新リース会計基準とは|使用権資産とリース負債をわかりやすく解説
目次
- 新リース会計基準の全体像
- リースの定義と使用権の考え方
- 借手と貸手で異なる取扱い
- リースの識別とリース期間の決定
- 契約がリースを含むかどうかの判断
- 借手のリース期間の範囲
- 借手の会計処理|使用権資産とリース負債
- リース開始日の計上額
- リース開始日の仕訳例
- リース期間中の費用配分と償却
- 短期リース・少額リースの簡便的な取扱い
- 貸手の会計処理と財務諸表での表示
- 貸手におけるリースの分類
- 借手の貸借対照表・損益計算書での表示
- 適用時期と旧基準からの移行
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 新リース会計基準で借手の会計処理はどう変わりますか。
- 使用権資産とリース負債はどのように測定しますか。
- 短期リースや少額リースも資産計上が必要ですか。
- 貸手の会計処理も変わりますか。
- 使用権資産の減価償却はどのように行いますか。
新リース会計基準とは、2024年9月13日に企業会計基準委員会が公表した企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」と、その適用指針である企業会計基準適用指針第33号を指します。最大の特徴は、借手がすべてのリースについて使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上する点にあります(リースに関する会計基準 第33項)。
これまで賃借料として費用処理していた事務所や倉庫の賃貸借も、原則として資産と負債の両建てで計上することになります。本記事では、リースの定義から使用権資産・リース負債の計上、短期リース・少額リースの簡便的な取扱いまで、仕訳例を交えて基本から整理します。
新リース会計基準の全体像
新リース会計基準は2024年9月13日に公表され、その後2025年4月23日に、借手および貸手の定義を「企業」から「者」へ改める用語の明確化を内容とする修正が行われています。会計処理および開示の定めそのものを実質的に変更するものではありません。
リースの定義と使用権の考え方
新基準における「リース」とは、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約または契約の一部分をいいます(リースに関する会計基準 第6項)。契約書の表題が「リース契約」であるかどうかは問われず、実質的に資産を使う権利が移転しているかどうかで判断します。
そして「使用権資産」とは、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産をいいます(リースに関する会計基準 第10項)。借手は原資産そのものを所有するわけではありませんが、一定期間その資産を使える権利を得ているため、その権利を資産として計上するという考え方です。
借手と貸手で異なる取扱い
新基準で大きく変わるのは借手側です。借手はリースの種類を問わず使用権資産とリース負債を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。一方で貸手は、従来と同様にリースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類したうえで会計処理を行います(リースに関する会計基準 第43項)。
| 借手の会計処理 | すべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上する(リースに関する会計基準 第33項) |
|---|---|
| 貸手の会計処理 | ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、従来の枠組みで処理する(リースに関する会計基準 第43項) |
ただし、借手にとって分類の判断がすべて不要になるわけではありません。後述するとおり、使用権資産の減価償却方法は「原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースかどうか」で分かれるため、この判定は借手側にも残ります。
リースの識別とリース期間の決定
契約がリースを含むかどうかの判断
契約の締結時に、契約の当事者は当該契約がリースを含むか否かを判断します(リースに関する会計基準 第25項)。判断にあたっては、契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合に、その契約はリースを含むものとされます(リースに関する会計基準 第26項)。
実務では、賃貸借契約書だけでなく、業務委託契約や保守契約のなかに設備の使用権が含まれているケースが問題になります。契約の名称にかかわらず中身を確認する必要があるため、上場準備企業では契約書の棚卸しから着手することが多いのが実情です。なお、契約期間中は契約条件が変更されない限り、リースを含むか否かの判断は見直しません(リースに関する会計基準 第27項)。
借手のリース期間の範囲
借手のリース期間は、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、①行使することが合理的に確実である延長オプションの対象期間と、②行使しないことが合理的に確実である解約オプションの対象期間の両方を加えて決定します(リースに関する会計基準 第15項、第31項)。契約上の年数がそのままリース期間になるとは限らない点が、実務での判断を要するところです。
関連コラムリース期間の判定|延長・解約オプションと新リース会計基準▸
借手の会計処理|使用権資産とリース負債
リース開始日の計上額
借手はリース開始日に、まずリース負債を計上します。その計上額は、原則としてリース開始日において未払である借手のリース料から、そこに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定します(リースに関する会計基準 第34項)。
そのうえで使用権資産は、このリース負債の額に、リース開始日までに支払った借手のリース料・付随費用・資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額として計上します(リースに関する会計基準 第33項)。
