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リース負債とは|当初測定・利息配分・再測定の実務(日本基準)

2026-08-22
目次

リース負債とは、借手がリース期間中に支払う借手のリース料の現在価値として、リース開始日に計上される負債です。借手はこのリース負債の計上額を基礎として使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。

実務の論点は、現在価値の計算に含める借手のリース料の範囲、利息法による利息相当額の配分、リース期間やリース料が変わったときの見直し(再測定)、表示の四つです。本会計基準は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後開始する年度の期首から早期適用できます(リースに関する会計基準 第58項)。本稿では当初測定から再測定・表示までを、計算過程と仕訳例を示しながら整理します。

リース負債の位置づけ

リースとは、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分をいいます(リースに関する会計基準 第6項)。借手はこの権利を使用権資産、対価を支払う義務をリース負債として計上します。借手側ではファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分による処理の違いがなくなり、原則としてすべてのリースで両者を計上する単一の会計処理モデルになります(リースに関する会計基準 第33項、第59項)。

測定の起点はリース負債です。使用権資産は、リース負債の計上額にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により計上します(リースに関する会計基準 第33項、リースに関する会計基準の適用指針 第28項)。

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リース開始日のリース負債の当初測定

リース負債の計上額は、原則として、リース開始日において未払である借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定します(リースに関する会計基準 第34項、リースに関する会計基準の適用指針 第19項)。リース開始日は、貸手が借手による原資産の使用を可能にする日であり、契約締結日ではありません(リースに関する会計基準 第18項)。

リース負債の当初計上額 = 各期の借手のリース料 ÷ (1 + 割引率)の経過期間数乗 の合計額

借手のリース料の範囲

分子となる借手のリース料は次の五つで構成されます(リースに関する会計基準 第19項、第35項)。一つでも漏らすとリース負債が過小になります。

構成要素 内容
固定リース料 原資産を使用する権利に関して行う支払のうち、変動リース料以外のもの
変動リース料 指数又はレートに応じて決まるもののみを含める
残価保証 残価保証に係る借手による支払見込額(保証価額の全額ではない)
購入オプション 行使が合理的に確実である購入オプションの行使価額
解約時の違約金 借手のリース期間に解約オプションの行使を反映している場合の違約金の支払額

残価保証とは、リース終了時に原資産の価値が契約上の保証価額に満たない場合、その不足額を貸手に支払う義務を課せられる条件をいいます(リースに関する会計基準 第22項)。指数又はレートに応じて決まる変動リース料は、リース開始日現在の指数又はレートに基づき算定するのが原則ですが、合理的な根拠をもって将来の変動を見積ることができる場合は、見積られた指数又はレートに基づき算定することをリースごとに選択できます(リースに関する会計基準の適用指針 第25項、第26項)。

リース負債に含めない支払

借手のリース料には、契約におけるリースを構成しない部分に配分する対価は含まれません(リースに関する会計基準 第19項)。保守サービスなどの役務提供の対価が典型例で、契約における対価は独立価格の比率に基づき配分します(リースに関する会計基準の適用指針 第11項)。ただし、科目ごと又は原資産のグループごとに両者を分けずに会計処理する選択も認められ、この場合は役務提供部分もリース負債に含まれます(リースに関する会計基準 第29項)。売上高連動など指数又はレート以外の変動リース料は含めず、発生時に損益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第51項)。

割引率と現在価値の算定

割引率は、貸手の計算利子率を知り得る場合は当該利率、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率によります(リースに関する会計基準の適用指針 第37項)。実務では貸手の計算利子率を入手できないことが多く、追加借入利子率の見積りが中心の作業になります。

関連コラム借手の割引率と追加借入利子率|新リース会計基準の決定手順

以下、具体的な数値で算定過程を追います。3月決算のA社が2027年4月1日にオフィス機器をリースし、借手のリース期間は5年、借手のリース料は年額1,000千円を毎年3月末に後払い、割引率は年3.0パーセントとします。金額の単位は千円です。

