減資で会社法監査は不要か【判定表】5億円未満にした後の会計監査人
目次
- 減資後に会社法監査が不要になるかの判定表
- 判定時点は「最終事業年度」の貸借対照表
- 最終事業年度の意味
- 取締役会の承認で確定する会社の場合
- 減資の効力発生日は期末より前に置く
- 3月決算の会社が減資した場合のスケジュール例
- 減資しても大会社に残るケース
- 負債200億円基準
- 委員会型の機関設計
- 会計監査人の任期満了と定款変更の要否
- 定款の定めを残すと任意設置として監査が続く
- 定款変更の効力発生で任期が満了する
- 「再任しない」決議だけでは足りない
- 変更登記
- 会計監査人を外すときにあわせて見直す機関と開示
- 判断でつまずきやすい論点
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 期中に減資すれば、その事業年度の会社法監査は不要になりますか。
- 資本金を5億円未満にすれば、会計監査人は自動的に退任しますか。
- 資本金を5億円未満にしても、会計監査人が必要な場合はありますか。
- 減資の手続には、どのくらいの期間を見込めばよいですか。
減資で資本金を5億円未満にしても、会社法監査はその日から不要になるわけではありません。大会社かどうかは最終事業年度に係る貸借対照表で判定するため、資本金5億円未満の貸借対照表が承認(または報告)されて初めて資本金基準を外れます(会社法 第2条第6号、第24号)。さらに負債の合計額が200億円以上なら大会社のままで、会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止しない限り、会計監査人による監査は続きます。
「期中に減資を済ませれば今期の監査は要らないのか」「定時株主総会でどの議案を出せば会計監査人を外せるのか」。会計監査人の負担を見直したい会社から寄せられる疑問は、ほぼこの2点に集約されます。この記事では、減資後の会計監査人の扱いを判定表にまとめ、3月決算の会社を例に、どの事業年度から監査が不要になるかを時系列で確認します。
減資後に会社法監査が不要になるかの判定表
上から順に確認し、「監査は続く」に1つでも当たれば、その事業年度は会計監査人の監査を受けます。すべて通過した会社だけが、定款変更によって会計監査人を置かない機関設計へ移れます。
| 減資の効力発生日が 事業年度の末日より後 |
監査は続く。期末の貸借対照表の資本金が5億円以上のままなので、翌事業年度も大会社に当たる(会社法 第2条第6号イ、第447条第1項第3号) |
|---|---|
| 資本金5億円未満の貸借対照表が まだ承認・報告されていない |
監査は続く。最終事業年度が切り替わっていないため大会社のまま(会社法 第2条第24号、第328条) |
| 最終事業年度の負債の合計額が 200億円以上 |
監査は続く。資本金の額にかかわらず大会社に当たる(会社法 第2条第6号ロ) |
| 監査等委員会設置会社 又は指名委員会等設置会社 |
監査は続く。規模にかかわらず会計監査人の設置が必要(会社法 第327条第5項) |
| 会計監査人を置く旨の 定款の定めが残っている |
監査は続く。会計監査人設置会社として計算書類の監査を受ける(会社法 第326条第2項、第436条第2項第1号) |
| 上のいずれにも当たらない | 定款の定めを廃止すれば、その効力発生時に会計監査人の任期が満了し、会社法監査は不要になる(会社法 第338条第3項) |
判定表の要点は、資本金の数字そのものではなく「どの貸借対照表で判定するか」と「定款に何が書いてあるか」の2つです。資本金を下げただけでは、法律上の義務が外れても、定款に基づく任意設置の状態が残ります。
なお、上場会社など金融商品取引法の監査証明を受ける会社は、会社法とは別の法律に基づいて監査を受けます(金融商品取引法 第193条の2第1項)。減資によって外れる可能性があるのは会社法上の会計監査人の監査だけで、金融商品取引法の監査には影響しません。
判定時点は「最終事業年度」の貸借対照表
最終事業年度の意味
大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であるか、負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である株式会社をいいます(会社法 第2条第6号イ・ロ)。この最終事業年度は、計算書類について定時株主総会の承認を受けた事業年度のうち、最も遅いものを指します(会社法 第2条第24号、第438条第2項)。
