外貨建リースの換算【仕訳例】リース負債と使用権資産に用いる為替相場
目次
- 外貨建リースの換算の結論
- 基準上の根拠と条項の当てはめ
- リース会計基準が定める計上額
- 外貨建取引等会計処理基準の当てはめ
- 外貨建リースの計算例
- 計算例の前提条件
- リース開始日の仕訳
- リース料支払時の仕訳
- 決算時の換算替えと減価償却の仕訳
- 期末の貸借対照表に表れるズレ
- 在外子会社・在外支店の外貨建リース
- 在外子会社の財務諸表を換算する場合
- 在外支店の換算の特例
- 外貨建リースの実務上の注意点
- 指数又はレート連動のリース料との違い
- 割引率に用いる金利の通貨
- 為替差損益の表示
- 新リース会計基準の適用時期
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 使用権資産を決算時の為替相場で換算し直さないのはなぜですか。
- リース負債の換算で生じた為替差損益はどこに表示しますか。
- 外貨建リースのリース負債を為替予約でヘッジできますか。
- 在外子会社の使用権資産も取得時の相場で換算しますか。
- 新リース会計基準はいつから適用されますか。
米ドル建てで店舗や設備を借りている、海外の貸手と外貨建てでリース契約を結んでいる。こうした会社が新リース会計基準を適用すると、使用権資産とリース負債をどの為替相場で円換算するかを決めなければなりません。
まず押さえておきたいのは、リースに関する会計基準にも外貨建取引等会計処理基準にも、外貨建リースだけを扱った定めはないという点です。そのうえで両基準の一般的な定めを当てはめると、リース負債は外貨建金銭債務として決算時の為替相場で換算し直して差額を為替差損益とし、使用権資産はリース開始日の相場で円換算した金額のまま減価償却すると整理されます。この記事では、両基準のどの条項からこの結論が導かれるのかを示したうえで、自社作成の計算例と仕訳で決算の流れを確認します。
外貨建リースの換算の結論
まず、本社(本邦企業)が外貨建てのリース契約を結んだ場合に、基準の一般的な定めから導かれる換算の考え方を一覧にします。在外子会社の財務諸表を連結するときは扱いが異なるため、後の見出しで分けて説明します。
| リース開始日の計上 | 外貨で算定したリース負債・使用権資産を、取引発生時(リース開始日)の為替相場で円換算する |
|---|---|
| リース負債(決算時) | 決算時の為替相場で換算し直し、換算差額は当期の為替差損益とする |
| 使用権資産(決算時) | 換算し直さない。リース開始日の円換算額を基礎に減価償却する |
| 利息相当額 | 取引発生時の為替相場(合理的な平均相場を含む)で換算する |
| リース料の支払 | 支払時の相場で円換算し、決済に伴う差額は為替差損益とする |
表の根拠は、取引発生時の換算が外貨建取引等会計処理基準 一1と注解 注2、決算時の換算替えが同 一2、決済に伴う差額が同 一3です。リース負債と使用権資産は、リース開始日には同じ円貨額で計上されます。しかし決算のたびにリース負債だけが換算替えされるため、為替が動くと両者の円貨額は離れていきます。この差が損益計算書の為替差損益として表れる点が、外貨建リースの実務でいちばん影響の大きい論点です。
基準上の根拠と条項の当てはめ
リース会計基準が定める計上額
借手は、リース開始日に、未払の借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除した現在価値でリース負債を計上します。使用権資産は、このリース負債に、リース開始日までに支払ったリース料、付随費用、資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額で計上します(リースに関する会計基準 第33項、第34項)。利息相当額はリース期間にわたり原則として利息法で配分し(同 第36項)、所有権移転外のリースに係る使用権資産は、原則として耐用年数を借手のリース期間とし、残存価額はゼロで償却します(同 第38項)。
外貨建てのリース契約では、この現在価値計算を契約通貨(例:米ドル)で行い、得られた外貨額を円換算します。リースに関する会計基準と同適用指針には為替換算の定めがないため、換算は外貨建取引等会計処理基準に従うことになります。
外貨建取引等会計処理基準の当てはめ
外貨建取引は、原則として取引発生時の為替相場による円換算額で記録します(外貨建取引等会計処理基準 一1)。外貨建取引とは、取引価額が外国通貨で表示されている取引をいい(同 注解 注1)、外貨建てのリース契約に基づく使用権資産とリース負債の計上はこれに当たると考えられます。
