新リース会計基準のExcel管理|利息法・リース料率の計算式と台帳項目
目次
- 新リース会計基準でExcel管理が論点になる理由
- Excelに求められる作業の変化
- リース管理台帳に持たせるデータ項目
- リースの識別と構成部分の区分に必要な項目
- リース期間の見積りに必要な項目
- リース料と割引率に必要な項目
- 台帳項目の整理
- Excelで組む3つの計算と仕訳
- リース負債の当初測定
- 利息相当額の配分と支払時の仕訳
- Excel関数で組むリース計算の計算式
- PV関数でリース負債の当初測定額を求める
- 利息法の償却表とIPMT・PPMT関数
- リース料率からRATE関数で利率を逆算する
- Excel管理が限界を迎える場面
- リース期間の再見積り
- 指数またはレートの改定によるリース料の変更
- リースの契約条件の変更
- 表示区分の組替と注記の集計
- 契約件数が増えたときの実務対応
- 簡便的な取扱いによる対象の絞り込み
- Excel台帳を維持する場合の設計上のポイント
- 適用に向けた進め方
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 新リース会計基準にExcelだけで対応できますか。
- Excel台帳にはどのような項目が必要ですか。
- Excelでの利息相当額の配分は定額法でもよいですか。
- 賃料改定があるたびに台帳を作り直す必要がありますか。
- 短期リースや少額リースはExcel台帳に載せなくてよいですか。
- リース料率から割引率をExcelで計算できますか。
新リース会計基準(企業会計基準第34号 リースに関する会計基準)では、借手はリースについて使用権資産とリース負債を計上します。これまで賃借料の支払記録だけで足りていた契約についても、リース期間の見積り、現在価値計算、利息法による配分、注記のための集計が必要になります。
そこで実務でまず検討されるのが、Excel(エクセル)による台帳管理です。契約件数が少なければExcelでも十分に対応できますが、再測定や契約条件の変更が重なると、計算の再実行と履歴の保全に手が回らなくなります。
本記事では、基準・適用指針の要求事項から逆算してExcel台帳に持たせるべきデータ項目を整理し、実際に組む計算と仕訳を数値例で示し、PV・PMT・RATEなどのExcel関数で組む計算式(リース料率からの利率の逆算を含む)を確認したうえで、Excel管理が限界を迎える場面と実務対応を解説します。
新リース会計基準でExcel管理が論点になる理由
本会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することができます(リースに関する会計基準 第58項)。本記事の執筆時点では強制適用前であり、適用初年度に向けた準備期間にあたります。
本会計基準は2024年9月に公表され、2025年4月に会計処理及び開示の定めを実質的に変更しない範囲の修正が行われています。また、本会計基準の適用により、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第16号は、これらに従って会計処理されている取引について適用を終了します(リースに関する会計基準 第59項)。
Excel管理が論点になる直接の原因は、対象となる契約の広がりです。借手は、リース開始日に第34項に従い算定された額によりリース負債を計上し、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用および資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。従来はオフバランスであったオフィス・店舗・車両・複合機などの契約も、この対象に入ってきます。
Excelに求められる作業の変化
支払額の記録だけでよかった従来の管理と比べ、新基準下では次の作業がExcel上で必要になります。
| 契約単位の データ保有 |
契約ごとにリース期間、リース料、割引率、オプションの判断根拠を保有する必要があります |
|---|---|
| 期間配分の計算 | 現在価値計算、利息法による利息相当額の配分、使用権資産の償却を毎期実行します |
| 見積りの 見直しと再計算 |
リース期間や指数・レートに変動があれば、残存期間について計算をやり直します |
| 開示のための集計 | 表示区分の組替と注記に必要な情報を、全契約分について集計します |
いずれも1件では難しくありませんが、契約件数と改定回数の積で作業量が増える性質を持っています。ここがExcel管理の負荷を決める要因です。
リース管理台帳に持たせるデータ項目
台帳の設計は、基準が求める判断と計算を分解し、そのインプットを列として並べる作業です。ここでは借手を前提に、必要な項目を判断ごとに整理します。
リースの識別と構成部分の区分に必要な項目
契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断します。契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含みます(リースに関する会計基準 第25項、第26項)。契約期間中は、契約条件が変更されない限り、契約がリースを含むか否かの判断を見直しません(リースに関する会計基準 第27項)。
