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分配可能額の計算方法|のれん等調整額と自己株式の控除

2026-08-29
目次

分配可能額とは、株主に対する剰余金の配当や自己株式の取得によって会社が交付できる金銭等の帳簿価額の上限をいいます。分配可能額は、剰余金の額に臨時計算書類による調整を加え、そこから自己株式の帳簿価額や会社計算規則が定める控除額を差し引いて求めます(会社法 第461条第2項)。

実務では「配当の原資は繰越利益剰余金だから、その残高まで配当できる」と誤解されがちです。しかし実際には、自己株式の帳簿価額や、のれん・繰延資産に係る控除額が上限を押し下げます。本記事では、上場準備企業の経理・財務担当者が今期いくらまで配当・自己株式取得ができるかを自分で検算できるよう、条文の順序に沿って計算手順を分解します。

分配可能額による規制の対象

会社法は、次の行為によって株主に交付する金銭等(当該株式会社の株式を除きます)の帳簿価額の総額が、その行為の効力発生日における分配可能額を超えてはならないと定めています(会社法 第461条第1項)。剰余金の配当だけでなく、自己株式の取得の多くもこの規制に含まれる点が重要です。

剰余金の配当 金銭配当・現物配当を問わず、株主に対する剰余金の配当(会社法 第461条第1項第8号)
株主総会決議に基づく
自己株式の取得
特定の株主からの取得や市場取引等による取得(会社法 第461条第1項第2号、第3号)
全部取得条項付種類株式
の取得
株主総会の決議による取得(会社法 第461条第1項第4号)
譲渡制限株式の
買取請求への対応
譲渡等承認請求に伴う会社による買取り(会社法 第461条第1項第1号、第5号)
単元未満株式・端数
に係る買取り
単元未満株式の買取請求、端数処理に伴う買取り(会社法 第461条第1項第6号、第7号)

また、分配可能額とは別の規制として、株式会社の純資産額が300万円を下回る場合には剰余金の配当をすることができません(会社法 第458条)。分配可能額が正の値であっても、純資産額が300万円未満であれば配当は行えません。

分配可能額の計算式と全体像

分配可能額は、加算項目2つから減算項目4つを差し引いて算定します(会社法 第461条第2項)。まず全体の骨格を押さえます。

分配可能額 = 剰余金の額 + 臨時計算書類の利益等 − 自己株式の帳簿価額 − 最終事業年度の末日後の自己株式の処分対価 − 臨時計算書類の損失 − 会社計算規則第158条の額

「剰余金の額」は決算日の残高ではなく、決算日(最終事業年度の末日)の額を出発点として、期中の一定の増減を加減した分配時点の額である点に注意が必要です。以下では、この計算を5つのステップに分けて確認します。

ステップ1 最終事業年度の末日における剰余金の額

会社法は、最終事業年度の末日における剰余金の額を「資産の額と自己株式の帳簿価額の合計額から、負債の額、資本金及び準備金の額の合計額、および法務省令で定める額を減じて得た額」と定めています(会社法 第446条第1号)。この法務省令で定める額は、その他資本剰余金とその他利益剰余金以外の純資産項目を除く仕組みになっています(会社計算規則 第149条)。

この規定を整理すると、決算日の剰余金の額は次の単純な式に帰着します。実務上は、貸借対照表の純資産の部から2項目を拾うだけで足ります。

最終事業年度の末日の剰余金の額 = その他資本剰余金 + その他利益剰余金

資本金・資本準備金・利益準備金は含まれません。また、その他有価証券評価差額金や新株予約権といった株主資本以外の項目も、この段階では剰余金の額に入りません。

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ステップ2 最終事業年度の末日後の剰余金の増減

決算日後に資本取引や配当を行った場合は、その影響を剰余金の額に反映させます(会社法 第446条第2号から第7号)。加算されるのは、自己株式の処分差益、資本金の額の減少額、準備金の額の減少額です。減算されるのは、自己株式の消却に係る帳簿価額、剰余金の配当額、および法務省令で定める額です。

