株式移転の会計処理【仕訳例】持株会社化の子会社株式と連結
目次
- 株式移転の3類型と会計上の分類【判定表】
- 単独株式移転:持株会社の個別財務諸表
- 子会社株式の取得原価は株主資本の帳簿価額
- 簡便的な取扱い:直前の決算日の株主資本
- 増加資本の内訳と会社計算規則
- 仕訳例:単独株式移転で持株会社を設立した場合
- 単独株式移転:持株会社の連結財務諸表
- 投資と資本の消去と利益剰余金の引継ぎ
- 仕訳例:連結修正(投資と資本の消去・株主資本項目の調整)
- 親子株式移転:非支配株主がいる子会社を含む場合
- 旧子会社株式の取得原価は2つに区分して算定
- 仕訳例:親子株式移転の持株会社側
- 旧親会社の処理と連結上の自己株式
- 共同株式移転:独立した会社同士は取得として処理
- 新株予約権を承継する場合の取得原価
- 適用時期と改正の経緯
- 持株会社化で確認したい実務のチェックポイント
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 単独株式移転でのれんは発生しますか。
- 子会社株式の取得原価に、前期末の決算数値を使ってもよいですか。
- 持株会社の個別貸借対照表に利益剰余金は計上されますか。
- 親子株式移転で旧親会社が受け取った持株会社株式はどう処理しますか。
株式移転で持株会社(株式移転設立完全親会社)を設立したとき、持株会社が受け入れる子会社株式の取得原価は、株式移転の類型によって基礎となる金額が変わります。事業会社が1社だけで行う単独株式移転であれば、持株会社は事業会社の株式移転日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額で子会社株式を計上し、のれんも交換損益も生じません(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第258項、第239項(1)①)。
一方で、非支配株主がいる子会社を巻き込む親子株式移転や、資本関係のない会社同士が共同で持株会社を設立する共同株式移転では、時価を使う部分が出てきます。本記事では、公認会計士事務所プライムパートナーズ/株式会社プライムパートナーズコンサルティングが持株会社化の相談で確認している順序に沿って、3類型の判定表と自社作例の仕訳で、持株会社の個別財務諸表と連結財務諸表の処理を整理します。
株式移転の3類型と会計上の分類【判定表】
株式移転設立完全親会社とは、株式移転により設立する株式会社をいい、株式移転完全子会社とは、株式移転設立完全親会社に発行済株式の全部を取得させる株式会社をいいます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第5項(11)、(12))。会計処理を考える最初の一歩は、その株式移転がどの類型に当たるかを決めることです。
| 単独株式移転 (1社で持株会社を設立) |
企業集団内の組織再編のうち企業結合に該当しない取引。子会社株式は事業会社の株主資本の適正な帳簿価額で計上(第204項(3)①、第258項) |
|---|---|
| 親子株式移転 (親会社と子会社が共同で設立) |
共通支配下の取引等。旧親会社持分は帳簿価額、旧子会社の非支配株主持分は交付株式の時価で計上(第204項(1)⑩、第239項) |
| 共同株式移転 (独立した会社同士で設立) |
取得とされた場合は一方を取得企業とし、被取得企業の株式は取得の対価(時価)で計上(第120項、第121項) |
表中の条項は、いずれも企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針のものです。共同株式移転であっても、独立企業要件・契約要件・対価要件などのすべてを満たす場合は共同支配企業の形成と判定されるため、取得とは別の処理になります(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第175項)。事業会社が1社で持株会社化する場合は単独株式移転に当たるため、以下ではまず単独株式移転を詳しく見ていきます。
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単独株式移転:持株会社の個別財務諸表
子会社株式の取得原価は株主資本の帳簿価額
単独株式移転で設立した持株会社の個別財務諸表では、親子株式移転における旧親会社株式の取得原価の算定に準じて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第258項)。具体的には、株式移転完全子会社(事業会社)の株式移転日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて、子会社株式の取得原価を算定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239項(1)①ア)。
ここでの基礎は「株主資本の額」とされており、純資産全体ではありません(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239項(1)①ア)。そのため、純資産のうち株主資本以外の評価・換算差額等は基礎に含めずに読むのが自然です。新株予約権については、持株会社が新株予約権を交付する場合などに取得原価を調整する定めが別に置かれています(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239-2項)。また、取得原価は帳簿価額による株主資本の額を基礎とするため、株式移転比率や持株会社株式の時価は単独株式移転の取得原価に影響しません。
簡便的な取扱い:直前の決算日の株主資本
株式移転日の前日の株主資本と、直前の決算日に算定された株主資本との間に重要な差異がないと認められる場合は、直前の決算日の適正な帳簿価額による株主資本の額で取得原価を算定することができます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239項(1)①イ、第121項(1)②)。株式移転日の前日の株主資本の額を算定することが、実務上困難な場合があることへの配慮です(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第404-3項)。