現在価値の算定に用いる割引率は、貸手の計算利子率を知り得る場合には当該利率、知り得ない場合には借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率によります(リースに関する会計基準の適用指針 第37項)。実務では後者、いわゆる追加借入利子率を用いる場面が大半です。
関連コラム借手の割引率と追加借入利子率|新リース会計基準の決定手順▸
リース開始日の仕訳例
ここでは自社作例として、次の前提を置きます。リース期間3年、年額リース料1,000千円を各年度末に後払い、割引率は年3%、前払リース料・付随費用・リース・インセンティブはなく、原資産の所有権は借手に移転しないリースとします(単位:千円)。リース負債は未払リース料の現在価値により算定します(リースに関する会計基準 第34項)。
前払リース料や付随費用がないため、使用権資産の計上額はリース負債と同額の2,829千円になります(リースに関する会計基準 第33項)。リース開始日の仕訳は次のとおりです。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 使用権資産 | 2,829 | リース負債 | 2,829 |
リース期間中の費用配分と償却
リース開始日以後は、利息相当額と減価償却費の2つに分けて費用を認識します。利息相当額は借手のリース期間にわたり、原則として利息法により配分します(リースに関する会計基準 第36項)。利息法では、リース負債の未返済元本残高に一定の利率を乗じて各期の利息相当額を算定するため、期首残高の大きい初期ほど利息費用が大きくなります。
使用権資産の減価償却は、原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースかどうかで分かれます。移転すると認められる場合は、自ら所有していたと仮定した場合と同一の減価償却方法により算定し、耐用年数は経済的使用可能予測期間、残存価額は合理的な見積額とします(リースに関する会計基準 第37項)。それ以外のリースでは定額法等から企業の実態に応じた方法を選択適用し、原則として借手のリース期間を耐用年数、残存価額をゼロとします(リースに関する会計基準 第38項)。
先ほどの前提に基づき、1年目の利息費用と減価償却費を計算します(単位:千円)。所有権は移転しないリースであるため、耐用年数はリース期間の3年、残存価額はゼロとしています(リースに関する会計基準 第36項、第38項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 85 | 現金預金 | 1,000 |
| リース負債 | 915 | ||
| 減価償却費 | 943 | 使用権資産 | 943 |
旧基準で賃貸借処理をしていた場合、損益計算書に計上されるのは支払リース料1,000千円だけでした。新基準では減価償却費943千円と支払利息85千円に分かれ、営業利益より下の区分に利息費用が入ります。同じ支出でも損益計算書上の見え方が変わる点は、経営指標を管理するうえで押さえておきたいところです。
短期リース・少額リースの簡便的な取扱い
すべてのリースを資産計上するのが原則ですが、重要性の乏しいリースには簡便的な取扱いが用意されています。これらを選択した場合、使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用として計上できます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。
| 短期リース | リース開始日において借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリース(リースに関する会計基準の適用指針 第4項(2)) |
|---|---|
| 少額リース | 重要性が乏しい減価償却資産について購入時に費用処理する基準額以下のリース、事業内容に照らして重要性が乏しくリース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース、または新品時の原資産の価値が少額であるリース(リースに関する会計基準の適用指針 第22項) |
| 簡便的な取扱い | 使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用計上する(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項) |
短期リースの簡便的な取扱いは、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと、または性質および企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに、適用するか否かを選択できます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。実務では、この簡便的な取扱いをどこまで使うかによって作業量が大きく変わるため、契約の棚卸しの段階で方針を決めておくことが有効です。
貸手の会計処理と財務諸表での表示
貸手におけるリースの分類
貸手はリースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し(リースに関する会計基準 第43項)、ファイナンス・リースについてはさらに所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースに分類します(リースに関する会計基準 第44項)。
ファイナンス・リースについては通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行い、所有権移転ファイナンス・リースはリース債権、所有権移転外ファイナンス・リースはリース投資資産として計上します(リースに関する会計基準 第45項、第46項)。オペレーティング・リースについては通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行います(リースに関する会計基準 第48項)。貸手側の枠組みは従来から大きく変わらないと理解して差し支えありません。
借手の貸借対照表・損益計算書での表示