分配時点の剰余金の額 = 最終事業年度の末日の剰余金の額 + 自己株式処分差益 + 資本金の額の減少額 + 準備金の額の減少額 − 自己株式の消却額 − 剰余金の配当額 ± 会社計算規則第150条の額

ここで加算される資本金・準備金の減少額は、欠損填補に充てた部分(会社法 第447条第1項第2号、第448条第1項第2号の額)を除いた金額です。会計上も、資本金及び資本準備金の額の減少によって生ずる剰余金は、減少の法的効力が発生したときにその他資本剰余金に計上し、利益準備金の額の減少によって生ずる剰余金はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)に計上します(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準 第20項、第21項)。

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ステップ3 自己株式の帳簿価額と処分対価の控除

分配可能額の算定では、分配時点で保有している自己株式の帳簿価額を控除します(会社法 第461条第2項第3号)。自己株式は取得原価をもって純資産の部の株主資本から控除して表示されるため(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準 第7項、第8項)、貸借対照表上のマイナス表示と、分配可能額上の控除が二重に効いているわけではありません。剰余金の額の計算では自己株式の帳簿価額をいったん資産側に足し戻したうえで(会社法 第446条第1号ロ)、分配可能額の段階で改めて控除する構造になっています。

さらに、最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合には、その処分の対価の額の全額を控除します(会社法 第461条第2項第4号)。処分差益だけでなく対価そのものが控除対象である点が、実務で最も間違えやすい箇所です。

ステップ4 臨時計算書類による加減算

期中に臨時決算日を定めて臨時計算書類を作成し、承認を受けた場合には、その期間の利益と自己株式の処分対価を加算します(会社法 第461条第2項第2号)。加算する利益の額は、臨時計算書類の損益計算書に計上された当期純損益金額のうち零以上の額です(会社計算規則 第156条)。

逆に臨時計算書類が損失であった場合には、その額を控除します。控除する損失の額は、零から当期純損益金額(零未満の額に限ります)を減じて得た額、すなわち損失の絶対値です(会社計算規則 第157条)。臨時計算書類を作成していない会社では、このステップは発生しません。

ステップ5 会社計算規則第158条による控除

最後に、法務省令が定める「その他減ずるべき額」を控除します(会社法 第461条第2項第6号)。この額は会社計算規則第158条に列挙されており、実務で頻度が高いのは次の項目です。

のれん等調整額
に係る控除額
のれんの額の2分の1と繰延資産の合計額が一定額を超える場合の超過額(会社計算規則 第158条第1号)
その他有価証券
評価差額金
貸借対照表の計上額がマイナスの場合、その絶対値。プラスの場合は零(会社計算規則 第158条第2号)
土地再評価差額金 貸借対照表の計上額がマイナスの場合、その絶対値。プラスの場合は零(会社計算規則 第158条第3号)
連結配当規制適用会社
に係る調整額
連結ベースの株主資本等が個別を下回る場合の差額(会社計算規則 第158条第4号)
純資産300万円
に係る調整額
300万円から資本金・準備金・株式引受権・新株予約権等の合計額を減じた額(会社計算規則 第158条第6号)

その他有価証券評価差額金と土地再評価差額金は、マイナスのときだけ控除し、プラスのときは加算しないという片側の取扱いです。含み益は分配可能額を増やさない一方、含み損は分配可能額を減らします。時価評価による未実現の利益を株主に払い出させない趣旨であり、実務で見落とされやすい調整です。

のれん等調整額による控除額の判定

会社計算規則第158条第1号の判定は、分配可能額の計算で最も複雑な部分です。まず、最終事業年度の末日におけるのれん等調整額資本等金額という2つの金額を求めます(会社計算規則 第158条第1号)。

のれん等調整額 = 資産の部に計上したのれんの額 ÷ 2 + 繰延資産の部に計上した額
資本等金額 = 資本金の額 + 準備金の額(資本準備金 + 利益準備金)

控除額は、のれん等調整額が「資本等金額」および「資本等金額とその他資本剰余金の合計額」という2つの基準額に対してどの位置にあるかで、3つの場合に分かれます。以下では、資本金100,000千円、資本準備金20,000千円、利益準備金10,000千円、その他資本剰余金30,000千円の会社を前提に説明します。この場合、資本等金額は130,000千円、資本等金額とその他資本剰余金の合計額は160,000千円です。

