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財務会計

新リース会計基準とIFRS第16号の違い【一覧表】借手・貸手10項目

目次
  1. 新リース会計基準とIFRS第16号の関係
  2. IFRS第16号と共通する骨格
  3. 差異が生じる3つの理由
  4. 新リース会計基準とIFRS第16号の差異一覧表【10項目】
  5. 借手の差異のポイント
  6. セール・アンド・リースバックは最大の差異
  7. 少額リースは2つの方法から選択
  8. 利息相当額の簡便法はIFRS第16号にない取扱い
  9. 指数・レート連動の変動リース料
  10. 再リースと特別仕様の原資産
  11. サブリースの例外的な取扱い
  12. 貸手の差異のポイント
  13. 貸手のリース期間は選択制
  14. リース債権とリース投資資産の区分と計算利子率
  15. 一覧表に載せない細部の差異
  16. 実務への影響を見極める判断基準
  17. 影響が出やすい企業の類型
  18. IFRS適用企業の個別財務諸表の経過措置
  19. 自社の影響を確認する5つの問い
  20. 適用時期とIFRS第16号との時間差
  21. まとめ
  22. 参考文献
  23. よくある質問
  24. 新リース会計基準とIFRS第16号の最も大きな違いは何ですか。
  25. IFRS任意適用企業は、個別財務諸表にIFRS第16号の処理をそのまま使えますか。
  26. 少額リースの基準はIFRS第16号と同じですか。
  27. 貸手の会計処理もIFRS第16号に合わせて変わりましたか。
  28. 新リース会計基準はいつから適用されますか。

2024年9月に公表された企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(新リース会計基準)は、IFRS第16号「リース」と整合させる方針で開発されました。借手がすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上し、減価償却費と利息相当額を別々に計上する骨格は、IFRS第16号と同じです。

一方で、「同じ基準」として扱えるわけではありません。企業会計基準委員会(ASBJ)は、IFRS第16号のすべての定めではなく主要な定めの内容のみを取り入れ、さらに国際的な比較可能性を大きく損なわない範囲で日本独自の代替的な取扱いを設けています(リースに関する会計基準 BC13項)。この記事では、ASBJ自身が結論の背景で「IFRS第16号と異なる」と説明している点だけを拾い、借手・貸手の差異10項目を一覧表にまとめます。あわせて、どの企業でどの差異が実務に効いてくるかの判断基準も示します。

新リース会計基準とIFRS第16号の関係

差異を見る前に、両者がどこまで共通しているかを押さえておくと、一覧表が読みやすくなります。新リース会計基準は、IFRS任意適用企業がIFRS第16号の定めを個別財務諸表に用いても、基本的に修正が不要となる基準を目指して開発されています(リースに関する会計基準 BC13項)。

IFRS第16号と共通する骨格

次の項目は、IFRS第16号と整合させることが明示されている部分です。この範囲は、定めの考え方が両基準で共通する領域です。

費用配分の方法 ファイナンス・リースかオペレーティング・リースかにかかわらず、使用権資産の減価償却費とリース負債の利息相当額を計上する単一の会計処理モデル(リースに関する会計基準 BC39項)
リースの定義 原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分(リースに関する会計基準 第6項、BC25項)
リースの識別 特定された資産の使用を支配する権利が移転するかで判断(リースに関する会計基準 第26項、BC30項)
借手のリース期間 解約不能期間に、行使が合理的に確実な延長オプション等の対象期間を加える(リースに関する会計基準 第31項、BC36項)
借手のリース料の構成 固定リース料、指数又はレートに応じて決まる変動リース料、残価保証の支払見込額、購入オプションの行使価額、解約違約金(リースに関する会計基準 第35項、BC40項)
リースを構成しない部分
との一括処理
リースを構成する部分に合わせて一括処理する選択肢あり。逆にリースを構成しない部分として一括処理することは、IFRS第16号と同様に認めない(リースに関する会計基準 第29項、BC33項)
短期リース 借手のリース期間が12か月以内で購入オプションを含まないリースは、オンバランスしない簡便的な取扱いを選択可(リースに関する会計基準の適用指針 第4項(2)、第20項、BC38項)

