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財務会計

棚卸資産の評価方法【計算例】先入先出法・平均法と最終仕入原価法

目次
  1. 棚卸資産の評価方法は4種類
  2. 評価方法と評価基準の違い
  3. 同じ取引で比べる計算例
  4. 先入先出法の計算例
  5. 総平均法の計算例
  6. 移動平均法の計算例
  7. 4つの方法の比較結果
  8. 最終仕入原価法は会計上どこまで認められるか
  9. 計算例で見る乖離
  10. 税務の法定評価方法との関係
  11. 評価方法を変更するときの会計処理と注記
  12. 後入先出法の廃止と基準の改正経緯
  13. 評価方法を決めるときの実務チェック
  14. まとめ
  15. 参考文献
  16. よくある質問
  17. 会計基準で認められている棚卸資産の評価方法はどれですか
  18. 最終仕入原価法は会計上使えますか
  19. 総平均法と移動平均法はどちらを選ぶべきですか
  20. 後入先出法は今も使えますか
  21. 評価方法を変更したら過年度の数値も修正が必要ですか

棚卸資産の評価方法とは、期末に残っている在庫の金額と、当期に払い出した分の売上原価を、取得原価のどの単価で計算するかを決める方法です。企業会計基準第9号で選択できるのは、個別法・先入先出法・平均原価法(総平均法又は移動平均法)・売価還元法の4つです(棚卸資産の評価に関する会計基準 第6-2項)。税務の届出をしていない会社で使われている最終仕入原価法は、この4つに含まれておらず、会計上は限られた場合にだけ容認される方法と位置づけられています(同 第34-4項)。本記事では、同じ仕入・払出の数値で各方法の期末棚卸高と売上原価を計算し、最終仕入原価法との差がどこで生じるかを確かめます。

棚卸資産の評価方法は4種類

棚卸資産は、原則として購入代価又は製造原価に引取費用等の付随費用を加算して取得原価とし、次の評価方法の中から選択した方法で売上原価等の払出原価と期末棚卸資産の価額を算定します(棚卸資産の評価に関する会計基準 第6-2項)。評価方法の選択は、払い出した分の原価と残った分の原価を同時に決めることになるため、期間損益に直接影響します(同 第26-2項)。

個別法 取得原価の異なる棚卸資産を区別して記録し、その個々の実際原価で期末棚卸資産の価額を算定する方法。個別性が強い棚卸資産に適した方法
先入先出法 最も古く取得されたものから順に払い出され、期末棚卸資産は最も新しく取得されたものからなるとみなして算定する方法
平均原価法
(総平均法・移動平均法)
取得した棚卸資産の平均原価を算出し、その平均原価で期末棚卸資産の価額を算定する方法
売価還元法 値入率等の類似性に基づくグループごとの期末の売価合計額に原価率を乗じて期末棚卸資産の価額とする方法。取扱品種の極めて多い小売業等に適用される

評価方法は、事業の種類、棚卸資産の種類、その性質及び使用方法等を考慮した区分ごとに選択し、継続して適用しなければなりません(棚卸資産の評価に関する会計基準 第6-3項)。全社で1つの方法に統一する必要はなく、たとえば商品は移動平均法、原材料は総平均法というように区分ごとに選ぶことができます。一方で、いったん選んだ方法を期ごとに入れ替えることはできません。

なお、本基準は棚卸資産の評価方法・評価基準・開示について、企業会計原則及び原価計算基準に定めがあるものの、本基準が優先して適用されると定めています(棚卸資産の評価に関する会計基準 第2項)。原価計算基準に例示されている材料の消費価格の計算方法を使う場合も、本基準の4つの範囲で考えることになります。

評価方法と評価基準の違い

「評価方法」と似た言葉に「評価基準」があります。評価方法は取得原価をどう配分するか(どの単価を期末在庫に付けるか)の話であり、評価基準は配分後の取得原価と期末の正味売却価額を比べ、収益性が低下していれば正味売却価額まで切り下げるという話です(棚卸資産の評価に関する会計基準 第7項)。実務では、まず評価方法で取得原価ベースの期末棚卸高を出し、そのうえで評価基準による簿価切下げの要否を判定する、という2段階で処理します。

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同じ取引で比べる計算例

評価方法の違いは、仕入単価が期中に動いたときに表れます。ここでは、ある商品について次の受払いがあった場合を自社作例として、各方法の期末棚卸高と売上原価を計算します(金額の単位:円)。