ケース1 のれん等調整額が資本等金額以下の場合

のれん等調整額が資本等金額以下であれば、控除額は零です(会社計算規則 第158条第1号イ)。のれんと繰延資産が払込資本の範囲内に収まっており、剰余金を毀損していないと考えるためです。たとえば、のれん60,000千円、繰延資産4,000千円であれば、のれん等調整額は34,000千円となり、資本等金額130,000千円を下回るため控除は生じません。

ケース2 のれん等調整額がその他資本剰余金までの範囲に収まる場合

のれん等調整額が資本等金額を超えるものの、資本等金額とその他資本剰余金の合計額以下である場合には、のれん等調整額から資本等金額を減じた額を控除します(会社計算規則 第158条第1号ロ)。のれん300,000千円、繰延資産4,000千円のケースで確認します。

のれん等調整額 = 300,000 ÷ 2 + 4,000 = 154,000(千円)
控除額 = 154,000 − 130,000 = 24,000(千円)

のれん等調整額154,000千円は資本等金額130,000千円を超え、かつ160,000千円以下であるため、超過分の24,000千円がその他資本剰余金を食い潰した部分として控除されます。

ケース3 のれん等調整額が資本等金額とその他資本剰余金の合計額を超える場合

のれん等調整額が資本等金額とその他資本剰余金の合計額を超える場合は、さらにのれんの額の2分の1だけを取り出して、その額が同じ合計額を超えるかどうかで取扱いが分かれます(会社計算規則 第158条第1号ハ)。

第一に、のれんの額の2分の1が資本等金額とその他資本剰余金の合計額以下である場合には、ケース2と同じく、のれん等調整額から資本等金額を減じた額を控除します(会社計算規則 第158条第1号ハ(1))。のれん310,000千円、繰延資産10,000千円であれば、のれんの2分の1は155,000千円で160,000千円以下であるため、この扱いになります。

のれん等調整額 = 310,000 ÷ 2 + 10,000 = 165,000(千円)
控除額 = 165,000 − 130,000 = 35,000(千円)

第二に、のれんの額の2分の1が資本等金額とその他資本剰余金の合計額を超える場合には、控除額はその他資本剰余金の額と繰延資産の額の合計額になります(会社計算規則 第158条第1号ハ(2))。のれん400,000千円、繰延資産4,000千円であれば、のれんの2分の1は200,000千円で160,000千円を超えるため、この扱いです。

控除額 = その他資本剰余金 30,000 + 繰延資産 4,000 = 34,000(千円)

この場合、控除額はのれん等調整額の超過額(204,000千円 − 130,000千円 = 74,000千円)ではなく34,000千円にとどまります。のれんが極端に大きいときに控除額を無制限に拡大させず、その他資本剰余金と繰延資産の範囲で頭打ちにする設計であるためです。のれんが大きいほど控除額も比例して増えるわけではないという点は、M&Aを重ねた会社の配当可能額を検討するうえで実務上の要点になります。

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計算例による検算

ここまでの手順を、1社の数値でつないで確認します。前提は、最終事業年度の末日の貸借対照表が資本金100,000千円、資本準備金20,000千円、利益準備金10,000千円、その他資本剰余金30,000千円、繰越利益剰余金80,000千円、自己株式5,000千円(控除項目)、その他有価証券評価差額金がマイナス3,000千円、のれん300,000千円、繰延資産4,000千円の会社です。期末後の資本取引および配当はなく、臨時計算書類も作成していないものとします(単位:千円)。

剰余金の額 = その他資本剰余金 30,000 + その他利益剰余金 80,000 = 110,000
会社計算規則第158条の額 = のれん等調整額に係る額 24,000 + その他有価証券評価差額金 3,000 = 27,000
分配可能額 = 110,000 − 自己株式の帳簿価額 5,000 − 27,000 = 78,000