決算時の処理の対象として列挙されているのは、外国通貨、外貨建金銭債権債務、外貨建有価証券、外貨建デリバティブ取引等の金融商品です(同 一2(1))。外貨建金銭債権債務とは、契約上の債権額又は債務額が外国通貨で表示されている金銭債権債務をいい(同 注解 注4)、決算時の為替相場で換算し、換算差額は原則として当期の為替差損益とします(同 一2(1)②、一2(2))。
外貨建てのリース契約に基づくリース負債は、外国通貨で表示された将来の支払義務です。そのため、注解 注4 の外貨建金銭債務に当たるものとして、決算時の為替相場で換算し直すと整理できます。一方、使用権資産は原資産を使用する権利を表す資産であり(リースに関する会計基準 第10項)、一2(1)に列挙された金融商品のいずれにも当たりません。したがって決算時に換算し直さず、取引発生時の円換算額のまま据え置くと整理されます。
この考え方は、外貨で支払った前渡金を、将来財又はサービスの提供を受ける費用性資産であって外貨建金銭債権債務ではないとして、金銭授受時の相場で据え置く扱いとも整合します(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第25項)。なお、外貨建ての未払費用は為替換算上、外貨建金銭債権債務に準じて扱うとされており(同 第27項)、リース負債に係る未払の利息もこれに当たると考えられます。
リースの個別規定がない以上、上記は基準の一般的な定めを当てはめた整理です。契約通貨と決済通貨が異なる契約や、為替相場に連動してリース料が変わる円建て契約などは、個別に条項を読み込んで判断する必要があります。
関連コラム外貨建取引の会計処理|為替換算と在外子会社の換算実務▸
外貨建リースの計算例
計算例の前提条件
3月決算のA社が、海外の貸手から設備を借りる外貨建てのリース契約を結んだケースで計算します(数値は説明用の自社作例です)。
| リース開始日 | X1年4月1日(同日の為替相場 1ドル=140円) |
|---|---|
| リース料 | 年10,000ドルを毎年3月31日に後払い、支払回数3回 |
| 割引率 | 年5% |
| 所有権移転 | なし(使用権資産は3年・残存価額ゼロの定額法で償却) |
| X2年3月31日の為替相場 | 1ドル=150円(支払日・決算日とも) |
| 簡便化の仮定 | 付随費用等はなし。利息相当額は支払日にまとめて計上し、同日の相場で換算する |
リース負債の当初測定額は、リース料10,000ドルの3回分を5%で割り引いた現在価値27,232ドル(1ドル未満四捨五入)です。各年の利息相当額は、期首の外貨残高に5%を乗じて利息法で配分します。
リース開始日の仕訳
リース開始日に、外貨で算定したリース負債を同日の相場で円換算し、同額で使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項、外貨建取引等会計処理基準 一1)。単位は円です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 使用権資産 | 3,812,480 | リース負債 | 3,812,480 |
リース料支払時の仕訳
X2年3月31日に1年目のリース料10,000ドルを支払います。利息相当額は27,232ドル×5%=1,362ドルで、支払日の相場150円で換算すると204,300円です。支払額1,500,000円との差額1,295,700円がリース負債の返済部分になります(リースに関する会計基準 第36項)。単位は円です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 204,300 | 現金預金 | 1,500,000 |
| リース負債 | 1,295,700 |
決算時の換算替えと減価償却の仕訳
支払後のリース負債の外貨残高は、27,232ドル+1,362ドル−10,000ドル=18,594ドルです。決算時の相場で換算すると2,789,100円となり、帳簿残高2,516,780円(3,812,480円−1,295,700円)との差額272,320円を為替差損として計上します(外貨建取引等会計処理基準 一2(1)②、一2(2))。
この272,320円のうち、86,380円(支払で減った元本8,638ドル×10円)は支払時の決済に伴う差額、185,940円(期末残高18,594ドル×10円)は決算時の換算差額にあたり、いずれも為替差損益として処理します(外貨建取引等会計処理基準 一3、外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第28項)。合計額は、当初の外貨残高27,232ドルに相場の変動幅10円を乗じた額と一致します。使用権資産は換算し直さず、開始日の円換算額3,812,480円を3年で償却します(1円未満四捨五入。リースに関する会計基準 第38項)。単位は円です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 為替差損益 | 272,320 | リース負債 | 272,320 |