差異が生じる3つの理由

差異の出どころは、大きく3つに整理できます。この3分類を頭に入れておくと、一覧表の各項目が「なぜ違うのか」を説明しやすくなります。

  1. 主要な定めのみを取り入れた結果:IFRS第16号の細則的なガイダンス(割引率の使い分け、資産の代替権の詳細など)は取り入れていません(リースに関する会計基準 BC13項、リースに関する会計基準の適用指針 BC4項)。
  2. 日本の実務に配慮した代替的な取扱い:再リースや利息相当額の簡便法など、旧基準(企業会計基準第13号・適用指針第16号)の実務を継続できる選択肢を残しています(リースに関する会計基準の適用指針 BC69項、BC81項)。
  3. 会計上の考え方を意図的に変えたもの:セール・アンド・リースバック取引は、収益認識会計基準との整合性を優先し、IFRS第16号とは異なる処理を定めています(リースに関する会計基準の適用指針 BC93項、BC95項)。

なお、貸手の会計処理は、IFRS第16号でも抜本的な改正が行われていないことから、収益認識会計基準との整合性とリースの定義・識別を除き、企業会計基準第13号の定めを基本的に踏襲しています(リースに関する会計基準 BC13項、BC53項)。旧基準からの変更点を知りたい場合は、比較の軸が異なる次の記事が参考になります。

関連コラム旧リース会計基準と新基準の違い|借手・貸手の新旧対比と移行実務▸

新リース会計基準とIFRS第16号の差異一覧表【10項目】

ASBJが結論の背景で「IFRS第16号とは異なる」「IFRS第16号では定められていない」と説明している論点のうち、会計処理や表示に影響するものを10項目に絞りました。左列が論点、右列が新リース会計基準の取扱いとIFRS第16号との違いです。

①セール・アンド・
リースバックの会計処理
売却に該当しない場合に加え、リースバックがフルペイアウトの場合も金融取引として処理。売却に該当すれば譲渡損益を全額計上する。IFRS第16号は継続保持する権利部分の損益を繰り延べる考え方で、両者は異なる(適用指針 第55項、第56項、BC91項、BC93項)
②セール・アンド・
リースバックの範囲
一定の期間にわたり充足される履行義務の充足による譲渡などは、セール・アンド・リースバック取引に該当しないと明記。IFRS第16号ではこの範囲が明確にされていない(適用指針 第53項、BC84項、BC88項)
③少額リースの
簡便的な取扱い
新品時の原資産の価値が少額なリース(IFRS第16号と同様の方法)に加え、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース(旧基準の300万円以下で判定する方法の踏襲)も選択可(適用指針 第22項、BC41項〜BC45項)
④利息相当額の
簡便的な取扱い
使用権資産総額に重要性が乏しい場合、利息相当額を控除しない方法又は定額法で配分する方法を選択可。IFRS第16号には定めがない(適用指針 第40項、第41項、BC69項)
⑤指数・レート連動の
変動リース料
原則はリース開始日現在の指数又はレートで算定(IFRS第16号と整合)。ただし、合理的な根拠があれば将来の変動を見積る例外的な取扱いを選択可。IFRS第16号にはこの例外がない(適用指針 第25項、第26項、BC46項、BC49項)
⑥再リース 再リース期間を借手のリース期間に含めていない場合、再リースを独立したリースとして処理可。IFRS第16号にはない取扱い(適用指針 第52項、BC81項)
⑦特別仕様の原資産の償却 借手によってのみ使用されることが明らかな特別仕様の原資産は、所有権移転と同様に自己所有と同じ方法で償却。IFRS第16号には設けられていない定め(適用指針 第43項(3)、BC71項)
⑧サブリースの
例外的な取扱い
中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いと転リース取引の取扱いを任意で適用可。IFRS第16号には例外がない(適用指針 第92項、第93項、BC125項、BC135項)
⑨貸手のリース期間 借手と同様に決める方法と、旧基準を踏襲した方法(再リース期間を加える方法)の選択制。国際的な会計基準では借手と共通の定め(リースに関する会計基準 第32項、BC38項)
⑩貸手の表示と
計算利子率
リース債権とリース投資資産を区分表示又は注記(重要性が乏しければ合算可)。IFRS第16号では両者を区分しない。貸手の計算利子率も、IFRS第16号と異なり貸手の当初直接コストを考慮しない(リースに関する会計基準 第52項、BC63項、適用指針 第66項、BC106項)

