過年度法人税等【仕訳例】税務調査の追徴税額・加算税と還付の表示
目次
税務調査で指摘を受けて修正申告をした、あるいは更正の請求が認められて税金が戻ってくる。こうした過年度の税金の増減は、当期の決算でどの科目に、いつ計上すればよいのでしょうか。結論から言うと、更正・修正申告による追徴税額は、加算税・延滞税も含めて当期の損益に計上し、損益計算書では税金費用の科目の次に「過年度法人税等」などの科目で表示します(法人税等に関する会計基準 第6項、第15項)。
ただし、追徴の原因が過去の決算の誤り(誤謬)であれば、当期の損益ではなく修正再表示で処理します。本記事では、追徴・還付・課税を争う場面ごとに計上の可否を判定表で整理し、自社作例の仕訳と表示例で確認します。
過年度法人税等の判定表
過年度の税金の追徴・還付は、企業会計基準第27号(2026年の改正で名称が「法人税等に関する会計基準」に改められています)の第6項から第8項が会計処理を定めています。場面ごとの扱いを先に一覧で示します。
| 追徴の原因が 過去の決算の誤謬 |
過年度法人税等として当期の損益に計上せず、過去の財務諸表を修正再表示する |
|---|---|
| 追徴される可能性が高く、 金額を合理的に見積れる |
原則として追徴税額を当期の損益に計上する |
| 追徴の可能性が高いとは いえない、又は見積れない |
追徴税額は計上しない |
| 加算税・延滞税・ 延滞金・加算金 |
追徴税額に含めて処理する |
| 還付が確実に見込まれ、 金額を合理的に見積れる |
還付税額を当期の損益に計上する |
| 追徴税額を納付し、 不服として法的手段を取る |
納付額は損益に計上し、還付が確実に見込まれ合理的に見積れる段階で還付税額を損益に計上する |
| 追徴税額・還付税額の 重要性が乏しい |
区分して表示せず、法人税等に含めて表示できる |
追徴は「可能性が高い」、還付は「確実に見込まれる」と、計上に必要な確からしさが異なる点が実務上の分かれ目です(法人税等に関する会計基準 第6項、第7項、第33項)。延滞税・加算税などの附帯税も追徴税額に含めて処理するため、租税公課として販売費及び一般管理費に計上する処理とは区別します(法人税等に関する会計基準 第6項)。
誤謬に当たるかどうかの見極め
判定表の1行目にあるとおり、追徴の原因が誤謬に当たるときは第6項から第8項の対象から外れます(法人税等に関する会計基準 第6項、第7項、第8項)。誤謬とは、原因となる行為が意図的かどうかにかかわらず、財務諸表の作成時に入手可能な情報を使わなかった、又は誤って使ったことによる誤りをいいます(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 第4項(8))。
誤謬に当たる場合は、表示する最も古い期間の期首の資産・負債・純資産に累積的影響額を反映し、各期間の財務諸表に影響額を反映する修正再表示を行います(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 第21項)。修正再表示をしたときは、誤謬の内容や影響額を注記します(同 第22項)。
実務では、税務調査の指摘事項を1項目ずつ「申告時点で入手できた情報を見落としていたか」「税務上の解釈が分かれる論点で当局と見解が異なったか」に分けて検討すると整理しやすくなります。前者は誤謬の検討対象になり、後者は通常、更正等による追徴として当期の損益で処理する論点になります。重要性は金額と質の両面から判断します(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 第35項)。
関連コラム誤謬の訂正【仕訳例】修正再表示と前期損益修正の違い▸
追徴税額の仕訳例
更正等により追加で徴収される可能性が高く、その金額を合理的に見積れる場合、追徴税額を当期の損益に計上します。加算税・延滞税・延滞金・加算金は追徴税額に含めます(法人税等に関する会計基準 第6項)。未納付の額は、当期分の未払法人税等に含めて表示します(同 第17項)。
前提:3月決算のA社は、決算日までに税務調査で前々期の費用計上時期について指摘を受け、修正申告を行う方針を固めました。見積額は、本税(法人税・地方法人税・住民税法人税割・事業税所得割の合計)3,000、加算税300、延滞税・延滞金90です。誤謬には当たらないと判断しています(単位:千円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 過年度法人税等 | 3,000 | 未払法人税等 | 3,390 |