年金現価係数 = (1 − 1 ÷ 1.03の5乗) ÷ 0.03 = (1 − 0.862609) ÷ 0.03 = 4.5797
リース負債の当初計上額 = 1,000 × 4.5797 = 4,580(千円未満四捨五入)

リース開始日の仕訳

本例では前払リース料・付随費用・リース・インセンティブがなく、使用権資産の計上額はリース負債と同額の4,580千円になります(リースに関する会計基準 第33項、第34項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
使用権資産 4,580 リース負債 4,580

利息相当額の各期への配分

利息法による配分

借手のリース料は、原則として利息相当額部分とリース負債の元本返済額部分とに区分計算し、前者は支払利息、後者は元本返済として処理します。利息相当額の総額は、リース開始日における借手のリース料とリース負債の計上額との差額です(リースに関する会計基準の適用指針 第38項)。配分は原則として利息法によります(リースに関する会計基準 第36項)。各期の利息相当額は未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定するため、初期ほど利息費用が大きくなります(リースに関する会計基準の適用指針 第39項)。

利息相当額の総額 = 1,000 × 5年 − 4,580 = 5,000 − 4,580 = 420
1年目の利息相当額 = 期首残高 4,580 × 3.0% = 137
1年目の元本返済額 = 1,000 − 137 = 863

リース料支払時の仕訳

2028年3月31日に1,000千円を支払った時点の仕訳です。リース負債残高は4,580千円から3,717千円に減少します(リースに関する会計基準の適用指針 第38項、第39項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
支払利息 137 現金預金 1,000
リース負債 863

翌年度は期首残高3,717千円に3.0パーセントを乗じた112千円が利息相当額、元本返済額は888千円となり、期末残高は2,829千円です。この金額は残り3回のリース料を年3.0パーセントで割り引いた現在価値と一致します。

重要性が乏しい場合の簡便な取扱い

使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合には、借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法(支払利息を計上せず減価償却費のみを計上する方法)又は利息相当額の総額を各期に定額法により配分する方法を適用できます(リースに関する会計基準の適用指針 第40項)。この「重要性が乏しいと認められる場合」は次の割合で判定します(リースに関する会計基準の適用指針 第41項)。

未経過の借手のリース料の期末残高 ÷ (未経過の借手のリース料の期末残高 + 有形固定資産の期末残高 + 無形固定資産の期末残高) < 10%

この判定は連結財務諸表の数値を基礎として見直すことができ、個別財務諸表の結果を修正する場合は連結修正仕訳で修正します(リースに関する会計基準の適用指針 第42項)。

リース負債の見直しと再測定

リース負債は当初測定で終わりではなく、契約条件の変更が生じた場合と、変更は生じていない場合の双方で見直しを行います。

契約条件の変更を伴う場合

リースの契約条件の変更とは、当初の契約条件の一部ではなかったリースの範囲又はリースの対価の変更をいいます(リースに関する会計基準 第24項)。借手は、変更前のリースとは独立したリースとして会計処理するか、リース負債の計上額の見直しを行います(リースに関する会計基準 第39項)。独立したリースとするのは、1つ以上の原資産の追加によりリースの範囲が拡大され、かつ、借手のリース料が拡大部分に対する独立価格に適切な調整を加えた金額だけ増額される場合で、既存のリース負債は修正せず追加分に新たなリース負債を計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第44項)。

独立したリースとしない変更は、発効日に、変更後の条件を反映した借手のリース期間を決定し、変更後の条件を反映したリース料の現在価値までリース負債を修正します。使用権資産側は、範囲が縮小されるものは解約を反映するように帳簿価額を減額し、その減少額とリース負債の修正額との差額を損益に計上します。それ以外は、リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減します(リースに関する会計基準の適用指針 第45項)。

契約条件の変更を伴わない見直し

契約条件の変更が生じていない場合でも、借手のリース期間に変更があるとき、又はリース期間に変更がなく借手のリース料に変更があるときは、リース負債の計上額の見直しを行います(リースに関する会計基準 第40項)。該当する事象が生じた日に、当該事象の内容を反映した借手のリース料の現在価値までリース負債を修正し、修正額に相当する金額を使用権資産に加減します。使用権資産の帳簿価額をゼロまで減額してもなお減額がある場合は、残額を損益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第46項)。該当する事象は次のとおりです(リースに関する会計基準 第41項、第42項、リースに関する会計基準の適用指針 第47項)。