表中の「適用指針」は、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」を指します。10項目のうち①②⑦⑩は日本基準を適用すると処理が決まり、企業の選択では解消できない差異です。③〜⑥⑧⑨は日本基準側にだけある選択肢で、その選択肢を使うかどうかで差異が生じるかが変わります。実務への影響は、この性質の違いで大きく変わります(詳しくは後述の判断基準で整理します)。

借手の差異のポイント

セール・アンド・リースバックは最大の差異

両基準の差異のうち、会計処理の結果が最も大きく変わるのがセール・アンド・リースバック取引です。新リース会計基準では、セール・アンド・リースバック取引に該当する場合、次のいずれかを満たすと資産の譲渡とリースバックを一体の取引とみて金融取引として処理します(リースに関する会計基準の適用指針 第55項)。

  • 収益認識会計基準などに従うと、資産の譲渡が損益を認識する売却に該当しない
  • 売却に該当するが、リースバックにより、資産からの経済的利益のほとんどすべてを享受し、かつ、使用に伴うコストのほとんどすべてを負担する(フルペイアウト)

どちらにも当たらない場合は、資産の譲渡について譲渡損益を認識し、リースバックは通常の借手の処理を行います(リースに関する会計基準の適用指針 第56項)。この「フルペイアウトなら金融取引」という判定は、米国会計基準(Topic 842)の考え方を参考にしたものです(リースに関する会計基準の適用指針 BC93項)。

具体的な数字で確認します。前提は、帳簿価額600の建物を時価と同額の1,000で譲渡し、同時にリースバックする取引です(単位:百万円)。資産の譲渡は売却に該当し、リースバックはフルペイアウトに該当せず、リース開始日のリース負債(借手のリース料の現在価値)を300と仮定します(リースに関する会計基準の適用指針 第56項、BC93項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金預金 1,000 建物 600
固定資産売却益 400
使用権資産 300 リース負債 300

日本基準では、売却益400を譲渡時に全額計上します。これに対しIFRS第16号では、売却に該当する場合でも、リースバックにより売手である借手が継続して保持する権利部分に係る利得は繰り延べられ、買手である貸手に移転した権利部分の利得だけを譲渡時に認識するとされています(リースに関する会計基準の適用指針 BC91項)。同じ取引でも、譲渡時の利益の額が両基準で一致しないということです。

同じ取引で、リースバックがフルペイアウトに該当する場合は、建物の認識を中止せず、受け取った対価を金融負債として計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第55項)。科目名は例示です。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金預金 1,000 借入金 1,000

また、セール・アンド・リースバック取引の範囲も日本基準で明確化されています。建設工事請負契約と一括借上契約を同時に結ぶ取引のように、資産の譲渡を一定の期間にわたり充足される履行義務として収益認識するケースは、セール・アンド・リースバック取引に該当しません(リースに関する会計基準の適用指針 第53項)。IFRS第16号ではこの範囲が明確にされておらず、ASBJは日本基準の整理を「IFRSで認められる解釈の1つ」と位置付けています(リースに関する会計基準の適用指針 BC84項、BC88項)。