結論の背景では、重要な変動がない例として、直前の決算日後に多額の増資や自己株式の取得等の資本取引、重要な減損損失の認識がないことが挙げられています(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第404-3項)。実務では、次の項目を確認して判断の記録を残しておくと、監査人との協議がスムーズです。
- 直前の決算日から株式移転日の前日までに、増資・自己株式の取得や処分・配当などの資本取引がないか
- 同じ期間に、重要な減損損失や多額の特別損益が発生していないか
- 期中の損益(月次決算ベース)が、株主資本の額に対して重要な水準になっていないか
- 4月1日など期首を株式移転日とする計画で、前期末の決算数値がそのまま使える状態か
増加資本の内訳と会社計算規則
持株会社の増加すべき株主資本は払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理し、資本金・資本準備金・その他資本剰余金への内訳は会社法の規定に基づいて決定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239項(2))。会社計算規則では、設立時の資本金及び資本剰余金の額は、株主資本変動額の範囲内で株式移転計画の定めに従って定めた額とし、利益剰余金の額はゼロとされています(会社計算規則 第52条第1項、第2項)。なお、株主資本変動額がマイナスとなる場合は、その額を設立時のその他利益剰余金とし、資本金・資本剰余金・利益準備金はゼロとする例外があります(会社計算規則 第52条第2項)。
つまり、事業会社に利益剰余金が積み上がっていても、持株会社の個別貸借対照表ではその金額は払込資本として表れます。資本金を小さく設定してその他資本剰余金を厚くするなど、株式移転計画で内訳をどう定めるかは、設立後の配当財源にも関わるため、計画段階で検討しておくべき論点です。
仕訳例:単独株式移転で持株会社を設立した場合
事業会社A社が単独株式移転により持株会社HD社を設立した例です(単位:千円。自社作例)。A社の株式移転日の前日の株主資本は、資本金100,000、資本剰余金20,000、利益剰余金380,000の合計500,000です。HD社は株式移転計画で、資本金50,000、資本準備金50,000、残額をその他資本剰余金と定めました。HD社はA社株式を株主資本の額500,000で計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第258項、第239項(1)①ア・(2)、会社計算規則 第52条第2項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 関係会社株式(A社株式) | 500,000 | 資本金 | 50,000 |
| 資本準備金 | 50,000 | ||
| その他資本剰余金 | 400,000 |
A社自身は株主が入れ替わるだけなので、株式移転による仕訳は生じません。HD社の貸借対照表には、A社株式500,000と、同額の払込資本だけが計上されることになります。
単独株式移転:持株会社の連結財務諸表
投資と資本の消去と利益剰余金の引継ぎ
単独株式移転の連結財務諸表上の処理は、親子株式移転の処理に準じます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第259項)。まず、子会社株式の取得原価と子会社の株主資本を相殺消去します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第240項(1)①)。そのうえで、持株会社の株主資本の額は、株式移転直前の連結財務諸表上の株主資本項目に、非支配株主との取引により増加した払込資本の額を加算した額となるよう調整します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第240項(3))。非支配株主がいない単独株式移転では、株式移転直前の株主資本項目をそのまま引き継ぐ形になります。
相殺消去だけで終えると、事業会社が積み上げてきた利益剰余金が連結上も消えてしまい、持株会社化の前後で連結の株主資本の構成が変わってしまいます。そこで、消去した利益剰余金を資本剰余金から振り戻す調整を行います。適用指針の設例でも、この調整は借方を資本剰余金、貸方を利益剰余金とする仕訳で示されています(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 設例28)。この調整の漏れは、持株会社の初年度の連結決算で見落とされやすい箇所です。
仕訳例:連結修正(投資と資本の消去・株主資本項目の調整)
前の作例の続きです(単位:千円。自社作例)。1行目から3行目が投資と資本の消去、4行目が利益剰余金を引き継ぐための株主資本項目の調整です(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第259項、第240項(1)①・(3))。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 資本金(A社) | 100,000 | 関係会社株式(A社株式) | 500,000 |
| 資本剰余金(A社) | 20,000 | ||
| 利益剰余金(A社) | 380,000 | ||
| 資本剰余金 | 380,000 | 利益剰余金 | 380,000 |
連結修正後の株主資本は次のとおりです。合計は株式移転直前のA社の株主資本500,000と一致し、利益剰余金380,000もそのまま引き継がれます。資本金は、投資と資本の消去でA社の資本金が消去されるため、HD社の資本金50,000が残る計算です。単独株式移転について資本金の差額の扱いを直接定めた項はありませんが、取得とされた株式移転では、連結上の資本金を持株会社の資本金とし、取得企業の資本金との差額を資本剰余金に振り替えると定められています(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第125項)。作例の結果もこれと同じ形になりますが、実際の連結修正では監査人と事前に確認しておくと安心です。
| 資本金 | 50,000(HD社の資本金) |
|---|---|