見直しの区分 該当する事象
リース期間の変更 借手の統制下にあり、かつオプション行使が合理的に確実かどうかの借手の決定に影響を与える重要な事象又は重要な状況が生じたとき。延長オプションの行使等により解約不能期間に変更が生じたとき
リース料の変更 原資産を購入するオプションの行使についての判定に変更がある場合。残価保証に基づく支払見込額に変動がある場合。指数又はレートに応じて決まる変動リース料に変動がある場合

指数又はレートに応じて決まる変動リース料については、当該指数又はレートが変動し、そのことにより今後支払うリース料に変動が生じたときにのみ、残りのリース期間にわたりリース料及びリース負債を修正します(リースに関する会計基準の適用指針 第48項)。指数の変動時点ではなく、支払額に反映される時点が起点になります。

関連コラムリース期間の判定|延長・解約オプションと新リース会計基準

リース期間の変更に伴う再測定の仕訳

先のA社の例で、2029年3月31日の支払後にリース負債残高が2,829千円となっている状況を前提とします。この時点で延長オプションの行使が合理的に確実となり、残りの借手のリース期間が3年から5年に変更されたとします(リースに関する会計基準 第40項、第41項)。

修正後のリース負債 = 1,000 × 4.5797 = 4,580
リース負債の修正額 = 4,580 − 2,829 = 1,751
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
使用権資産 1,751 リース負債 1,751

再測定後は、修正後のリース負債残高を基礎に利息法を再適用し(リースに関する会計基準の適用指針 第39項)、加算後の使用権資産を変更後の借手のリース期間にわたり償却します(リースに関する会計基準 第38項)。再測定はリース1件ごとに生じるため、契約件数が多い企業では台帳による管理が前提です。

再測定に用いる割引率

IFRS第16号は状況ごとに使用する割引率を定めていますが、本適用指針では、主要な定めの内容のみを取り入れるという開発方針との整合性等を理由に、契約条件の変更についても変更を伴わない見直しについても、割引率に関する定めを取り入れないこととされています(リースに関する会計基準の適用指針 第BC76項、第BC79項)。当初の割引率を据え置くか見直し時点の追加借入利子率に更新するかは企業の判断となるため、方針を定めて継続的に適用することが望まれます。

リース負債の表示と注記

リース負債は、貸借対照表において区分して表示するか、リース負債が含まれる科目及び金額を注記します。貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するものは流動負債、1年を超えて到来するものは固定負債に属します(リースに関する会計基準 第50項)。利息費用も、損益計算書において区分して表示するか、含まれる科目及び金額を注記します(リースに関する会計基準 第51項)。従来オペレーティング・リース取引として営業費用に計上していた支払リース料が減価償却費と利息費用に分解されるため、営業利益への影響の事前試算が欠かせません。

借手の注記は、会計方針に関する情報、リース特有の取引に関する情報、当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報で構成されます(リースに関する会計基準 第55項)。三つ目では、リースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額や使用権資産の増加額等を注記します(リースに関する会計基準の適用指針 第102項)。

リース負債を計上しないことができるリース

簡便的な取扱いが二つあります。一つは短期リースです。リース開始日において借手のリース期間が12か月以内で購入オプションを含まないリースをいい、使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料をリース期間にわたり原則として定額法により費用計上できます(リースに関する会計基準の適用指針 第4項、第20項)。

もう一つは少額リースです。重要性が乏しい減価償却資産の購入時費用処理の基準額以下のリース、事業内容に照らして重要性が乏しくリース契約1件当たりの金額にも重要性が乏しいリース、新品時の原資産の価値が少額であるリースが対象で、対象期間は原則として借手のリース期間とします(リースに関する会計基準の適用指針 第22項、第23項)。短期リースに係る費用の発生額は、損益計算書で区分して表示していない場合に注記します(借手のリース期間が1か月以下のリース及び少額リースに係る費用は含めることを要しません)(リースに関する会計基準の適用指針 第100項)。