使用権資産は、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目に含める方法か、対応する原資産の表示区分において使用権資産として区分する方法か、いずれかにより表示します(リースに関する会計基準 第49項)。
リース負債は、貸借対照表において区分して表示するか、リース負債が含まれる科目および金額を注記します。このとき、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するものは流動負債、1年を超えて到来するものは固定負債に属するものとします(リースに関する会計基準 第50項)。リース負債に係る利息費用についても、損益計算書において区分表示するか、含まれる科目および金額を注記します(リースに関する会計基準 第51項)。なお、リースに関する注記は独立の注記項目とすることとされています(リースに関する会計基準 第57項)。
適用時期と旧基準からの移行
新リース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から早期適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項)。
| 強制適用 | 2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から(リースに関する会計基準 第58項) |
|---|---|
| 早期適用 | 2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用可能(リースに関する会計基準 第58項) |
また、新基準の適用により、従来の企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第16号などの適用は終了します(リースに関する会計基準 第59項)。どの企業がいつから対応を求められるかは、財務諸表を日本基準で作成する範囲によって異なります。対象となる会社の範囲は次のコラムで整理しています。
関連コラム新リース会計基準はいつから?適用時期と対象会社の範囲を解説▸
旧基準と新基準で具体的に何がどう変わるのか、実務への影響を比較して確認したい場合は、次のコラムも参考になります。
関連コラム新リース会計基準を徹底解説!旧基準との違いと実務への影響▸
まとめ
新リース会計基準の要点は、借手がすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上すること(リースに関する会計基準 第33項)、リース負債を未払リース料の現在価値で測定すること(同 第34項)、そして利息相当額を利息法で配分し使用権資産を減価償却すること(同 第36項、第37項、第38項)の3点に整理できます。
加えて、短期リース・少額リースには簡便的な取扱いが用意されており(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)、貸手側の枠組みは従来どおりファイナンス・リースとオペレーティング・リースの分類が維持されます(リースに関する会計基準 第43項)。2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されるため(同 第58項)、契約の洗い出しと割引率の整備には相応の準備期間を見込んでおくとよいでしょう。
リースに該当するかどうかの識別やリース期間の判断は契約内容によって結論が変わるため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
新リース会計基準で借手の会計処理はどう変わりますか。
借手はリースの種類を問わず、すべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。従来は賃貸借処理として支払リース料を費用計上していた取引も、原則として資産と負債の両建てで貸借対照表に反映されます。
使用権資産とリース負債はどのように測定しますか。
リース負債は、原則としてリース開始日において未払である借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定します(リースに関する会計基準 第34項)。使用権資産は、そのリース負債の額にリース開始日までに支払った借手のリース料・付随費用・資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額とします(同 第33項)。
短期リースや少額リースも資産計上が必要ですか。
簡便的な取扱いを選択すれば、使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用計上できます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。短期リースとは、リース開始日において借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいいます(同 第4項(2))。
貸手の会計処理も変わりますか。
貸手は従来と同様に、リースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類します(リースに関する会計基準 第43項)。ファイナンス・リースは通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理、オペレーティング・リースは通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行います(同 第45項、第48項)。
使用権資産の減価償却はどのように行いますか。
原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースでは、自ら所有していたと仮定した場合と同一の減価償却方法により算定し、耐用年数は経済的使用可能予測期間、残存価額は合理的な見積額とします(リースに関する会計基準 第37項)。それ以外のリースでは定額法等から企業の実態に応じた方法を選択適用し、原則として借手のリース期間を耐用年数、残存価額をゼロとします(同 第38項)。
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