| 過年度法人税等(加算税) | 300 | ||
| 過年度法人税等(延滞税等) | 90 |
勘定の内訳を分けて記帳しておくと、税務申告書の作成や注記の検討で内容を追いやすくなります。財務諸表では3行をまとめて「過年度法人税等」3,390として表示します。翌期に納付した時点では、未払法人税等3,390を取り崩して現金預金を減らします。
還付税額の仕訳例
更正の請求などで税金が戻る場合は、還付されることが確実に見込まれ、その金額を合理的に見積れる段階で還付税額を当期の損益に計上します(法人税等に関する会計基準 第7項)。受領していない還付税額は、当期分の未収還付法人税等に含めて表示します(同 第18項)。
前提:B社は前期に、税務上の取扱いが分かれる費用を保守的に損金不算入として申告していました。その後、更正の請求を行い、決算日までに税務署から減額更正の通知を受けて還付額1,200が確定しています(単位:千円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 未収還付法人税等 | 1,200 | 過年度法人税等 | 1,200 |
還付の原因が、前期の決算時に入手できた情報を見落としていたことによる税額計算の誤りである場合は、追徴と同じく誤謬に当たらないかを確認します。誤謬に当たるときは、還付税額を当期の損益に計上せず修正再表示で処理します(法人税等に関する会計基準 第7項)。
課税を不服として争う場合の仕訳例
追徴の内容を不服として法的手段を取る場合でも、会社が争う意思を持っているだけで納付額を資産(仮払金など)に計上することはできません。追徴税額は原則として損益に計上します(法人税等に関する会計基準 第6項、第34項)。そのうえで、還付されることが確実に見込まれ、還付税額を合理的に見積れる段階で、還付税額を損益に計上します(同 第8項)。
前提:C社は更正を受けて追徴税額2,000(加算税・延滞税を含む)を納付し、その内容を不服として法的手段を取りました。翌期に会社の主張が認められ、全額の還付が確実になりました。納付時と還付が確実になった時点の仕訳を順に示します(単位:千円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 過年度法人税等 | 2,000 | 現金預金 | 2,000 |
| 未収還付法人税等 | 2,000 | 過年度法人税等 | 2,000 |
還付の可能性は、法的手段を取った後の経緯や当局とのやり取りなど、企業の置かれた状況を総合的に見て判断します(法人税等に関する会計基準 第35項)。「勝てる見込みがある」という社内の見立てだけで還付税額を先に計上しない点に注意が必要です。
損益計算書・貸借対照表の表示
当期の損益に計上した追徴税額・還付税額は、損益計算書の税金費用の科目(「法人税、住民税及び事業税」など)の次に、その内容を示す科目で表示します。金額の重要性が乏しい場合は、税金費用の科目に含めて表示できます(法人税等に関する会計基準 第15項)。追徴の例(前提はA社、当期分の税金費用15,000)を当てはめると、次のようになります(単位:千円)。
| 税引前当期純利益 | 50,000 |
|---|---|
| 法人税、住民税及び事業税 | 15,000 |
| 過年度法人税等 | 3,390 |
| 当期純利益 | 31,610 |
貸借対照表では、追徴税額のうち未納付の額は当期分の税金と合わせて未払法人税等に、還付税額のうち未受領の額は未収還付法人税等に含めます(法人税等に関する会計基準 第17項、第18項)。過年度分だけを別の科目で表示する必要はありません。連結財務諸表も、個別財務諸表の取扱いに準じて処理します(同 第2-3項)。
関連コラム法人税等会計基準(第27号)|会計処理と表示区分の実務▸
適用時期と2026年改正の影響
追徴・還付の取扱いは、2017年に企業会計基準第27号が公表された日から適用されています(法人税等に関する会計基準 第19項)。その後、2022年改正(その他の包括利益に対して課される税金の計上区分。2024年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用)、2025年改正(特別法人事業税の取扱いの明確化。2025年4月1日以後最初に開始する事業年度の期首から適用)が行われ、いずれも適用されています(同 第20-2項、第20-4項)。
