03-6773-5062

受付時間 平日 10:00〜18:00

お問い合わせ フォームは24時間受付
財務会計

新株式申込証拠金【仕訳例】払込期日の資本金振替と決算日の表示

目次
  1. 新株式申込証拠金とは【要点の一覧表】
  2. 申込期日・払込期日と株主になる時期
  3. 受領から払込期日までの仕訳【仕訳例】
  4. 前提条件(自社作例)
  5. 申込証拠金の受領時
  6. 払込期日の振替(資本金・資本準備金)
  7. 株式交付費の処理
  8. 決算日が払込期日の前になる場合【判定表】
  9. 自己株式申込証拠金との違い
  10. 株主資本等変動計算書と1株当たり純資産額への影響
  11. 株主資本等変動計算書の区分
  12. 1株当たり純資産額の算定
  13. 増資前に確認したい実務のポイント
  14. 適用時期と改正の経緯
  15. まとめ
  16. 参考文献
  17. よくある質問
  18. 新株式申込証拠金は負債ですか、純資産ですか。
  19. 新株式申込証拠金はいつ資本金に振り替えますか。
  20. 払込期間を定めた増資でも新株式申込証拠金は使いますか。
  21. 1株当たり純資産額の計算で新株式申込証拠金はどう扱いますか。

新株式申込証拠金は、募集株式の発行で会社が受け取った出資金のうち、申込期日を経過し、まだ払込期日を迎えていないものを、貸借対照表の純資産の部で株主資本の「資本金」の次に表示するための科目です(企業会計基準適用指針第8号 第3項、第11項)。払込期日に引受人が株主となった時点で、資本金又は資本金及び資本準備金へ振り替えます(会社法 第209条第1項、第445条第1項〜第3項)。

第三者割当増資などで「申込期日は3月下旬、払込期日は4月1日」という日程を組むと、3月決算の会社では決算日に新株式申込証拠金が残ります。この記事では、受領から振替までの仕訳を自社作例で示し、決算日をまたぐ場合の判定表、自己株式申込証拠金との違い、株主資本等変動計算書と1株当たり純資産額への影響までを順に整理します。

新株式申込証拠金とは【要点の一覧表】

会社法では、払込期日を定めた募集株式の引受人は、その払込期日に株主となります(会社法 第209条第1項第1号)。そのため、払込期日より前に会社側へ届いた出資金は、まだ資本金ではありません。かといって、申込期日を過ぎて割当てが済んだ段階の出資金は、ほどなく払込資本になります。

この「株主になる直前の出資金」を受け止めるのが新株式申込証拠金です。申込期日経過後の新株式申込証拠金は、実質的には株主からの出資金が期日前に払い込まれたものにすぎず、すぐに払込資本となることから、資本金の区分の次に区分を設けて表示するとされています(企業会計基準適用指針第8号 第11項)。

対象となる受領額 申込期日を経過し、払込期日を迎えるまで会社が受け取っている募集株式の出資金
貸借対照表の区分 純資産の部の株主資本。資本金の次、資本剰余金の前に表示する
負債との関係 預り金などの負債ではなく、純資産の部に計上する
振替のタイミング 引受人が株主となる払込期日
振替先 資本金、又は資本金及び資本準備金
会社計算規則上の
位置づけ
株主資本を構成する6項目の1つとして区分する

会社法の計算書類でも、株主資本は資本金、新株式申込証拠金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式、自己株式申込証拠金の各項目に区分します(会社計算規則 第76条第2項)。金融商品取引法の財務諸表と会社法の計算書類のどちらでも、同じ位置に表示されると考えてよいでしょう。

申込期日・払込期日と株主になる時期

新株式申込証拠金が生じるかどうかは、募集事項で払込みの「期日」を定めたか、「期間」を定めたかで変わります。会社は募集事項として、金銭の払込みの期日又はその期間を定めなければなりません(会社法 第199条第1項第4号)。引受人は、その期日又は期間内に払込金額の全額を払い込みます(会社法 第208条第1項)。

募集事項の定め方 株主となる時期と申込証拠金
払込期日を定めた場合 払込期日に株主となる。申込期日経過後、払込期日前に会社が受け取っている出資金は新株式申込証拠金として表示し、払込期日に資本金等へ振り替える
払込期間を定めた場合 出資の履行をした日に株主となる。払い込まれた日に資本金等が増加するため、期日待ちの新株式申込証拠金は通常生じない