| 減価償却費 | 1,270,827 | 減価償却累計額 | 1,270,827 |
期末の貸借対照表に表れるズレ
1年目の期末には、使用権資産とリース負債の円貨額が次のように開きます。
| 使用権資産(償却後) | 2,541,653円(開始日の相場140円が基礎) |
|---|---|
| リース負債 | 2,789,100円(決算時の相場150円で換算) |
| 1年目の費用合計 | 1,747,447円(減価償却費・支払利息・為替差損) |
円安が進むほどリース負債だけが膨らみ、為替差損が費用として先に出ます。リース期間が長い不動産のリースや、残高の大きい設備のリースでは、営業利益は変わらなくても経常利益が為替で大きく振れることがあります。予算や業績予想を作る段階で、外貨建リースの残高と想定為替相場を一覧にしておくと、決算での説明がしやすくなります。
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新リース会計基準の対応、影響額の簡易試算から
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在外子会社・在外支店の外貨建リース
在外子会社の財務諸表を換算する場合
在外子会社が現地通貨でリース契約を結び、現地通貨で使用権資産とリース負債を計上している場合、連結財務諸表の作成時には資産及び負債をすべて決算時の為替相場で換算します(外貨建取引等会計処理基準 三1)。つまり連結上は使用権資産も決算時の相場で換算され、本社の外貨建リースとは扱いが変わります。収益及び費用は原則として期中平均相場で換算し(同 三3)、換算によって生じた差額は損益ではなく為替換算調整勘定として処理します(同 三4)。
| 本社の外貨建リース | リース負債のみ決算時の相場で換算し、差額は為替差損益 |
|---|---|
| 在外子会社のリース (連結時の換算) |
使用権資産・リース負債とも決算時の相場で換算し、差額は為替換算調整勘定 |
| 在外支店のリース | 原則として本社と同様。非貨幣性項目に重要性がなければ全項目を決算時の相場で換算できる |
海外拠点が子会社か支店かで、為替の影響が損益に出るか純資産に出るかが分かれます。拠点ごとのリース一覧に「法的形態」と「契約通貨」の列を持たせておくと、換算方法の取り違えを防げます。
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在外支店の換算の特例
在外支店の外貨建取引は、原則として本店と同様に処理します(外貨建取引等会計処理基準 二)。ただし、在外支店の外国通貨表示の財務諸表に基づいて本支店合併財務諸表を作成する場合、非貨幣性項目の額に重要性がなければ、すべての貸借対照表項目を決算時の為替相場で換算する方法を適用できます(同 二2)。この場合に本店と異なる方法で換算して生じた差額は、当期の為替差損益とします(同 二3)。重要性は、原則的な方法と特例による換算結果の差額が当期純損益と利益剰余金に及ぼす影響で、特例を採用する全在外支店の合計額により判断します(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第30項)。
外貨建リースの実務上の注意点
指数又はレート連動のリース料との違い
新リース会計基準には、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料について、指数又はレートの変動でリース料が変わったときにリース負債を修正し、修正額を使用権資産に加減する定めがあります(リースに関する会計基準の適用指針 第25項、第48項)。一方、外貨建てのリース料は外貨額が固定されており、変動するのは円換算額だけです。為替相場の変動によるリース負債の増減は、換算差額として為替差損益に計上し(外貨建取引等会計処理基準 一2(2))、使用権資産には加減しないと整理されます。両者を混同すると、為替差損を使用権資産の増額に振り替えてしまう誤りにつながります。
割引率に用いる金利の通貨
借手が用いる割引率は、貸手の計算利子率を知り得る場合はその利率、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率です(リースに関する会計基準の適用指針 第37項)。ただし、外貨建てのリースで契約通貨(例:米ドル)の金利と円の金利のどちらを基礎にするかについて、明示的な定めはありません。採用した方針と理由を会計方針の文書に残し、毎期同じ考え方で適用することが大切です。
