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財務会計

減損の兆候とは|4分類の判定チェックリストと仕訳

目次
  1. 減損の兆候の定義と把握の単位
  2. 兆候を把握する単位
  3. 減損の兆候の4分類と適用指針の例示
  4. 営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローの継続的なマイナス
  5. 回収可能価額を著しく低下させる使用範囲又は方法の変化
  6. 経営環境の著しい悪化
  7. 市場価格の著しい下落
  8. 決算前に使う減損の兆候チェックリスト
  9. 共用資産とのれんの減損の兆候
  10. 兆候の把握から認識・測定へ進む3ステップ
  11. ステップ2 減損損失の認識の判定
  12. ステップ3 減損損失の測定
  13. 減損損失と減損処理後の減価償却の仕訳
  14. 兆候の判定で迷いやすい論点
  15. 遊休資産の取扱い
  16. 中間会計期間に減損処理を行った資産
  17. 重要な減損損失を認識した場合の注記
  18. 適用時期と改正の経緯
  19. まとめ
  20. 参考文献
  21. よくある質問
  22. 減損の兆候があると、必ず減損損失を計上することになりますか。
  23. 営業損益が「継続してマイナス」とは、何期のマイナスを指しますか。
  24. 市場価格はどの程度下落すると減損の兆候になりますか。
  25. 減損の兆候はどの単位で把握しますか。
  26. 中間会計期間に減損処理を行った資産は、年度決算で見直しが必要ですか。

決算を前に「自社の固定資産に減損の兆候があるかどうか」を確認する場面は、上場準備企業でも既上場企業でも毎期訪れます。減損の兆候とは、資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象をいい、これに該当するものがある場合に、その資産又は資産グループについて減損損失を認識するかどうかの判定を行います(固定資産の減損に係る会計基準 二1)。

兆候は、①営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローの継続的なマイナス、②回収可能価額を著しく低下させる使用範囲又は方法の変化、③経営環境の著しい悪化、④市場価格の著しい下落、の4つに整理されています(固定資産の減損に係る会計基準 二1)。この記事では、それぞれの分類について適用指針が示す例示レベルまで踏み込み、決算前にそのまま使えるチェックリストの形で整理します。

あわせて押さえておきたいのは、兆候があること自体は減損損失の計上を意味しないという点です。兆候はあくまで「減損損失を認識するかどうかの判定」に進む入口であり、判定・測定という次の段階があります。この記事の後半では、兆候の把握から認識・測定へ進む流れと、減損損失計上および減損処理後の減価償却の仕訳例までを確認します。

減損の兆候の定義と把握の単位

減損の兆候とは、資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象をいいます。企業は、通常の企業活動において実務的に入手可能なタイミングにおいて利用可能な情報に基づき、減損の兆候がある資産又は資産グループを識別します(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第11項)。

ここで重要なのは、兆候の判断に用いる情報は「特別に調査して集めた情報」ではなく、通常の企業活動のなかで手元にある情報でよいとされている点です。内部管理目的の損益報告や事業の再編等に関する経営計画などの企業内部の情報と、経営環境や資産の市場価格などの企業外部の要因に関する情報が、実務上の判断材料になります(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書 四2.(1))。対象資産のすべてについて減損損失を認識するかどうかの判定を行うことは実務上過大な負担となるおそれがあるため、まず兆候の有無でふるいにかける構造が採られています。

兆候を把握する単位

減損の兆候は、個々の資産ではなく資産又は資産グループの単位で把握します。ここでいう資産グループとは、他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位をいいます(固定資産の減損に係る会計基準 二6(1))。実務的には、管理会計上の区分や、資産の処分・事業の廃止に関する意思決定を行う際の単位等を考慮してグルーピングの方法を定めることになります(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第7項)。

したがって、兆候の判定を始める前に、その期の資産のグルーピングが確定していることが前提になります。グルーピングの単位が変われば、営業損益の集計単位も市場価格の把握単位も変わるため、兆候の結論そのものが変わり得ます。

関連コラム減損会計における資産のグルーピング:適用指針の実務ケース解説▸

減損の兆候の4分類と適用指針の例示

会計基準が挙げる4つの事象は、いずれも抽象度が高く、そのままでは自社の状況に当てはめにくいものです。適用指針は、この4分類それぞれについて、実務で判断できる水準まで具体的な例示と目安を示しています(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第12項から第15項)。以下、分類ごとに整理します。