また、借手および貸手は、リースを含む契約について、原則として、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理を行います(リースに関する会計基準 第28項)。借手は、契約における対価の金額を配分するにあたって、それぞれの部分の独立価格の比率に基づいて配分します(リースに関する会計基準の適用指針 第11項)。
したがって台帳には、契約書番号・原資産の内容・特定された資産か否かの判断結果に加えて、保守料や役務提供の対価を含む契約かどうかと、その独立価格の情報を持たせる必要があります。なお借手は、原資産のグループごとに、リースを構成しない部分とを分けずに合わせて会計処理を行うことを選択できます(リースに関する会計基準 第29項)。この選択の適用単位も台帳で管理します。
リース期間の見積りに必要な項目
借手は、借手のリース期間について、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間と、借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間を加えて決定します(リースに関する会計基準 第31項)。
この判定にあたっては、経済的インセンティブを生じさせる要因を考慮します。要因には、延長オプションまたは解約オプションの対象期間に係る契約条件、大幅な賃借設備の改良の有無、リースの解約に関連して生じるコスト、企業の事業内容に照らした原資産の重要性、オプションの行使条件が含まれます(リースに関する会計基準の適用指針 第17項)。
Excel台帳では、解約不能期間とオプション対象期間を別の列に分け、さらに「合理的に確実」と判断した理由を文章で残す列を設けることが実務上の要点です。判断の根拠が残っていないと、監査対応時にも再見積り時にも復元できません。
リース料と割引率に必要な項目
借手のリース料は、借手の固定リース料、指数またはレートに応じて決まる借手の変動リース料、残価保証に係る借手による支払見込額、借手が行使することが合理的に確実である購入オプションの行使価額、リースの解約に対する違約金の借手による支払額で構成されます(リースに関する会計基準 第35項)。指数またはレートに応じて決まる借手の変動リース料については、リース開始日には、借手のリース期間にわたりリース開始日現在の指数またはレートに基づきリース料を算定します(リースに関する会計基準の適用指針 第25項)。
一方、リース負債の計上額に含めなかった借手の変動リース料は、当該変動リース料の発生時に損益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第51項)。売上高に連動する賃料などがこれにあたるため、台帳では負債に含める変動リース料と含めない変動リース料を区別して保有します。
割引率は、貸手の計算利子率を知り得る場合は当該利率により、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率によります(リースに関する会計基準の適用指針 第37項)。追加借入利子率を用いる場合、期間や通貨に応じて利率が変わるため、契約ごとに採用した利率とその決定根拠を台帳に残します。
台帳項目の整理
ここまでの要求事項を台帳の列として並べると、次のようになります。
| 台帳に持たせる項目 | その項目が必要になる根拠 |
|---|---|
| 原資産の内容・特定された資産か否かの判断 | 契約がリースを含むかの判断(第25項、第26項) |
| リースを構成しない部分の有無と独立価格 | 対価の配分(第28項、適用指針第11項) |
| 解約不能期間・延長/解約オプションの対象期間 | 借手のリース期間の決定(第31項) |
| オプション行使が合理的に確実と判断した理由 | 経済的インセンティブの考慮(適用指針第17項) |
| 固定リース料・変動リース料・残価保証・購入オプション行使価額 | 借手のリース料の構成(第35項) |
| 割引率とその決定根拠 | 現在価値の算定に用いる割引率(適用指針第37項) |
| 簡便的な取扱いの適用有無と適用単位 | 短期リース・少額リースの選択(適用指針第20項、第22項) |
逆にいえば、これらの列がそろっていない台帳は、計算をやり直すたびに契約書の読み直しが発生します。件数が増えるほど、この読み直しが実務の負荷になります。
Excelで組む3つの計算と仕訳
台帳の項目がそろうと、Excel上で実行する計算は大きく3つに整理できます。現在価値計算、利息法による利息相当額の配分、使用権資産の償却です。
リース負債の当初測定
借手は、リース負債の計上額を算定するにあたって、原則として、リース開始日において未払である借手のリース料からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定する方法によります(リースに関する会計基準 第34項)。
以下では自社作例として、次の前提を置きます(単位:千円)。機械装置のリースで、リース開始日は2027年4月1日、借手のリース期間は5年、借手の固定リース料は年1,200を各年度末に後払い、割引率は借手の追加借入利子率3.0%、残価保証および購入オプションはなく、付随費用およびリース・インセンティブもないものとします。金額は千円未満を四捨五入しています。
この算定額をもってリース開始日にリース負債を計上し、同額を使用権資産として計上します(リースに関する会計基準 第33項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 使用権資産 | 5,496 | リース負債 | 5,496 |