つまり、期中に資本金を4億円に下げても、その時点の最終事業年度は前期のままです。前期末の資本金が5億円以上であれば、当期中はずっと大会社として扱われ、会計監査人を置く義務も続きます(会社法 第328条)。
取締役会の承認で確定する会社の場合
会計監査人設置会社では、会計監査報告が無限定適正意見であることなどの要件を満たすと、計算書類は取締役会の承認で確定し、定時株主総会には報告するだけになります(会社法 第439条、会社計算規則 第135条)。この場合、最終事業年度は取締役会の承認によって切り替わり、大会社の判定に使う貸借対照表は定時株主総会に報告されたものとされています(会社法 第2条第6号イ、第24号、第436条第3項)。報告の前後で判定が揺れないよう、定時株主総会では計算書類の報告を済ませてから定款変更議案を扱うのが確実です。
反対に、会計監査報告に除外事項が付くなど要件を満たさないときは、計算書類は定時株主総会の承認で確定します(会社法 第438条第2項)。このときは同じ総会の中で承認議案が可決されるまで大会社の状態が続くため、計算書類の承認議案を先に決議し、そのあとで定款変更議案を扱う順序にしておくと、判定のずれが生じません。
減資の効力発生日は期末より前に置く
資本金の額の減少は、株主総会で減少額と効力発生日などを定め、原則として特別決議によります(会社法 第447条第1項、第309条第2項第9号)。定時株主総会で欠損の額を超えない範囲で減資する場合は、普通決議で足ります(会社法 第309条第2項第9号イ・ロ)。
あわせて債権者異議手続が必要です。官報公告と、知れている債権者への各別の催告を行い、異議を述べられる期間は1か月以上としなければなりません(会社法 第449条第1項、第2項)。手続が終わっていなければ、決議で定めた効力発生日が来ても減資の効力は生じません(会社法 第449条第6項)。期末の貸借対照表に5億円未満の資本金を載せたいなら、公告の準備期間も見込んで、期末の2か月以上前には手続を始めておく必要があります。
効力が生じたら、資本金の額の変更登記を2週間以内に申請します(会社法 第911条第3項第5号、第915条第1項)。
3月決算の会社が減資した場合のスケジュール例
資本金6億円・負債の合計額80億円の非公開会社(監査役設置会社・会計監査人設置会社)が、2026年12月1日を効力発生日として資本金を4億円に減らす場合を考えます。会計監査報告は無限定適正意見で、計算書類は取締役会の承認で確定する前提です。
| 時期 | 会社法上の扱い |
|---|---|
| 2026年10月 | 減資を決議し、官報公告と債権者への催告を行う。前期末の資本金6億円で判定するため大会社のまま |
| 2026年12月1日 | 減資の効力が生じ資本金4億円に。変更登記を申請するが、大会社の判定はまだ変わらない |
| 2027年3月期の決算 | 会計監査人の監査を受ける。減資した事業年度も会計監査人設置会社であり、大会社でもあるため |
| 2027年5月の取締役会 | 資本金4億円の計算書類を承認し、最終事業年度が2027年3月期に切り替わる |
| 2027年6月の定時株主総会 | 計算書類を報告して資本金基準を外れたうえで、会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止する決議。効力発生時に会計監査人の任期が満了 |
| 2028年3月期以降 | 負債200億円未満などほかの要件にも当たらなければ、会計監査人の監査は不要 |
この例で分かるとおり、減資した事業年度の監査は必ず残ります。「今期の監査報酬を削りたい」という目的で期中に減資しても、効果が出るのは翌事業年度からです。監査契約の更新時期や報酬の見積りも、この1年のずれを前提に組み立てます。
効力発生日を2027年4月以降にずらすと、2027年3月期末の資本金は6億円のままなので、2028年3月期も大会社として監査を受けることになります。年度をまたぐかどうかで、監査が必要な期間が1年延びる点に注意が必要です。
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減資しても大会社に残るケース
負債200億円基準
大会社の要件は資本金基準と負債基準のいずれかを満たせば足ります(会社法 第2条第6号)。減資で資本金を5億円未満にしても、最終事業年度の負債の合計額が200億円以上であれば大会社に当たり、会計監査人の設置義務は外れません(会社法 第2条第6号ロ、第328条)。