株主となる時期の根拠は会社法第209条第1項です(会社法 第209条第1項第1号・第2号)。実務では、募集要項や割当契約で払込期日を特定の1日で定める例が多く、その場合は決算日との前後関係を最初に確認しておくと、後の表示判断で迷いません。

受領から払込期日までの仕訳【仕訳例】

前提条件(自社作例)

3月決算のA社が第三者割当増資を行い、募集株式2,000株を払込金額1株25千円で発行するケースで考えます。申込期日は3月26日、払込期日は4月1日です。引受人は3月27日に払込金額の全額50,000千円を払込取扱銀行の口座へ払い込み、A社は増加額の2分の1を資本準備金とする旨を募集事項で定めています(単位:千円)。

申込証拠金の受領時

払込期日より前に受け取った出資金は、実務では払込取扱銀行の別段預金として区分管理する例が多く見られます。3月27日は申込期日経過後なので、A社は受領額を新株式申込証拠金として純資産の部に計上します(企業会計基準適用指針第8号 第3項、第11項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
別段預金 50,000 新株式申込証拠金 50,000

払込期日の振替(資本金・資本準備金)

払込期日の4月1日に引受人が株主となるため、新株式申込証拠金を資本金と資本準備金へ振り替えます。資本金の額は株主となる者が払い込んだ財産の額が原則ですが、そのうち2分の1を超えない額は資本金とせず、資本準備金として計上できます(会社法 第445条第1項〜第3項)。あわせて、別段預金を会社が自由に使える預金へ振り替えます。

資本金への計上額=50,000千円 × 1/2 = 25,000千円
資本準備金への計上額=50,000千円 − 25,000千円 = 25,000千円
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
新株式申込証拠金 50,000 資本金 25,000
資本準備金 25,000
当座預金 50,000 別段預金 50,000

資本金と資本準備金の配分は、募集事項で定めた「増加する資本金及び資本準備金に関する事項」に合わせます(会社法 第199条第1項第5号)。資本金を増やすと変更登記が必要になり、増加後の資本金額によっては会社法上の大会社(資本金5億円以上など)の判定にも影響するため(会社法 第2条第6号)、配分は経理だけで決めず、資本政策の担当者と事前にすり合わせておくのが安全です。

株式交付費の処理

増資に伴って支払う証券会社の手数料や変更登記の登録免許税などは、株式交付費として原則は支出時に営業外費用で処理します。企業規模の拡大のための資金調達などに係るものは繰延資産に計上でき、その場合は株式交付のときから3年以内の効果の及ぶ期間にわたり定額法で償却します(実務対応報告第19号 3 会計処理(1))。例えばA社が4月5日に登録免許税などで1,200千円を支払い、費用処理を選んだ場合は、支払った1,200千円をそのまま株式交付費(営業外費用)として計上します。

株式交付費は資本金や新株式申込証拠金から差し引かず、費用(又は繰延資産)として処理する点に注意が必要です。国際的な会計基準では資本から直接控除する方法が採られていますが、日本基準では当面、費用として処理する取扱いが続いています(実務対応報告第19号 3 会計処理(1)「会計処理の考え方」)。

決算日が払込期日の前になる場合【判定表】

新株式申込証拠金が決算書に現れるのは、決算日が「申込期日の後」かつ「払込期日の前」に当たるときです。申込期日より前に受け取った申込証拠金でも、決算日に申込期日を経過していれば同じ扱いになります。上の作例では、3月31日時点でA社は50,000千円を受け取っていますが、株主はまだ増えていません。決算日の状況ごとの扱いを判定表にまとめると次のとおりです。

決算日時点の状況 決算書上の扱い
払込期日が決算日以前に到来している 資本金又は資本金及び資本準備金に振替済み。新株式申込証拠金は残らない
申込期日は経過し、払込期日が決算日後 受領額を新株式申込証拠金として株主資本の資本金の次に表示する
申込期日が決算日後で、申込みの受付中に出資金を受け取っている 資本金の次に表示するとされているのは申込期日経過後の新株式申込証拠金で、申込期日前の受領額の表示は基準に定めがない。受領の趣旨や返金条件を確認し、処理を監査人と協議する
払込期間を定めて期間中に払い込まれた 払い込まれた日に株主となるため、資本金等に計上済み

