在外支店の換算【計算例】本支店合併で使う為替相場と換算差額
目次
- 在外支店の換算の基本的な考え方
- 本店と同様に処理する原則とテンポラル法
- 本支店合併で認められる2つの特例
- 項目別の換算相場一覧
- 決算時の為替相場の統一と平均相場の使用制限
- 本支店合併の計算例
- 設例の前提(米国支店の試算表と為替相場)
- 貸借対照表項目の換算と本店勘定の照合
- 損益項目の換算と為替差損益の算定
- 換算差額を含む決算振替と合併時の相殺仕訳
- 特例を使う場合の差額と重要性の判断
- すべての貸借対照表項目を決算時相場で換算した場合
- 重要性の判断基準の当てはめ
- 在外支店の棚卸資産の評価
- 在外子会社の換算との違い
- 為替差損益の表示と決算前の確認事項
- 適用時期と改正の経緯
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 在外支店の換算差額を純資産(為替換算調整勘定)に計上できますか。
- 期中平均相場は年間平均でなく月次平均でもよいですか。
- 換算の特例を使えるかどうかの重要性は、どのように判断しますか。
- 決算日に為替相場が急変した場合、平均相場で換算できますか。
- 駐在員事務所にも在外支店の換算方法を適用しますか。
在外支店の財務諸表は、原則として本店と同じ方法で項目ごとに換算し、本店と異なる方法で換算したために生じた差額は当期の為替差損益として処理します。在外子会社のように為替換算調整勘定として純資産に計上することはありません。在外支店は本店と同じ会社の一部であり、その財務諸表は個別財務諸表の構成要素になるためです。
とはいえ、決算の現場で迷うのは「どの科目をどの相場で換算するか」「本店勘定と支店勘定をどう合わせるか」「出てきた差額をどう仕訳するか」という具体的な手順です。本稿では、米ドル建ての支店試算表を使った自社作例で本支店合併の換算を最後まで計算し、特例を使った場合の差額と重要性の判断まで確認します。
在外支店の換算の基本的な考え方
本店と同様に処理する原則とテンポラル法
在外支店における外貨建取引は、原則として本店と同様に処理します(外貨建取引等会計処理基準 二)。つまり、在外支店の現金預金や売掛金・買掛金は本店の外貨建金銭債権債務と同じく決算時の為替相場で換算し、棚卸資産や有形固定資産などの非貨幣性項目は取得時の為替相場のまま据え置きます(外貨建取引等会計処理基準 一1、一2(1))。
この「項目の性質に応じて換算相場を使い分ける」方法は、テンポラル法と呼ばれる考え方です。1995年の基準改訂の際、在外子会社等の換算は決算日レート法へ変更された一方、在外支店はテンポラル法の考え方が踏襲されました。在外支店の財務諸表は個別財務諸表の一部となるため、本店の外貨建項目の換算基準と整合させることが望ましいと判断されたためです(外貨建取引等会計処理基準の改訂について Ⅱ2・Ⅱ3)。
本支店合併で認められる2つの特例
外国通貨で表示された在外支店の財務諸表をもとに本支店合併財務諸表を作成する場合には、次の2つの特例が認められています(外貨建取引等会計処理基準 二)。
- 収益及び費用の換算の特例: 収益及び費用は期中平均相場で換算できます。ただし、収益性負債の収益化額(前受金から振り替えた売上など)と費用性資産の費用化額(減価償却費や売上原価のうち期首在庫部分など)は対象外で、元の資産・負債の換算相場によります(外貨建取引等会計処理基準 二1)。
- 外貨表示財務諸表項目の換算の特例: 非貨幣性項目の額に重要性がない場合は、支店における本店勘定等を除くすべての貸借対照表項目を決算時の為替相場で換算できます。この場合、損益項目も決算時の為替相場で換算して差し支えありません(外貨建取引等会計処理基準 二2)。
どちらの特例を使った場合も、本店と異なる方法で換算したことで生じた換算差額は当期の為替差損益として処理します(外貨建取引等会計処理基準 二3)。期中平均相場は年間平均に限らず、収益及び費用が帰属する月や半期などを算定期間とする平均相場を用いることもできます(外貨建取引等会計処理基準注解 注12)。
項目別の換算相場一覧
在外支店の試算表を換算するときに使う相場を、原則と特例に分けて整理すると次のとおりです。
| 外国通貨・外貨預金 | 決算時の為替相場(原則・特例とも同じ) |
|---|---|
| 売掛金・買掛金・貸付金 などの外貨建金銭債権債務 |
決算時の為替相場(原則・特例とも同じ) |
| 外貨建有価証券 | 原則は保有区分に応じた相場。満期保有目的の債券は決算時、売買目的有価証券とその他有価証券は外貨時価を決算時の相場で換算し、子会社株式・関連会社株式は取得時の相場 |