減資を検討する段階で、負債の部の合計額が200億円に近いかどうかを先に確認しておくと、手続を進めたあとで目的を達成できなかったという事態を避けられます。借入金の増加や設備投資の計画がある会社では、翌期以降の見込みも含めて判定しておくと安心です。
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委員会型の機関設計
監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社は、資本金や負債の額にかかわらず会計監査人を置かなければなりません(会社法 第327条第5項)。これらの機関設計のまま減資しても会計監査人は外せないため、会計監査人をなくすには、機関設計そのものを見直す必要があります。
会計監査人の任期満了と定款変更の要否
定款の定めを残すと任意設置として監査が続く
会計監査人は、定款の定めによって置く機関です(会社法 第326条第2項)。大会社でなくなっても定款の定めは自動的には消えないため、何もしなければ任意設置の会計監査人設置会社として、計算書類とその附属明細書について会計監査人の監査を受け続けます(会社法 第436条第2項第1号)。
金融機関や取引先との関係で監査を続けたい会社は、定款をそのままにしておけば足ります。監査を外すかどうかは、法律上の義務とは別に、会社が選べる経営判断です。
定款変更の効力発生で任期が満了する
会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止する定款変更をすると、会計監査人の任期は、その定款変更の効力が生じた時に満了します(会社法 第338条第3項)。定款変更は株主総会の特別決議によります(会社法 第466条、第309条第2項第11号)。
通常、会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法 第338条第1項)。資本金5億円未満の計算書類を報告(または承認)する定時株主総会で定款変更を決議すれば、任期の満了を待たずに、その総会で会計監査人の地位を終わらせることができます。
「再任しない」決議だけでは足りない
定時株主総会で別段の決議をしなければ、会計監査人は再任されたものとみなされます(会社法 第338条第2項)。再任しない旨の議案の内容は、監査役設置会社では監査役が決定します(会社法 第344条第1項)。
ただし、定款の定めを残したまま再任しない決議だけをすると、会社は会計監査人設置会社のまま会計監査人が欠けた状態になります。この場合、遅滞なく後任が選任されなければ、監査役は一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければなりません(会社法 第346条第4項)。会計監査人を置かない機関設計へ移るなら、定款変更とセットで進めます。
変更登記
会計監査人設置会社である旨と会計監査人の氏名又は名称は登記事項です(会社法 第911条第3項第19号)。定款の定めを廃止したら、2週間以内に本店所在地で変更の登記をします(会社法 第915条第1項)。
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会計監査人を外すときにあわせて見直す機関と開示
大会社でなくなり、会計監査人も置かなくなると、それに連動していた義務も変わります。定時株主総会の議案を組むときは、次の項目をまとめて確認します。
| 監査役会 | 公開会社である大会社に義務づけられていた。大会社でなくなれば任意となり、定款変更で置かないこともできる(会社法 第328条第1項、第326条第2項) |
|---|---|
| 監査役 | 取締役会設置会社は原則として引き続き必要(会社法 第327条第2項) |
| 会計監査限定の監査役 | 非公開会社で、監査役会と会計監査人をどちらも置かなくなれば、定款で監査範囲を会計に限定できる(会社法 第389条第1項) |
| 決算公告 | 大会社は貸借対照表と損益計算書、大会社でなければ貸借対照表を公告する。有価証券報告書の提出会社は公告不要(会社法 第440条第1項、第4項) |
| 連結計算書類 | 事業年度の末日に大会社で有価証券報告書の提出義務がある会社は作成義務がある。会計監査人を置かなければ作成できない(会社法 第444条第1項、第3項) |
監査役会をなくす場合は監査役会設置会社である旨の登記も変わります(会社法 第911条第3項第18号)。会計監査人の廃止と同じ総会でまとめて決議すれば、登記申請も1回で済みます。
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判断でつまずきやすい論点