| 資本剰余金 | 70,000(HD社の資本剰余金450,000から調整額380,000を控除) |
| 利益剰余金 | 380,000(A社の利益剰余金を引継ぎ) |
| 株主資本合計 | 500,000 |
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親子株式移転:非支配株主がいる子会社を含む場合
旧子会社株式の取得原価は2つに区分して算定
親会社と子会社が共同で持株会社を設立する場合、旧親会社株式の取得原価は、単独株式移転と同じく旧親会社の株式移転日の前日の適正な帳簿価額による株主資本の額で算定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239項(1)①)。異なるのは旧子会社株式で、株式移転日の前日の持分比率に基づいて旧親会社持分相当額と非支配株主持分相当額に区分し、その合計額を取得原価とします(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239項(1)②)。
旧親会社持分相当額は旧子会社の株主資本の帳簿価額に基づき、非支配株主持分相当額は非支配株主に交付した持株会社株式の時価相当額に付随費用を加算して算定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239項(1)②ア・イ)。持株会社株式の時価相当額は、旧子会社の株主が実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数の旧親会社株式を、旧親会社が交付したとみなして算定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239項(1)②イ)。
仕訳例:親子株式移転の持株会社側
P社(株式移転日の前日の株主資本800,000)と、P社が80%を保有するS社(同株主資本200,000)が共同で持株会社HD社を設立し、S社の非支配株主に交付したHD社株式の時価相当額が60,000と算定された例です(単位:千円。自社作例。付随費用は省略)。HD社は株式移転計画で資本金100,000、残額をその他資本剰余金と定めました。S社株式の取得原価は、旧親会社持分相当額160,000(200,000×80%)と非支配株主持分相当額60,000の合計220,000です(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239項(1)・(2))。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 関係会社株式(P社株式) | 800,000 | 資本金 | 100,000 |
| 関係会社株式(S社株式) | 220,000 | その他資本剰余金 | 920,000 |
旧親会社の処理と連結上の自己株式
旧親会社P社は、保有していたS社株式と引き換えに持株会社HD社の株式を受け取ります。このHD社株式の取得原価は、S社株式の株式移転直前の適正な帳簿価額で計上するため、交換損益は生じません(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239-4項)。たとえばS社株式の帳簿価額が100,000なら、HD社株式100,000をS社株式100,000と振り替えるだけです。
持株会社の連結財務諸表では、旧親会社が受け入れた持株会社株式を自己株式に振り替えます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第240項(2))。また、旧子会社株式の取得原価と旧子会社の株主資本を相殺した消去差額は、のれんではなく資本剰余金に計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第240項(1)②、企業結合に関する会計基準 第46項)。上の作例では、非支配株主持分相当額の取得原価60,000と減少する非支配株主持分40,000(200,000×20%)との差額20,000が資本剰余金の減少になります。
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共同株式移転:独立した会社同士は取得として処理
資本関係のない会社同士が株式移転で共同持株会社を設立し、その企業結合が取得とされた場合は、取得企業の決定規準に従っていずれかの株式移転完全子会社を取得企業として扱います(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第120項)。持株会社の個別財務諸表では、取得企業の株式は株主資本の帳簿価額に基づき、被取得企業の株式は取得の対価に付随費用を加算して算定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第121項)。
連結財務諸表では、取得企業の資産及び負債は帳簿価額のまま引き継ぎ、被取得企業については取得原価を識別可能資産及び負債に配分し、差額をのれん(又は負ののれん)として処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第124項、第125項)。連結上の資本金は持株会社の資本金とし、取得企業の資本金と異なる場合は差額を資本剰余金に振り替えます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第125項)。また、取得のときから生じていた子会社株式に係る一時差異については、税効果を認識しない取扱いが準用されます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第123項、第115項)。
単独株式移転や親子株式移転と違い、共同株式移転ではのれんが生じ得るため、取得原価の配分(PPA)や株式価値の算定が必要になります。統合の検討段階から、どちらが取得企業になるかの判定を詰めておくことが欠かせません。
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新株予約権を承継する場合の取得原価