| 棚卸資産 | 原則は取得時の為替相場。簿価を切り下げる場合は外貨建ての時価を決算時の相場で換算した額。特例適用時は決算時の相場 |
| 有形固定資産・ 無形固定資産 |
原則は取得時の為替相場。特例適用時は決算時の相場 |
| 前払金・前受金などの 非貨幣性項目 |
原則は発生時の為替相場。特例適用時は決算時の相場 |
| 本店勘定 | 決算時の相場で一括換算する特例の対象外。実務では本店側の支店勘定の円貨額を付すことが多い |
| 売上高・仕入・ 販売費及び一般管理費 |
原則は取引発生時の為替相場。特例として期中平均相場。決算時の相場で一括換算する特例を適用する場合は決算時の相場も可 |
| 減価償却費・ 前受金からの収益振替額 |
元の資産・負債の換算相場(期中平均相場の特例の対象外) |
| 換算差額 | 当期の為替差損益 |
金銭債権債務と有価証券の扱いは外貨建取引等会計処理基準 一2(1)、棚卸資産の簿価切下げは同注解 注11、特例は同基準 二1・二2、換算差額は同基準 二3に定められています。本店勘定等は、決算時の相場で一括換算する特例の対象から除かれています(外貨建取引等会計処理基準 二2)。基準は本店勘定に付す円貨額を具体的に定めていませんが、本支店合併の際に相殺消去する内部勘定であることから、実務では相手側である本店の支店勘定と同じ円貨額を付す方法がとられることが多く、本稿の設例もこの方法によります。
決算時の為替相場の統一と平均相場の使用制限
在外支店の換算に使う決算時の為替相場は、原則として本店などが外貨建金銭債権債務の換算に使う相場と同一でなければなりません(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第11項)。支店は現地銀行の公表相場、本店は国内銀行のTTMというように相場がずれていると、同じ会社のドル建て債権が別の相場で換算されることになるため、決算前に社内で使う相場を一本化しておきます。
決算日前後一定期間の平均相場を決算時の為替相場として使うこともできますが(外貨建取引等会計処理基準注解 注8)、これは決算日の直物為替相場が異常と認められる場合に限られます。算定期間は決算日を含むおおむね1か月以内とされ、適用した場合は決算日の直物為替相場と使用した平均相場を注記する必要があります(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第11項)。
関連コラム外貨建取引の会計処理|為替換算と在外子会社の換算実務▸
本支店合併の計算例
設例の前提(米国支店の試算表と為替相場)
3月決算の日本企業が、当期首に米国支店を開設したケースで考えます。開設時に本店から900千ドルを送金し、本店の帳簿には支店勘定117,000千円(900千ドル × 130円)が計上されています。期首在庫はなく、本店との取引は開設時の送金だけとします。収益及び費用は期中平均相場の特例(外貨建取引等会計処理基準 二1)を使い、貸借対照表項目は原則どおり換算します。
支店の決算整理後残高試算表(単位:千ドル)は次のとおりです。
| 現金預金 | 借方 300 |
|---|---|
| 売掛金 | 借方 500 |
| 棚卸資産(期末在庫) | 借方 200 |
| 有形固定資産 | 借方 400(期首に450で取得し、減価償却後の帳簿価額) |
| 売上原価 | 借方 1,500(当期仕入1,700から期末在庫200を控除) |
| 減価償却費 | 借方 50 |
| 販売費及び一般管理費 | 借方 450 |
| 買掛金 | 貸方 350 |
| 本店 | 貸方 900 |
| 売上高 | 貸方 2,150 |
借方・貸方の合計はいずれも3,400千ドルで、ドル建ての当期純利益は150千ドルです。為替相場は、期首(送金・固定資産取得時)130円、期中平均145円、期末在庫の取得時148円、決算時150円とします。
貸借対照表項目の換算と本店勘定の照合
まず貸借対照表項目を換算します。金銭債権債務は決算時の相場、棚卸資産と有形固定資産は取得時の相場を使います(外貨建取引等会計処理基準 一2(1)、二)。
次に本店勘定です。設例では、本店勘定に900千ドル × 決算時の相場を付すのではなく、本店側の支店勘定の残高117,000千円をそのまま付します。実務では、この段階で本店の支店勘定と支店の本店勘定を照合し、未達取引(本店が送った商品や資金が支店に届いていない等)があれば先に整理してから換算に入ります。照合が済んでいないまま換算すると、未達分がすべて為替差損益に紛れ込んでしまうためです。
資産合計から負債と本店勘定を差し引いた残りが、円貨で見た支店の当期純利益になります。
損益項目の換算と為替差損益の算定