- 減資した事業年度の監査を省けると考えてしまう: 期中の減資では最終事業年度が切り替わらないため、その事業年度の計算書類は会計監査人の監査を受けます(会社法 第2条第24号、第436条第2項第1号)。
- 債権者異議手続の期間を見誤る: 異議申述期間は1か月以上必要で、手続が終わらなければ効力は生じません(会社法 第449条第2項、第6項)。期末直前に始めると、効力発生が翌事業年度にずれ込むおそれがあります。
- 総会の議案の順序: 計算書類を定時株主総会で承認する会社では、承認議案の可決前は大会社のままです(会社法 第2条第24号、第438条第2項)。定款変更議案は承認議案のあとに置きます。取締役会の承認で確定する会社も、計算書類の報告を先に済ませます。
- 将来の増資: 再び期末の資本金が5億円以上になれば、その貸借対照表が承認された時点から大会社に戻り、会計監査人を選任し直すことになります(会社法 第2条第6号イ、第328条)。資本政策の見通しとあわせて判断します。
- 減資の会計処理: 減少した資本金をその他資本剰余金に振り替えるか、欠損填補に充てるかで、純資産の部の表示が変わります。仕訳は別のコラムで確認できます。
関連コラム減資の会計処理|資本金の額の減少と欠損填補の仕訳▸
まとめ
- 大会社の判定は最終事業年度に係る貸借対照表で行うため、期中に減資しても当期は大会社のまま(会社法 第2条第6号、第24号)
- 計算書類が取締役会の承認で確定する会社では、その承認の時点で最終事業年度が切り替わる(会社法 第439条、会社計算規則 第135条)
- 減資には原則として特別決議と1か月以上の債権者異議手続が必要で、効力発生日は期末より前に置く(会社法 第447条第1項、第449条)
- 負債の合計額が200億円以上なら、資本金を減らしても大会社に残る(会社法 第2条第6号ロ)
- 定款の定めを残すと任意設置として監査が続き、廃止の定款変更の効力発生で会計監査人の任期が満了する(会社法 第326条第2項、第338条第3項)
- 監査役会・決算公告・連結計算書類など、連動して変わる項目も同じ総会で整理する
減資で会計監査人を外すかどうかは、負債の見通しや資本政策、取引先・金融機関との関係によって判断が分かれます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。公認会計士事務所プライムパートナーズ/株式会社プライムパートナーズコンサルティングでは、大会社の判定や会計監査人の選任・見直しに伴う会社法監査のご相談を承っています。
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よくある質問
期中に減資すれば、その事業年度の会社法監査は不要になりますか。
不要になりません。大会社の判定は最終事業年度に係る貸借対照表で行うため、期中に資本金を5億円未満にしても、その事業年度は前期の貸借対照表で大会社と判定されます(会社法 第2条第6号イ、第24号)。減資した事業年度の計算書類は会計監査人の監査を受け、監査が不要になるのは翌事業年度からです。
資本金を5億円未満にすれば、会計監査人は自動的に退任しますか。
自動的には退任しません。会計監査人を置く旨の定款の定めが残っている限り、任意設置の会計監査人設置会社として監査が続き、定時株主総会で別段の決議がなければ再任されたものとみなされます(会社法 第326条第2項、第338条第2項)。定款の定めを廃止する定款変更の効力が生じた時に、会計監査人の任期は満了します(会社法 第338条第3項)。
資本金を5億円未満にしても、会計監査人が必要な場合はありますか。
最終事業年度の負債の合計額が200億円以上の会社は大会社に当たり、会計監査人が必要です(会社法 第2条第6号ロ、第328条)。監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社も、規模にかかわらず会計監査人を置かなければなりません(会社法 第327条第5項)。
減資の手続には、どのくらいの期間を見込めばよいですか。
株主総会の決議に加えて、官報公告と知れている債権者への催告による債権者異議手続が必要で、異議を述べられる期間は1か月以上です(会社法 第447条第1項、第449条第2項)。手続が終わるまで効力は生じないため(会社法 第449条第6項)、公告の準備期間を含めて、効力発生日の2か月以上前には着手しておくと安全です。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