Excelでは、契約1件につき1シートまたは1行に対して、リース期間分の支払スケジュールを展開する形になります。契約件数が数十件を超えると、この展開そのものがブック容量と再計算時間を押し上げます。
利息相当額の配分と支払時の仕訳
借手のリース料は、原則として、利息相当額部分とリース負債の元本返済額部分とに区分計算し、前者は支払利息として、後者はリース負債の元本返済として会計処理します(リースに関する会計基準の適用指針 第38項)。利息相当額の総額は、借手のリース期間にわたり、原則として利息法により配分します(リースに関する会計基準 第36項)。利息法においては、各期の利息相当額をリース負債の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定します(リースに関する会計基準の適用指針 第39項)。
また、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリース以外のリースに係る使用権資産の減価償却費は、定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用した方法により算定し、原則として、借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとします(リースに関する会計基準 第38項)。
上記の前提に基づく2028年3月31日(第1回のリース料支払日かつ決算日)の仕訳は、次のとおりです(単位:千円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| リース負債 | 1,035 | 現金預金 | 1,200 |
| 支払利息 | 165 | ||
| 減価償却費 | 1,099 | 使用権資産減価償却累計額 | 1,099 |
この計算自体はExcelの得意分野です。問題は、後述するとおり前提が動いたときに同じ計算を最初からやり直す必要がある点にあります。
Excel関数で組むリース計算の計算式
前章の計算は、Excelの財務関数を使うと1セルで再現できます。ここでは、リース負債の当初測定と利息法の償却表、そしてリース料率から利率を逆算する場面で使う関数を、前章と同じ自社作例(単位:千円)で確認します。関数の書式と引数はExcelの一般的な仕様であり、どの利率を使うか、どう配分するかという会計上の扱いは基準・適用指針の定めに従います。
PV関数でリース負債の当初測定額を求める
リース負債は、未払の借手のリース料を割引率で割り引いた現在価値で算定します(リースに関する会計基準 第34項)。毎期同額のリース料であれば、ExcelではPV関数がそのまま使えます。書式は「=PV(利率, 期間数, 定期支払額, [将来価値], [支払期日])」で、支払期日は期末払いなら0(省略可)、期首払いなら1を指定します。
PV関数は支払を負の値で入力すると正の値を返すため、リース料に「-」を付けています。月払いの契約では、利率を12で割り、期間数を月数にして「=PV(年利率/12, 月数, -月額リース料)」とします。リース料が期首に支払われる契約で支払期日の指定を漏らすと、割引期間が1期ずれて計上額が変わる点に注意が必要です。
フリーレント期間や段階的な賃料改定があり、リース料が毎期同額でない場合は、支払スケジュールを列に展開してNPV関数(=NPV(利率, 各期のリース料の範囲))を使います。NPV関数は範囲の1つ目の値も1期分割り引くため、期首払いの1回目は範囲に含めず、別に加算します。
利息法の償却表とIPMT・PPMT関数
利息法では、各期の利息相当額をリース負債の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定し、リース料のうち残りを元本返済として扱います(リースに関する会計基準の適用指針 第38項、第39項)。Excelでは、期首残高・支払利息・元本返済・期末残高の4列を作り、支払利息の列に「=期首残高×利率」、元本返済の列に「=リース料−支払利息」、期末残高の列に「=期首残高−元本返済」を入れて下の行へコピーするのが基本形です。
前章の作例を千円単位で展開すると、次のとおりです。千円未満の四捨五入による差額は、最終年度の支払利息で調整しています。
| 1年目 | 期首残高5,496、支払利息165、元本返済1,035、期末残高4,461 |
|---|---|
| 2年目 | 期首残高4,461、支払利息134、元本返済1,066、期末残高3,395 |
| 3年目 | 期首残高3,395、支払利息102、元本返済1,098、期末残高2,297 |
| 4年目 | 期首残高2,297、支払利息69、元本返済1,131、期末残高1,166 |
| 5年目 | 期首残高1,166、支払利息34(端数調整後)、元本返済1,166、期末残高0 |
支払利息の合計504は、借手のリース料の総額6,000とリース負債の計上額5,496との差額に一致します(リースに関する会計基準の適用指針 第38項)。この一致を償却表の検算に使うと、式の参照ずれを早く見つけられます。
特定の期だけを確認したい場合は、IPMT関数で利息部分、PPMT関数で元本部分を直接求められます。