最新の2026年改正では、住民税(均等割)、事業税(付加価値割)、事業税(資本割)が課税対象利益を基礎とする税金から区分されました。これらの更正等による追徴税額・還付税額は、第6項から第8項に準じて処理したうえで、損益計算書の「法人税等」に含めず、内容に応じた区分に表示することになります(法人税等に関する会計基準 第8-3項、第18-2項)。未納付額・未受領額も、重要性が乏しい場合を除き、未払法人税等・未収還付法人税等以外の科目で表示します(同 第18-3項)。2026年改正は2028年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用され、公表日以後に開始する事業年度であれば、その期首から前倒しで適用することも認められています(同 第20-7項)。
関連コラム法人税等会計基準の2026年改正【一覧表】均等割・外形標準課税の表示▸
上場準備・監査対応で確認したいこと
上場準備中の会社は、税務調査の結果が監査対象期間の財務諸表に直接響きます。決算の時点で次の点を確認しておくと、監査人との協議が円滑になります。
- 決算日時点で調査が進行中の場合、指摘事項ごとに追徴の可能性と見積額を整理し、計上するかどうかの判断根拠を残しているか
- 指摘事項が申告書の誤りにとどまるのか、財務諸表の会計処理の誤り(誤謬)を含むのかを区別しているか
- 加算税・延滞税を租税公課に計上していないか(追徴税額に含めて処理する)
- 課税を不服として争っている追徴税額の納付額を、仮払金などの資産に計上していないか
- 2026年改正を早期適用する場合、均等割・付加価値割・資本割の追徴分を法人税等から切り分けているか
税務調査の指摘は、決算・申告の体制に改善点があるサインでもあります。誤謬に当たる指摘が続く場合は、決算整理の手順や税務申告のレビュー体制を見直す材料として扱うのが実務的です。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
お問い合わせはこちらまとめ
- 更正・修正申告による追徴税額は、追徴の可能性が高く合理的に見積れる場合、原則として当期の損益に計上する
- 加算税・延滞税・延滞金・加算金は追徴税額に含め、税金費用の科目の次に「過年度法人税等」などで表示する
- 還付税額は、還付が確実に見込まれ合理的に見積れる段階で計上する(追徴より計上の要件が厳しい)
- 課税を不服として法的手段を取る場合も、納付した追徴税額は原則として損益に計上し、仮払金にしない
- 追徴の原因が誤謬なら、当期の損益ではなく修正再表示で処理する
- 2026年改正(2028年4月1日以後開始年度から適用)で、均等割・付加価値割・資本割の追徴分は法人税等と区分して表示する
参考文献
よくある質問
加算税や延滞税は租税公課として販売費及び一般管理費に計上してよいですか。
更正等による追徴に伴う延滞税・加算税・延滞金・加算金は、追徴税額に含めて処理します(法人税等に関する会計基準 第6項)。そのため、本税と合わせて過年度法人税等などの科目で表示し、租税公課には含めません。
税務調査が決算日時点で終わっていない場合も計上が必要ですか。
決算日時点で調査が終わっていなくても、追加で徴収される可能性が高く、追徴税額を合理的に見積れるなら当期の損益に計上します(法人税等に関する会計基準 第6項)。可能性が高いとはいえない段階や、金額を見積れない段階では計上しません。
追徴と還付で計上のタイミングが違うのはなぜですか。
偶発事象を負債・資産として認識する際の一般的な考え方にならい、追徴は「可能性が高い」場合、還付は「確実に見込まれる」場合に計上するとされているためです(法人税等に関する会計基準 第32項、第33項)。還付のほうが計上に必要な確からしさが高く設定されています。
追徴の原因が過去の決算の誤りだった場合はどう処理しますか。
誤謬に該当する場合は、過年度法人税等として当期の損益に計上する取扱いの対象外です(法人税等に関する会計基準 第6項)。過去の財務諸表を修正再表示し、誤謬の内容や影響額を注記します(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 第21項、第22項)。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