実務上とくに注意したいのは、IFRS任意適用企業でも、個別財務諸表ではこの日本基準の処理を使う点です。ASBJは、IFRS第16号と同様の処理を代替的な取扱いとして認めない結論を出しています(リースに関する会計基準の適用指針 BC95項)。

関連コラムセールアンドリースバックの会計処理【仕訳例】金融取引と売却の3パターン▸

少額リースは2つの方法から選択

少額リースの簡便的な取扱いは、日本基準のほうが選択肢が広い領域です。新リース会計基準では、重要性が乏しい減価償却資産の購入時費用処理の基準額以下のリース(リースに関する会計基準の適用指針 第22項(1))に加え、次の2つのうちいずれかを選び、選んだ方法を首尾一貫して適用する取扱いがあります(リースに関する会計基準の適用指針 第22項(2))。

  • 方法①:企業の事業内容に照らして重要性が乏しく、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース。旧適用指針第16号の「リース料総額300万円以下」で判定する方法を踏襲する趣旨で設けられています(リースに関する会計基準の適用指針 BC43項)。
  • 方法②:新品時の原資産の価値が少額であるリース。IFRS第16号と同様の方法を認める目的で取り入れたもので、IFRS第16号の開発当時(2015年)に新品時5千米ドル以下程度の原資産を念頭に置いた考え方とされています(リースに関する会計基準の適用指針 BC45項)。

ASBJは、両者は適用単位・数値・条件が異なるため、どちらが広範かは一概にいえないとしています(リースに関する会計基準の適用指針 BC41項)。方法①では、金額の算定基礎となる期間を借手のリース期間に代えて契約期間とすることもできます(リースに関する会計基準の適用指針 第23項)。さらに、IFRS第16号ではサブリースしている資産のヘッドリースに少額リースの簡便的な取扱いを使えないとされていますが、日本基準はこの制限を取り入れていません(リースに関する会計基準の適用指針 BC136項)。

関連コラム短期リース・少額リースの免除規定|適用要件と実務上の判断ポイント▸

利息相当額の簡便法はIFRS第16号にない取扱い

使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合、借手は、借手のリース料から利息相当額を控除しない方法、又は利息相当額の総額を定額法で各期に配分する方法を選べます(リースに関する会計基準の適用指針 第40項)。重要性が乏しい場合とは、未経過の借手のリース料の期末残高が、当該期末残高と有形固定資産・無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満の場合をいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第41項)。

この簡便法はIFRS第16号には定められていませんが、旧基準で実務に浸透していたことから踏襲されました(リースに関する会計基準の適用指針 BC69項)。旧基準では所有権移転外ファイナンス・リース取引に限られていた対象が、これまでオペレーティング・リースだった取引などにも広がる点も押さえておきたいところです(リースに関する会計基準の適用指針 BC70項)。

利息相当額を控除しない方法の仕訳例です。前提は、月額1、5年間(リース料総額60)の事務機器のリースで、使用権資産は5年の定額法で償却します(単位:百万円)。表はリース開始日と1年目末の仕訳を並べたものです。使用権資産とリース負債を借手のリース料で計上し、支払利息は計上せず減価償却費のみを計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第40項(1))。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
使用権資産 60 リース負債 60
リース負債 12 現金預金 12
減価償却費 12 使用権資産 12

IFRS第16号では減価償却費と金利費用を別個に認識し、この簡便的な取扱いも定められていません(リースに関する会計基準 BC39項、リースに関する会計基準の適用指針 BC69項)。IFRSで連結財務諸表を作成する企業の子会社がこの簡便法を個別で使うと、連結上の組替えが必要になる場合がある点に注意が必要です。

指数・レート連動の変動リース料

消費者物価指数などに連動するリース料は、リース開始日現在の指数又はレートに基づいて算定するのが原則で、ここはIFRS第16号と整合的です(リースに関する会計基準の適用指針 第25項、BC46項)。市場賃料の変動を反映するよう当事者間の協議で見直すと契約で定めたリース料も、この変動リース料に含まれます(リースに関する会計基準の適用指針 第24項)。