日付・取引 数量・単価
期首在庫 100個・単価1,000円(100,000円)
4月 仕入 400個・単価1,100円(440,000円)
6月 払出 250個
9月 仕入 250個・単価1,320円(330,000円)
12月 払出 200個
期末在庫 300個

期首在庫と当期仕入の合計(販売可能額)は750個・870,000円で、どの方法でも同じです。評価方法によって変わるのは、この870,000円のうち期末在庫300個に残す金額と、売上原価に回す金額の分け方です。

販売可能額 = 100,000円 + 440,000円 + 330,000円 = 870,000円
売上原価 = 販売可能額 − 期末棚卸高

先入先出法の計算例

先入先出法では、期末に残っている300個は最も新しく取得されたものからなるとみなします(棚卸資産の評価に関する会計基準 第6-2項(2))。9月仕入の250個が全部残り、不足する50個は4月仕入分から残っていると考えます。

期末棚卸高 = 250個 × 1,320円 + 50個 × 1,100円 = 385,000円
売上原価 = 870,000円 − 385,000円 = 485,000円

決算で期末棚卸高を確定させ、三分法で売上原価を算定する場合の仕訳は次のとおりです(単位:円)。期首在庫100,000円を繰越商品から売上原価へ振り替え、当期仕入770,000円を売上原価へ振り替えたうえで、先入先出法で算定した期末棚卸高385,000円を繰越商品に戻します(棚卸資産の評価に関する会計基準 第6-2項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売上原価 100,000 繰越商品 100,000
売上原価 770,000 仕入 770,000
繰越商品 385,000 売上原価 385,000

総平均法の計算例

総平均法は、期首在庫と当期仕入の合計額を合計数量で割った1つの平均単価を、期中のすべての払出しと期末在庫に使う方法です(棚卸資産の評価に関する会計基準 第6-2項(3))。単価が期末にならないと確定しないため、月次で売上原価を出す場合は暫定単価を使い、期末に確定した平均単価で修正することになります。

平均単価 = 870,000円 ÷ 750個 = 1,160円
期末棚卸高 = 300個 × 1,160円 = 348,000円
売上原価 = 870,000円 − 348,000円 = 522,000円

移動平均法の計算例

移動平均法は、仕入のたびにその時点の在庫と新たな仕入を合わせて平均単価を計算し直し、払出しにはその時点の平均単価を使う方法です(棚卸資産の評価に関する会計基準 第6-2項(3))。払出しのつど原価が確定するので、販売管理システムと連動した継続記録に向いています。

4月仕入後の平均単価 = (100,000円 + 440,000円) ÷ (100個 + 400個) = 1,080円
6月払出の原価 = 250個 × 1,080円 = 270,000円(残り250個・270,000円)
9月仕入後の平均単価 = (270,000円 + 330,000円) ÷ (250個 + 250個) = 1,200円
12月払出の原価 = 200個 × 1,200円 = 240,000円
期末棚卸高 = 300個 × 1,200円 = 360,000円

売上原価は270,000円と240,000円の合計510,000円で、販売可能額870,000円から期末棚卸高360,000円を差し引いた額と一致します。払出しのつど売上原価を計上する方式(売上原価対立法)で記帳する場合、6月と12月の払出時の仕訳は次のとおりです(単位:円)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売上原価 270,000 商品 270,000
売上原価 240,000 商品 240,000

4つの方法の比較結果

同じ受払いでも、期末棚卸高と売上原価は方法ごとに次のように分かれます。仕入単価が上昇している局面では、新しい単価を期末在庫に多く残す方法ほど期末棚卸高が大きく、売上原価が小さくなります。

評価方法 期末棚卸高/売上原価
先入先出法 385,000円/485,000円
移動平均法 360,000円/510,000円
総平均法 348,000円/522,000円
(参考)最終仕入原価法 396,000円/474,000円

先入先出法と総平均法の売上原価の差は37,000円です。この数値例は1品目・1年分ですが、品目数が多く単価の変動が大きい会社では、評価方法の選択が売上総利益率を左右します。上場準備で過年度の財務諸表を監査対象にする場合は、どの区分にどの方法を適用しているかを原価計算規程や経理規程で説明できる状態にしておくことが求められます。