純資産の部の剰余金合計は110,000千円ですが、自己株式とのれん等調整額、評価差額金の控除により、実際に配当や自己株式取得に充てられるのは78,000千円にとどまります。なお純資産300万円に係る調整額(会社計算規則 第158条第6号)は、資本金と準備金の合計額が300万円を大きく上回るため零となります。

自己株式の取引が分配可能額に与える影響

自己株式は、分配可能額の計算に二重に登場します。分配時点の帳簿価額が控除され(会社法 第461条第2項第3号)、期末後に処分した場合はその対価が控除されます(会社法 第461条第2項第4号)。仕訳と結び付けて確認します。

自己株式の取得

最終事業年度の末日後に、自己株式を対価5,000千円で取得し、証券会社への手数料50千円を支払ったとします。取得した自己株式は取得原価をもって純資産の部の株主資本から控除し、取得に関する付随費用は損益計算書の営業外費用に計上します(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準 第7項、第14項)。単位は千円です。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
自己株式 5,000 現金預金 5,050
支払手数料 50

この取引により、分配時点の自己株式の帳簿価額が5,000千円増加するため、分配可能額は同額だけ減少します。一方、付随費用50千円は当期の営業外費用であり、最終事業年度の末日における剰余金の額には反映されないため、分配可能額を直接には減らしません。取得の意思決定にあたっては、手数料込みの支出額ではなく取得原価ベースで枠を消費すると理解しておく必要があります。

関連コラム自己株式の会計処理を徹底解説|取得・処分・消却の仕訳と資本の部の表示

自己株式の処分

続いて、帳簿価額2,000千円の自己株式を、募集株式の発行等の手続により対価2,400千円で処分した場合を考えます。自己株式処分差益はその他資本剰余金に計上します(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準 第9項)。処分差損が生じる場合はその他資本剰余金から減額し、その残高が負の値となったときは、会計期間末においてその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額します(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準 第10項、第12項)。単位は千円です。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金預金 2,400 自己株式 2,000
その他資本剰余金 400

この処分が分配可能額に与える影響を分解すると、剰余金の額は処分差益400千円だけ増加し(会社法 第446条第2号)、保有していた自己株式の帳簿価額2,000千円が控除対象から外れます。他方で、処分対価2,400千円の全額が控除されます(会社法 第461条第2項第4号)。差引きの影響は零です。

影響額 = +400 + 2,000 − 2,400 = 0(千円)

つまり、最終事業年度の末日後に自己株式を処分しても、分配可能額は増えません。処分によって現金が入り、その他資本剰余金も増えるため、配当余力が増えたように見えます。この点を誤ると、期末後に自己株式を売却して配当原資を作るという計画が成り立たなくなります。会計基準の考え方としても、自己株式処分差益は資本準備金と異なり分配可能額からの控除項目とはされておらず、剰余金の額に含まれる位置付けです(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準 第38項)。

実務上の落とし穴

分配可能額の算定でつまずきやすい論点を、上場準備企業の実務でよく見る順に整理します。

判定日は効力発生日である

分配可能額の判定は、決算日でも取締役会決議日でもなく、その行為が効力を生ずる日で行います(会社法 第461条第1項)。株主総会で配当を決議した後、効力発生日までに自己株式の取得を行った場合には、その分だけ枠が減った状態で配当の適法性が判定されます。同一時期に複数の分配行為を予定しているときは、効力発生日順に枠の消費をシミュレーションしておく必要があります。

のれんの償却が進むと控除額も変わる

のれん等調整額は最終事業年度の末日の残高で計算するため、のれんの償却が進めば翌期の控除額は自動的に小さくなります。逆に、期中にM&Aを実行してのれんを計上しても、その効果が分配可能額に反映されるのは次の決算日以降です。買収直後の配当計画では、この1期分のずれを織り込んで検討します。

連結配当規制適用会社の選択

連結配当規制適用会社となることを選択した場合には、連結ベースの株主資本等が個別を下回る部分が追加で控除されます(会社計算規則 第158条第4号)。子会社に多額の欠損がある企業グループでは、この選択の有無が分配可能額を大きく左右します。適用会社となるかどうかは会社の選択によるため、上場準備の段階で方針を決めておくことが求められます。