日本基準には、合理的な根拠をもって指数又はレートの将来の変動を見積ることができる場合に、見積った指数又はレートでリース料とリース負債を算定することを、リースごとに選べる例外があります(リースに関する会計基準の適用指針 第26項)。この例外はIFRS第16号には置かれていません(リースに関する会計基準の適用指針 BC49項)。選んだ場合は決算日ごとの見直しと、会計方針としての注記が求められます(リースに関する会計基準の適用指針 BC49項)。

再リースと特別仕様の原資産

再リースは日本固有の商慣習とされ、再リース期間を借手のリース期間に含めていない場合、再リースを当初のリースとは独立したリースとして処理できます(リースに関する会計基準の適用指針 第52項)。IFRS第16号にはない取扱いで、この方法を採らない場合、再リース期間は延長オプションの対象期間として扱われると考えられています(リースに関する会計基準の適用指針 BC81項)。

使用権資産の償却では、借手の用途に合わせた特別仕様で、使用可能期間を通じて借手のみが使うことが明らかなリースを、所有権が移転するリースと同様に扱います(リースに関する会計基準の適用指針 第43項(3))。この場合、原資産を自ら所有していたと仮定した場合と同じ減価償却方法になります(リースに関する会計基準 第37項)。これもIFRS第16号には設けられていない定めです(リースに関する会計基準の適用指針 BC71項)。

サブリースの例外的な取扱い

サブリースの分類にあたり、中間的な貸手がヘッドリースの原資産ではなく使用権資産を参照する点は、IFRS第16号と同じです(リースに関する会計基準の適用指針 第91項、BC123項)。差異は例外の有無にあります。

日本基準は、中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない一定の取引(サブリースの借手から受け取らない限り支払義務を負わない等の要件をすべて満たすもの)について、使用権資産とリース負債を計上せず、受取額と支払額の差額を損益に計上する取扱いを認めています(リースに関する会計基準の適用指針 第92項)。転リース取引についても、受取リース料と支払リース料の差額を転リース差益等として計上する取扱いがあります(リースに関する会計基準の適用指針 第93項)。いずれもIFRS第16号では定められていないため、適用は任意とされています(リースに関する会計基準の適用指針 BC135項)。

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貸手の差異のポイント

貸手のリース期間は選択制

国際的な会計基準では、貸手のリース期間は借手と共通の定めです。新リース会計基準は、貸手が借手のオプション行使の可能性を評価しにくいことを考慮し、借手と同様に決める方法と、旧基準を踏襲して再リースする意思が明らかな再リース期間を加える方法のいずれかを選べるようにしました(リースに関する会計基準 第32項、BC38項)。借手と同様の方法を選べば国際的な会計基準と整合する、という位置付けです。

リース債権とリース投資資産の区分と計算利子率

貸手は、所有権移転ファイナンス・リースはリース債権、所有権移転外ファイナンス・リースはリース投資資産として計上し、貸借対照表で区分して表示するか、それぞれが含まれる科目及び金額を注記します(リースに関する会計基準 第46項、第52項)。IFRS第16号では両者を区分しないため、リース債権の割合に重要性が乏しい場合は合算表示も認められています(リースに関する会計基準 BC63項)。

現在価値基準の判定に使う貸手の計算利子率は、貸手のリース料と見積残存価額の現在価値の合計が、原資産の現金購入価額又は借手に対する現金販売価額と等しくなる利率です(リースに関する会計基準の適用指針 第66項)。IFRS第16号のリースの計算利子率とは、主に貸手の当初直接コストを考慮しない点が異なります(リースに関する会計基準の適用指針 BC106項)。

一方、貸手の注記は、旧基準より充実させる方向でIFRS第16号と整合させています(リースに関する会計基準 BC68項)。会計処理は旧基準の踏襲、注記はIFRS寄り、という組合せが貸手側の特徴です。

