算や、特性が合理的に類似した複数のリースへの単一割引率の適用といった処理が必要になります(同 第123項、第124項)。どの方法を選ぶかで、システムに求める移行計算機能が変わります。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

Office

公認会計士事務所プライムパートナーズ

大手監査法人出身の公認会計士が、会計・監査・株価算定のご相談をお受けしています。

  • オフィスが入居する IsaI AkasakA のエントランス
  • 代表 公認会計士 島本 雅史
  • プライムパートナーズの会議室
事務所名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
所在地
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2-33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062(平日 10:00〜18:00)
対応責任者
公認会計士 島本 雅史