内部統制報告制度(J-SOX)の対象会社【判定表と提出書類一覧】
目次
- 内部統制報告制度の対象会社【判定表】
- 条文でみる提出義務の範囲
- 提出義務の根拠は金融商品取引法第24条の4の4
- 政令で定める有価証券の種類
- 対象外の有報提出会社は任意提出ができる
- 監査証明が必要な会社と免除される会社
- 原則は公認会計士又は監査法人の監査証明
- 新規上場後3年間の監査証明の免除
- 免除の対象外になる規模基準(資本金100億円・負債1,000億円)
- 免除期間の起算日と3か月の調整
- 提出書類一覧
- 2023年改訂の内部統制基準と適用時期
- 判定で迷いやすい4つのケース
- 有価証券報告書を出している非上場会社
- 上場準備中の会社
- 上場時点で大規模な会社
- 免除期間中の経営者評価
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 非上場でも有価証券報告書を提出していれば、内部統制報告書は必要ですか。
- 新規上場後3年間は、内部統制報告書を提出しなくてよいのですか。
- 監査証明の免除を受けられない会社の基準は何ですか。
- 社債だけを上場している会社は対象になりますか。
- 内部統制報告書を提出しない場合や虚偽の記載をした場合の罰則はありますか。
内部統制報告書の提出が義務になるのは、上場している株券などの発行者です。有価証券報告書を提出している会社がすべて対象になるわけではなく、どの有価証券を、どの市場に上場しているかで結論が分かれます。さらに、内部統制報告書を提出する会社のうち、新規上場から3年間は監査人の監査証明が免除される一方、資本金100億円以上または負債合計1,000億円以上の会社はその免除を受けられません。
上場準備の担当者から多いのは、「うちは有価証券報告書を出しているが、J-SOXの対象なのか」「上場後3年間は何も要らないのか」という質問です。この記事では、金融商品取引法と同施行令、内部統制府令の条文から、提出義務と監査証明の要否を判定表に整理し、あわせて提出する書類を一覧にします。内部統制の中身(評価範囲や3点セット)ではなく、「自社が対象かどうか」の判定に絞って解説します。
内部統制報告制度の対象会社【判定表】
判定は2段階です。まず、有価証券報告書の提出義務がどの号の有価証券に基づくかで、内部統制報告書の提出義務の有無が決まります。次に、提出義務がある会社について、監査証明が必要か免除されるかを確認します。第1段階の結論を先に表にまとめます。
| 取引所に上場する株券等 (第24条第1項第1号) |
内部統制報告書の提出義務あり。原則として監査証明も必要 |
|---|---|
| 店頭売買有価証券の株券等 (第24条第1項第2号) |
内部統制報告書の提出義務あり。原則として監査証明も必要 |
| プロ向け市場のみに 上場する有価証券 |
第24条第1項第1号から除かれるため、同号を根拠とする提出義務はない |
| 社債など株券等以外の 有価証券だけを上場 |
政令で定める有価証券に当たらないため、提出義務はない |
| 募集・売出しの届出や 株主数で有報を提出 |
提出義務はない。内部統制報告書を任意に提出することはできる |
表の「株券等」は、株券、優先出資証券、これらの性質を持つ外国の有価証券、これらを受託有価証券とする有価証券信託受益証券、これらに係る権利を表示する預託証券を指します(金融商品取引法施行令 第4条の2の7第1項)。以下、それぞれの行を条文で確認します。
条文でみる提出義務の範囲
提出義務の根拠は金融商品取引法第24条の4の4
内部統制報告書は、有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち、上場有価証券の発行者である会社その他の政令で定める会社が、事業年度ごとに有価証券報告書と併せて提出するものです(金融商品取引法 第24条の4の4第1項)。評価の対象は、会社の属する企業集団と会社自身の財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制で、内閣府令ではこれを「財務報告が法令等に従って適正に作成されるための体制」と定めています(財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令〈以下「内部統制府令」〉 第3条)。