適用時期と経過措置におけるリース負債

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」は2024年9月に公表され(リースに関する会計基準の適用指針 第BC3項)、2025年4月23日には両者の修正が公表と同時に適用されています。この修正は会計処理及び開示に関する定めを実質的に変更するものではありません。適用時期は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からで、2025年4月1日以後開始する年度の期首から早期適用できます(リースに関する会計基準 第58項、リースに関する会計基準の適用指針 第112項)。適用により企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」等の適用は終了します(リースに関する会計基準 第59項)。

適用初年度は会計方針の変更として取り扱い、原則として過去の期間のすべてに遡及適用しますが、累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し当期首残高から適用することもできます(リースに関する会計基準の適用指針 第118項)。この方法を選択する借手は、従来オペレーティング・リース取引に分類していたリース等について、適用初年度の期首時点の残りの借手のリース料を同時点の追加借入利子率で割り引いた現在価値によりリース負債を計上でき、類似する複数のリースに単一の割引率を適用するなどの便法も使えます(リースに関する会計基準の適用指針 第123項、第124項)。期首のリース負債に適用した追加借入利子率の加重平均等が注記されるため、割引率の決定根拠は文書として残す必要があります(リースに関する会計基準の適用指針 第125項)。

まとめ

リース負債は、リース開始日において未払である借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除した現在価値により計上されます(リースに関する会計基準 第34項)。分子となるリース料は固定リース料・指数又はレートに応じて決まる変動リース料・残価保証に係る支払見込額・購入オプションの行使価額・解約に対する違約金の五つで構成され、この範囲の判定が測定精度を左右します(リースに関する会計基準 第35項)。計上後は利息法により配分し(リースに関する会計基準 第36項)、リース期間やリース料に変更が生じた場合は事象が生じた日に修正します(リースに関する会計基準 第40項、リースに関する会計基準の適用指針 第46項)。

2027年4月1日以後開始する年度の期首からの適用に向けては、契約の棚卸し、リース料の範囲の判定基準、割引率の決定方針、再測定を検知する運用、注記データの取得方法を一体で設計しておくことが要点です(リースに関する会計基準 第58項)。個別の判断は契約条件によって結論が変わるため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

リース負債はどのように計算しますか。

原則として、リース開始日において未払である借手のリース料から、これに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定します(リースに関する会計基準 第34項)。割引率は、貸手の計算利子率を知り得る場合は当該利率、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率によります(リースに関する会計基準の適用指針 第37項)。

変動リース料はリース負債に含めますか。

指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料は含めます(リースに関する会計基準 第35項)。リース開始日には、借手のリース期間にわたりリース開始日現在の指数又はレートに基づき算定します(リースに関する会計基準の適用指針 第25項)。それ以外の変動リース料は含めず、発生時に損益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第51項)。

利息相当額は定額で配分してもよいですか。

原則は利息法による配分です(リースに関する会計基準 第36項)。ただし、使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合には、利息相当額の総額を各期に定額法により配分する方法等を適用できます(リースに関する会計基準の適用指針 第40項)。重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過の借手のリース料の期末残高が、当該期末残高、有形固定資産の期末残高及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合をいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第41項)。

リース期間が変わったときはリース負債をどうしますか。

契約条件の変更が生じていない場合でも、借手のリース期間に変更があるときは計上額の見直しを行います(リースに関する会計基準 第40項)。該当する事象が生じた日に、事象の内容を反映した借手のリース料の現在価値までリース負債を修正し、修正額に相当する金額を使用権資産に加減します(リースに関する会計基準の適用指針 第46項)。

リース負債は貸借対照表のどこに表示しますか。

貸借対照表において区分して表示するか、リース負債が含まれる科目及び金額を注記します。貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するものは流動負債、1年を超えて支払の期限が到来するものは固定負債に属します(リースに関する会計基準 第50項)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。