営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローの継続的なマイナス

資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっているか、又は、継続してマイナスとなる見込みである場合には、減損の兆候となります(固定資産の減損に係る会計基準 二1①)。実務で判断が分かれやすいのは「何をもって営業活動から生ずる損益とするか」と「何期のマイナスをもって継続とするか」の2点で、適用指針は次のように整理しています(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第12項)。

営業活動から生ずる損益
に含まれるもの
当該資産又は資産グループの減価償却費や本社費等の間接的に生ずる費用。損益計算書上は原価性を有しないものとして営業損益に含まれていない項目でも、営業上の取引に関連して生じた損益(たな卸資産の評価損など)
営業活動から生ずる損益
に含まれないもの
支払利息など財務活動から生ずる損益、利益又は課税所得を課税標準とする税金、大規模な経営改善計画等により生じた一時的な損益
継続してマイナス
の判断の目安
おおむね過去2期がマイナスであったことを指す。ただし、当期の見込みが明らかにプラスとなる場合は該当しないと考えることが適当
継続してマイナスとなる
見込みの判断の目安
前期と当期以降の見込みが明らかにマイナスとなる場合
キャッシュ・フローで
把握している場合
管理会計上、営業活動から生ずるキャッシュ・フローだけを用いている場合には、それが継続してマイナスであるか、又は継続してマイナスとなる見込みであるときに減損の兆候となる
事業計画どおりの
マイナスの取扱い
事業の立上げ時などあらかじめ合理的な事業計画が策定され、当初より継続してマイナスとなることが予定されている場合、実際のマイナス額が当該事業計画で予定されていたマイナス額よりも著しく下方に乖離していないときは、減損の兆候には該当しない

実務では、この分類の判定に管理会計上の損益区分をそのまま用いることが多く、部門別・店舗別の損益資料が兆候判定の一次資料になります。新規出店や新規事業の立上げ期で赤字が続いていても、当初の事業計画の範囲内であれば兆候に該当しないという扱いは、上場準備企業で特に確認しておきたい点です。

回収可能価額を著しく低下させる使用範囲又は方法の変化

資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは、生ずる見込みである場合には、減損の兆候となります(固定資産の減損に係る会計基準 二1②)。会計基準の注解では、事業の廃止又は再編成、著しく早期の処分、異なる用途への転用、遊休状態などが挙げられ(固定資産の減損に係る会計基準 注解(注2))、適用指針はこれをさらに具体化しています(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第13項)。

事業の廃止又は再編成 使用されている事業を廃止又は再編成すること。事業の再編成には、重要な会社分割などの組織再編のほか、事業規模の大幅な縮小が含まれる
著しく早期の処分 当初の予定よりも著しく早期に除却や売却などにより処分すること。この事象は償却資産に限らない
異なる用途への転用 当初の予定又は現在の用途と異なる用途に転用すること。これまでの使い方による収益性や成長性を大きく変えるように使い方を変えることをいい、事業を縮小し余剰となった店舗を賃貸するような場合が該当する
遊休状態 遊休状態になり、将来の用途が定まっていないこと
稼働率の著しい低下 稼働率が著しく低下した状態が続いており、著しく低下した稼働率が回復する見込みがないこと
著しい陳腐化等の
機能的減価
著しい陳腐化等の機能的減価が観察できること
建設仮勘定に係る
建設計画の停滞
計画の中止又は大幅な延期が決定されたことや、当初の計画に比べ著しく滞っていること

なお、資産グループについては、資産グループ全体についてこれらの変化が生じた場合のみならず、主要な資産が使用されている範囲又は方法についてこれらの変化が生じた場合も含まれます(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第13項)。主要な資産とは、資産グループの将来キャッシュ・フロー生成能力にとって最も重要な構成資産をいいます(固定資産の減損に係る会計基準 注解(注3))。

経営環境の著しい悪化

資産又は資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、あるいは、悪化する見込みである場合には、減損の兆候となります(固定資産の減損に係る会計基準 二1③)。適用指針は、経営環境を市場・技術・法律の3つの側面に分けて例示しています(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第14項)。