ここで押さえたいのは、提出義務の前提が「有価証券報告書の提出義務があること」だという点です。有価証券報告書の提出義務は、上場有価証券(第1号)、店頭売買有価証券(第2号)、募集・売出しの届出をした有価証券(第3号)、一定数以上の所有者がいる株券等(第4号)の4つの経路で生じますが(金融商品取引法 第24条第1項)、内部統制報告書が義務になるのはこのうち第1号と第2号の経路だけです(金融商品取引法施行令 第4条の2の7第1項)。
政令で定める有価証券の種類
第1号・第2号の有価証券であっても、すべてが対象になるわけではありません。政令は対象を、株券、優先出資証券、これらの性質を持つ外国の有価証券、有価証券信託受益証券、預託証券のうち株券等に係るものに限っています(金融商品取引法施行令 第4条の2の7第1項第1号から第5号まで)。そのため、社債券だけを上場している会社は、有価証券報告書の提出義務はあっても内部統制報告書の提出義務は負いません。
また、第1号の上場有価証券からは「特定上場有価証券」が除かれています(金融商品取引法 第24条第1項第1号)。特定上場有価証券とは、一般投資家等の買付けが禁止されている特定取引所金融商品市場(いわゆるプロ向け市場)のみに上場されている有価証券をいいます(金融商品取引法 第2条第32項、第33項)。
関連コラム東京プロマーケットと監査法人【一覧表】一般市場との開示・監査義務の違い▸
対象外の有報提出会社は任意提出ができる
募集・売出しの届出や株主数の要件で有価証券報告書を提出している非上場会社は、内部統制報告書の提出義務を負いません。ただし、提出義務のない有価証券報告書提出会社も、内部統制報告書を任意に提出することができます(金融商品取引法 第24条の4の4第2項)。任意に提出するかどうかは会社の判断で、上場を見据えて評価の予行演習として活用する考え方もあります。
監査証明が必要な会社と免除される会社
原則は公認会計士又は監査法人の監査証明
上場会社等が提出する内部統制報告書には、その会社と特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければなりません(金融商品取引法 第193条の2第2項)。ここでいう上場会社等の範囲は、内部統制報告書の提出義務を負う会社と同じく、第24条第1項第1号・第2号の株券等の発行者です(金融商品取引法施行令 第35条の2)。また、公認会計士法に規定する上場会社等に当たる会社の場合、監査人は同法第34条の34の2の登録を受けた公認会計士又は監査法人に限られます(金融商品取引法 第193条の2第2項)。
監査証明は、監査人が作成する内部統制監査報告書によって行い(内部統制府令 第1条第2項)、この報告書は財務諸表の監査報告書と合わせて作成するのが原則です(内部統制府令 第7条)。
関連コラム会社法の内部統制システム|決議事項一覧とJ-SOXとの比較表▸
新規上場後3年間の監査証明の免除
上場会社等が、第24条第1項第1号の有価証券の発行者に初めて該当することとなった日その他の政令で定める日以後3年を経過する日までの間に内部統制報告書を提出する場合は、監査証明を受けなくてよいとされています(金融商品取引法 第193条の2第2項第4号)。つまり、新規上場会社は上場後しばらくの間、内部統制監査を受けずに内部統制報告書を提出できます。
注意したいのは、免除されるのは監査人による監査証明だけだという点です。内部統制報告書の提出義務を定める第24条の4の4第1項には新規上場の特例はないため、上場した会社は、経営者による評価と内部統制報告書の提出を免除期間中も行う必要があります。
免除の対象外になる規模基準(資本金100億円・負債1,000億円)
3年間の免除を受けられるのは、資本の額その他の経営の規模が内閣府令で定める基準に達しない上場会社等に限られます(金融商品取引法 第193条の2第2項第4号)。内閣府令が定める基準は次のとおりで、いずれか一方に該当すれば免除の対象外です(内部統制府令 第10条の2)。
| 判定に使う決算 | 上場有価証券の発行者に該当することとなった日の属する事業年度の直前事業年度 |
|---|---|
| 判定に使う書類 | その事業年度の連結貸借対照表または貸借対照表 |
| 資本金の基準 | 資本金として計上した額が100億円以上 |