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為替差損益の表示
外貨建金銭債権債務に係る決済差損益と換算差損益は、ともに為替差損益として差益と差損を相殺した純額で表示し、原則として営業外損益に計上します(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第28項)。外貨建リースのリース負債から生じる為替差損益も、他の外貨建債務の為替差損益とあわせて集計することになります。
新リース会計基準の適用時期
リースに関する会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項)。これまで賃貸借処理していた外貨建ての不動産賃貸借なども、新基準の適用によってリース負債が計上されれば、為替換算の影響を毎期受けるようになります。適用初年度の前に、外貨建契約の洗い出しと換算方法の決定を済ませておくと移行が円滑です。
まとめ
- リースに関する会計基準にも外貨建取引等会計処理基準にも外貨建リースの個別規定はなく、一般的な定めの当てはめで整理する。
- リース負債は外貨建金銭債務として決算時の為替相場で換算し直し、差額は為替差損益とすると整理される(外貨建取引等会計処理基準 一2(1)②、一2(2)、注解 注4)。
- 使用権資産は決算時の処理の対象として列挙された金融商品に当たらず、リース開始日の円換算額を基礎に減価償却すると整理される(同 一1、一2(1))。
- 在外子会社のリースは連結時に使用権資産も決算時の相場で換算し、差額は為替換算調整勘定とする(同 三1、三4)。
- 為替変動によるリース負債の増減は、指数又はレート連動のリース料の見直しと異なり、使用権資産に加減しない。
外貨建リースは、契約通貨・決済条件・拠点の法的形態によって処理が分かれ、個別の判断が必要になる場面が少なくありません。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。公認会計士事務所プライムパートナーズ/株式会社プライムパートナーズコンサルティングでは、新リース会計基準の適用に向けた契約の洗い出しから会計方針の整理まで支援しています。
新リース会計基準対応の無料相談はこちら参考文献
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
- 企業会計基準委員会 企業会計審議会 外貨建取引等会計処理基準
- 企業会計基準委員会 移管指針第2号 外貨建取引等の会計処理に関する実務指針
よくある質問
使用権資産を決算時の為替相場で換算し直さないのはなぜですか。
外貨建取引等会計処理基準が決算時に換算し直す対象として列挙しているのは、外国通貨、外貨建金銭債権債務、外貨建有価証券、外貨建デリバティブ取引等の金融商品です(外貨建取引等会計処理基準 一2(1))。使用権資産は原資産を使用する権利を表す資産で、これらに当たらないため、取引発生時の円換算額のまま据え置くと整理されます(同 一1)。外貨建リースだけを扱った個別の定めはなく、一般的な定めの当てはめです。
リース負債の換算で生じた為替差損益はどこに表示しますか。
決済差損益と換算差損益をあわせて為替差損益とし、差益と差損を相殺した純額で、原則として営業外損益に表示します。経常取引以外の取引から生じ金額に重要性がある場合などは、特別損益に表示します(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第28項)。
外貨建リースのリース負債を為替予約でヘッジできますか。
外貨建金銭債権債務と為替予約等との関係が金融商品に係る会計基準のヘッジ会計の要件を充たしている場合には、ヘッジ会計を適用できるとされています(外貨建取引等会計処理基準 一1、一2(1))。リース負債を外貨建金銭債務として扱う以上、この定めの対象になると考えられますが、要件の充足は個別に確認が必要です。
在外子会社の使用権資産も取得時の相場で換算しますか。
いいえ。在外子会社の財務諸表を連結のために換算するときは、使用権資産を含む資産及び負債を決算時の為替相場で換算し、換算差額は為替換算調整勘定とします(外貨建取引等会計処理基準 三1、三4)。取得時の相場で据え置くのは、本社や在外支店が外貨建取引として計上した使用権資産です。
新リース会計基準はいつから適用されますか。
2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。