市場環境の著しい悪化 材料価格の高騰、製・商品店頭価格やサービス料金・賃料水準の大幅な下落、製・商品販売量の著しい減少などが続いているような状況
技術的環境の
著しい悪化
技術革新による著しい陳腐化、特許期間の終了による重要な関連技術の拡散など
法律的環境の
著しい悪化
重要な法律改正、規制緩和や規制強化、重大な法令違反の発生など

この分類は、社内の損益データだけを見ていると見落としやすい領域です。実務では、主力製品の市場価格や販売数量の推移、業界に関わる法改正の動向、重大な法令違反の発生といった外部情報を、決算前に事業部門から吸い上げる仕組みを作っておくことが有効です。

市場価格の著しい下落

資産又は資産グループの市場価格が著しく下落したことは、減損の兆候となります(固定資産の減損に係る会計基準 二1④)。4分類のなかで唯一、明確な数値の目安が示されているのがこの分類です(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第15項)。

著しく下落したと
いえる水準
少なくとも市場価格が帳簿価額から50%程度以上下落した場合が該当する
市場価格の意味 市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場
市場価格が観察
できない場合
一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標が容易に入手できる場合には、これらを減損の兆候を把握するための市場価格とみなして使用する
資産グループでの
取扱い
資産グループ全体の市場価格が把握できない場合でも、主要な資産の市場価格が著しく下落した場合や、資産グループの帳簿価額のうち土地の帳簿価額が大きな割合を占め、当該土地の市場価格が著しく下落した場合を含む

「50%程度以上」という水準は、あくまで少なくともこの水準に達していれば該当するという下限の目安であり、これを下回る下落幅であれば兆候にならないという意味ではありません。土地の含み損が大きい会社では、この分類が実質的な入口になることが多く、路線価や公示地価などの入手しやすい指標を市場価格とみなして把握する運用が一般的です。

決算前に使う減損の兆候チェックリスト

4分類を実務の確認手順に落とし込むと、次のような整理になります。左列の事象に一つでも該当すれば、その資産又は資産グループについて減損損失を認識するかどうかの判定に進むことになります。

確認する事象 主な確認資料・情報源
資産グループ単位の営業損益が、おおむね過去2期にわたりマイナスとなっていないか 管理会計上の損益区分による部門別・店舗別損益、事業計画との差異分析資料
事業の廃止・再編成、著しく早期の処分、用途の転用に関する意思決定がなされていないか 取締役会・常務会等の議事録、中期経営計画、組織再編の検討資料
遊休状態となった資産や、稼働率が著しく低下したまま回復見込みのない資産がないか 固定資産台帳、設備の稼働記録、現物実査の結果
市場環境・技術的環境・法律的環境が著しく悪化していないか 主要製品の販売数量と単価の推移、賃料水準の資料、業界統計、法改正の情報
土地や建物などの市場価格が帳簿価額から50%程度以上下落していないか 路線価・公示地価等の指標、不動産鑑定評価額、近隣の取引事例
建設仮勘定に係る建設計画が中止・大幅延期となっていないか、著しく滞っていないか 投資計画の進捗管理資料、工事の進捗報告
共用資産やのれんを含む、より大きな単位に兆候がないか 本社建物等の共用資産の一覧、のれんの帳簿価額の分割・帰属に関する資料

共用資産とのれんの減損の兆候

共用資産については、共用資産を含む、より大きな単位について4分類の事象がある場合のほか、共用資産そのものについて使用範囲又は方法の変化(第13項)又は市場価格の著しい下落(第15項)の事象がある場合に、共用資産に減損の兆候があることとなります(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第16項)。共用資産とは、複数の資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に寄与する資産をいい、のれんを除きます(固定資産の減損に係る会計基準 注解(注1)5.)。本社の建物や試験研究施設が典型例です。

のれんについては、共用資産と異なり、通常、のれんが独立してそれ自体で減損の兆候があるかどうかを判断できないため、原則として、のれんを含む、より大きな単位で判断されることとなります(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第17項)。

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兆候の把握から認識・測定へ進む3ステップ

減損会計は、兆候の把握(ステップ1)、減損損失を認識するかどうかの判定(ステップ2)、減損損失の測定(ステップ3)という段階を踏んで進みます。兆候があっても認識の判定で下回らなければ減損損失は計上されず、認識すべきと判定されて初めて測定に進みます。

ステップ2 減損損失の認識の判定

減損の兆候がある資産又は資産グループについて、減損損失を認識するかどうかの判定は、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって行い、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識します(固定資産の減損に係る会計基準 二2(1))。この判定は減価償却の見直しに先立って行います(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書 四2.(2)①)。