ただし、IPMT・PPMT関数は毎期同額の支払と一定の利率を前提にした関数です。リース期間の見直しや指数・レートの改定でリース負債を修正した後は(リースに関する会計基準の適用指針 第46項、第48項)、修正後の残高と残存期間で償却表を組み直す必要があります。
リース料率からRATE関数で利率を逆算する
リース会社の見積書では、月額リース料を物件価格で割った割合を「リース料率」として示すことが多くあります。リース料率そのものは会計基準の用語ではありませんが、物件価格と月額リース料が分かれば、RATE関数で契約に織り込まれた利率を逆算できます。書式は「=RATE(期間数, 定期支払額, 現在価値, [将来価値], [支払期日])」です。
自社作例として、物件価格3,000、リース料率1.8%(月額リース料54)、リース期間60か月、毎月末払い、契約終了時の残存価額はないものとします(単位:千円)。
逆に、利率から月額リース料を求めるときはPMT関数を使い、「=PMT(年利率/12, 60, -3000)」とします。
会計上の論点は、この逆算した利率をそのまま割引率に使えるかどうかです。借手がリース負債の現在価値の算定に用いる割引率は、貸手の計算利子率を知り得る場合はその利率により、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率によります(リースに関する会計基準の適用指針 第37項)。貸手の計算利子率は、貸手のリース料の現在価値と見積残存価額の現在価値の合計額が、原資産の現金購入価額または借手に対する現金販売価額と等しくなるような利率をいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第66項)。
つまり、RATE関数で逆算した利率が貸手の計算利子率と一致するのは、物件価格が現金購入価額等であり、かつ貸手が見積る残存価額が織り込まれていない場合に限られます。借手は通常、貸手の見積残存価額を知り得ないため、実務では追加借入利子率を用いる場面が多くなります。逆算した利率は、見積書の条件を把握したり、追加借入利子率の水準と比べたりする参考値として台帳に残しておくと、割引率の決定根拠を説明する材料になります。
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新リース会計基準の対応、影響額の簡易試算から
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Excel管理が限界を迎える場面
Excelでの管理が破綻しやすいのは、初回計上のときではなく、計上後に前提が変わったときです。基準は、契約条件の変更がある場合とない場合の双方について、リース負債の見直しを求めています。
リース期間の再見積り
借手は、リースの契約条件の変更が生じていない場合で、借手のリース期間に変更があるとき、または借手のリース期間に変更がなく借手のリース料に変更があるときは、リース負債の計上額の見直しを行います(リースに関する会計基準 第40項)。
とくにリース期間については、借手の統制下にあり、かつ延長オプションを行使することまたは解約オプションを行使しないことが合理的に確実であるかどうかの借手の決定に影響を与える重要な事象または重要な状況が生じたときに、見直しを行います(リースに関する会計基準 第41項)。また、延長オプションの行使等により解約不能期間に変更が生じた結果、借手のリース期間を変更するときにも見直しを行います(リースに関する会計基準 第42項)。
見直しにあたっては、該当する事象が生じた日に、当該事象の内容を反映した借手のリース料の現在価値までリース負債を修正し、当該リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減します(リースに関する会計基準の適用指針 第46項)。Excelでは、この修正のたびに残存期間の償却スケジュールを組み直すことになります。
指数またはレートの改定によるリース料の変更
借手は、指数またはレートに応じて決まる借手の変動リース料について、当該指数またはレートが変動し、そのことにより今後支払うリース料に変動が生じたときにのみ、残りの借手のリース期間にわたり、変動後の指数またはレートに基づきリース料およびリース負債を修正し、リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減します(リースに関する会計基準の適用指針 第48項)。
不動産の賃料改定のように、改定が定期的に起こる契約では、この修正が毎期発生します。Excel管理では、改定のたびに改定前スケジュールを残したまま改定後スケジュールを作り直す必要があり、シートの版が増え続ける点が負荷になります。
リースの契約条件の変更
借手は、リースの契約条件の変更が生じた場合、変更前のリースとは独立したリースとしての会計処理を行うか、またはリース負債の計上額の見直しを行います(リースに関する会計基準 第39項)。契約条件の変更に複数の要素がある場合、これらの両方を行うことがあります。
リースの範囲が縮小されるものについては、リースの一部または全部の解約を反映するように使用権資産の帳簿価額を減額し、このとき使用権資産の減少額とリース負債の修正額とに差額が生じた場合には、当該差額を損益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第45項)。増床・減床や中途解約が発生する不動産賃貸借では、この判定と計算が契約ごとに必要になります。