損益項目は期中平均相場で換算します。ただし、減価償却費は費用性資産の費用化額なので固定資産の取得時の相場で換算し、売上原価は仕入(期中平均相場)から期末在庫(取得時の相場)を差し引いて求めます(外貨建取引等会計処理基準 二1)。
貸借対照表から求めた当期純利益32,100千円と、損益項目を積み上げた23,100千円との差額が換算差額です。この差額は当期の為替差損益として処理します(外貨建取引等会計処理基準 二3)。
差益になったのは、支店が純額でドル建ての貨幣性資産(現金預金300+売掛金500−買掛金350=450千ドル)を持っている状態で、期中に円安が進んだためです。円高局面では同じ構造で為替差損が生じます。換算差額の符号を貨幣性項目の持ち高と相場の動きで説明できるかどうかは、換算の誤りを見つける簡便な検算になります。
換算差額を含む決算振替と合併時の相殺仕訳
換算後の支店損益を締め切る仕訳は次のとおりです(単位:千円)。為替差益9,000千円を収益側に含めることで、損益勘定へ振り替える当期純利益が貸借対照表側の32,100千円と一致します(外貨建取引等会計処理基準 二3)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 311,750 | 売上原価 | 216,900 |
| 為替差益 | 9,000 | 減価償却費 | 6,500 |
| 販売費及び一般管理費 | 65,250 | ||
| 損益 | 32,100 |
検算として、収益合計320,750千円(311,750+9,000)から費用合計288,650千円(216,900+6,500+65,250)を差し引くと、損益への振替額32,100千円と一致します。支店の利益は本店へ振り替えられ、本店の支店勘定と支店の本店勘定はいずれも149,100千円(117,000+32,100)で一致します。本支店合併財務諸表を作成する際は、この内部勘定を相殺消去します(単位:千円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 本店 | 149,100 | 支店 | 149,100 |
相殺後に本店勘定と支店勘定の差額が残る場合は、未達取引の整理漏れか、本店勘定を決算時の相場で換算してしまった可能性を疑います。合併後の損益計算書では、支店の為替差益9,000千円は本店の為替差損益と合算して表示します。
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特例を使う場合の差額と重要性の判断
すべての貸借対照表項目を決算時相場で換算した場合
同じ設例で、非貨幣性項目の額に重要性がないとして、本店勘定を除くすべての貸借対照表項目を決算時の相場で換算する特例(外貨建取引等会計処理基準 二2)を使ったとします。変わるのは棚卸資産と有形固定資産です。損益項目は先ほどと同じ方法で換算し、売上原価だけは期末在庫の換算額の変更に合わせて計算し直します。
特例を使うと当期純利益は40,500千円となり、貸借対照表項目を原則どおり換算した場合の32,100千円より8,400千円大きくなります。差額のほとんどは有形固定資産から生じており、取得時から決算時までの相場の変動が大きいほど、また非貨幣性項目が多いほど差は広がります。この場合も換算差額は当期の為替差損益です(外貨建取引等会計処理基準 二3)。
重要性の判断基準の当てはめ
特例を使えるかどうかの重要性は、非貨幣性項目を原則どおり換算した結果と特例で換算した結果との差額が、当期純損益と利益剰余金に及ぼす影響で判断します。また、特例の採用を予定しているすべての在外支店について、その差額を合計して判断します(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第30項)。
設例に当てはめると、判断の材料は次のように整理できます。
- 差額の算定: 原則と特例の当期純利益の差は8,400千円(棚卸資産400千円+有形固定資産8,000千円)です。
- 当期純損益への影響: 仮に本店を含む会社全体の当期純利益が280,000千円なら、差額は約3.0%に当たります。
- 利益剰余金への影響: 開設初年度なので差額は当期分だけですが、翌期以降は、保有を続ける非貨幣性項目について原則と特例の換算差の累計が利益剰余金に影響するため、当期分だけでなく累計額でも確認します。
- 他の在外支店との合算: 欧州やアジアにも支店があり特例の採用を予定しているなら、各支店の差額を合計した額で判断します。
なお、第30項は判断の物差しを示すだけで、何%以内なら重要性がないといった数値基準は置いていません。設例のように支店が固定資産を多く抱える場合や、相場が大きく動いた期は、差額が膨らみやすくなります。特例を採用するかどうかは、差額の試算結果を残したうえで、監査人とも協議しながら決めるのが実務的です。