一覧表に載せない細部の差異

処理結果への影響は限定的ですが、IFRS第16号の実務に慣れた担当者が戸惑いやすい点を挙げます。

  • 契約条件の変更時などの割引率:IFRS第16号は状況ごとに変更前・変更後のどちらの割引率を使うかを定めていますが、日本基準は定めていません(リースに関する会計基準の適用指針 BC76項、BC79項)。
  • 差入敷金:返還される差入敷金は取得原価で計上するのが原則ですが、IFRS任意適用企業への配慮から、建設協力金と同様の処理も選べます(リースに関する会計基準の適用指針 第33項、BC64項)。
  • リースの識別の細則:資産が黙示的に特定される場合の定めや、サプライヤーの資産代替権に関する詳細な定めは取り入れていません(リースに関する会計基準の適用指針 BC10項、BC11項)。
  • 借手の注記:少額リースの費用に関する注記や短期リースのポートフォリオに関する注記は取り入れていません(リースに関する会計基準 BC67項)。
  • 貸手の無形固定資産のリース:IFRS第16号には適用を任意とする定めがないものの、日本基準では本会計基準を適用しないことができます(リースに関する会計基準 第4項、BC18項)。
  • リースの識別に関する経過措置:旧基準で対象外だった契約にリースが含まれる可能性を踏まえ、IFRS第16号とは異なる経過措置を設けています(リースに関する会計基準の適用指針 BC165項、BC166項)。

実務への影響を見極める判断基準

差異の一覧を眺めるだけでは、自社に関係があるかどうかは分かりません。実務で影響が出るかどうかは、「どの基準で誰が財務諸表を作るか」と「どの取引があるか」の組合せで決まります。

影響が出やすい企業の類型

IFRSで連結し、
日本基準で個別を作る企業
個別ではとくにセール・アンド・リースバックに日本基準の処理が必要。日本基準独自の簡便法を個別で使うと、連結上の組替えが発生する
IFRS適用企業の国内子会社 親会社への報告はIFRS、法定の個別決算は日本基準となり、上と同じ組替え論点が生じる
不動産の売却と
借り戻しを検討する企業
フルペイアウト判定次第で金融取引になり、売却益を計上できない。IFRS第16号ベースの試算とも損益が一致しない
サブリース・転リースを
事業で行う企業
日本基準の例外的な取扱いを使うと、IFRSベースの数値と総額・純額の見え方が変わる
日本基準のみの企業 差異そのものの影響は小さい。少額リース・利息相当額の簡便法など、日本基準側の選択肢をどこまで使うかの方針決定が中心

IFRS適用企業の個別財務諸表の経過措置

IFRSを連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が個別財務諸表に新リース会計基準を適用する場合、適用初年度に、IFRS第16号の経過措置又はIFRS第1号の免除規定の定めを適用できます(リースに関する会計基準の適用指針 第134項)。この場合、連結財務諸表でIFRSを適用していたかのように算定した使用権資産・リース負債等の期首帳簿価額を引き継ぎ、累積的影響額を期首の利益剰余金に加減します(リースに関する会計基準の適用指針 第134項)。

ただし、この経過措置を使う場合でも、セール・アンド・リースバック取引については日本基準の経過措置の定め(リースに関する会計基準の適用指針 第126項)を適用します(リースに関する会計基準の適用指針 第134項、BC172項)。「IFRSの数値をそのまま持ち込めば終わり」とはならない点が、差異①の実務的な重みを示しています。

関連コラム新リース会計基準の経過措置:貸手・特有取引・IFRSの移行実務▸

自社の影響を確認する5つの問い

次の問いに順に答えていくと、どの差異を優先的に検討すべきかが見えてきます。

  1. 連結財務諸表と個別財務諸表で、適用する会計基準は同じか(異なるなら差異①〜⑩をすべて組替え対象として洗い出す)。
  2. 過去又は今後、自社資産を売却して借り戻す取引はあるか(あればフルペイアウト判定と範囲の判定を先に行う)。
  3. 少額リース・利息相当額の簡便法など、日本基準だけにある選択肢を使う予定か(使うならIFRSベースとの差額管理の方法を決める)。
  4. サブリース・転リース・再リースが事業上まとまった件数あるか(あれば例外的な取扱いの採否を方針として決める)。
  5. 貸手として現在価値基準の判定を行う取引があるか(あれば計算利子率に当初直接コストを含めない点を確認する)。