A社の3月31日の個別貸借対照表では、株主資本の内訳が次のような並びになります(金額は自社作例。単位:千円)。表示の順序は、純資産の部の表示例のとおりです(企業会計基準適用指針第8号 第3項)。

資本金 100,000
新株式申込証拠金 50,000
資本剰余金 80,000
利益剰余金 120,000
自己株式 △10,000
株主資本合計 340,000

実務で見かけるのは、決算日に受け取っている出資金を「預り金」として負債に計上してしまう誤りです。申込期日経過後の出資金はすぐに払込資本となるものであるため、純資産の部で表示します(企業会計基準適用指針第8号 第11項)。負債に入れてしまうと、自己資本比率や純資産額を用いる財務制限条項の判定まで変わるため、決算整理の段階で確認しておきたいところです。

関連コラム純資産の部の表示|貸借対照表の区分と株主資本の実務▸

自己株式申込証拠金との違い

募集株式の発行等の手続では、新株を発行する代わりに自己株式を処分することもあります。自己株式の処分は対価の払込期日に認識し、払込期日の前日までに受け取った処分の対価相当額は、処分を認識するまで自己株式の直後に「自己株式申込証拠金」として表示します(企業会計基準適用指針第2号 第5項、第6項)。この受領額も負債ではなく、申込期日経過後の新株式申込証拠金と同様に純資産の部に計上するのが適切とされています(企業会計基準適用指針第2号 第35項)。

新株式申込証拠金 自己株式申込証拠金
新株の発行に係る払込期日前の受領額 自己株式の処分に係る払込期日前の受領額
株主資本の資本金の次に表示 株主資本の自己株式の直後に表示
払込期日に資本金又は資本金及び資本準備金へ振替 払込期日に自己株式の帳簿価額を減らし、差額を自己株式処分差額として処理

例えば、帳簿価額8,000千円の自己株式を10,000千円で処分し、払込期日前に対価を受け取った場合、払込期日の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。自己株式処分差益はその他資本剰余金に計上します(企業会計基準第1号 第9項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
自己株式申込証拠金 10,000 自己株式 8,000
その他資本剰余金 2,000

新株の発行と自己株式の処分を同時に行う場合は、払込金額を新株部分と自己株式部分に分けて、それぞれの申込証拠金として管理しておくと、払込期日の振替で迷いません。

関連コラム自己株式の仕訳一覧|取得・処分・消却と純資産への影響▸

株主資本等変動計算書と1株当たり純資産額への影響

株主資本等変動計算書の区分

会社法の株主資本等変動計算書でも、株主資本は資本金、新株式申込証拠金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式、自己株式申込証拠金の項目に区分します(会社計算規則 第96条第3項第1号)。作例のA社では、当期は新株式申込証拠金の列に受領額50,000千円が当期変動額として入り、翌期は同じ金額が資本金と資本準備金の列へ移る形になります。

関連コラム株主資本等変動計算書とは|区分・様式と作成実務を解説▸

1株当たり純資産額の算定

1株当たり純資産額の分子となる普通株式に係る期末の純資産額は、純資産の部の合計額から新株式申込証拠金と自己株式申込証拠金を控除して算定します(企業会計基準適用指針第4号 第35項)。決算日時点ではまだ株式が発行されていないため、分母の株式数に新株は含まれず、分子の側からも申込証拠金を除く形です。

A社の純資産の部の合計額が360,000千円、期末の発行済株式数から自己株式数を控除した株式数が8,000株で、新株予約権など他の控除項目は無いとすると、1株当たり純資産額は次のとおりです(自社作例、企業会計基準適用指針第4号 第34項、第35項)。

普通株式に係る期末の純資産額=360,000千円 − 50,000千円 = 310,000千円
1株当たり純資産額=310,000千円 ÷ 8,000株 = 38.75千円

新株式申込証拠金を控除し忘れると、1株当たり純資産額が過大になります。上場準備会社では有価証券届出書に記載する各期の数値と整合させる必要があるため、算定シートに控除項目の行を設けておくと漏れを防げます。