在外支店の棚卸資産の評価
在外支店が外国通貨で記録している棚卸資産の簿価を切り下げる場合(基準の文言では低価基準を適用する場合や時価の著しい下落により評価額の引下げが求められる場合)は、外国通貨による時価または実質価額を決算時の為替相場で円換算した額によります(外貨建取引等会計処理基準注解 注11)。比較は円貨で行うので、外貨建ての時価が下がっていても円安で円貨額が帳簿価額を上回れば切下げは生じず、逆の場合もあります。
設例の期末在庫(外貨原価200千ドル、円貨の帳簿価額29,600千円)について、決算時の外貨建ての時価が195千ドルに下がっていたとします。
この場合の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。外貨建ての時価が198千ドルであれば、円換算額は29,700千円となって帳簿価額29,600千円を上回るため、切下げは不要です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 棚卸資産評価損 | 350 | 棚卸資産 | 350 |
関連コラム棚卸資産の評価に関する会計基準【仕訳例】収益性低下の簿価切下げと洗替法・切放法▸
在外子会社の換算との違い
海外拠点を支店で持つか子会社で持つかによって、換算の方法も差額の行き先も変わります。在外子会社等は連結財務諸表の作成や持分法の適用にあたって決算日レート法で換算し、換算差額は為替換算調整勘定とします(外貨建取引等会計処理基準 三1〜三4)。為替換算調整勘定の親会社持分は、連結貸借対照表の純資産の部に計上されます(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第41項)。
| 在外支店 | 在外子会社等 |
|---|---|
| 換算の考え方:テンポラル法(本店と同様) | 換算の考え方:決算日レート法 |
| 資産・負債:貨幣性項目は決算時、非貨幣性項目は取得時の相場 | 資産・負債:すべて決算時の相場 |
| 資本に当たる勘定:本店勘定は決算時の一括換算の対象外(実務では本店側の支店勘定の円貨額に合わせることが多い) | 資本:株式取得時の相場、取得後に生じた項目は発生時の相場 |
| 収益・費用:原則は取引発生時、特例で期中平均または決算時 | 収益・費用:原則は期中平均、決算時も可 |
| 換算差額:当期の為替差損益(損益計算書) | 換算差額:為替換算調整勘定(純資産の部) |
| 作成する財務諸表:本支店合併後の個別財務諸表 | 作成する財務諸表:連結財務諸表・持分法 |
在外子会社の収益・費用のうち親会社との取引から生じたものは親会社が換算に用いる相場で換算し、そこで生じた差額は当期の為替差損益とされています(外貨建取引等会計処理基準 三3)。支店から子会社へ組織を変える場合は、換算差額の計上先が損益から純資産へ移ることになるため、損益計画への影響もあわせて確認しておくと安心です。
関連コラム為替換算調整勘定の計算方法【計算例】在外子会社の換算と非支配株主持分▸
為替差損益の表示と決算前の確認事項
外貨建金銭債権債務等の決済差損益と換算差損益は、ともに為替差損益として差益と差損を相殺した純額で表示し、原則として営業外損益に計上します。発生要因が経常取引以外の取引で金額に重要性がある場合や、特殊な要因で異常かつ多額に発生した場合は、特別損益に表示します(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第28項)。在外支店の換算差額も当期の為替差損益として処理するため(外貨建取引等会計処理基準 二3)、合併後は本店の為替差損益と合算したうえで表示区分を判断します。
海外支店を持つ会社の決算で、換算の前に確認しておきたい点は次のとおりです。
- 本店の支店勘定と支店の本店勘定を照合し、未達取引を整理したか
- 本店と支店で使う決算時の為替相場を統一したか
- 固定資産台帳と在庫明細に、取得時の為替相場の情報が残っているか
- 減価償却費や前受金からの振替額を、期中平均相場で換算していないか
- 特例を採用する場合、原則との差額を試算し、重要性の判断資料を残したか
- 換算差額の方向(差益・差損)を、貨幣性項目の持ち高と相場の動きで説明できるか
上場準備会社では、海外支店の換算を現地任せにしたまま本店で数字を合算しているケースが少なくありません。取得時の相場の情報が残っていないと原則法で換算できず、監査で特例の適用要件を説明できないこともあるため、固定資産と在庫の取得時の相場を記録する仕組みを先に整えておくことをおすすめします。