表示区分の組替と注記の集計
リース負債については、貸借対照表において区分して表示するか、リース負債が含まれる科目および金額を注記します。このとき、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するリース負債は流動負債に属するものとし、貸借対照表日後1年を超えて支払の期限が到来するリース負債は固定負債に属するものとします(リースに関する会計基準 第50項)。したがって、全契約について毎期末に1年内と1年超の切り分けが必要です。
注記については、開示目的を達成するため、借手は会計方針に関する情報、リース特有の取引に関する情報、当期および翌期以降のリースの金額を理解するための情報を注記します(リースに関する会計基準 第55項)。これらは全契約を横断して集計する情報であり、契約ごとのシートが分かれているほど集計に手間がかかります。
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契約件数が増えたときの実務対応
Excelを使い続けるか、別の手段に移すかは、契約件数と改定頻度で判断が分かれます。まず検討すべきは、基準が用意している簡便的な取扱いによって、そもそも計算対象を減らせないかという点です。
簡便的な取扱いによる対象の絞り込み
借手は、短期リースについて、リース開始日に使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用として計上することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。短期リースとは、リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第4項(2))。
少額リースについても同様の取扱いがあり、重要性が乏しい減価償却資産について購入時に費用処理する方法が採用されている場合で借手のリース料が当該基準額以下のリース、または、企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースでリース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースなどが対象になります(リースに関する会計基準の適用指針 第22項)。
さらに、使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合には、利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法、または利息相当額の総額を各期に定額法により配分する方法を適用できます(リースに関する会計基準の適用指針 第40項)。ここでいう重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過の借手のリース料の期末残高が、当該期末残高、有形固定資産の期末残高および無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合をいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第41項)。
これらの選択は、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと、または性質および企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに適用するか否かを選択できます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。台帳ではこの適用単位を明示的に記録し、期をまたいで一貫させることが必要です。
Excel台帳を維持する場合の設計上のポイント
簡便的な取扱いを適用しても計算対象が残る場合、Excelを維持するのであれば、次の点を設計に織り込むと破綻しにくくなります。
| 契約マスタと 計算シートの分離 |
契約条件を1行1契約のマスタに集約し、計算シートはマスタを参照する構造にします |
|---|---|
| 改定履歴の追記管理 | 改定のたびにシートを上書きせず、発効日と改定後条件を行として追加して履歴を残します |
| 判断根拠の 文章での保存 |
リース期間や割引率の判断理由を台帳内に文章で残し、監査対応と再見積りに備えます |
| 集計用の 出力フォーマット |
表示区分の組替と注記に必要な集計値を、契約横断で出力できる形式にそろえます |
実務では、契約件数が数十件程度で改定がほとんど発生しない場合はExcelでも運用できますが、不動産賃貸借を多数抱え賃料改定や中途解約が毎期発生する場合は、計算の再実行と履歴管理の負荷が急速に高まります。上場準備企業では、内部統制の観点からも、計算過程が属人化しない仕組みへの移行を早めに検討することが多くみられます。
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適用に向けた進め方
強制適用まで期間があるうちに進めておきたいのは、契約の洗い出しと台帳項目の確定です。契約書を集めて原資産・期間・リース料・オプションの有無を一覧化した段階で、はじめて自社の契約件数と改定頻度が把握できます。その数値がそろえば、Excelで足りるのか、別の仕組みが必要なのかを事実に基づいて判断できます。