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最終仕入原価法は会計上どこまで認められるか

最終仕入原価法は、期末に最も近い時点で取得したものの単価を期末在庫の全数量に掛ける方法です。この方法は企業会計原則注解では評価方法として例示されておらず、棚卸資産の評価に関する会計基準でも評価方法として定めていません(棚卸資産の評価に関する会計基準 第34-4項)。期末在庫の一部しか実際の取得原価で評価されず、残りは時価に近い価額で評価されることが多いため、無条件に取得原価基準に属する方法として認めるのは適当でないとされています(同 第34-4項)。

そのうえで、期末棚卸資産の大部分が最終の仕入価格で取得されているときのように期間損益の計算上弊害がないと考えられる場合や、期末棚卸資産に重要性が乏しい場合においてのみ容認される方法と考えられる、とされています(棚卸資産の評価に関する会計基準 第34-4項)。容認されるかどうかは、この2つの場面に当たるかで判断します。

計算例で見る乖離

先ほどの数値例で最終仕入原価法を使うと、期末在庫300個すべてに9月仕入の単価1,320円を掛けることになります。

期末棚卸高(最終仕入原価法) = 300個 × 1,320円 = 396,000円
先入先出法との差 = 396,000円 − 385,000円 = 11,000円

差の11,000円は、実際には4月に1,100円で仕入れた50個に、9月の1,320円を付けてしまったことから生じています(50個 × 220円)。期末在庫300個のうち250個は9月仕入分なので差は小さく収まっていますが、期末在庫が最終仕入の数量を大きく超える品目や、単価の変動が大きい品目では、この差が膨らみます。期末在庫の大部分が最終仕入で構成されているかどうかを品目ごとに確かめることが、容認の可否を判断する出発点です。

税務の法定評価方法との関係

最終仕入原価法が中小企業で使われていることが多い背景には、法人税法の法定評価方法があります。法人税法施行令は、選定できる原価法の評価方法として個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法を掲げており(法人税法施行令 第28条第1項第1号)、評価方法を選定しなかった場合には最終仕入原価法により算出した取得価額による原価法が適用されます(法人税法施行令 第31条第1項)。届出をしないまま税務の法定評価方法で決算を組んでいる会社では、会計上も自然と最終仕入原価法になっているわけです。

上場準備に入り、監査法人の財務諸表監査を受けるようになると、この状態が論点になります。期末在庫の構成や重要性から最終仕入原価法の容認範囲に収まるかを検討し、収まらない区分は第6-2項の4つの方法から選び直すことになります。税務上の評価方法を会計と揃えるかどうかは別途の判断になるため、変更の時期と手続は税務面も含めて計画しておくと手戻りが少なくなります。

評価方法を変更するときの会計処理と注記

棚卸資産の評価基準及び評価方法は会計方針の例として挙げられており、重要な会計方針として注記します(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 第4-4項、第4-5項(2))。たとえば先入先出法から移動平均法へ変えるように、一般に公正妥当と認められた方法から別の方法へ変えることは会計方針の変更に当たります(同 第4項(5))。

会計方針は正当な理由により変更を行う場合を除き、毎期継続して適用します(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 第5項)。正当な理由に基づく自発的な変更の場合、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用し(同 第6項(2))、表示期間より前の期間に関する累積的影響額は、表示する財務諸表のうち最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映します(同 第7項(1))。あわせて、変更の内容、正当な理由、影響額などを注記します(同 第11項)。

最終仕入原価法から第6-2項の方法へ切り替える場面では、従来の方法が容認範囲に収まっていたかどうかによって、会計方針の変更として扱うのか、過去の財務諸表の訂正として扱うのかの検討が必要になることがあります。誤謬には会計方針の適用の誤りも含まれるためです(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 第4項(8))。どちらに当たるかは個々の事実関係によるので、切替えの前に監査人と協議しておくことをおすすめします。

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後入先出法の廃止と基準の改正経緯

棚卸資産の評価に関する会計基準は2006年7月に公表され、2008年4月1日以後開始する事業年度から適用されています(棚卸資産の評価に関する会計基準 第20項)。その後、2008年9月の改正で、選択できる評価方法から後入先出法が削除されました。国際会計基準第2号が後入先出法の採用を認めていないことを重視し、会計基準の国際的なコンバージェンスを図るための改正です(同 第34-8項、第34-12項)。この改正は2010年4月1日以後開始する事業年度から適用されています(同 第21-2項)。