関連コラム1株当たり純資産額(BPS)の正しい算定方法と実務上の留意点▸

増資前に確認したい実務のポイント

新株式申込証拠金の処理そのものは単純ですが、つまずきやすいのは日程と書類の突合せです。公認会計士事務所プライムパートナーズ/株式会社プライムパートナーズコンサルティングが増資の決算対応を支援する際も、次の点を先に確認しています。

  • 募集事項が払込「期日」か払込「期間」か、決算日との前後関係はどうか
  • 払込取扱銀行の入金日と金額が、引受人ごとの申込数と払込金額に一致しているか
  • 決算日に受け取っている出資金を、預り金など負債に計上していないか
  • 払込期日の振替で、資本金と資本準備金の配分が募集事項の定めどおりか
  • 株主資本等変動計算書、1株当たり純資産額の算定、注記で申込証拠金を整合的に扱っているか
  • 株式交付費を資本金等から差し引かず、費用又は繰延資産として処理しているか

適用時期と改正の経緯

新株式申込証拠金の表示を示す企業会計基準適用指針第8号は2005年に公表され、2009年、2013年、2021年に改正されています(企業会計基準適用指針第8号 第8項〜第8-4項)。新株式申込証拠金を資本金の次に表示する取扱いは2005年の公表時から定められ、2013年の改正でも踏襲されています(企業会計基準適用指針第8号 第12-2項)。現行の純資産の部の表示例には、株主資本以外の項目として株式引受権の区分も含まれています(企業会計基準適用指針第8号 第3項)。

自己株式申込証拠金を定める企業会計基準適用指針第2号は2002年に公表され、2005年、2006年、2015年の改正を経て、直近では2024年に、保有する完全子会社株式の一部を按分型で配当し子会社株式に該当しなくなった場合の取扱いについて改正されています(企業会計基準適用指針第2号 第24項〜第24-5項、第28-4項)。2024年改正は公表日以後適用されています(企業会計基準適用指針第2号 第23-3項)。いずれの取扱いもすでに適用されており、決算では現行の定めに沿って表示します。

まとめ

  • 新株式申込証拠金は、申込期日を経過し払込期日を迎えていない出資金を、純資産の部の資本金の次に表示する科目
  • 払込期日に引受人が株主となるため、その日に資本金又は資本金及び資本準備金へ振り替える
  • 決算日が払込期日の前なら新株式申込証拠金が残る。預り金など負債に計上しない
  • 自己株式を処分する場合は、自己株式の直後に自己株式申込証拠金として表示する
  • 1株当たり純資産額の算定では、新株式申込証拠金と自己株式申込証拠金を純資産額から控除する

増資の日程や資本金の配分は、決算書の表示だけでなく登記や機関設計にも関わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

お問い合わせはこちら

参考文献

よくある質問

新株式申込証拠金は負債ですか、純資産ですか。

申込期日経過後の新株式申込証拠金は、すぐに払込資本となるものであることから、純資産の部の株主資本に資本金の次の区分として表示します(企業会計基準適用指針第8号 第3項、第11項)。

新株式申込証拠金はいつ資本金に振り替えますか。

払込期日を定めた場合、引受人は払込期日に株主となるため、その日に資本金又は資本金及び資本準備金へ振り替えます(会社法 第209条第1項第1号)。払い込まれた額の2分の1を超えない額は、資本金とせず資本準備金とすることができます(会社法 第445条第2項・第3項)。

払込期間を定めた増資でも新株式申込証拠金は使いますか。

払込期間を定めた場合、引受人は出資の履行をした日に株主となります(会社法 第209条第1項第2号)。払い込まれた日に資本金等を計上するため、払込期日を待つための新株式申込証拠金は通常生じません。

1株当たり純資産額の計算で新株式申込証拠金はどう扱いますか。

普通株式に係る期末の純資産額は、純資産の部の合計額から新株式申込証拠金と自己株式申込証拠金などを控除して算定します(企業会計基準適用指針第4号 第35項)。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

Office

公認会計士事務所プライムパートナーズ

大手監査法人出身の公認会計士が、会計・監査・株価算定のご相談をお受けしています。

  • オフィスが入居する IsaI AkasakA のエントランス
  • 代表 公認会計士 島本 雅史
  • プライムパートナーズの会議室
事務所名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
所在地
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2-33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062(平日 10:00〜18:00)
対応責任者
公認会計士 島本 雅史