親子株式移転の定めでは、株式移転に際して持株会社が株式移転完全子会社の新株予約権者に持株会社の新株予約権を交付する場合や、新株予約権付社債を承継する場合は、追加の調整が必要です。株式移転完全子会社は、株式移転日の前日に付していた新株予約権又は新株予約権付社債の帳簿価額を利益に計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239-3項)。
持株会社側では、旧親会社株式の取得原価に、子会社で認識された新株予約権の消滅に伴う利益等の額(税効果調整後)を加算し、あわせて子会社で付されていた新株予約権等の帳簿価額を純資産の部又は負債の部に計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239-2項)。単独株式移転の個別処理は旧親会社株式の取得原価の算定(第239項(1)①)に準じるとされているため(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第258項)、ストック・オプションを発行済みの上場企業やIPO準備企業が持株会社化する場合は、新株予約権の承継の扱いを株式移転計画の検討段階で監査人と確認しておくことをおすすめします。
適用時期と改正の経緯
企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針は2005年12月27日に公表され、2006年、2007年、2008年、2013年、2019年に改正されています(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第1項、第1-2項)。株式移転に関する定めは、すでに適用されています。
直近では、2024年にリース会計基準の公表に伴う改正が行われ、その適用時期はリース会計基準と同様とされています(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第331-7項)。この改正は企業結合で受け入れるリースの取扱いに関するもので、本記事で扱った株式移転の取得原価や連結の処理を変えるものではありません。
持株会社化で確認したい実務のチェックポイント
単独株式移転の会計処理自体はシンプルですが、決算・監査の場面でつまずくのは周辺の確認です。公認会計士事務所の立場から、持株会社化のプロジェクトで最低限押さえておきたい項目を整理します。
- 類型の確定:単独・親子・共同のどれか。共同なら取得か共同支配企業の形成かを判定する
- 取得原価の基礎:株式移転日の前日の株主資本か、簡便的な取扱いで直前の決算日の株主資本を使うか。使うなら重要な変動がない根拠を記録する
- 株式移転計画:資本金・資本準備金・その他資本剰余金の配分が株主資本変動額の範囲内か
- 連結の初年度:投資と資本の消去に加え、利益剰余金を引き継ぐ株主資本項目の調整を入れているか
- 新株予約権・自己株式:子会社の新株予約権の承継や、子会社が保有する自己株式の扱いを洗い出したか
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まとめ
株式移転で設立した持株会社の子会社株式は、単独株式移転なら事業会社の株式移転日の前日の株主資本の帳簿価額で計上し、のれんや損益は生じません(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第258項、第239項(1)①)。重要な変動がなければ直前の決算日の株主資本を使う簡便的な取扱いも認められています。連結では投資と資本を消去したうえで、利益剰余金を引き継ぐ調整を行います(同 第259項、第240項(3))。
親子株式移転では非支配株主持分相当額を時価で、共同株式移転で取得とされた場合は被取得企業の株式を取得の対価で測るため、類型の判定が処理全体を左右します。株式移転計画での資本の内訳や新株予約権の承継も含め、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
お問い合わせはこちら参考文献
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第10号 企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準
- e-Gov法令検索 会社計算規則
よくある質問
単独株式移転でのれんは発生しますか。
発生しません。単独株式移転は企業集団内の組織再編のうち企業結合に該当しない取引とされ、持株会社は事業会社の株主資本の適正な帳簿価額で子会社株式を計上するため、連結の投資と資本の消去でも差額は生じません(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第204項(3)①、第258項、第259項)。
子会社株式の取得原価に、前期末の決算数値を使ってもよいですか。
株式移転日の前日の株主資本と直前の決算日の株主資本との間に重要な差異がないと認められる場合は、直前の決算日の株主資本で算定できます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239項(1)①イ)。多額の増資や自己株式の取得、重要な減損損失がないことなどを確認して判断します(同 第404-3項)。
持株会社の個別貸借対照表に利益剰余金は計上されますか。
原則として計上されません。株式移転設立完全親会社の設立時の利益剰余金はゼロとされ、資本金と資本剰余金の額は株主資本変動額の範囲内で株式移転計画に従って定めます。株主資本変動額がマイナスとなる場合だけは、その額を設立時のその他利益剰余金とする例外があります(会社計算規則 第52条第2項)。事業会社の利益剰余金は、連結財務諸表上の調整で引き継がれます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第240項(3))。
親子株式移転で旧親会社が受け取った持株会社株式はどう処理しますか。
旧親会社の個別財務諸表では、引き換えた旧子会社株式の株式移転直前の適正な帳簿価額で持株会社株式を計上し、損益は生じません(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第239-4項)。持株会社の連結財務諸表では、この持株会社株式を自己株式に振り替えます(同 第240項(2))。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