ここで用いる割引前将来キャッシュ・フローを見積る期間は、資産の経済的残存使用年数又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数と20年のいずれか短い方とします(固定資産の減損に係る会計基準 二2(2))。また、この判定に用いる割引前将来キャッシュ・フローの算定においては、将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクを反映させません(固定資産の減損に係る会計基準 注解(注6))。この点は、後述する使用価値の算定と扱いが異なるため、実務では取り違えに注意が必要です。

関連コラム減損損失の認識の判定とは?20年基準と経済的残存使用年数を解説▸

ステップ3 減損損失の測定

減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とします(固定資産の減損に係る会計基準 二3)。

減損損失 = 帳簿価額 − 回収可能価額

回収可能価額とは、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額をいいます(固定資産の減損に係る会計基準 注解(注1)1.)。正味売却価額は、資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額であり、使用価値は、資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値をいいます(固定資産の減損に係る会計基準 注解(注1)2.及び4.)。企業は資産に対する投資を売却と使用のいずれかの手段によって回収するため、どちらか有利な方の金額が回収可能価額になる、という考え方です。

実務上は、通常、使用価値が正味売却価額より高いと考えられるため、明らかに正味売却価額が高いと想定される場合や処分がすぐに予定されている場合などを除き、必ずしも現在の正味売却価額を算定する必要はないとされています(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第28項)。また、使用価値の算定に用いる割引率は、貨幣の時間価値を反映した税引前の利率とします(固定資産の減損に係る会計基準 二5)。

減損損失と減損処理後の減価償却の仕訳

ここまでの流れを、数値例で確認します。以下は自社の作例であり、実際の判定は個別の事実関係によります。

前提条件は次のとおりです。単位は千円とします。当期末において、店舗Aに係る資産グループ(構成資産は建物のみ、減損処理前の帳簿価額80,000)について、営業活動から生ずる損益が過去2期にわたりマイナスであったため減損の兆候があると判断しました。割引前将来キャッシュ・フローの総額は60,000で帳簿価額80,000を下回るため減損損失を認識し(固定資産の減損に係る会計基準 二2(1))、正味売却価額45,000と使用価値50,000のいずれか高い方である50,000を回収可能価額として測定します(固定資産の減損に係る会計基準 注解(注1)1.、二3)。

減損損失 = 80,000 − 50,000 = 30,000

減損損失は、原則として特別損失とします(固定資産の減損に係る会計基準 四2)。貸借対照表上は、原則として減損処理前の取得原価から減損損失を直接控除し、控除後の金額をその後の取得原価とする形式で表示するため、貸方は建物を直接減額します(固定資産の減損に係る会計基準 四1、固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第57項(1))。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減損損失 30,000 建物 30,000

減損処理を行った資産についても、その後の事業年度にわたって帳簿価額を適正に原価配分するため、減損損失を控除した帳簿価額に基づき減価償却を行います(固定資産の減損に係る会計基準 三1、固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第55項)。上記の店舗Aについて、減損処理後の帳簿価額50,000、残存耐用年数10年、残存価額ゼロ、定額法とした場合の翌期の減価償却費は次のとおりです。

年間の減価償却費 = 50,000 ÷ 10年 = 5,000
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 5,000 建物減価償却累計額 5,000

減損処理後に業績が回復しても、減損損失の戻入れは行いません(固定資産の減損に係る会計基準 三2)。減損の存在が相当程度確実な場合に限って減損損失を認識及び測定することとしていること、また、戻入れは事務的負担を増大させるおそれがあることが理由とされています(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書 四3.(2))。この不可逆性があるからこそ、兆候の判定と認識の判定を丁寧に行う意味があります。

兆候の判定で迷いやすい論点

遊休資産の取扱い

将来の使用が見込まれていない遊休資産は、資産の処分や事業の廃止に関する意思決定を行った資産と同様の趣旨で、通常、当該遊休資産を切り離しても他の資産又は資産グループの使用にほとんど影響を与えないため、他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位として取り扱います(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第8項)。つまり、遊休資産は単独で兆候と認識・測定の対象になります。なお、企業が将来の使用を見込んでいる遊休資産は、その見込みに沿ってグルーピングを行うことになります。