臨時計算書類は監査・承認が前提

期中の利益を分配可能額に取り込むには、臨時計算書類を作成し、会社法が定める承認を受けている必要があります(会社法 第461条第2項第2号)。月次決算の利益をそのまま加算することはできません。期中に大きな利益が出たため配当したいという相談は多いのですが、臨時計算書類の作成・監査のスケジュールが確保できるかが実務上の分かれ目になります。

関連する会計基準と改正の経緯

自己株式の会計処理および資本金・準備金の額の減少の会計処理は、企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」と、企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」が定めています。本会計基準は、すべての会社における自己株式の取得、保有、処分および消却ならびに資本金および準備金の額の減少の会計処理に適用されます(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準 第3項)。

本会計基準は2002年2月21日に公表され、その後2005年、2006年、2015年に改正されています。2015年改正の会計基準は、公表日以後最初に終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用されており、現在はいずれの改正内容も適用済みです(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準 第23項、第23-2項)。2015年改正では、決議後消却手続を完了していない自己株式に関する注記の取扱いが明確化されました(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準 第22項)。

適用指針についても、2005年、2006年、2015年の改正に続き、2024年に改正が行われています。2024年改正は、完全子会社株式の一部を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し子会社株式に該当しなくなった場合の現物配当の会計処理を新たに定めたもので、公表日以後適用されています(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針 第10項(2-2)、第23-3項)。分配可能額の枠内で現物配当を行う会社は、この改正後の取扱いを確認しておく必要があります。

まとめ

分配可能額の計算は、剰余金の額の算定、期末後の増減の反映、自己株式の控除、臨時計算書類による加減算、会社計算規則第158条による控除という5つのステップに整理できます。出発点となる剰余金の額はその他資本剰余金とその他利益剰余金の合計であり、そこからのれん等調整額と評価差額金のマイナス分、自己株式の帳簿価額を差し引いた残りが実際の配当余力です。

特に注意すべきは、のれん等調整額の3つの場合分けと、期末後の自己株式処分が分配可能額を増やさないという構造です。いずれも純資産の部の金額を眺めるだけでは見えず、条文の順序に沿って計算しなければ誤った上限を前提に意思決定してしまいます。連結配当規制適用会社の選択や臨時計算書類の要否も含め、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

参考文献

よくある質問

分配可能額と剰余金の額はどう違いますか。

剰余金の額は、その他資本剰余金とその他利益剰余金を出発点に、期末後の資本取引や配当を加減した金額です(会社法 第446条)。分配可能額は、その剰余金の額から自己株式の帳簿価額や会社計算規則第158条が定める額を控除して求めます(会社法 第461条第2項)。したがって、分配可能額は通常、剰余金の額より小さくなります。

のれんがあると必ず分配可能額が減りますか。

減るとは限りません。のれんの額の2分の1と繰延資産の合計額(のれん等調整額)が資本金と準備金の合計額(資本等金額)以下であれば、控除額は零です(会社計算規則 第158条第1号イ)。控除が生じるのは、のれん等調整額が資本等金額を超える場合です。

最終事業年度の末日後に自己株式を処分すると分配可能額は増えますか。

増えません。処分差益によって剰余金の額は増加しますが(会社法 第446条第2号)、処分対価の全額が控除されるため(会社法 第461条第2項第4号)、差引きの影響は零になります。期末後の処分によって配当原資を作ることはできません。

その他有価証券評価差額金がプラスの場合は加算できますか。

加算できません。その他有価証券評価差額金は、貸借対照表の計上額がマイナスの場合に限りその絶対値を控除し、プラスの場合の控除額は零と定められています(会社計算規則 第158条第2号)。含み益は分配可能額を増やさず、含み損だけが分配可能額を減らします。土地再評価差額金も同様の取扱いです(会社計算規則 第158条第3号)。

分配可能額が残っていれば必ず配当できますか。

できるとは限りません。株式会社の純資産額が300万円を下回る場合には、分配可能額の有無にかかわらず剰余金の配当をすることができません(会社法 第458条)。また、会社計算規則第158条第6号により、資本金・準備金等の合計額が300万円に満たない部分は分配可能額から控除されます。

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