適用時期と改正の経緯
外貨建取引等会計処理基準は、1979年に企業会計審議会が設定し、1995年と1999年に改訂されました。現行の基準は1999年10月22日の改訂によるもので、2000年4月1日以後開始する事業年度から適用されています(外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書 四1)。在外支店の2つの特例は、この1999年改訂で明確にされたものです(外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書 三7)。
実務指針は、1996年に日本公認会計士協会が会計制度委員会報告第4号として公表し、その後、関連する会計基準の新設・改正にあわせて改正が重ねられてきました。移管前の最後の改正は、2022年10月の法人税等に関する会計基準等の改正に対応するものです(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第1-7項)。その後、2024年7月に企業会計基準委員会へ移管されて移管指針第2号となり、公表日以後適用されています(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第47-15項)。
まとめ
- 在外支店は本店と同様に、項目の性質に応じた相場で換算する(テンポラル法の考え方)
- 本支店合併では、収益・費用の期中平均相場と、非貨幣性項目に重要性がない場合の決算時相場による一括換算の2つの特例がある
- 本店勘定は決算時の相場で一括換算する特例の対象外で、実務では本店側の支店勘定の円貨額に合わせることが多い。換算差額は当期の為替差損益として処理する
- 特例を使うかどうかは、原則との差額が当期純損益と利益剰余金に及ぼす影響を、全支店の合計額で判断する
- 在外子会社と違い、換算差額が為替換算調整勘定として純資産に計上されることはない
在外支店の換算は、相場の選び方そのものよりも、本店勘定の照合や取得時の相場の管理といった決算の段取りで差がつく論点です。特例の重要性判断や海外拠点の決算体制の整備など、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
在外支店の換算差額を純資産(為替換算調整勘定)に計上できますか。
できません。在外支店で本店と異なる方法により換算したことで生じた換算差額は、当期の為替差損益として処理します(外貨建取引等会計処理基準 二3)。為替換算調整勘定は、在外子会社等の財務諸表を連結や持分法のために換算したときに生じる差額を処理する勘定です(外貨建取引等会計処理基準 三4)。
期中平均相場は年間平均でなく月次平均でもよいですか。
使えます。収益及び費用の換算に用いる期中平均相場には、その収益及び費用が帰属する月や半期などを算定期間とする平均相場を用いることができます(外貨建取引等会計処理基準注解 注12)。季節によって売上が大きく偏る支店では、月次平均で換算したほうが実態に近づきやすくなります。
換算の特例を使えるかどうかの重要性は、どのように判断しますか。
非貨幣性項目を原則どおり換算した結果と特例で換算した結果との差額が、当期純損益と利益剰余金に及ぼす影響で判断します。特例の採用を予定しているすべての在外支店の差額を合計して判断する点にも注意が必要です(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第30項)。具体的な数値基準は示されていないため、試算結果を残したうえで判断します。
決算日に為替相場が急変した場合、平均相場で換算できますか。
決算日の直物為替相場が異常と認められる場合に限り、決算日を含むおおむね1か月以内の平均相場を決算時の為替相場として使えます。この場合は、決算日の直物為替相場と使用した平均相場を注記します(外貨建取引等会計処理基準注解 注8、外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第11項)。在外支店の換算でも、本店と同じ相場を使うのが原則です。
駐在員事務所にも在外支店の換算方法を適用しますか。
外貨建取引等会計処理基準や移管指針第2号には、駐在員事務所を名指しした定めはありません。本店と同一の法人の一部である点は在外支店と共通するため、在外支店と同様に本店に準じた処理を検討することが考えられますが、記帳の方法や拠点の実態によって扱いが変わり得ます。監査人とも協議のうえ、個別に判断してください。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