また、減損処理を行った遊休資産について、減損処理後の減価償却費は、原則として営業外費用として処理します(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第56項)。

中間会計期間に減損処理を行った資産

中間会計期間において減損処理を行った場合には、年度決算までに資産又は資産グループに新たな減損の兆候があり追加的に減損損失を認識すべきであると判定される場合を除き、年度決算において、中間会計期間を含む事業年度全体を対象として改めて会計処理を行いません(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第63項)。中間で計上した減損損失を年度末に洗い替える必要はない、という整理です。

重要な減損損失を認識した場合の注記

重要な減損損失を認識した場合には、損益計算書(特別損失)に係る注記事項として、減損損失を認識した資産又は資産グループの用途・種類・場所などの概要、減損損失の認識に至った経緯、減損損失の金額、資産のグルーピングの方法、回収可能価額の算定方法などを注記します(固定資産の減損に係る会計基準 四3、固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第58項)。注記では「認識に至った経緯」を説明する必要があるため、どの兆候に該当したのかを判定の段階で記録に残しておくと、注記作成と監査対応の双方がスムーズになります。

適用時期と改正の経緯

固定資産の減損に係る会計基準は、2005年4月1日以後開始する事業年度から適用されています(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書 五1.)。2004年4月1日以後開始する事業年度からの早期適用も認められていました。

固定資産の減損に係る会計基準の適用指針は、2003年10月に公表された後、2008年1月改正、2009年改正を経て、2024年にリース会計基準の公表に伴う改正が行われています(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第65項、第68項)。2024年改正は、使用権資産に関する減損処理の取扱いなどリースに関する事項についての改正であり、兆候の4分類そのものの考え方は変わっていません。

まとめ

減損の兆候は、①営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローの継続的なマイナス、②回収可能価額を著しく低下させる使用範囲又は方法の変化、③経営環境の著しい悪化、④市場価格の著しい下落、の4つに整理されます(固定資産の減損に係る会計基準 二1)。適用指針は、①について「おおむね過去2期」、④について「帳簿価額から50%程度以上」という具体的な目安を示しており、決算前の確認はこの水準まで落として行うのが実務的です(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第12項、第15項)。

兆候に該当した場合でも、直ちに減損損失を計上するわけではありません。割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較する認識の判定を経て、認識すべきと判定された場合に、回収可能価額まで減額して測定します。そして減損損失の戻入れは行われないため、判定の各段階で置いた前提と記録が、そのまま注記と監査対応の根拠になります。

関連コラム固定資産の減損会計とは?基準と適用指針を公認会計士が解説▸

兆候の該当性やグルーピングの妥当性は、同じ数値でも事実関係の捉え方によって結論が変わり得る領域です。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

減損の兆候があると、必ず減損損失を計上することになりますか。

いいえ。減損の兆候は、減損損失を認識するかどうかの判定を行う入口にすぎません。兆候がある資産又は資産グループについて、割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較し、総額が帳簿価額を下回る場合に減損損失を認識します(固定資産の減損に係る会計基準 二2(1))。下回らなければ減損損失は計上されません。

営業損益が「継続してマイナス」とは、何期のマイナスを指しますか。

おおむね過去2期がマイナスであったことを指します。ただし、当期の見込みが明らかにプラスとなる場合は該当しないと考えることが適当とされています。また「継続してマイナスとなる見込み」とは、前期と当期以降の見込みが明らかにマイナスとなる場合を指します(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第12項(2))。

市場価格はどの程度下落すると減損の兆候になりますか。

市場価格が著しく下落したことには、少なくとも市場価格が帳簿価額から50%程度以上下落した場合が該当します(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第15項)。これは下限の目安であり、これを下回る下落幅であれば兆候にならないという趣旨ではありません。

減損の兆候はどの単位で把握しますか。

他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位、すなわち資産又は資産グループの単位で把握します(固定資産の減損に係る会計基準 二6(1))。共用資産やのれんについては、これらを含む、より大きな単位で判断されるのが原則です(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第16項、第17項)。

中間会計期間に減損処理を行った資産は、年度決算で見直しが必要ですか。

年度決算までに資産又は資産グループに新たな減損の兆候があり追加的に減損損失を認識すべきであると判定される場合を除き、年度決算において、中間会計期間を含む事業年度全体を対象として改めて会計処理を行う必要はありません(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第63項)。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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