| 負債の基準 | 負債の部に計上した額の合計額が1,000億円以上 |
判定の時点は「上場した事業年度の直前事業年度」で固定されています。上場後に増資や借入れで資本金や負債が基準を超えても、この条文の判定には影響しません。反対に、大型の新規上場で直前事業年度に資本金100億円以上または負債合計1,000億円以上であれば、上場直後の事業年度から内部統制監査が必要になるため、監査人との契約やスケジュールを早めに組む必要があります。
免除期間の起算日と3か月の調整
3年の起算日は、第24条第1項第1号または第2号の株券等の発行者に初めて該当することとなった日、つまり通常は上場日です。ただし、その日が事業年度開始後3か月以内の日である場合は、その事業年度開始後3か月を経過した日が起算日になります(金融商品取引法施行令 第35条の3)。期首の直後に上場した会社では起算日が後ろにずれるため、免除期間の終わりも後ろにずれます。自社の決算期と上場日を当てはめて、どの事業年度の内部統制報告書までが免除期間内に提出されるかを確認しておくことが大切です。
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提出書類一覧
内部統制報告制度の対象会社が、事業年度ごとに提出・作成する書類を一覧にします。
| 書類 | 根拠と提出の方法 |
|---|---|
| 有価証券報告書 | 内国会社は事業年度経過後3か月以内に提出する(金融商品取引法 第24条第1項) |
| 内部統制報告書 | 事業年度の末日を基準日として作成し、有価証券報告書と併せて財務局長等へ3通提出する(金融商品取引法 第24条の4の4第1項、内部統制府令 第4条第1項、第5条第1項) |
| 内部統制報告書の添付書類 | 内閣府令で定める体制に関する事項を記載した書類など、公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものを添付する(金融商品取引法 第24条の4の4第4項) |
| 確認書 | 有価証券報告書の記載内容が適正であることを確認した旨を記載し、有価証券報告書と併せて提出する(金融商品取引法 第24条の4の2第1項、同法施行令 第4条の2の5第1項) |
| 内部統制監査報告書 | 監査人が作成し、原則として財務諸表の監査報告書と合わせて作成する。新規上場後3年間の免除を受ける場合は不要(金融商品取引法 第193条の2第2項、内部統制府令 第1条第2項、第7条) |
確認書の提出義務を負う会社の範囲は、内部統制報告書と同じく第24条第1項第1号・第2号の株券等の発行者です(金融商品取引法施行令 第4条の2の5第1項)。上場によって、有価証券報告書・内部統制報告書・確認書の3つを毎年そろえて提出する体制に切り替わる、と整理しておくと分かりやすくなります。
2023年改訂の内部統制基準と適用時期
内部統制報告制度は、2008年4月1日以後開始する事業年度から適用されています。その後、企業会計審議会が2023年4月7日に「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」を公表し、改訂後の基準・実施基準は2024年4月1日以後開始する事業年度における評価及び監査から適用されています。
この改訂は評価範囲の決定や不備の開示などの考え方を見直したもので、どの会社が内部統制報告書を提出するか、どの会社が監査証明を受けるかという対象会社の範囲そのものは、これまで見てきた金融商品取引法と政令・内閣府令の規定で決まります。これから上場する会社は、改訂後の基準で評価の設計を行うことになります。
関連コラムJ-SOXとは?上場企業に必須の内部統制報告制度を徹底解説▸
判定で迷いやすい4つのケース
有価証券報告書を出している非上場会社
過去に募集・売出しの届出をした、あるいは株主数が多いといった理由で有価証券報告書を提出している非上場会社は、内部統制報告書の提出義務の対象外です(金融商品取引法施行令 第4条の2の7第1項)。一方で、会社法上の大会社であれば会社法の内部統制システムの決定義務は別途生じるため、二つの制度を混同しないように整理しておく必要があります。
上場準備中の会社