逆に、件数の把握を後回しにしたまま手段の選定から入ると、想定と実態が食い違い、適用初年度の直前に作業が集中します。台帳の設計は、手段の選定より前に行う工程と位置づけるのが安全です。
まとめ
新リース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用が認められています(リースに関する会計基準 第58項)。借手は使用権資産とリース負債を計上し、利息相当額を利息法により配分します(リースに関する会計基準 第33項、第36項)。
Excel管理を検討する場合は、リースの識別、リース期間の見積り、リース料と割引率という判断のインプットを台帳の列として持たせることが出発点になります。計算そのものはPV・IPMT・RATEなどの関数を使えばExcelで十分に実行できます。ただし、RATE関数でリース料率から逆算した利率は、貸手の計算利子率と一致する場合を除き、そのまま割引率にはなりません(リースに関する会計基準の適用指針 第37項)。また、リース期間の再見積り、指数またはレートの改定、契約条件の変更が重なると、再計算と履歴管理の負荷が急激に高まります。
まずは短期リース・少額リースの簡便的な取扱いで対象を絞り込み、残る契約について件数と改定頻度を把握したうえで、Excelを維持するか別の仕組みへ移すかを判断する流れが現実的です。会計処理や簡便的な取扱いの適用可否の判定は個別性が高いため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
新リース会計基準にExcelだけで対応できますか。
会計基準はシステムの使用を求めていないため、Excelでの対応自体は可能です。ただし、リース期間の再見積りや指数・レートの改定が生じるたびに、残存期間のリース料の現在価値までリース負債を修正し、修正額を使用権資産に加減する必要があります(リースに関する会計基準の適用指針 第46項、第48項)。契約件数と改定頻度が多いほど再計算と履歴管理の負荷が高まるため、実務では件数を把握したうえで判断することになります。
Excel台帳にはどのような項目が必要ですか。
リースの識別に必要な原資産の情報、解約不能期間とオプション対象期間およびその判断理由、固定リース料・変動リース料・残価保証・購入オプション行使価額、割引率とその決定根拠が基本になります(リースに関する会計基準 第25項、第31項、第35項、リースに関する会計基準の適用指針 第17項、第37項)。加えて、短期リース・少額リースの簡便的な取扱いの適用有無と適用単位も記録します(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。
Excelでの利息相当額の配分は定額法でもよいですか。
原則は利息法による配分です(リースに関する会計基準 第36項)。ただし、使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合には、利息相当額の総額を各期に定額法により配分する方法等を適用できます(リースに関する会計基準の適用指針 第40項)。重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過の借手のリース料の期末残高が、当該期末残高、有形固定資産の期末残高および無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合をいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第41項)。
賃料改定があるたびに台帳を作り直す必要がありますか。
指数またはレートに応じて決まる借手の変動リース料は、当該指数またはレートが変動し、今後支払うリース料に変動が生じたときにのみ、残りの借手のリース期間にわたり、変動後の指数またはレートに基づきリース料およびリース負債を修正します(リースに関する会計基準の適用指針 第48項)。既往の期間を遡って修正するものではないため、改定前のスケジュールは履歴として残し、改定後は残存期間について計算し直す形になります。
短期リースや少額リースはExcel台帳に載せなくてよいですか。
使用権資産およびリース負債を計上しない選択をした場合でも、リース料は借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用として計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。また、簡便的な取扱いを適用したかどうかとその適用単位は、会計方針に関する情報などの注記の前提になります(リースに関する会計基準 第55項)。したがって、計算対象から外れる契約も台帳には記録しておくことが実務上望ましいといえます。
リース料率から割引率をExcelで計算できますか。
物件価格と月額リース料が分かれば、RATE関数で契約に織り込まれた利率を逆算できます。ただし、借手の割引率は、貸手の計算利子率を知り得る場合はその利率、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率です(リースに関する会計基準の適用指針 第37項)。貸手の計算利子率は見積残存価額の現在価値も含めて算定するため(リースに関する会計基準の適用指針 第66項)、逆算した利率がそのまま割引率になるとは限りません。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。