さらに2019年には、時価の算定に関する会計基準の公表に併せて、トレーディング目的で保有する棚卸資産の時価の定義と注記を見直す改正が行われ、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されています(棚卸資産の評価に関する会計基準 第4項、第19-2項、第21-5項)。この改正はトレーディング目的の棚卸資産に関するもので、本記事で扱った4つの評価方法の定めは変わっていません。また、工事契約に係る収益の会計処理及び開示は、2020年に改正された収益認識に関する会計基準で定められています(同 第31項)。

評価方法を決めるときの実務チェック

評価方法の選択は一度決めると継続適用が求められるため、導入時に次の点を確認しておくと、後から変更を迫られるリスクを減らせます。

  • 区分の切り方: 商品・製品・原材料など、事業や棚卸資産の種類・性質・使用方法の違いで区分を定め、区分ごとに方法を選んでいるか(棚卸資産の評価に関する会計基準 第6-3項)。
  • システムとの整合: 移動平均法は払出しのつど単価が確定し、総平均法は期末まで単価が確定しない。月次決算の早期化を求めるなら、販売管理・在庫管理システムが対応できる方法を選ぶ。
  • 付随費用の範囲: 取得原価には購入代価に引取費用等の付随費用を加算する(同 第6-2項)。運賃・関税などをどこまで単価に含めるかを規程に定め、方法間で扱いを揃える。
  • 最終仕入原価法の点検: 税務の法定評価方法のまま運用している場合、期末在庫の大部分が最終仕入で構成されているか、重要性が乏しいかを品目ごとに確かめる(同 第34-4項)。
  • 実地棚卸との連動: 評価方法による帳簿在庫の数量と実地棚卸の数量が一致していることが、期末棚卸高の前提になる。差異の原因分析と記帳ルールを決めておく。

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まとめ

棚卸資産の評価方法として会計基準が定めているのは、個別法・先入先出法・平均原価法(総平均法又は移動平均法)・売価還元法の4つで、区分ごとに選択して継続適用します(棚卸資産の評価に関する会計基準 第6-2項、第6-3項)。同じ受払いでも、本記事の数値例では先入先出法と総平均法で売上原価に37,000円の差が生じました。

税務の法定評価方法である最終仕入原価法は、会計上は期間損益の計算上弊害がない場合や期末在庫の重要性が乏しい場合に限って容認される方法です(同 第34-4項)。上場準備や会計監査の受入れを控えた会社では、現在の評価方法がこの範囲に収まっているかを確かめ、必要なら会計方針の変更の手続とあわせて切り替えを計画することになります。自社の在庫構成でどの方法が適切か、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

参考文献

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よくある質問

会計基準で認められている棚卸資産の評価方法はどれですか

個別法、先入先出法、平均原価法(総平均法又は移動平均法)、売価還元法の4つです(棚卸資産の評価に関する会計基準 第6-2項)。評価方法は、事業の種類、棚卸資産の種類、その性質及び使用方法等を考慮した区分ごとに選択し、継続して適用します(同 第6-3項)。

最終仕入原価法は会計上使えますか

無条件には使えません。会計基準は最終仕入原価法を評価方法として定めておらず、期末棚卸資産の大部分が最終の仕入価格で取得されているときのように期間損益の計算上弊害がないと考えられる場合や、期末棚卸資産に重要性が乏しい場合においてのみ容認される方法と考えられるとしています(棚卸資産の評価に関する会計基準 第34-4項)。

総平均法と移動平均法はどちらを選ぶべきですか

どちらも平均原価法として認められています(棚卸資産の評価に関する会計基準 第6-2項(3))。移動平均法は仕入のたびに単価を改定するため払出しのつど原価が確定し、総平均法は期末に1つの平均単価を求めるため計算は簡単ですが単価の確定が期末になります。月次決算の早さや在庫管理システムの機能を踏まえて選び、選んだ方法は継続して適用します(同 第6-3項)。

後入先出法は今も使えますか

使えません。2008年9月の改正で選択できる評価方法から削除され、この改正は2010年4月1日以後開始する事業年度から適用されています(棚卸資産の評価に関する会計基準 第21-2項、第34-12項)。

評価方法を変更したら過年度の数値も修正が必要ですか

棚卸資産の評価方法は会計方針に当たるため、正当な理由に基づいて変更する場合は、原則として新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用し、変更の内容や正当な理由、影響額を注記します(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 第4-5項(2)、第6項(2)、第11項)。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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