上場前の会社には内部統制報告書の提出義務はありませんが、上場すれば第24条第1項第1号の発行者となり、上場した事業年度についても有価証券報告書と併せて内部統制報告書を提出することになります。上場時点で評価の仕組みが動いていなければ間に合わないため、実務では上場申請前の段階から評価範囲の決定や文書化を進めるのが一般的です。
上場時点で大規模な会社
直前事業年度の資本金が100億円以上、または負債合計が1,000億円以上の会社は、3年間の免除を受けられません(内部統制府令 第10条の2)。子会社上場やカーブアウト上場などで上場時から規模が大きい会社は、この基準に当たらないかを最初に確認してください。
免除期間中の経営者評価
免除期間中は監査人の意見が付かないため、社内の評価結果がそのまま開示されます。免除期間が終われば内部統制監査が始まるため、免除期間中の評価の質が、その後の監査対応の負担を左右します。免除期間を準備期間と位置付け、監査を受ける前提で評価手続を固めておくことが実務上の備えになります。
対象会社や監査証明の要否は、上場する有価証券の種類、上場日と決算期、直前事業年度の資本金・負債の額によって結論が変わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
まとめ
内部統制報告書の提出義務を負うのは、有価証券報告書提出会社のうち、取引所に上場する株券等または店頭売買有価証券の株券等の発行者です(金融商品取引法 第24条の4の4第1項、同法施行令 第4条の2の7第1項)。プロ向け市場のみに上場する会社、社債だけを上場する会社、届出や株主数の要件で有価証券報告書を提出する非上場会社は対象外で、提出義務のない有価証券報告書提出会社は任意提出を選べます。
監査証明は原則として必要ですが、新規上場後3年間は免除されます。ただし、上場した事業年度の直前事業年度の資本金が100億円以上、または負債合計が1,000億円以上の会社は免除を受けられず、免除される場合でも経営者による評価と内部統制報告書の提出は必要です(金融商品取引法 第193条の2第2項第4号、内部統制府令 第10条の2)。
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- e-Gov法令検索 金融商品取引法
- e-Gov法令検索 金融商品取引法施行令
- e-Gov法令検索 財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令
- 金融庁 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)の公表について
よくある質問
非上場でも有価証券報告書を提出していれば、内部統制報告書は必要ですか。
必要ありません。内部統制報告書の提出義務は、取引所に上場する株券等または店頭売買有価証券の株券等の発行者に限られます(金融商品取引法施行令 第4条の2の7第1項)。ただし、提出義務のない有価証券報告書提出会社も任意に提出することはできます(金融商品取引法 第24条の4の4第2項)。
新規上場後3年間は、内部統制報告書を提出しなくてよいのですか。
いいえ。3年間免除されるのは公認会計士又は監査法人による監査証明だけで(金融商品取引法 第193条の2第2項第4号)、内部統制報告書の提出義務そのものは上場した事業年度から生じます(金融商品取引法 第24条の4の4第1項)。
監査証明の免除を受けられない会社の基準は何ですか。
上場した事業年度の直前事業年度の連結貸借対照表または貸借対照表で、資本金として計上した額が100億円以上であるか、負債の部の合計額が1,000億円以上である会社です(内部統制府令 第10条の2)。
社債だけを上場している会社は対象になりますか。
対象になりません。政令で定める有価証券は株券、優先出資証券やこれらに関する有価証券に限られており、社債券は含まれていません(金融商品取引法施行令 第4条の2の7第1項)。
内部統制報告書を提出しない場合や虚偽の記載をした場合の罰則はありますか。
あります。内部統制報告書を提出しない場合や、重要な事項につき虚偽の記載のある内部統制報告書を提出した場合は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処され、又はこれらが併科されます(金融商品取引法 第197条の2第5号、第6号)。
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