適用時期とIFRS第16号との時間差

新リース会計基準は2024年9月13日に公表され、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。3月決算の会社であれば、2028年3月期が適用初年度です。

IFRS第16号の原則的な適用時期は2019年1月でした(リースに関する会計基準 BC69項)。ASBJは、日本の実務が国際的な実務と整合するまでの期間が長くならないよう配慮しつつ、公表から原則的な適用時期までを2年半程度としています(リースに関する会計基準 BC69項)。

まとめ

新リース会計基準とIFRS第16号は、借手の単一の会計処理モデル、リースの定義と識別、借手のリース期間といった骨格を共有しています。差異は、主要な定めのみを取り入れたこと、日本の実務に配慮した選択肢を残したこと、そしてセール・アンド・リースバックで考え方を変えたことの3点から生じています。

  • 最大の差異はセール・アンド・リースバック。IFRS任意適用企業も個別財務諸表では日本基準の処理が必要
  • 少額リースの1件当たり金額による判定・利息相当額の簡便法・指数連動の見積り・再リース・サブリースの例外などは、日本基準側にだけある選択肢
  • 貸手は旧基準の処理を踏襲しつつ、リース期間の選択制や計算利子率の定義でIFRS第16号と異なる
  • 影響の大きさは、連結と個別で適用基準が異なるか、売却・借り戻しやサブリースがあるかで判断する

差異の多くは「選択肢を使うかどうか」で影響が決まるため、グループ全体の会計方針として早めにそろえておくことが、決算期の組替え作業を減らす近道です。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

新リース会計基準とIFRS第16号の最も大きな違いは何ですか。

セール・アンド・リースバック取引の会計処理です。日本基準は、売却に該当しない場合に加えてリースバックがフルペイアウトの場合も金融取引として処理し、売却に該当すれば譲渡損益を全額計上します。IFRS第16号は継続保持する権利部分の利得を繰り延べる考え方で、両者は異なります(リースに関する会計基準の適用指針 第55項、第56項、BC91項、BC93項)。

IFRS任意適用企業は、個別財務諸表にIFRS第16号の処理をそのまま使えますか。

基本的には修正が不要となるよう設計されていますが、セール・アンド・リースバック取引は日本基準の処理が必要です(代替的な取扱いとしてIFRS第16号と同様の処理は認められていません)。適用初年度にはIFRS第16号の経過措置等を使えますが、その場合もセール・アンド・リースバック取引は日本基準の経過措置の定めによります(リースに関する会計基準 BC13項、リースに関する会計基準の適用指針 第134項、BC95項)。

少額リースの基準はIFRS第16号と同じですか。

同じではありません。日本基準は、新品時の原資産の価値が少額なリース(IFRS第16号と同様の方法)と、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース(旧基準の300万円以下で判定する方法の踏襲)のいずれかを選択して首尾一貫して適用します。このほか、減価償却資産の購入時費用処理の基準額以下のリースも簡便的な取扱いの対象です(リースに関する会計基準の適用指針 第22項、BC43項、BC45項)。

貸手の会計処理もIFRS第16号に合わせて変わりましたか。

貸手の会計処理は、収益認識会計基準との整合性とリースの定義・識別を除き、旧基準を基本的に踏襲しています。ただし注記はIFRS第16号と整合させて拡充されました。リース期間の選択制や計算利子率の定義など、IFRS第16号と異なる点も残っています(リースに関する会計基準 第32項、BC53項、BC68項、リースに関する会計基準の適用指針 BC106項)。

新リース会計基準はいつから適用されますか。

2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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